- 更新日 : 2025年12月5日
1on1で必要な質問項目とは?上司が陥る3つの悩みと改善法を解説
1on1ミーティングを導入する企業は増加している一方で、現場では「何を準備すればよいか分からない」「上司ごとに進め方が異なる」「部下がテーマを用意できない」といった課題が根強く残っています。
1on1は準備の質で効果が大きく変わるため、企業としての共通ルールづくりや、上司・部下それぞれが押さえるべき準備ポイントの可視化が欠かせません。本記事では1on1の基本理解から、企業が整えるべき運用ルールまでを体系的に解説します。
目次
1on1の目的とは?
1on1は悩みの整理と次の一歩の明確化が目的です。評価面談とは切り離し、日常のつまずきを解消する意識を持ちましょう。最近の迷いやストレスを一緒にほどきながら、今どこで困っているのかを確かめます。
言語化することで上司側も状況を正確に把握でき、必要な調整や支援をその場で判断しやすくなります。つまずいた場面を具体的に振り返ると、どこで動きが止まったのかが見えてくるでしょう。次に試す方法もその場で決まりやすく、仕事の進め方が少し楽になります。
興味が向いている領域や不安のポイントが分かると、任せる業務の量や種類を微調整でき、小さな挑戦がしやすい状態が整うため、日々の行動も前向きになる場合も多いようです。
1on1と人事評価面談の違い
1on1は未来の行動を整える対話で、評価面談とは目的も扱う内容も異なります。評価面談は過去の成果を基準に評価を下すため会話が一方向になる傾向があり、1on1も同じ雰囲気で進めてしまうと、部下も慎重になって意見を出しにくい場合もあります。
1on1は今後やりたい仕事や課題を一緒に整理し、雑談も交えながら部下の考えを引き出す時間です。両者を意図的に分けることで、評価の緊張を避けつつ率直な相談と業務の改善につながる対話ができるでしょう。
なぜ1on1が形骸化するのか質問に悩む上司の共通点
1on1が進まないと感じる上司には、いくつかの共通した課題があります。どのような共通点があるのかを振り返り、準備や進め方を工夫していきましょう。
毎回似たような質問をしてしまう
同じ質問が続くと、1on1が浅くなり部下の考えを引き出しにくくなります。状況確認に寄りすぎると、悩みの背景や思考の癖に触れるきっかけがなく、会話が深まりません。
たとえば「今週はどうでしたか?」だけでは、仕事・成長・モチベーションなど別の視点に移れず、内容が固定化します。質問の軸を増やすだけでも、進捗報告の時間から気づきの生まれる対話に変えやすくなります。
テーマやゴールをすり合わせずに進めてしまう
テーマが曖昧なまま始めると、話題が散らばり、深いところまで踏み込む流れをつくりにくくなります。その結果、話した割に前に進んだ手応えがなく、1on1の価値が弱まります。
目的を共有しないまま雑談の延長で進めると、進捗確認だけで終わってしまい、次の行動につながる示唆も出ません。最初に「今日はどこまで扱うか」をそろえておくことで、対話の芯が通り、内容が整理されやすくなります。
踏み込むべき領域を避けすぎてしまう
背景や気持ちに触れずに進めると、雑談に近いまま終わり、部下の本音に届きません。パフォーマンスの話に限定してしまうと、動機づけや成長につながる重要な部分を見落とします。
本来扱うべき、悩みの根っこやキャリアの方向性に触れないままでいると、支援としての1on1が機能しにくくなります。適度に踏み込む領域を広げることで、部下の動きやすさに直結する対話に変わります。
目的別に使える5つの質問テーマと実践テンプレート
質問のテーマを決めておくと、1on1の進行が安定します。目的に合わせて質問を切り替えることで、部下の考えが整理され、1on1の質を高められるでしょう。
① 信頼と安心を育てる関係性の質問
安心して話せる空気があると、1on1で話せる内容の深さは大きく変わります。信頼関係を育むためにも「最近うれしかった瞬間はありましたか。」などポジティブな話題から1on1を始めましょう。
話しやすい雰囲気をつくると共に、部下の価値観も把握しやすくなります。可能であれば「どんなところに嬉しいと感じていそうですか。」を具体的な内容をたずねることで、考え方の傾向をつかむこともできます。
軽い振り返りとして「一週間でホッとした場面はありましたか。」と挟むのも良いでしょう。本題に入る前のやわらかい質問が、部下の緊張をほどくことがあるためです。1on1がリラックスできる雰囲気から始まると、より深い話がしやすくなります。
