- 更新日 : 2025年12月18日
社員のモチベーションを上げる7つの方法とは?下がる原因や成功事例から学ぶ向上施策
中小企業の経営者、営業、人事、経理など、全ての担当者にとって、社員のモチベーションは企業の生産性や定着率に直結する重要なテーマです。しかし、具体的な施策を講じても、なかなか社員の意欲が上がらないと悩む企業は少なくありません。
社員のモチベーションを向上させるには、まず低下している根本的な原因を正しく理解し、その原因に合った対策を講じることが欠かせません。この記事では、社員のモチベーションが下がる具体的な原因から、企業がとるべき具体的な向上施策、さらには「社員のモチベーションは上げるな」という逆説的な考え方の真意まで、わかりやすく解説します。
目次
社員のモチベーションを向上する方法
社員のモチベーションを本質的に、かつ持続的に高めるためには、一時的な報酬などの外発的動機に頼るのではなく、社員の内側から湧き出る意欲、すなわち内発的動機づけを育む環境を整備することが重要です。
内発的動機づけとは、「楽しいからやる」「成長したいからやる」「人の役に立ちたいからやる」といった、自身の内側から湧き出る意欲のことです。
ここでは、施策を考える際に参考になる3つのキャリア理論について、わかりやすく解説します。
まず「低次の欲求」から満たしてあげる
アメリカの心理学者マズロー氏が説いた「自己実現理論」によれば、人の欲求は「5つ」の階層に分かれています。これらは必ず「低次の欲求」から順に満たされていくとされています。
① 生理的欲求 ②安全欲求 ③社会的欲求 ④承認欲求 ⑤自己実現欲求
社員の職場に対する欲求に当てはめれば、「安心して生活できるほどの給与を得たい(生理的欲求)」「心身ともに健康的に働きたい(安全欲求)」といった欲求が満たされてはじめて、仕事のやりがい(承認欲求や自己実現欲求)を感じられるようになるのです。そのため、モチベーションの低下を防ぐためには、まず土台となる労働条件への不満を解消してあげることが先決だと言えるでしょう。
「不満足を防ぐ」「満足度を高める」の両面で考える
アメリカの心理学者ハーズバーグ氏の説いたキャリア理論に、「二要因理論」があります。この理論の主張は、職場への「不満」「不快感」を回避するための要素(衛生要因)と、「満足」を感じる要素(動機づけ要因)はそれぞれ異なるというものです。
- 衛生要因(不満足を防ぐ要素)
「給与」「対人関係」「作業条件」「監督(マネジメント)」などがあり、これらが満たされない場合、社員は職場に不満を抱いてしまいます。しかし、満たされてもすぐに「満足」につながるわけではありません。
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「承認」「昇進」「責任」「達成」などが代表的です。動機づけ要因が満たされることで、社員は仕事への満足感を覚えます。
モチベーション対策を考える際には、「衛生要因」と「動機づけ要因」を両軸で満たすことが重要です。例えば、給与や人間関係の問題を解消することで「不満足」を和らげ、評価制度や仕事の割り振りを改善することで「満足感」を高めます。まずはモチベーションが「下がる原因」「上がらない原因」がそれぞれどこにあるのかを社員にヒアリングし、それぞれに施策を考えていくことが大切です。
「内発的」「外発的」の両軸で動機づけを考える
一般的にモチベーションには、「外発的動機づけ」と「内発的動機づけ」の2種類があるといわれています。
- 外発的動機づけ
「評価を得るために働きたい」「高い報酬を得るために頑張りたい」といった、外的な要因によって意欲を高めることです。 - 内発的動機づけ
「仕事そのものが楽しい」「成長したい」といった、社員本人の内側から湧いてくるモチベーションを指します。
社員のモチベーションを高めたい場合には、承認・称賛や正当な報酬といった外発的動機づけだけでは十分とは言えません。社員が自身の成長やキャリアの実現、仕事そのものを楽しめるような環境をつくり、内発的動機づけによる意欲向上を図ることも重要なのです。
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社員のモチベーションを上げる施策7つ
社員のモチベーションを上げるためには、抽象的な精神論ではなく、具体的で実行可能な施策が必要です。ここでは、「評価」「コミュニケーション」「環境」の3つの切り口から、すぐに実行できる会社 モチベーション向上施策を解説します。
評価制度の見直しとキャリアパスの明確化
公正な評価と、将来が見えるキャリアパスの提示は、社員のモチベーションを維持するための土台です。
① 評価基準の透明化とフィードバックの徹底
評価基準を全社員に公開し、「何をすれば評価されるのか」をはっきりさせましょう。また、評価結果だけでなく、プロセスや努力についても具体的なフィードバックを定期的に行うことが大切です。
② 多様なキャリアパスの提示
管理職への昇進だけでなく、専門性を極める「エキスパート職」、異動による職種変更など、多様なキャリアの選択肢を提示します。これにより、全ての社員が目標を持ちやすくなります。
③ 公正な報酬制度の設計
給与や賞与が評価結果と連動していることを明確にし、社員が納得できる仕組みを構築しましょう。
コミュニケーションを改善する
