• 更新日 : 2026年1月14日

HRBPの仕事内容とは?人的資本経営を支える戦略人事の実務を解説

HRBPという言葉を耳にする機会が増えたものの、「具体的にどんな仕事内容なのか」「人事や労務と何が違うのか」がぼんやりしたままのケースは少なくありません。

人的資本経営や戦略人事の重要性が高まるなかで、HRBPに期待されるのは、経営と現場のあいだに入り「人と組織の動かし方」を実行レベルで支える役割です。

一方で、役割や権限の設計を誤ると、単なる調整役になり、十分な成果が出ないまま形骸化してしまうリスクもあります。

本記事では、HRBPの基本的な役割から、5つの具体的な仕事内容や企業側が押さえるべき運用ポイントまで解説します。

HRBPを新たに設置したい人事責任者の方はもちろん、HRBPの役割を再定義したい方もぜひご覧ください。

HRBPとは?

HRBP(HRビジネスパートナー)は、経営と現場のあいだに立ち、人と組織の動かし方を実務レベルで支える役割を持ちます。

従来の人事が制度づくりや手続き管理に比重を置くのに対し、HRBPは事業の数字や課題をふまえて、現場が前進するための打ち手を一緒に設計するのが特徴です。

また、CHROが意思決定、人事企画が制度設計、労務がオペレーション管理を担うとすれば、HRBPは「制度を現場で機能させる実行の中心」として機能します。

HRBPの取り組みによって、現場の声や課題が経営に届き、経営の意図も現場に正しく共有されると、両者の間に好循環が生まれます。

現場の状況をもとに必要な施策を具体化するHRBPは、組織の変化を前に進める原動力として組織に欠かせません。

HRBPの役割がもたらす効果

HRBPが実務で役割を発揮すると、組織の意思決定や人材戦略の精度が大きく向上します。

ここではHRBPの役割がもたらす効果のうち、代表的な3つをご紹介します。

人材戦略の整合性が高まる

HRBPが現場の状況を正しく把握していると、事業の変化に応じて人事施策を柔軟に見直せるようになります。

たとえば採用や育成、配置の判断においても、「どんな人材を増やし、どう育てるのか」という企業としての方向性が一本化され、施策同士のつながりが見えやすくなります。

さらに、人事企画が設計する制度についても、理想論ではなく実態に沿った運用へと近づけられるため、制度と現場の食い違いが生じにくくなる点もポイントです。

結果として会社全体の方針や部門ごとの課題、個人の行動が同じ方向を向きやすくなり、人材への投資が成果として表れやすくなります。

経営が直接手を入れにくい、現場での制度運用や日々の人の動かし方まで整えられる点は、HRBPが発揮する代表的な価値のひとつです。

意思決定の質が上がる

HRBPが現場の状況を正しく把握していると、経営の意思決定は個人の感覚や思い込みに左右されにくくなります。

たとえば、評価の食い違いや特定の社員に集中する負荷など、数値だけでは読み取りにくい状況も、HRBPの介入によって正しく把握できるようになります。