② 今を可視化する業務・学習の質問
状況を整理できると、次に動く方向がつかみやすくなります。「最近対応がむずかしいと感じた業務はありましたか。」と聞くと、課題の糸口を把握できる場合があります。難しいと感じた業務に対して、どう対応したかを確認すると、行動の傾向も見えてくるでしょう。
「細かく分けていくと、どの場面が一番大変でしたか」と問題を絞っていくと、具体的な改善点が見つけやすくなります。
課題について話題に上げると責められていると感じられる場合もあるため、「逆に、うまく進んだ場面はどんなところですか。」と成功体験を振り返るのも効果的です。状況を整理し断片をつないでいくと、次の一歩が明確な形になります。
③ 未来を描くキャリア・成長の質問
キャリアの方向性を言語化できると、目標が立てられるため日々の行動に意味を見いだすことができます。「今後やってみたい業務のイメージはありますか。」などの質問から掘り下げていくと、進みたい道が見えてくる場合があります。
「1年後どうなっていたら嬉しいと感じますか。」と未来を描けるような質問をすると、必要な経験の整理につながるでしょう。
あまり言葉が出てこないようなら、上司から「一緒に考えてみてもいいですか。」と寄り添う姿勢を示すと、部下の安心感につながる場合があります。
部下自身が将来こうなりたいというビジョンを持つことで、行動の軸が強固になり成長するための道筋が自然に整うというメリットが生まれます。
④ メンタルと環境を整えるセルフケア質問
早めに部下の負荷に気づけると、大きな不調を防ぎやすくなります。関係性を整えた上で「最近、よく眠れていますか。」のような内容を会話の糸口にすると良いでしょう。
「仕事以外のことでも良いので気がかりなことはありますか」と尋ねると、意外な話を聞けるかもしれません。その際には「最近ちょっと表情が暗いように感じて心配です。」など上司の気持ちを交えつつ話を切り出す方法もあります。
相手のペースに合わせて聞くことで、相談しやすい前提ができます。小さな変化に気づけるような仕組み作りが重要です 。
⑤ チームを進化させる連携・改善の質問
チーム全体を整えるには、まず詰まっている箇所を把握することが大事です。雑談を交えつつ、「チームで動く上で、困っていることはありますか。」と聞くと、課題が見つかる場合があります。
内容を確認した上で、まずは本人がどうしたいと考えているかを確認し尊重しましょう。チームメンバー全員に状況を確認し、多角的に情報を捉えつつ必要に応じて、経過を追っていくことが大切です。
心理的安全性を生む1on1の場づくりスキル
安心して話せる場が整うと、部下の表情や言葉に変化が現れます。会話の始め方や間の取り方で、1on1の雰囲気は大きく変わります。
雑談を心理的安全性のウォームアップに変える
日常の話題から始めると、最初の緊張がふっと抜けやすくなります。ちょっとした共通点が見つかるだけで、会話が転がりやすくなるものです。声の調子や表情を見ながらペースを合わせると、1on1をスムーズに進めることが可能です。
数分軽く話したあとに本題へ移ると、相談するハードルを下げられることがあるため、短い雑談でも、安心して話しやすい土台がつくれるでしょう。
評価ではなく興味で聴くスタンスを身につける
評価の目線を1度脇に置いて、共感しつつ話を聞く姿勢を持ちましょう。上司に話を聞く姿勢があれば、相手も安心して話しやすくなります。背景をたどる質問をすると、考え方のクセや判断の流れも見えてくるでしょう。
話を聴く中で助言したくなる場合が出てくる場合がありますが、まずは認識を合わせましょう。助言の前に「現状についてどのように考えていますか。」と確認することで、認識のずれを防ぎ、適切な助言につながります。
話題の切り替えで深さと軽さを両立させる
部下の状況によっては深刻な内容が続く場合もあります。話が煮詰まってきた場合は、1度軽い話題をはさむだけで呼吸が整います。
雑談から本題へ戻る場面でも、短いワンクッションを入れるだけで話をする準備になります。面談の最後に、当日の気づきを一つ共有すると、印象に残るため次の面談につなげやすいでしょう。深さと軽さを行き来できると、1on1に価値を感じてもらえるでしょう。
質問力で変える1on1定着ロードマップ
1on1を継続して効果的に運用するためには、準備・進行・振り返りの流れを整えることが重要です。段階ごとに仕組みをつくると、現場での再現性が高まります。
STEP1【準備】1on1の目的を明文化し、評価面談と切り離す
