- 更新日 : 2026年1月14日
インセンティブとは?意味を簡単に解説!種類・メリット・デメリットも紹介
インセンティブとは、望ましい行動を引き出すための刺激・動機づけを指し、金銭的報酬だけでなく、評価・裁量・成長機会といった幅広い仕組みが含まれます。
一方で、制度設計を誤ると「不公平感が生まれる」「短期成果に偏る」など逆効果になることもあり、メリットとデメリットを理解した上で導入することが重要です。
この記事では、インセンティブの意味や種類を簡単に整理しつつ、組織運営で押さえておきたい制度導入のポイントを体系的に解説します。
人事・管理職・評価制度担当者が実務で活かせる知識をわかりやすくまとめています。
目次
インセンティブとは?定義を簡単に解説
インセンティブとは、組織が従業員に望ましい行動を促すために与える刺激や動機づけのことを指します。
一般的には金銭的な報酬をイメージしがちですが、評価や裁量、成長機会など、外部からの働きかけ全般を含む広い概念です。
行動変容を目的に設計され、ターゲットに応じて柔軟に形が変わるのが特徴です。
単なる報酬制度ではなく、組織が成果を最大化するための戦略的な仕組みとして捉えられます。
インセンティブ制度とは
インセンティブ制度とは、主にビジネスシーンで活用され、社員の成果や行動に応じて報酬や評価を与え、望ましい行動を継続的に促す仕組みです。
企業が強化したい行動に合わせて、次のような刺激を設計します。
- 成果に応じて支給される報奨金や表彰
- 成果や行動に連動した昇進・昇格
- より大きな裁量や新しい役割を与える機会
また、金銭的インセンティブと非金銭的インセンティブを組み合わせることで、短期的な成果向上と長期的な人材育成の両方を実現しやすくなります。
組織の目的や状況に応じて柔軟に運用することで、社員の意欲を高め、成果につながる行動を自然と引き出せる制度といえるでしょう。
インセンティブと似た用語の違い
インセンティブと近い意味で使われる用語はいくつかありますが、それぞれ役割や意味が異なります。ここでは代表的な概念との違いを整理し、インセンティブをより理解できるように解説します。
モチベーション
モチベーションは、行動を起こすための内的エネルギーを指し、本人の価値観・興味・達成欲求など「内側から湧き上がる意欲」によって生まれます。
一方でインセンティブは、組織が外部から働きかけることで望ましい行動を促す仕組みです。
モチベーションが高くても仕組みが不十分だと行動につながりにくく、逆にインセンティブだけでは内的な意欲を維持できません。
ボーナス・賞与
ボーナスや賞与は、企業業績や人事評価に連動して支給される一時金であり、支給の有無や支給額に変動はあるものの、制度として安定的に存在する報酬です。
一方で、インセンティブは「特定の行動を促すため」に柔軟に設計される仕組みで、性質や目的に違いがあります。
ボーナスは成果をねぎらう制度的な報酬であり、インセンティブは行動をよりよい方向に導く仕組みです。
目的が異なるため、併用することでより強い効果が期待できます。
歩合
歩合(出来高制)は、売上や契約件数など成果に比例して報酬が変わる仕組みで、非常に直接的な成果連動型のインセンティブです。
営業職など成果が明確な領域で多く用いられています。
歩合は強力な成果の推進要因になりますが、競争過多や顧客対応の質低下などのリスクも伴います。
インセンティブ全体の中で、適切なバランスで活用することが重要です。
金銭的インセンティブの種類・具体例
金銭的インセンティブは、従業員の成果や貢献に応じて金銭面で報いる仕組みです。短期的な行動促進だけでなく、長期的な定着やエンゲージメント向上にもつながるため、多くの企業で活用されています。ここでは、それぞれの種類について解説します。
給与・賞与
給与・賞与は、個人の成果や会社全体の業績にもとづいて金銭を支給する、企業の基本的な仕組みです。
適切な評価と連動させることで、従業員の納得感が高まり、モチベーション向上につながります。
