• 更新日 : 2026年1月14日

インストラクショナルデザインとは?教育や研修がわかりやすくなる基本と進め方を解説

授業や研修を進めるとき、「どのように伝えればわかりやすくなるのか」「学習者がつまずかずに学べる方法はないか」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

そのような場面で役に立つのが、インストラクショナルデザインという考え方です。

インストラクショナルデザインは、学ぶ人の立場から授業や研修の流れを整理し、理解しやすい形に整えるための方法です。

この記事では、インストラクショナルデザインの意味や活用場面、メリット、実践に使える5つの手順を紹介します。

インストラクショナルデザインとは?

インストラクショナルデザインは、学習者が理解しやすいように授業や研修の流れを組み立てるための考え方です。

やみくもに教えるのではなく、「どうすれば効果的に学べるか」を科学的に追究し、教育の設計図を描くイメージです。

まずは、インストラクショナルデザインの考え方がどのような意味を持ち、教育や研修の現場でどのような役割を担っているのかを整理しましょう。

インストラクショナルデザインの意味と役割

インストラクショナルデザインとは、教える内容や手順を、学習者にとってより理解しやすい形に整えるための計画的な考え方です。

教える側の都合ではなく、学習者の立場に立ち、「どうすればスムーズに、そして深く理解できるようになるか」を計画することに重点を置きます。

この考え方を導入することで、授業や研修、教材づくりの質を根本から高められるとされているのです。

学校教育はもちろん、企業研修や医療現場、オンライン講座など、知識や技能を教えるさまざまな場面で活用され、学びの成果を最大化する大切な役割を果たしています。

インストラクショナルデザインが教育や研修で注目される理由

インストラクショナルデザインは近年、教育や研修の現場でとくに注目を集めているのには、いくつかの理由があります。

ひとつは、短時間で効率よく学べる仕組みが必要になったためです。社会の変化が速く、新しい知識や技術をすぐに身につけることが求められる現代において、無駄のない学習設計は欠かせません。

また、インターネットの普及により、オンライン学習やeラーニングの利用が増加しました。対面ではない環境だからこそ、わかりやすい設計や迷わせない手順が強く求められるようになっています。

さらに、インストラクショナルデザインでは、学習成果を具体的なデータで確かめ、その結果をもとに改善につなげやすいという特徴があります。これにより、教える人ごとの差が出にくくなるため、組織全体の学びの質を安定させ、底上げできる点も注目される大きな理由です。

インストラクショナルデザインの基本モデル

インストラクショナルデザインには、学習者の理解を助けるという目的を果たすために、いくつかの基本的な考え方や手順がモデル化されています。

代表的なモデル特徴
ADDIEモデル
  • インストラクショナルデザインの代表的なフレームワーク
  • 「分析(Analysis)」「設計(Design)」「開発(Development)」「実施(Implementation)」「評価(Evaluation)」の5つのステップを順番に踏みながら、改善を繰り返していく
  • 体系的で汎用性が高いため、多くの研修や教育設計で使われている
ARCSモデル
  • 学習意欲を高めることに焦点を当てたモデル
  • 「注意(Attention)」「関連性(Relevance)」「自信(Confidence)」「満足感(Satisfaction)」の4つの要素を授業や教材に取り入れることで、学習者のモチベーションを維持・向上させる
TOTEモデル
  • 学習プロセスの中にテストやフィードバックを組み込む考え方
  • 「テスト(Test)」「操作(Operate)」「テスト(Test)」「終了(Exit)」の繰り返しを通じて、目標と現状のギャップを埋めるように学習を進める
ガニエの9教授事象
  • 効果的な学習を促すために、教える側が取るべき具体的な9つの行動を示しているモデル
  • 「学習者の注意を喚起する」ことから始まり、「学習の保持と転移を高める」流れは、授業設計のチェックリストとしても役立つ
メリルの第一原理
  • どのような学習プログラムにも共通する、「効果的な教育」の基本的な考え方を提唱
  • 具体的な問題解決から学習をはじめ、実践、活性化、統合へと進むことで、知識を実生活で使えるものにすることを重視している

