• 更新日 : 2026年1月14日

グループダイナミクスとは?組織開発に活用するメリット・方法・ポイントなどを解説

グループダイナミクスは、個々人が独自の考えをもっているとしても、最終的には集団の圧力によって行動を選択しやすくなるという考え方を指します。

集団と個人の相互作用に関する考え方で、組織開発においても応用できます。組織開発に活用するには、手順やポイントなどをあらかじめ把握することが大切です。

本記事では、グループダイナミクスの定義や実践するメリット、活用する方法やポイントなどを解説します。

グループダイナミクスとは?

グループダイナミクスとは、集団とそれに属する個々人との相互作用に関する理論です。具体的には、個々人が独自の考えをもっているとしても、最終的には集団の圧力によって行動を選択しやすくなるという考え方を指します。

たとえば、定時になったらすぐ退社する習慣がある組織では、本当は「残業したい」と思っている社員も定時に帰りやすくなります。

集団に働く圧力は、メンバー構成や組織文化など多様な要因の影響を受けますが、なかでもリーダーの性格や価値観によって大きく左右される点が特徴です。グループダイナミクスを活用し、個々人に特定の価値観を意識させると、リーダーの理想に近い形で集団を動かせます。

グループダイナミクスと集団凝集性との関係

グループダイナミクスを活用するうえで重要なのが「集団凝集性」という要素です。集団凝集性とは、いわゆる集団の結束力を意味します。集団凝集性が高い組織は、メンバー間の協力体制が強固であるため、グループダイナミクスの影響も大きくなります。

ただし、凝集性が高過ぎると閉鎖的な雰囲気が強くなり、外部からの意見を排除したり、変化を拒んだりする可能性もあるため要注意です。集団凝集性をうまくコントロールして、閉鎖的にならない状態でグループダイナミクスを活用することが大切です。

グループダイナミクスの活用場面

ここからは、グループダイナミクスの活用場面を2つ紹介します。活用できる場面を知ることで、グループダイナミクスの理解をより深められるため、定義とあわせて確認しましょう。

ビジネスの現場

ビジネスシーンにおいては、部署やプロジェクトなどのチームビルディングにおいて、グループダイナミクスを活用可能です。

まず、メンバー同士で協力して業務を進める期間を設け、お互いの信頼関係を築くことでチームの結束力(集団凝集性)を高めます。結束力を高めると、チーム内に「仲間のために貢献したい」「足並みを揃えたい」という集団心理を醸成させられるでしょう。

その土台がある状態で、たとえば「残業を極力なくす」という指針を掲げると「周りが効率化を目指しているから自分もあわせよう」という意識が働きます。その結果、一人ひとりが残業の削減に向けて努力するようになります。

あらかじめチームの結束力を高めることで、グループダイナミクスが成功しやすくなり、理想のチーム運営を実現可能です。

教育の現場

教育現場では、学級運営においてグループダイナミクスを活用可能です。

授業・給食・掃除など日々の活動を通じ、生徒同士の相互理解を深めることで、学級としてのまとまり(集団凝集性)を強くします。クラスへの帰属意識が高まると、生徒には「クラスの雰囲気を壊したくない」という思いが生まれるでしょう。

この状態で「休まず元気に登校する」「いじめのないクラスを作る」などの学級目標を立てると、生徒が自発的に目標達成を意識するようになります。

生徒同士の結束力を高めると、グループダイナミクスが機能しやすくなり、クラスを望ましい方向へ導くことが可能です。

社内でグループダイナミクスを活用するメリット

ここからは、社内でグループダイナミクスを活用するメリットを紹介します。メリットを確認することで、グループダイナミクスを実践するかの判断材料にできるでしょう。

コミュニケーションの活性化につながる

グループダイナミクスを活用するには集団の結束力を高める必要があるため、メンバー間の距離を縮められます。その結果、チーム内のコミュニケーションの活性化が可能です。

コミュニケーションが活性化すると、業務に関する報告や連絡がスムーズに行われ、認識のズレや伝達ミスの防止にもつながります。結果、生産性が向上しやすくなるでしょう。また、気軽に相談できる環境が整うことで、メンバーが安心して働けるチーム運営を実現できます。

企業全体でグループダイナミクスを活用すると、部署の垣根を超えた交流を促進でき、部署同士で連携しながら大きなプロジェクトを進められるようになります。

組織の生産性の向上につながる

グループダイナミクスを活用して、真剣に業務へ取り組む雰囲気を作ることで、各メンバーに「自分も頑張らなければ」という意識を与えられます。その結果、一人ひとりの能力を引き出しやすくなり、組織の生産性の向上を実現可能です。

