- 更新日 : 2025年12月5日
フィードフォワードとは?フィードバックとの違いや活用シーン・例文も紹介
フィードフォワードとは、未来に焦点を当てたコミュニケーション手法です。未来に向けて改善策を提供したり変化を促したりすることに重点が置かれているのが特徴です。
ただ、「フィードバックと何が違うの?」「フィードフォワードを行うメリットは?」と気になっている人もいるでしょう。
そこで本記事では、フィードフォワードの概要やメリット・効果などを詳しく解説します。また、フィードフォワードの主な活用シーンや例文、注意点などもまとめています。
目次
フィードフォワードとは?
フィードフォワードとは、目標達成やこれから取るべき行動に焦点を当てたコミュニケーション手法のことです。
一般社団法人フィードフォワード協会は、フィードフォワードを以下のように定義しています。
会話により、相手が前向きになるのを促し、自らも前に進むための方法論です。
フィードフォワードは、過去や現状にとらわれてしまいがちな人に対して、その人が自分の未来に意識を向けて行動することができるように促す技術のことです。
近年は市場の変化が激しく、過去の成功体験が通用しないことも増えてきました。これを受け、未来志向で解決策を模索するフィードフォワードが注目されています。
また、Z世代をはじめとする若い世代は、自ら考えて学んでいくことが当たり前になってきています。そのため、従来のような一方的な評価を押しつける手法よりも、改善策を自ら模索するフィードフォワードのほうが成長しやすい可能性もあるでしょう。
フィードフォワードとフィードバックの違い
フィードフォワードについて具体的なイメージを持てるように、フィードバックとの主な違いを3つ紹介します。
時間軸の違い
フィードバックとフィードフォワードの分かりやすい違いは、時間軸です。
フィードバックの時間軸は過去であり、過去に行われた行動や出た結果に対して意見や評価を伝えます。これまでのプロセスや成果物を振り返り、一つずつ確認していくことに重点が置かれているのが特徴です。
一方、フィードフォワードの時間軸は未来であるため、これから達成すべき目標や取るべき行動に対して提案したりアイデアを出したりします。設定した目標に辿り着けるように、今何ができるのか考えることに時間をかけます。
着眼点の違い
フィードバックとフィードフォワードが異なる点として、着眼点も挙げられます。
フィードバックの着眼点は失敗や欠点です。「なぜ失敗したのか」「あの行動のどこが良くなかったのか」といった、原因の分析や行動そのものへの評価などが中心に行われます。問題点を明らかにして反省や改善を促すことを目的としているのが特徴です。
対して、フィードフォワードの着眼点は解決や予防です。「ゴールを達成するためにどのような方法が適しているか」「どうすれば次はより良くなるか」といった、未来に向けたアイデアの提案が中心に行われます。建設的なコミュニケーションを通じて目標を実現することが主な目的です。
コミュニケーションの方向性の違い
フィードバックとフィードフォワードは、コミュニケーションの方向性にも差があります。
フィードバックは、一方通行のコミュニケーションになりがちです。過去の正解や成功事例を知っている上司が知らない部下へ教えるという流れになりやすく、部下は受動的な立場に置かれることがほとんどでしょう。
反対にフィードフォワードは、双方向によるコミュニケーションに期待できます。まだ誰も答えを知らないことについて、対等にアイデアや意見を出し合うためです。「問いかけ→アイデアの提案→アイデアに対する意見の出し合い」というキャッチボールが生まれやすいのが特徴です。
フィードフォワードのメリットや効果
フィードフォワードのメリットや効果について詳しく解説します。
主体性を育てられる
フィードフォワードを日常的に繰り返すことによって、個々の主体性を育てられます。
フィードフォワードは単純に指示をするわけではなく、「どうすれば目標を達成できるか」という問いかけから始まり意見交換をするのが一般的です。これにより、相手はまず自分の頭で考える癖がつきます。
また、問いをもとに自ら思考するというプロセスを継続することで、上司からの指示を待つことも減るでしょう。目標や課題に対する解決策を率先して考え、実行までやり遂げる自走力も鍛えられます。
加えて、本人が自分で考えたアイデアや解決策をもとに業務に取り組むことになるため、当事者意識を持つことにも期待できます。やらされている仕事から自分が発端の仕事へと意識が変わることにより、責任感も芽生えるでしょう。