さらに意思決定の前段階では、HRBPが論点や選択肢を整理しておけば、会議で「何を決めるべきか」に集中した議論ができるのも大きなメリットです。

結果として判断に迷う時間が減り、意思決定のスピードと選択肢の精度が同時に高まります。

HRBPの役割によって、現場と経営のあいだに生まれがちな認識のズレや情報格差が縮まり、組織全体の意思決定がより戦略的に機能する状態に近づきます。

人的資本の状態が改善する

HRBPが現場の変化を継続的に把握していると、人的資本KPIを悪化させる要因を早期に捉えることが可能です。

たとえば、エンゲージメントの低下や離職の兆しなども事業側と一緒に検討できるため、個々の人材が力を発揮しやすい状態へと調整しやすくなります。

さらに、部門ごとの人材の偏りや将来的なリスクを可視化できれば、育成や配置の見直しを計画的に進められ、人事施策が場当たり的になるのを防げます。

結果として、エンゲージメントや定着率、生産性といった人的資本の状態を中長期的に安定させやすくなる点は、HRBPを配置する大きなメリットのひとつです。

HRBPの仕事内容5つ

HRBPの仕事内容は、日々のヒアリングや課題の把握、育成計画や離職トラブル対応など多岐にわたります。

ここでは、HRBPの仕事内容のうち、代表的な5つの業務領域を解説します。

① 組織課題の可視化

HRBPの仕事内容としてまず挙げられるのは、事業のボトルネックを正確に把握する取り組みです。

HRBPは日々の対話や観察を通じて、数字だけでは見えないチームの空気感やマネジメントの癖、負荷の偏りなどを把握し、人事企画や経営が判断に使える情報を整理します。

そのうえで、課題の大きさや緊急度、影響範囲を仕分けして施策の優先順位づけをおこない、打ち手の方向性がぶれない状態をつくります。

また、現場の声だけに頼ると属人的な判断になりやすいため、離職率やエンゲージメントスコア、評価分布などのデータと組み合わせて立体的に分析する意識が重要です。

経営の意図と現場の実態の食い違いを明確にし、本当の課題を言語化するHRBPの取り組みが、組織改善サイクルを動かす起点になります。

② 組織戦略の設計

HRBPは、現場の状況をふまえて採用や育成、配置、評価といったさまざまな領域の課題を検討し、組織戦略を設計します。

たとえば、「すぐに採用を進めるべきなのか」「配置転換や育成を優先すべきなのか」を見極める局面では、課題に応じて人材施策の優先順位を判断する視点が欠かせません。

また、プロジェクトに必要なスキルや人数、役割の棚卸しなどをおこない、不足している人材や将来的に中核となる人材まで明確にします。

組織戦略を「考える段階」から「使われる段階」へ進められる点が、HRBPが設計に関わる大きな価値のひとつです。

③ 評価制度の運用支援

HRBPは、評価制度が形だけで終わらないように運用プロセスを整え、マネジャーや現場の理解を深める役割を担います。

たとえば、評価基準の解釈に食い違いが生じていないか、特定の評価者に偏りが出ていないかといった運用面の状態を確認し、必要に応じて研修や1on1の支援をおこないます。

