- 更新日 : 2026年1月14日
年末年始手当の取り扱いとは?適用されないケースや導入のポイントを解説
年末年始に出勤する社員に対して支給する年末年始手当は、感謝の意味を込めたインセンティブとして多くの企業で導入されています。しかし、取り扱いを誤ると「賞与扱いになるのか?」「割増賃金とどう違うのか?」といった法的な問題や、対象者間の不公平感による社内トラブルを招く可能性もあるでしょう。
年末年始手当の法的な取り扱いは、支給形態(給与または賞与)により異なります。
本記事では、年末年始手当の取り扱いルールや割増賃金との違い、支給対象者の注意点について解説します。また、導入時に押さえるべき賃金規程の整備や社員への周知ポイントも紹介します。
目次
年末年始手当は支給の仕方で取り扱いが変わる
年末年始手当について検討する際にまず理解しておきたいのが、どのように支給するかによって法的な取り扱いが変わる点です。賞与として扱われるケースもあれば、給与の一部として扱われるケースもあり、それぞれで労務管理や注意点が異なります。
賞与として取り扱う場合
年末年始手当は毎月支給される通常の報酬に該当しない場合、社会保険上は賞与として扱われます。社会保険の実務においては、労働の対価として定期的に支払われているかどうかが、賞与・給与のどちらであるかを判断する重要な基準となるためです。
支給回数が年3回以下で、かつ就業規則に明記されている場合は、賞与支払届の提出が求められます。賞与と判断されると最大2年分の遡及手続きと社会保険料の追加徴収が発生するため、注意が必要です。
給与との判断基準は支給時の名称よりも、支給目的や支給方法であるため、判断に迷う場合は事前に年金事務所へ確認することが大切です。
給与として取り扱う場合
年末年始手当は企業が制度として位置づけることで、賞与ではなく給与として扱う場合もあります。給与として取り扱う場合は、たとえば次のようなケースです。
- 年4回以上の支給が制度化されており、繁忙期手当のひとつとして支給する
- 今後制度化を検討中であり、今回はひとまず年末年始手当を支給したい
年末年始手当を給与として扱うには、通常の賃金と併せて支給します。たとえば、年末年始手当の支給方法には、以下のようなケースがあります。
- 1日あたり〇〇円(月給者・時給者)
- 1時間あたり〇〇円(時給者)
割増率〇%と定めるケースもありますが、新たに導入するなら〇〇円とすると計算がシンプルになり、社員にとってもわかりやすくなります。
年末年始でも割増賃金が適用されない可能性もある
年末年始に出勤しても、必ずしも割増賃金が支払われるとは限りません。割増賃金が適用されるケースは、法定休日に労働させた場合や、所定労働時間を超えた残業が発生した場合に限られます。
会社が年末年始を休日ではなく休暇と定めている場合は、割増賃金の対象外となるケースがあります。就業規則で年末年始をどのように位置づけているかが判断基準になるため、規定内容の確認が重要です。振替休日を設定している場合、年末年始に出勤してもその日は通常勤務扱いとなり、割増は発生しません。
休日と休暇の違いは残業代の単価にも影響し、制度設計により社員の賃金総額が変わる可能性があります。そのため、年末年始のシフトや勤務体系は、制度上の取り扱いと運用実態の両方を踏まえて、事前に確認することが大切です。
年末年始手当と割増賃金の違い
年末年始手当と割増賃金は、支給の目的や法的根拠が異なるため、混同しないように注意しましょう。割増賃金は労働基準法にもとづき、法定休日や時間外労働に対して必ず支払う義務があります。一方、年末年始手当は企業の任意で支給される特別手当であり、社員へのインセンティブとなります。
大別すると、割増賃金は上乗せ賃金であり、年末年始手当は特別手当というイメージです。年末年始に出勤しても、法定休日でなければ割増賃金が発生しないケースに対して、補う意味で年末年始手当を設定する企業もあります。
制度の設計時には年末年始手当と割増賃金の違いを理解し、就業規則や賃金規程に明確に記載しておくことがトラブル防止につながります。年末年始に法定休日の労働が発生した場合には、割増賃金に加えて年末年始手当を支給するといった運用も可能です。
休日に働く場合の割増賃金とは
休日労働に関する割増賃金の考え方は、年末年始に限らず、日常的な勤怠管理にも直結する重要なポイントです。休日に労働が発生した場合、通常の賃金に加えて割増賃金の支払いが必要になるケースがあります。働いた休日が法定休日か定休日かによって適用される割増率や考え方は異なるため、注意が必要です。
法定休日
法定休日とは、労働基準法第35条で定められた週に1日、または4週に4日の休日を指します。法定休日に労働させた場合は、すべての労働時間に対して35%以上の割増賃金を支払う義務があります。