創造力を鍛えられる
フィードフォワードの一環としてアイデアを出し合うことで、創造力も鍛えることが可能です。
ひたすら過去を振り返るフィードバックに対し、フィードフォワードは未来に向けて制約もほとんどない状態で何ができるかを模索します。このプロセスが、新しいアイデアを生み出すトレーニングとして役立つでしょう。
また、チームでの対話を通じて、自分一人では思いつかなかったような発想に触れられる可能性もあります。多様なアイデアが組み合わさることで、新しい視点を持てるようにもなるでしょう。
そのため、フィードフォワードを行う場合は、突拍子のないことを言っても否定されないという安心感が重要です。大胆なアイデアや斬新な意見を引き出しやすくなります。
チームの結束力を強化できる
フィードフォワードは、チームの結束力を強化することにも期待できます。
フィードバックのように問題点や失敗を振り返ったり指摘したりするだけだと、評価する側・される側という上下関係が意識されがちです。
一方、フィードフォワードのように目標実現のためにお互いにアイデアを出し合えば、コミュニケーションが活発になり一体感も強くなります。また、双方の意見を受け入れつつ建設的な対話を繰り返すことで、お互いの理解が深まり信頼感も増すでしょう。
ハラスメントを防止できる
フィードフォワードはハラスメントの防止にも効果的です。
フィードバックは過去のことに焦点を当てて改善を要求するため、ミスを執拗に責めたり個人の人格を否定したりなどパワハラが起きる場合があります。
対してフィードフォワードは、未来に焦点を当てて目標達成のために対話や提案をするのが基本です。そのため、個人を非難したり人格を否定したりといった攻撃的なコミュニケーションに陥る可能性が低くなります。
目標に向けて前向きに話し合うことでお互いを高め合うカルチャーが形成され、パワハラが起きにくい雰囲気も作れるでしょう。
フィードフォワードのやり方
フィードフォワードを実際に始める場合の方法について紹介します。
- フィードフォワードの導入について同意をもらう
- フィードフォワードの概要を説明する
- フィードフォワードを実践する
初めてフィードフォワードを行う際は、メンバーに対して事前に許可を得ておきましょう。「フィードフォワードという手法を試してみたい」といった形で声をかけて、当日までにフィードフォワードの資料も共有しておくと親切です。
フィードフォワードを初めて行うミーティングでは、導入する目的やフィードバックとの違いなどを分かりやすく説明しましょう。フィードバックほどメジャーな手法ではないため、具体例も交えて丁寧に紹介することが推奨されます。
一通り説明が終わったら、現状を踏まえたうえで目標を設定しましょう。目標を念頭に置き、相互にアイデアや意見を出し合います。具体的な案が出て方向性が固まったら、実現に向けて次のアクションにまで落とし込むことが重要です。
フィードフォワードの主な活用シーンと例文
フィードフォワードの主な活用シーンと実際に使用できる例文を紹介します。
新人教育
新人教育の場でフィードフォワードを活用すれば、新人が指示待ちになってしまうのを防ぎ、主体性のある人材として育てられます。
具体的には、研修時のグループワーク、OJTでのコミュニケーション、目標設定に関する面談、メンターとのミーティングなどでフィードフォワードを活用すると良いでしょう。
また、以下のような例文も参考にしてみてください。
- 「Aさんのアイデアに加えて△△という視点も入れたら、さらに面白くなるかもしれませんね」
- 「来週は〇〇が目標ですね。そのために、明日から何かできそうなことはありますか?」
- 「もしもう一度やるとしたら、今回の経験を踏まえてどのような工夫ができると思いますか?」
上記のようなやり取りを続ければ、新人の創造力を鍛えられるでしょう。一方的にダメ出しをするのではなく、どうすればより良くなるかを一緒に考えることで、前向きな姿勢を身につけてもらえる可能性もあります。
社内ミーティング
プロジェクトの進捗報告会、ブレインストーミング会議、部下との1on1ミーティングなどの社内ミーティングの場でもフィードフォワードが有効です。
社内ミーティングで使用できる例文を以下にまとめました。
- 「プロジェクトを期限内に終わらせるために、今日からできることは何だと思いますか?」
- 「予算や人員など何の制約もなかったとしたら、どのような解決策が思い浮かびますか?」