また、評価面談そのものが単なる結果通知で終わらないよう、事前準備やフィードバックの進め方を支援するのも重要な役割のひとつです。

結果的に、評価を通じて一人ひとりの強みや成長課題が言語化され、メンバーの行動や育成につながる対話が生まれやすくなります。

評価制度の改善が積み重なると、制度設計そのものに潜む課題や現場に合っていない部分も浮き彫りになり、より実態に即した評価制度を運用しやすくなります。

④ 組織開発のファシリテーション

チーム運営やマネジメントの見直しといった組織開発のファシリテーションも、HRBPの重要な役割です。

具体的には、1on1やチームビルディングの改善、ミーティング運営の改善といった形で、現場の関わり方そのものに働きかけます。

また、組織の停滞感や心理的安全性の低下といった言語化されていない違和感を察知し、改善の糸口をつくる取り組みも重要です。

チーム運営を見直す過程で、マネジメントの方向性が個人の経験や感覚に偏っている場合には、具体的なアプローチを整理し、再現性のある形で現場に定着させます。

HRBPはチーム内のしこりや衝突、コミュニケーションの行き違いといった見えにくい課題に働きかけ、組織の土台づくりに貢献します。

⑤ 組織変革の推進

大きな方針転換や組織変化を現場の行動レベルまで落とし込む役割もHRBPの仕事です。

DX推進や事業再編、新方針の浸透など、部門や個人によって受け止め方に差が生まれやすい施策の場合、HRBPは現場の反応を把握したうえで、情報を整理します。

必要に応じてHRBPが対話の場を設計し、変化を受け止められる状態を整えます。

あわせて、新しい方針が日々の業務判断や行動にどう結びつくのかを具体化し、現場が迷わず動ける基準を示すのも重要な仕事です。

役割変更やチーム再編といった影響範囲が広い局面では、混乱が起きやすいポイントを事前に整理し、負荷や不満が一部に集中しないよう調整する視点も欠かせません。

HRBPが役割を発揮するためのポイント5つ

HRBPが十分に力を発揮するためには、権限設計や期待値のすり合わせ、チーム体制など、企業側が整えるべき環境がいくつか存在します。

ここでは、HRBPが機能不全に陥らず、事業に価値を提供し続けるために欠かせない5つのポイントを紹介します。

① 意思決定のスピードを担保する

HRBPが機能するには、現場の判断を待つのではなく、必要なタイミングで迅速に意思決定できる体制が欠かせません。

経営側や人事が細かい承認を求めすぎると、HRBPは調整業務に押し込まれ、戦略人事として本来果たすべき役割を発揮しにくくなります。

そこで、人員配置や育成方針、施策提案といった領域においては、どこまでをHRBPが判断できるのかを明確にし、一定の裁量を担保しておきましょう。

さらに、HRBPが経営会議や議論の場にアクセスできる状態を整えておくと、現場の情報が即座に戦略へ反映され、意思決定の遅れも防げます。

意思決定の土台が整うと、HRBPが事業と人材の変化に即応できる戦略人事として機能します。

② 経営層と現場で期待値をそろえる

HRBPが力を発揮するためには、経営層と現場のあいだで「HRBPにどこまで関与してもらうのか」という役割の期待値をそろえておく必要があります。

HRBPは事業側のパートナーであり、同時に現場の代弁者でもあるため、役割への期待値が曖昧なまま運用が始まると役割認識の食い違いが生まれがちです。

そのため、「どの領域までを依頼できるのか」「どこまで責任を持つのか」を、経営と現場の双方で事前に把握するプロセスが欠かせません。

あわせて、優先順位や目的を確認する定例ミーティングや施策レビューを継続すると、判断軸と実行内容の一貫性を保ちやすくなります。

③ HRBPを孤立させない

HRBPが力を発揮し続けるためには、組織の中で孤立させない体制づくりが欠かせません。

そもそもHRBPは経営と現場のあいだに立つ立場上、判断や責任を一人で抱え込みやすい役割です。

とくに、HRBPが一人で複数部門を担当している場合、現場からの要望と経営の期待を同時に受け止める構図になり、孤立感が強まりやすい傾向があります。

そこで、HRBP同士が判断や悩みを共有できる場を意図的に設け、事例共有会や壁打ちの機会を定期的に運用しましょう。

HRBPを個人任せにせず、組織として支える体制が整えば、安定した判断や継続的な運用につながります。

④ 役割分担を明確にする

HRBPが力を発揮するためには、各領域の役割分担を明確にしておく意識が不可欠です。

役割の境界が曖昧なまま運用されている企業では、HRBPに雑務や労務対応が集中し、戦略人事として本来注力すべき業務に時間を使えなくなるケースが少なくありません。

事前に「誰が担うのか」「HRBPがどこまで関与するのか」を定めておきましょう。

あわせて、人事企画や労務と連携した運用フローを設計し、HRBPが判断すべき領域と他部署に委ねる領域を整理しておくと、業務の流れが滞りにくくなります。

⑤ 人的資本インフラを整える

HRBPが力を発揮するには、そもそも「人と組織の状態を把握できる土台」が会社側に必要です。

たとえば、1on1の議事録や社員アンケートの記録、評価の傾向、離職理由など、人材にまつわるデータについては管理基盤を整えておきましょう。

人的資本インフラが整うほど、HRBPは数字と現場感を両方使って効果的に動けるようになり、人的資本経営がようやく実行可能なレベルに近づきます。


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