面談の前に、どこまで話したいかを1つだけ決めておくと、冒頭の会話が迷いません。評価に関わる話題を避ける姿勢を示すだけで、部下は身構えずに話せます。最初の数分でテーマを共有すると、お互いの目線が自然とそろい、会話の入り口がなめらかになるでしょう。
丁寧な準備があると、1on1全体のトーンが落ち着き、話の深さも変わってきます。テーマや話す順番を事前にそろえるだけで、面談中の脱線も格段に減ります。準備の手間は少しですが、より具体的な内容を話し合える場となるでしょう。
STEP2【設計】質問テーマ配列とアジェンダ雛形を整える
部下のタイプごとに聞きやすい質問を何パターンか持っておくと、場面に合わせて話を広げやすくなります。共有メモを書き換えながら進めると、聞き漏れが減り、後から読み返したときの理解も早くなります。
毎回の流れを軽く固定しておくと、準備にかかる手間がぐっと下がります。話しやすい段取りがあるだけで、1on1の安定感が生まれます。質問集や雛形は1度作れば繰り返し使えるので、上司側の負担も徐々に軽くなります。
面談の型が決まると、部下も次の展開を想像しやすく、落ち着いて話せるようになります。
STEP3【実施】探索質問→合意→次アクションで締める
まず状況を整理し、方向性をそろえると、会話がスムーズに進みます。締めのタイミングで次回までに1つだけやってみることを決めると、日々の行動に変化が出やすくなります。
途中で「今は状況整理の段階ですね」などと口にすると、部下が話の位置づけをつかみやすくなります。段階を意識して進めるだけで、迷いのない1on1になります。話す内容が散らばりがちな場合でも、順番を意識するだけで自然と収束点が見えてきます。
行動が決まると、次の1on1で振り返る軸ができ、成長の流れが太くなります。
STEP4【記録】要点ログ化と共有ルールを仕組み化する
面談後は、次回につながりそうな点を簡潔に記録に残しましょう。事実ベースで書くと、個人差が出にくく、読み返したときに状況を正確に思い出せます。書き方の形式を統一しておくと、チーム全体の共有が一気に楽になります。
記録を継続することで、1on1が単発で終わらず、改善の軸が徐々に形成されていきます。蓄積されたログは、部下の成長曲線や悩みの傾向を読み解くヒントになるでしょう。同じフォーマットで記録が並ぶと、誰が見ても理解しやすく、引き継ぎの質も上がります。
STEP5【分析】会話傾向を可視化する
蓄積した記録をざっと整理するだけでも、話すテーマの偏りや上司側の口癖が浮き上がります。部下と上司の話す時間の割合を数値で見ると、どこから調整すべきかが分かる場合もあります。
月に1度だけ振り返る習慣をつくると、聞き方の幅が広がるためグループワークにて取り上げても良いでしょう。
分析の習慣が身につくと、1on1の質を引き上げることが可能です。客観的なデータが手元にあると、主観だけでは見逃しがちな改善点に気づくことができるためです。振り返りを重ねるほど、上司自身の面談スタイルも洗練されていくでしょう。
STEP6【拡張】良問ナレッジ共有とマネージャー育成へ展開する
うまくいった質問や進め方を小さくまとめて共有すると、チーム内で再現が可能です。成功したやり方を持ち寄る場があると、各マネージャーの工夫が広がりやすいでしょう。部署をまたいで知見を交換すれば、相談しやすい空気が少しずつ根づきます。
ナレッジの積み上げが、次のマネージャーを育てる土壌になっていきます。問いの引き出しを共有していくと、新任マネージャーでも安定した1on1が始められます。知見が連鎖する環境が整うと、組織全体の支援力も自然と底上げされるでしょう。
明日から1on1を変えるための3アクション
明日から1on1を変えるためには、質問の質と場づくりと振り返りの3つを同時に見直すことが効果的です。
Yes/Noで終わる質問を控えめにすると、部下が考えを広げやすくなり、会話の深まり方が大きく変わります。最初の5分だけ雑談を挟んだり、相手の発言に1度だけでも共感を返すと、場の緊張が和らぎ、本題へ自然に移行しやすくなります。
どんな質問が役立ったかを簡単に記録しておくと、自分の聞き方のクセや改善点が見えてきます。3つのアクションの実施を意識すると、1on1全体の質が自然に底上げされていくでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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