上司と部下の建設的なコミュニケーションは、社員のモチベーションに直接影響します。
④ 1on1ミーティングの定期実施
週に一度など、定期的に上司と部下が一対一で話す場を設けましょう。業務の進捗だけでなく、キャリアの悩みや体調、精神面など、非公式な話題も話し合える場にすることが重要です。上司は傾聴の姿勢を意識し、部下のモチベーションが低下している原因を探りましょう。
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⑤ 「承認」の文化を根付かせる
社員のモチベーションを上げる言葉は、「ありがとう」「助かったよ」「君の努力を見ている」など、日々のささいな承認の言葉です。成果だけでなく、プロセスや前向きな行動に対して、職場で積極的に感謝やねぎらいの言葉を伝え合う文化を作りましょう。
働きやすい環境と柔軟な働き方
働きやすい環境は、社員が仕事に集中し、パフォーマンスを発揮するための基盤となります。
⑥ 柔軟な勤務制度の導入
フレックスタイム制度やリモートワーク制度を導入し、社員が自分のライフスタイルや生産性が高まる時間に合わせて働けるようにします。これにより、仕事とプライベートの両立が容易になり、社員のモチベーション維持につながります。
⑦ 快適で健康的なオフィス環境
明るく清潔な執務スペース、リフレッシュできる休憩スペースの整備など、物理的な環境改善も重要です。また、健康経営の一環として、福利厚生で運動や食事のサポートをすることも、心身の健康を保ち、結果的に社員のモチベーションを保てます。
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社員のモチベーションが低い理由は?
社員のモチベーションが下がる原因は、大きく「個人的な要因(内発的動機)」と「組織的な要因(外的環境)」の二つに分けられます。企業が対策できるのは主に組織的な要因ですが、個人的な要因にも間接的に影響を与えます。
キャリアの不透明さ・閉塞感
自分の仕事が将来どのようにつながるのか、次のステップが不明確な場合、成長意欲が薄れます。昇進・昇格の基準が曖昧であることも、努力の方向性を見失わせる原因になります。
不公正な評価・報酬制度
「努力しても報われない」「成果を出している人が正当に評価されていない」と感じる評価制度は、社員のモチベーションを最も大きく削ぎます。報酬が労働内容に見合っていないと感じる場合も同様です。
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コミュニケーション不足と人間関係の悪化
上司や同僚との連携がスムーズにいかない、ハラスメントがある、孤独を感じるなど、人間関係のストレスは仕事への意欲を低下させます。とくに、自分の意見や成果が上司に認識されていないと感じる「透明性の低さ」は、会社 モチベーション なくなったと感じる大きな要因の一つです。
業務の負荷と裁量のバランスの悪さ
過度な長時間労働や達成不可能な目標設定は、燃え尽き症候群を引き起こします。逆に、簡単すぎる業務や誰でもできる単純作業ばかりで、自律性がなく裁量権がない状態も、仕事のやりがいを奪います。
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社員のモチベーションが低いと組織に何が起きる?
社員のモチベーションの低下は、企業経営にとって看過できない具体的なリスクを引き起こします。
生産性の低下と品質の劣化
意欲が低いと、業務のスピードが落ち、ミスが増えます。創意工夫が生まれず、既存のやり方を惰性で続けるため、業務の効率化が進まなくなり、商品やサービスの品質にも影響が出ます。
離職率の増加
社員のモチベーションが低下し、優秀な人材から順に離職していきます。その結果、残された社員の負担が増え、さらにモチベーションが下がるという悪循環につながるでしょう。
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企業文化の悪化と新規採用の困難化
活気のない職場は、企業イメージを損ない、採用活動にも影響を及ぼします。顧客対応の質も下がるため、顧客満足度にも影響を及ぼし、企業の評判が低下するおそれがあります。
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社員のモチベーション向上によって得られる効果
社員のモチベーション向上は、企業の業績にさまざまな好影響をもたらします。
生産性の向上
意欲の高い従業員は、自ら考え、より良い方法を模索するため、業務効率が上がります。新しいアイデアが生まれやすくなり、企業のイノベーションをけん引するでしょう。
定着率の改善
仕事にやりがいを感じ、評価に納得している社員は、会社へのエンゲージメントが高まるため、離職率が下がります。これにより、新たな社員を採用・育成するコストと時間を大幅に削減できるでしょう。
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顧客満足度の向上
社員が活き活きと働く職場では、顧客対応の質が高まり、自然と顧客満足度も向上します。これが企業への信頼につながり、さらなる利益を生み出す可能性があります。
「社員のモチベーションは上げるな」論とは?