インストラクショナルデザインが使われる場面

インストラクショナルデザインは、学校だけでなく、社会人教育や専門領域など幅広い場面で活用されています。

どのような現場で使われているのかを見ていくと、この考え方が多くの学習活動に役立つ理由がよりわかりやすくなるでしょう。

ここでは、5つの活用例について紹介していきます。

学校教育での活用例

インストラクショナルデザインは、日々の授業の流れをわかりやすく整理するために活用されます。

先生が教えたい内容と、生徒が身につけるべき目標がずれないように、テーマごとの学習目標を、生徒の達成度が見える形で明確にしやすくなるのが大きな利点です。

たとえば、「この授業で生徒は三角関数の計算方法を理解するだけでなく、与えられた問題の8割を制限時間内に正確に解けるようになる」といった具体的な目標を設定します。

また、定期的に生徒から率直な意見を集め、教材づくりに反映することで、時には自分の意見が採用される経験を通して生徒の学びが深まります。

これにより、受け身ではなく、生徒が主体的に参加できる授業設計が可能になるでしょう。

企業研修やOJTでの活用例

企業においては、新人教育や専門知識の研修、マニュアル作成などで役立ちます。

インストラクショナルデザインを用いることで、業務に必要な学習内容と目的が明確になり、ただの作業や義務になってしまうのを防いで、効果的な研修を実現できます。

とくに、OJTにおいては、インストラクショナルデザインの考え方が有効です。

指導担当者によって教え方や評価がバラバラになってしまうというOJTの課題に対し、教える手順や到達目標、評価基準を明確にすることで、誰が教えても一定の質を保てるようになります。

その結果、研修後の振り返りや、学んだ効果の測定が簡単になり、そのデータをもとに研修内容を素早く改善して、組織全体の教育の質を高めるサイクルを生み出せます。

eラーニングやオンライン講座での活用例

eラーニングやオンライン講座のように、学習者が自分のペースで進める環境では、インストラクショナルデザインの役割はとくに重要です。

学習者の集中力が途切れやすいオンラインの特性を考慮し、動画や資料などの内容を「どの順番で、どれくらいの分量で提供するか」を飽きさせないように順序立てて設計できます。

また、オンラインで学ぶ人が次に何をすればいいか、途中で迷ったり、挫折したりするのを防ぐために、ナビゲーションの設計にも役立つでしょう。

さらに、進捗管理や理解度チェックのための小テストやフィードバックを適切なタイミングで組み込むことで、学習者が最後まで高いモチベーションを維持して学び続けられる構成がつくれます。

看護教育や医療研修での活用例

看護教育や医療研修では、知識だけでなく、正確な実技の手順を身につけることが求められます。

インストラクショナルデザインを活用すると、医療行為や処置の手順を、誰がやっても同じ結果になるように標準化できます。これにより、ミスを防ぐための学習設計に役立てられるでしょう。