- 「今期の目標達成に向けて挑戦してみたいことはありますか?」
上記のように問いかけることによって、問題点や進捗遅れに対して責任の所在を追及するような犯人探しの場となるのを防ぐことが可能です。
また、今後できることを自由に考えられるように促せば、参加者全員が当事者意識を持って活発な会議にすることもできるでしょう。
管理職の育成
管理職を育成する場面でフィードフォワードを利用すれば、マネージャーらが部下の業務に過剰に介入する「マイクロマネジメント」に陥ってしまうのを防げます。
たとえば、役員や人事との1on1面談、管理職向けの研修、次期管理職候補に関する選抜会議などでフィードフォワードを使用してみましょう。
また、その際に利用できる例文も以下にまとめました。
- 「1ヶ月間プロジェクトから完全に離れてもチームが回るようにするためには、今から何を準備すべきだと良いと思いますか?」
- 「◯◯さんをエースとして活躍させるために、将来的にどのような権限を委譲できそうですか?」
- 「来月のプロジェクトのうち、一つだけ◯◯さんに任せてみるのはどうですか?」
上記のようなやり取りは、管理職本人がプレイヤーとして動くのではなく、部下を育成する立場であると視座を高めてもらうきっかけになるでしょう。人材を育成する側だと意識するようになれば、管理職候補を新たに排出することにも期待できます。
フィードフォワードを実践するうえでの注意点
最後に、フィードフォワードを実際に導入するときに気をつけるべきことを紹介します。
出てきた意見を否定したり批判したりしない
フィードフォワードによって出てきた意見やアイデアを、否定したり批判したりするのは避けましょう。
たとえば、相手が出してきたアイデアを「うちにはそこまで予算はない」「現実的に無理だよ」とネガティブに返してばかりしていると、次第に消極的になる人もいます。また、「いつも拒否される」「何を言っても無駄だ」と感じて、意見やアイデアを出すことを止めてしまう可能性もあります。
そのため、どのような意見であれ、一度は受け止める姿勢が大切です。予算や規模が見合わないような壮大なアイデアが出てきたとしても、現実的なプランとなるように話し合いを重ねて、少しずつ噛み砕いていきましょう。
抽象的な話で終わらせない
フィードフォワードを行ったときは、抽象的な話で終わらせずに具体的なアクションにつなげることを意識しましょう。フィードフォワードによってその場は良い雰囲気になったとしても、メンバーの行動が変わらなければ未来の結果も変わらないためです。
例を挙げるとすれば、「来月のプレゼンは、顧客の心に響くように頑張ってほしい」だとやや抽象的です。これを言われた部下も具体的に何をすればいいのかが分からず、行動変容にはつながりにくいでしょう。
よってこの場合は、「顧客の心に響くようなプレゼンをするために、何が最も重要だと思いますか?」「過去の成功事例の動画を1本見てみましょう」などと返すのが適切です。
相手に丸投げするのではなく、次に活かすために考えを導いたり改善につながるタスクを与えたりと、何かしらヒントを与えるのが望ましいです。
場面に応じてフィードバックと使い分ける
場面に応じて、フィードフォワードとフィードバックを使い分けることも重要です。
フィードフォワードはあらゆる場面で使用できるわけではありません。特に重大な問題行動を指摘する場合や再発を必ず防がなければならないミスを指摘する場合など、緊急性の高い場面では不向きです。
「同じことを繰り返さないために何ができる?」などと未来志向の意見交換をしても、事の重大さが伝わらず反省も促せないでしょう。かえって状況が悪化する可能性もあります。
そのため、フィードバックとフィードフォワードが適している場面をきちんと把握しておくことが推奨されます。
| フィードバックが適している主な場面 | フィードフォワードが適している場面 |
|---|---|
|
|
フィードバックは、過去の問題点をしっかり認識させる必要があるときに有効です。本人の行動を振り返って丁寧に指導を行うことにより、再発の防止につながります。
対してフィードフォワードは、未来に向けて建設的な話し合いをするときに活用すると良いでしょう。目標達成やプロジェクト成功などを見据えれば、その日から行動の変容や意識の改善をしてくれる可能性もあります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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