また、グループダイナミクスを活用する過程で、組織の結束力を高められるため、互いに助け合う文化も生まれます。ひとりが課題に直面しても、周囲がサポートすることでスムーズに解決できるため、業務が停滞せず、高い生産性を維持しやすくなります。

イノベーションが生まれやすくなる

グループダイナミクスの活用方法によっては、新たなアイデアやイノベーションが生まれる効果も期待できます。たとえば「先輩・後輩関係なく、率直に意見を出し合おう」という雰囲気を作ると、さまざまなメンバーが発言しやすくなるでしょう。

誰もが気兼ねなく発言できる環境を整えると、一見突飛に思えるアイデアでも否定せず、一度検討する意識をもてるようになります。また、さまざまなアイデアをかけあわせられるため、画期的な営業戦略や新商品を考案しやすくなります。

社員の満足度の向上につながる

グループダイナミクスを実践する過程では、各メンバーの責任・役割を明確化するステップがあります。メンバーは「自分はこのチームに必要とされている」という所属意識をもてるため、満足度の向上につながります。社員の満足度を高められると、優秀な人材の流出を防止することが可能です。

また、社員が生き生きと働いている旨を外部にアピールすると、求職者にとっては魅力的に映るため、採用活動において多くの応募者を集めやすくなります。

社内でグループダイナミクスを活用する5ステップ

ここからは、グループダイナミクスを活用する流れを、5つのステップに分けて解説します。流れを把握することで、グループダイナミクスをスムーズに活用できるようになるため、ぜひ確認しておきましょう。

1. グループダイナミクスを活用する範囲を決める

まずは、グループダイナミクスを実践するチーム・規模を決めます。グループダイナミクスを実践する目的にあわせて「特定の部署」「特定のプロジェクトチーム」「全社規模」など、最適な範囲を選びましょう。

たとえば、特定の部署のコミュニケーションをより活性化させたい場合は、対象の部署に絞って実施します。一方で、全体的な組織風土を変えたいのであれば、全社規模で実施するのが効果的です。

広範囲で実践する場合、小さなチームでグループダイナミクスを試し、成功事例を作ってから規模を広げる方法も有効です。

2. チーム内で重視する価値観を決める

グループダイナミクスを活用する範囲が決まったら、チーム内での目標やビジョンの策定を通じて、どういった価値観を重視するか決めます。重視する価値観によって、メンバーがどういった方向性で行動するかが決まるため、グループダイナミクスの実践においては重要なポイントです。

具体的には、以下のような形で価値観を設定しましょう。

  • 立場に関わらず、誰でも気兼ねなく意見を発言できる雰囲気を守る
  • 個人の成果だけでなく、チーム全体の成功を優先して助け合う
  • 失敗をおそれずに新しいことに挑み、結果から学ぶ姿勢をもつ

重視する価値観は、人事担当者や管理職が一方的に決めるのではなく、メンバー全員で話し合って策定するように心がけましょう。メンバーの意見を反映させることで当事者意識が芽生え、価値観を意識して業務を進めてもらいやすくなります。

価値観が決まったら明文化して、メンバーがいつでも確認できる場所に保管しましょう。また、より確実に業務に浸透させられるよう、朝礼やミーティングで価値観の内容を発信することも大切です。

3. 各メンバーの責任や役割を明確化する

チーム内で重視する価値観に加えて、各メンバーの役割と責任の所在を明確にし、誰が何をすべきかを具体的に定義することも大切です。

一人ひとりが自身の役割を把握し、責任感をもって行動してもらうと、チームの結束力を高められます。

また、お互いの役割を認識し、尊重する雰囲気が生まれるため、メンバー間の信頼関係も構築可能です。結果として、グループダイナミクスが機能しやすくなります。

役割を決める際は、チームを統括するリーダーも選出しましょう。リーダーの性格や考え方によって、組織の雰囲気は左右されます。チーム内で重視する価値観を体現できるリーダーを選ぶと、理想とする方向性でメンバーを導きやすくなります。

4. チーム専用のコミュニケーションツールを導入する

メンバー間の情報共有や対話を円滑にするため、チーム専用のコミュニケーションツールの導入も検討しましょう。気軽にやり取りできる場を設けることで、メンバー同士の心理的な距離が縮まり、チームの一体感が生まれやすくなります。すでに社内でツールを利用している場合は、チーム専用のグループチャットを作成しましょう。