給与・賞与に関する具体例は以下の通りです。
- 基本給(スキルや役割に応じて支給)
- 定期昇給(勤続や評価に応じて昇給)
- 業績賞与(会社全体の業績に応じて支給)
- 個人評価賞与(個々の業績に連動して支給)
- 職務手当・資格手当・役職手当
給与・賞与は企業におけるベースの報酬であり、評価基準を明確化することで離職防止にも役立ちます。
待遇
待遇面のインセンティブは、金銭そのものを支給するものではありませんが、金銭価値がある便益を提供することで働きやすさや生活満足度を高める仕組みです。
給与と異なり「福利厚生」「成長支援」「生活支援」など、多面的な効果が期待できます。
企業における待遇の具体例は、以下の通りです。
- ストックオプション
- カフェテリアプラン(選択型福利厚生)
- 社内での資格取得支援
- 社員食堂での食事提供
- 社宅の提供
- 健康診断の充実・フィットネス環境の提供
待遇は即効性よりも長期的な満足度を高められ、「この会社で働き続けたい」という気持ちにつながりやすい点が特徴です。
非金銭的インセンティブの種類・具体例
非金銭的インセンティブは、金銭以外の手段で従業員の意欲や満足度を高める仕組みです。長期的なエンゲージメント向上につながりやすく、職場環境や組織文化の強化にも効果があります。ここでは非金銭的インセンティブについて紹介します。
評価
評価によるインセンティブは、昇進や表彰、フィードバックなどを通じて「認められること」で動機づける仕組みです。
金銭的報酬とは異なり、承認や信頼を与えることで内発的な意欲を高められます。
評価によるインセンティブの具体例は、以下の通りです。
- 昇進・昇格
- 社内表彰(MVP、年間アワードなど)
- プロセス評価・チームへの貢献の評価
- 1on1によるフィードバック
- 評価基準の可視化
評価制度が整っていると、努力がどのように認められるのかが明確になり、エンゲージメント向上や離職防止に効果を発揮します。
関連記事:評価基準とは?適切な作り方や具体例、数値化の方法、ポイントを解説
人
「誰と働くか」といった人によるインセンティブは、働きがいや定着意欲に影響します。
上司や同僚との関係性、人から受けるサポートは強力な非金銭的インセンティブとして機能します。
人によるインセンティブの具体例は、以下の通りです。
- 優秀な上司によるメンタリング・キャリア相談
- 定期的な1on1面談
- 心理的安全性の高いチーム環境
- 同僚との良好な関係性
- サポート型マネジメント
信頼できる人間関係は働く上での安心材料となり、給与以上の影響を与えるケースもあります。
理念
理念は、ミッション・ビジョン・バリューへの共感を通じて働く意味を提供する、非金銭的インセンティブのひとつです。
とくに若手や優秀層は価値観との一致を重視するため、理念の浸透は長期的な定着につながります。
理念によるインセンティブの具体例は以下の通りです。
- ビジョン・ミッションの定期発信
- バリュー体現者の紹介・表彰
- 組織理念を踏まえた行動ガイドラインの共有
- 社会貢献活動やCSRプロジェクト
- 理念研修やワークショップの実施
理念浸透が進むと、社員が自律的に行動しやすくなり、組織文化の強化にも寄与します。
自己実現
自己実現インセンティブは、個人の成長意欲や挑戦心を満たすことで働く意欲を高める仕組みです。とくに優秀層にとっては効果が高い動機づけ要素です。
自己実現インセンティブの代表例について、以下にまとめています。
- 新規プロジェクトへの参加機会
- 権限委譲・役割の拡大
- 研修・資格取得支援
- 職務ローテーション
- キャリアパスの選択を提示
成長機会が見えると「この会社で働き続けたい」という気持ちが生まれ、離職率の低下にもつながります。
インセンティブのメリット
インセンティブ制度は、金銭面の報酬だけでなく、評価・裁量・成長機会など幅広い施策を組み合わせることで、短期と長期の双方で効果を発揮します。ここでは、インセンティブのメリットを紹介します。