たとえば、時給換算すると1,300円の社員が法定休日に5時間働くと、1時間あたりの賃金は1,755円(1,300円×1.35)です。そのため、1,755円×5時間=8,775円の賃金を支払う必要があります。法定休日の労働が深夜(22時〜5時)と重なる場合は、さらに25%加算され、合計60%以上の割増率が適用されます。
割増率は合算方式で計算されるため、深夜労働・時間外労働と重なる場合には注意が必要です。
また、法定休日は平日か週末かに関係なく、就業規則や契約書で明確に定める必要があります。割増賃金の正確な支払いと休日区分の適切な管理は、労基法違反や社員とのトラブルを防ぐためにも重要です。
関連記事:残業代の割増率とは?25%・35%・50%の違いや計算方法を解説
所定休日
所定休日は企業が独自に設定する休日であり、法定休日以外の休日を指します。1日8時間労働で完全週休2日制の場合、1日は法定休日、もう1日は所定休日となります。所定休日に出勤しても法定休日と異なり、休日労働としての割増賃金は発生しません。
ただし、その週の労働時間が40時間を超える場合、超過分には時間外労働として25%以上の割増賃金が必要です。たとえば、月〜金で40時間働き、土曜(所定休日)に8時間労働すると、超過した8時間分は25%の割増対象になります。
割増賃金が必要かどうかは法定労働時間(週40時間)を基準に判断するため、勤務実績の把握が重要です。そのため、企業は就業規則や雇用契約で所定休日を明確に定め、社員とトラブルが生じないように運用することが求められます。
年末年始の割増の相場とは?
法律上、年末年始に特別な割増率は定められていませんが、実務上は一定の相場感があります。企業によっては、法定を上回る特別手当として「50%の割増」や「1日・1時間当たり〇〇円を加算する」と定めている例もあります。
年末年始の勤務に対する割増率は、就業規則に明記されていないとトラブルの原因になりやすいため、注意が必要です。所定休日でなくても特別休暇扱いの日に勤務した場合は、原則として通常の賃金支払い義務が生じます。
ただし、割増率や支給基準は企業ごとに異なるため、実態に合わせた制度設計と規程の整備が重要です。
年末年始手当はアルバイトやパートにも適用される?
年末年始手当を正社員のみに支給し、アルバイトやパートに支給しない運用は、近年見直しが求められています。
同一労働同一賃金の原則により、業務内容や労働条件に大きな差がなければ、雇用形態の違いだけで手当の支給差をつけるのは不合理と判断される可能性があります。たとえば、2020年の日本郵便の最高裁判決では、有期契約社員に年末年始手当を支給しないのは不合理との判断が示されました。
判決では、勤務の実態が同じであれば手当も同様に支給されるべきとされています。とくに慰労的な意味合いを持つ手当である以上、業務内容が共通していれば支給の対象とすべきとされています。
支給対象を明確に定めずに不支給とした場合、社内トラブルや労使紛争につながるリスクが生じるでしょう。トラブルを回避するためにも、アルバイトやパートも含めた公平な支給ルールを整備し、就業規則や賃金規程に明記しておくことが重要です。
年末年始手当を導入する際のポイント
年末年始手当を導入する際は、支給すること自体だけでなく、運用面までを含めて整理しておくことが重要です。支給条件や対象者が曖昧なままだと、認識のズレや不公平感が生じ、トラブルにつながる可能性があります。
ここでは、トラブル防止に役立つ、年末年始手当を導入するポイントについて解説します。
支給条件・対象者を明確にして賃金規程に明記する
年末年始手当を制度化する場合は、賃金規程に明記することで支給条件や範囲の曖昧さを防げます。賃金規程には対象者や支給額、支給時期や該当期間などを具体的に記載しましょう。
制度の明文化により、社員間の不公平感や、なぜ自分には支給されないのかといった不満を防止できます。社会保険や賞与・給与区分の判断にも関わるため、明確な文言で制度の趣旨と取り扱いを示すことが重要です。
とくに非正規社員への対応も含めて、規程内容と実運用が一致しているかを定期的に見直すことが求められます。
従業員に周知徹底する
年末年始手当の制度を設けた場合、内容を全従業員に周知徹底することが適正な運用につながります。誰に・いくら・いつ支給されるかといった条件を明確に伝えることで、従業員の納得感とモチベーションが高まります。
賃金規程や就業規則だけでは伝わらない可能性があるため、社内通知や説明会などの手段も活用して周知すると効果的です。周知が不十分だと、知らなかった、聞いていないといった認識違いによるトラブルや不満が発生する原因となります。
とくにアルバイトやパートなど情報格差が生じやすい層に対しては、口頭説明や掲示物による補足が有効です。また、制度導入時だけでなく、年末前のタイミングで毎年再周知することで、誤解や申告漏れを予防できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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