導入する際は、堅苦しさを取り払い、やり取りしやすい空気感を作るためのルールを定めるのもおすすめです。具体的には、以下のようなルールが挙げられます。

  • リアクション機能を活用する
  • 文章中にスタンプを積極的に使用する
  • 相手に即時の返信を強要せず、自分のタイミングでの返信を認める

堅苦し過ぎない雰囲気のチャットにすると、メンバーが気軽に利用しやすくなります。

また、業務連絡用だけでなく雑談用の部屋を作り、業務外でも交流しやすくする工夫も効果的です。交流の機会が増えると、チームの結束力が高まり、よりグループダイナミクスを成功させやすくなります。

5. グループダイナミクスを意識しながら業務に取り組む

ツールを導入したら、あらかじめ決めた価値観にもとづき、グループダイナミクスを意識しながら業務に着手します。リーダーには、日々のメンバーの行動を観察し、価値観に沿って作業を進めているかを確認してもらいましょう。

もし、メンバーで意見の食い違いや対立が起きている場合は、リーダーが間に入り、関係の調整や解決のサポートを行います。事態が複雑で、リーダーだけでは解決が難しい場合は、人事担当者や管理職も積極的に協力しましょう。

対立を放置するとチームの結束力が弱まり、グループダイナミクスが機能しづらくなります。また、連携力の低下によって業務が遅延しやすくなるため、早期に状況を把握し、解決に向けて働きかけることが重要です。

グループダイナミクスを活用する際のポイント

最後に、グループダイナミクスを活用する際のポイントを3点解説します。ポイントを理解すると、グループダイナミクスをより効果的に実践できるでしょう。

グループシンクの発生を避ける

グループシンクとは、メンバーが集団の和を乱さないことを意識し過ぎて、冷静な判断を下せなくなる状態です。グループダイナミクスを活用するためにチームの結束力を強くすることで、グループシンクが発生し、さらに「グループシフト」を引き起こすおそれもあります。

グループシフトとは、チームメンバーの極端な意思決定を指す用語で、以下の2種類が存在します。

種類概要
リスキーシフト本来は慎重な選択を取れるメンバーが、グループシンクによってリスクの高い選択をしてしまうこと。
コーシャスシフト本来は大胆な行動ができるメンバーが、グループシンクによって過剰に慎重な選択をしてしまうこと。

メンバーの責任感が薄く、ほかの人に意思決定を任せる雰囲気が強いと、グループシフトが発生しやすくなります。

グループシフトを防ぐためには、各メンバーに明確な役割・担当領域を与えて「特定分野の責任者としての意見」を求めるのが効果的です。

たとえば「予算管理の担当として、このプランのリスクは何が考えられる?」「顧客対応の責任者として、懸念点はないか?」など、個々の役割にもとづいた発言を促します。

自身の担当領域に対する説明責任が生まれるため、周囲に流されることなく、主体的に自分の考えを発信できるようになります。

社会的手抜きがないかチェックする

社会的手抜きとは、集団で共同作業を行う際、ひとりで作業するときよりも個人の作業量が低下する現象です。

チームの協力体制を強くすると、「自分がやらなくても誰かがやってくれるだろう」という考えをもつ可能性があります。その結果、社会的手抜きが起こりやすくなります。

チームの人数が多くなるほど発生しやすいため、大規模な組織ではとくに注意が必要です。

各メンバーの実施業務や成果を可視化し、個人の貢献を定期的に評価すると、社会的手抜きを抑制しやすくなります。また、1on1ミーティングを定期的に行い、一人ひとりに当事者意識をもつように働きかけることも大切です。

チームの状況に適したリーダーを選出する

グループダイナミクスを効果的に機能させるには、チームの状況・メンバーの性格に合ったタイプのリーダーを選出することが大切です。

アメリカの心理学者であるダニエル・ゴーマンが提唱した論によると、リーダーのタイプは以下の6つに分けられます。

タイプ名特徴
ビジョン型目指すべき目標・ビジョンをメンバーに示し、方向性を明確にしたうえで牽引する
コーチ型各メンバーのコーチ役として、1対1でのフォローを重視する
関係重視型チーム全体での信頼構築を重視する
民主型チームの方向性や目標を決める際に、全メンバーの意見・提案を確認する
ペースセッター型リーダー自らが見本を提示し、メンバーに真似をさせる
強制型自身の権力を行使して、強制的にメンバーを従わせる

各タイプによって、適した状況や相性のよいチームが異なります。

たとえば、経験の浅い若手社員が多い部署では、明確な方向性を示す「ビジョン型」や「ペースセッター型」のリーダーが適しています。一方で、テレワーク中心で自律的な働き方を行うチームの場合は、個々をサポートする「コーチ型」や、メンバーの自主性を大切にする「民主型」を選出するのがおすすめです。

現状のチームの状態を正しく見極め、最適なリーダーを配置することで、チームの結束力を向上させられます。結果的に、グループダイナミクスの効果を高めやすくなります。


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