モチベーション向上
インセンティブは、成果や行動に対して明確な評価が返ってくるため、日々のモチベーション向上につながります。
インセンティブがあると、従業員は「やれば結果が返ってくる」という実感を得られます。
小さな成功体験が積み重なることでモチベーションがより安定し、日々のパフォーマンス向上が期待できるでしょう。
モチベーションを上げるための具体的なインセンティブは、以下のとおりです。
- 明確で達成しやすい目標を設定し、到達基準をわかりやすく提示する
- 達成時に得られる報酬(賞与・手当・表彰など)を事前に可視化する
- プロセス評価を導入し、結果だけでなく取り組み姿勢も適切に評価する
モチベーションを上げるために、何を達成すればよいかがはっきりすることで、目標達成までの行動が安定しやすくなります。
優秀な人材の定着率が上がる
インセンティブ制度が整っていると、優秀な人材が働き続ける理由を見出しやすくなり、離職率の低下に寄与します。
優秀な人材の定着率を上げるための具体的なインセンティブ設計は、以下の通りです。
- 成果や貢献が正当に評価される透明性の高い評価基準を整備する
- 高パフォーマー向けに昇進・昇格のルートを明確化し、将来像を示す
- 権限委譲や裁量拡大など、主体的に働ける環境を提供する
優秀な人材は、自分の成果が正しく評価されているかどうかに敏感です。
インセンティブ制度が公平な仕組みとして機能すると、働き続ける心理的理由が増え、組織へのエンゲージメントの向上が期待できるでしょう。
組織全体の成果創出につながる
インセンティブは、個人の成果だけでなく、組織やチームの成果向上にも効果があります。
ナレッジ共有や他部署間の協力などを評価に含めると、横のつながりを意識した行動が増えます。
組織全体の成果創出につなげるための具体的なインセンティブ設計は、以下の通りです。
- ナレッジ共有や後輩育成など、組織貢献行動を評価対象に追加する
- 部署を横断した取り組み(プロジェクト参加・情報交換)を評価に反映する
- プロセス評価を導入し、成果だけでなく業務改善・協働姿勢も可視化する
個人が動くだけでは達成できない目標も、チーム全体で取り組む意識が高まることで実現しやすくなります。
結果として、組織全体の生産性や成果の質が底上げされる効果につなげられるでしょう。
インセンティブのデメリット
インセンティブ制度は大きな効果を生む一方で、設計や運用を誤ると逆効果になるケースもあります。制度そのものが負の動機づけになってしまうと、組織全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼしかねません。ここでは、代表的なデメリットを紹介します。
チームワークが損なわれる可能性がある
個人成果を強く評価するインセンティブは、協力より競争を促しやすい側面があります。そのため、制度設計に偏りがあるとチーム全体の空気が悪化する可能性があります。
たとえば、次のような点が問題になりやすいでしょう。
- 過度な競争が生まれやすい
- 情報共有や後輩育成が後回しになる
- 心理的安全性が低下し挑戦しづらくなる
成果を追うあまり自分の数字さえ達成できればよいという姿勢が強まると、助け合いが減り、チームとしての連携が弱くなります。
この状態が続くと、職場全体がピリピリした雰囲気になり、学びや改善の文化が育ちにくくなります。
雰囲気の悪い状況を防ぐためには、個人評価だけでなくチーム貢献や協働行動も評価に組み込むことを意識しましょう。
公平性・透明性が欠けると逆効果になる
インセンティブ制度は納得感が土台になるため、評価基準に公平性・透明性が欠けていると逆効果になります。
具体的には下記の点が、問題になります。
- 評価基準が不明確だと不満が生まれやすい
- なぜ評価されないのかがわからずモチベーションが低下する
- 運用のばらつきが離職リスクにつながる