社員のモチベーションは上げるなという言葉は、一見すると向上施策とは逆行するように聞こえますが、これは「外発的な力で一時的にモチベーションを上げても長続きしない」という事実を指しています。この論が示す真意は、「社員が自ら意欲を見出す仕組みを作ることが重要」ということです。
社員のモチベーションを「上げる」行為は、上司や会社がコントロールしようとする「他律的」なアプローチになりがちです。たとえば、「今月はボーナスを出すから頑張れ」というやり方では、ボーナスがないと意欲がわかなくなります。
企業がとるべきは、社員が自然と「社員のモチベーション」を発揮できる「環境」を整えることです。
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社員のモチベーション向上の成功事例
具体的な企業がどのような社員 モチベーション向上事例に取り組んでいるかを知ることは、自社の施策を考える上で参考になります。ここでは、独自の取り組みで社員のモチベーションが高い会社として知られる具体的な企業の事例を紹介します。
株式会社伊藤園:独自の教育システムで社員の成長意欲を促進
大手飲料メーカーである株式会社伊藤園では、社員の自己啓発と成長を支援する場として、独自の企業内大学「伊藤園大学」を開設しています。
「伊藤園大学」では、営業、財務、マーケティング、経営戦略など、多様なカリキュラムを用意し、社員は自身のキャリアプランに合わせて学びたい分野を選択して受講します。さらに、より実践的な経営感覚を養うための大学院も設置されています。
社員は、業務に直結する専門知識を深めるだけでなく、将来的なキャリアアップや新しい分野への挑戦に対する意欲を高めることができます。会社が成長機会を提供することで、「自分は期待されている」という貢献感や成長欲求が満たされ、主体的な学習と業務への取り組みが促進されるでしょう。
株式会社ワークマン:高頻度な意識調査と面談で社員の本音を把握
作業服やカジュアルウェアを扱う株式会社ワークマンでは、社員のモチベーションを含む心の状態を正確に把握し、施策に活かす取り組みを行っています。
以前は年に一度だった社員満足度調査を、組織改革支援システムを導入することで3ヶ月に一度の高頻度で実施するように変更しました。これにより、社員のモチベーションの変化や課題をタイムリーに把握できるようになりました。
高頻度な調査の結果をふまえて面談を行うことで、表面的な会話ではなく、社員が抱える真の課題や本音を引き出せるようになりました。社員にとっては、会社が自分の意見や心の状態を気にかけてくれているという「承認」と「傾聴」の姿勢が伝わり、会社への信頼感とモチベーションの維持につながっています。
株式会社BP:サンクスカードの運用で相互承認文化を醸成
ウェディング関連サービスを提供する株式会社BPでは、社員間の感謝や承認を促すために「サンクスカード」の運用を徹底しました。
日常の業務で感謝したい、ねぎらいたいと思った同僚や部下に、感謝のメッセージを伝えるサンクスカードを運用。これにより、社員同士がお互いの仕事内容や努力を認識し、直接言いにくい感謝を伝えられる仕組みを作りました。
サンクスカードによって社員間の承認が活発化し、組織全体のコミュニケーションとモチベーションが向上しました。アルバイトの定着率が30%改善するなど、帰属意識や働く意欲の向上に効果があり、結果として組織力の強化につながっています。
これらの事例からわかるように、成功企業に共通しているのは、「社員を会社のモチベーション向上施策の対象者として見るのではなく、主体的なパートナーとして尊重する」という姿勢です。社員の成長を支援し、本音を傾聴し、日々の貢献を認め合う仕組みを整えることが、社員の自律的なモチベーションを引き出しています。
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社員のモチベーションを正しく高めることが企業の成長をけん引する
この記事では、社員のモチベーションが低下する原因、放置するリスク、そして具体的な向上施策について解説しました。社員のモチベーションは、給与や一時的な賞罰といった外発的な動機に頼るのではなく、社員の内側から湧き出る意欲、すなわち内発的な動機づけを促す仕組みを構築することで、持続的に高めることができます。
そのためには、評価制度の透明化、建設的なコミュニケーションを促す1on1の実施、そして柔軟な働き方を取り入れた環境整備が欠かせません。社員のモチベーションが高い会社を目指し、自社の組織文化や制度を見直し、社員が自律的に成長し、貢献できる環境を整えることが、結果として企業の生産性向上と長期的な成長をけん引することにつながります。
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