とくにシミュレーション教育においては、実技と知識の両方を、無理なくかつ効果的に学べるような設計がしやすくなります。

結果として、新人指導における教え方のばらつきを減らし、指導の質を一定に保つことにも貢献します。これは、最終的に安全で質の高い医療提供につながるのです。

日本語教育での活用例

日本語を母国語としない人への教育においても、インストラクショナルデザインは力を発揮します。

学習者の出身地や、日本語を学ぶ目的に応じたパーソナライズされた教材を作りやすくなります。

さらに、「聞く・話す・読む・書く」といった4つの能力を偏りなく、バランスよく習得できるような学習の設計が可能です。

学習目標を明確にすることで、たとえば「この単元を終えれば、駅員に道順を尋ねることができるようになる」といった具体的な到達点を定められます。

これにより、効果的な授業が組み立てられます。また、学習者は自身の成長を実感しやすくなり、着実に日本語能力を向上させられるでしょう。

インストラクショナルデザインのメリット

インストラクショナルデザインを取り入れることで、学びの質が高まり、教える側・学ぶ側の両方に多くのメリットが生まれます。

どのような点が改善されるのかを知ると、導入のイメージがつかみやすくなります。ここでは代表的なメリットを順に紹介しますので、参考にしてください。

学習者が理解しやすい教材をつくれる

インストラクショナルデザインの視点をもつことで、伝えたい内容を単に並べるだけでなく、学習者がどのように情報を処理するかを考えて整理し、構成できます。

その結果、説明の重複や、重要な情報の抜け漏れといった問題を減らすことが可能です。学習者が次に何をすればいいか、なぜこれを学ぶのかが明確になり、迷わずに学びを進められる教材に近づくでしょう。

研修の効果を確かめられる

インストラクショナルデザインの考え方では、研修の最初に学習目標を明確にし、最後に目標が達成されたかどうかを評価する仕組みを組み込みます。

これにより、学習前後の理解度を具体的に比較でき、研修がどれだけの成果を上げたかを客観的に測りやすくなります。

アンケートや振り返りを設計に含めることで、単に理解度だけでなく、現場での活用状況を含めた改善点を見つけられるため、組織全体の研修の品質向上に貢献するでしょう。

誰が担当しても再現性のある授業ができる

教える人ごとに授業の内容や進め方が変わりすぎてしまう、といった問題をインストラクショナルデザインは解消します。

学習の目標や教える手順、使う資料などを明確に定めた研修マニュアルや授業設計図が整うため、特定の教える人に頼りすぎる「属人化」を軽減できるでしょう。

これにより、新しく担当になった人でも一定以上の教育品質を保つことができ、組織として安定した学びを提供できるようになります。

オンライン教育との相性がよい

動画や資料、テストといった多様な教材を用いるオンライン教育において、インストラクショナルデザインはとくに効果的です。

学習を小さなステップに分け、動画を見てからクイズに答えるなど、一連の流れを論理的に整理しやすくなります。

スマホやPCでも理解しやすい構成がつくれるため、ひとりで学ぶ環境に特有の集中力の維持が難しいなどの課題を、適切な設計によって補えます。

学習者のやる気を引き出しやすくなる

インストラクショナルデザインでは、学習者が「なぜこれを学ぶのか」という学ぶ理由や、学習の目的を最初にしっかりと伝えるように設計します。

また、小さな達成を積み重ねていけるように設計することで、自身の成長や成果が目に見えやすくなります。

この成功体験が、学習者のモチベーションを維持し、自発的に学び続ける意欲を引き出しやすくなるでしょう。

【5ステップ】インストラクショナルデザインの手順

インストラクショナルデザインは、いくつかのステップに沿って進めることで、特別な知識がなくても、誰でも教育の質を高めやすくなります。

ここでは、初心者でも実践しやすい5つの流れに分けて、順番にわかりやすく説明します。

1. 学習者の状況を分析する

まず、これから教える相手が「どのような人たちか」を詳しく知ることからはじめましょう。

年齢やこれまでの経験、すでに持っている知識や理解度を把握することで、研修や授業の進め方を適切に決められます。

たとえば、経験豊富な社会人と、知識がゼロの新人では、教えるべき内容や速度がまったく異なります。

何に困っているか、どこでつまずきやすいかを学習者の視点に立って考えることが大切です。必要に応じて、事前アンケートや適性検査などを利用することで、学習者の特徴を前もって把握し、彼らに合わせたスタート地点を設定できます。

2. 学習目標をつくる

次に、この授業や研修が終わった後に、学習者にできるようになってほしいことは何かというゴールを明確にしましょう。

ただ「知識を増やす」といった抽象的な目標ではなく、「何ができるようになるか」を具体的な行動で決めます。

たとえば、新しい機器の操作手順を、マニュアルを見ずに実行できるようになるといった具合です。

このように具体化することで、学習者にも目標が伝わりやすく、実践につながりやすくなります。この段階で、「目標と実際に教える内容がずれていないか」をしっかり整理しておくことで、効果的な学びにつながります。