評価の根拠が説明されないまま結果だけを伝えると、社員はどう努力すればいいか判断できなくなります。
また、上司の主観に左右される制度は不公平感を助長し、人材の離職につながることもあります。
そのため、評価基準の可視化や説明責任を明確化し、誰が見ても一貫した運用になるよう制度を整えましょう。
目先の数字に左右されやすくなる
インセンティブは短期成果には強く作用しますが、一方で目先の数字に左右されやすくなるため、中長期の価値創出を損なうリスクがあります。
短期目標ばかりを追いかける状態が続くと、組織の健全な成長が阻害されます。
代表的な課題は、以下の通りです。
- 短期売上や成果が組織全体の評価になりやすい
- 評価される行動が目的化し本来の価値とずれる
- 新しい挑戦が後回しとなりイノベーションが停滞する
短期数値を優先し続けると、顧客の長期的な信頼やサービス品質が低下し、組織全体の競争力が落ちます。
さらに、社員が失敗できない状態になることでチャレンジ精神が弱まり、新しいアイデアが生まれにくくなる点もデメリットです。
この問題を避けるには、短期指標だけでなく、中長期の価値創出や改善行動を評価軸に加えるなど、バランスの取れた制度設計が必要になるでしょう。
インセンティブを導入する際のポイント
インセンティブ制度を効果的に機能させるためには、単に報酬を設けるだけでなく、制度設計そのものを慎重に行う必要があります。ここではインセンティブ制度導入時に押さえておきたいポイントを解説します。
評価基準・報酬条件を明確にする
インセンティブ制度が効果を発揮するかどうかは、評価基準・報酬条件の明確さに左右されます。
どの行動や成果に対してインセンティブが付くのかが曖昧だと、制度そのものが不信感や不公平感の原因になりかねません。
たとえば、以下の点を意識して設計しましょう。
- 付与対象となる行動・成果を具体的に定義する
- 曖昧な基準を避け誰が見ても同じ判断ができるようにする
- 達成条件や評価プロセスを事前に全員へ共有する
評価基準が透明で一貫しているほど、社員は何を目指せばよいかを明確に理解し、制度に対する納得感も高まります。
結果として、インセンティブが行動変容を促す仕組みとして適切に機能しやすくなるでしょう。
長期視点の指標も取り入れる
インセンティブ制度が短期指標だけに依存すると数字偏重の行動が増え、顧客満足や組織力が犠牲になりやすい側面があります。
そのため、制度設計には長期的な価値につながる指標もバランスよく組み込むことが必要です。
長期視点で取り入れたい指標の例としては次のようなものがあります。
- プロセス評価(改善行動・チーム貢献・品質向上など)
- 顧客維持率・リピート率などの長期価値指標
- チーム成果や部門全体の協働の度合い
短期と長期の両方を評価対象とすることで、社員の行動が特定の数字だけに偏りにくくなり、組織として健全な成果のバランスを保ちやすくなります。
金銭的・非金銭的インセンティブを組み合わせる
金銭的インセンティブは即効性が高く、短期的な行動変化を促すのに適しています。
しかし、全ての社員が金銭的報酬だけで動くわけではなく、成長機会や裁量、承認などの非金銭的インセンティブが強く働くケースもあります。
そのため、金銭的・非金銭的インセンティブの両者を組み合わせた設計が理想的です。
組み合わせの例としては以下が考えられます。
- 報酬で短期行動を促しつつ成長機会で内発的動機づけを強化する
- 裁量や役割拡大を通して責任感を高め長期的な貢献意欲を引き出す
- 表彰制度やフィードバックで承認ニーズを満たす
金銭と非金銭の両面にアプローチすることで、社員は働く意味と成果の報われ方の両方を実感しやすくなり、モチベーションの持続や離職防止にもつながるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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