3. 教材や研修を設計する

学習者の状況と、達成すべき目標が固まったら、設計をはじめます。

目標達成のために、どのような順番で学ぶのがもっとも理解しやすいかを考え、カリキュラムの流れをデザインしましょう。

教える内容を伝える説明の時間と、実際に手を動かす演習、そして学んだことを整理する振り返りの時間のバランスを、学習効果が高まるように調整します。

この設計図をもとに、資料や動画、ワークシートやグループディスカッションなどを具体的に用意していきます。

学習者が途中で挫折しないよう、段階的にステップアップできるような流れを工夫することが大切です。

4. 実施して改善点を見つける

設計が終わったら、実際に授業や研修を実施し、学習者に体験してもらいましょう。

そして、計画通りに進んだかを確認するだけでなく、学習者の反応や表情を注意深く見ていきます。どこで質問が多く出たか、どこで手が止まってしまったかといったことから、わかりにくかった部分を洗い出しましょう。

このステップは、単に研修をやっただけで終わらせるのではなく、改善のためのヒントを見つけるために重要なポイントです。

次回に向けて、時間配分の見直しや、説明の仕方を変えるべきところなどを具体的にまとめ、よりよい教育にするための準備を整えます。

5. 評価して次につなげる

授業や研修が終わった後、最初に設定した学習目標が達成されたかどうかを、客観的な方法で評価します。

学習者の満足度だけでなく、理解度や技能の習得度をテストや実技評価で確認しましょう。さらに重要なのは、もし目標に到達できていなかった場合、なぜ達成できなかったのかという原因を深く分析することです。

そして、この評価で得られた具体的な成功点と課題点を、次の教材づくりや研修計画に活かします。インストラクショナルデザインは、この評価して改善につなげるサイクルを継続的に回すことで、教育の質を高めていく考え方なのです。

インストラクショナルデザインを学ぶ方法

インストラクショナルデザインの知識は、教育の仕事に携わる人だけでなく、あらゆる分野で教える役割をもつ人にとって役立つものです。

これを学ぶにはいくつかの方法があり、目的に合わせて選べます。

手軽に学びたい際には、入門書や教材の活用が有効です。初心者向けに専門用語を避け、事例を交えながら基本や考え方を解説した書籍が数多く出版されています。まずは書籍で全体像を把握するのがおすすめです。

また、大学や公開講座、オンライン講座を利用すると、より深く体系的に学べるでしょう。教育工学やインストラクショナルデザインを専門とする機関で、理論から実践的なフレームワークまでをしっかり学ぶことが可能です。

企業や専門機関が開催する研修や資格講座では、実際の業務ですぐに使える設計の仕方や、フィードバックの技術など、実践に近い内容を学べます。

これらのように、書籍や動画、eラーニングなど、自分の学習スタイルや目的に合わせて選択することで、無理なくスキルを身につけられるでしょう。

インストラクショナルデザインを支える便利ツール

インストラクショナルデザインの考え方を現場で実践する際には、さまざまなデジタルツールが役立ちます。

これらのツールを導入することで、とくに手間がかかりやすい分析と評価のステップが格段にスムーズになるでしょう。

具体的には、学習者の理解度やニーズを把握するための調査ツールが役立ちます。

たとえば、マネーフォワード クラウドサーベイなどを活用することで、研修前後の知識レベルや学習者の満足度を簡単に収集し、研修改善のための情報収集がしやすくなります。

また、マネーフォワード クラウド適性検査などの適性検査サービスを使うと、学習者の思考パターンや得意分野を前もって客観的に把握できるため、分析の質を高められるでしょう。

このようにツールを活用することで、教育担当者はデータ収集の手間を減らし、設計や改善といった創造的な活動に集中できるようになります。


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