- 作成日 : 2025年10月6日
子会社と孫会社の違いとは?メリットや注意点・設立のポイントを徹底解説
突然、経営会議で「子会社や孫会社を設立しよう」と言われても、どのような仕組みで設立し、どのように管理すべきか迷う経営者や経理担当者の方は少なくありません。
- 子会社と孫会社の違いがわからない
- 設立するとどんなメリット・デメリットがあるのか
- ガバナンスや会計処理はどうなるのか
このような不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、子会社・孫会社の定義や関連会社との違い、設立する目的やメリット・デメリット、さらに設立時に押さえておくべきポイントまでをわかりやすく解説します。
グループ経営を進める上で重要なテーマを網羅しているため、初心者の方でも安心して理解を深めることができます。
今後の事業戦略や経営判断につながる内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
子会社・孫会社とは
企業グループの経営体制を理解する上で欠かせないのが、「子会社」と「孫会社」です。ここでは、それぞれの定義や親会社との関係について解説します。
子会社の定義
子会社とは、親会社が株式の50%以上を保有し、議決権を通じて経営を支配している会社のことです。株式保有率が50%未満であっても、役員派遣や資金提供といった影響力により、実質的に親会社の支配下にあると判断される場合は子会社とみなされます。
親会社が株式を100%所有している場合は「完全子会社」です。法的には、会社法第2条第3号において、議決権の過半数保有や実質的な支配関係を根拠に子会社と定義されています。
孫会社の定義
孫会社とは、子会社が株式の50%以上を保有している会社のことです。親会社から見ると「子会社の子会社」にあたり、一般的に孫会社と呼ばれています。
法務や会計上の取り扱いでは、孫会社も親会社の子会社と同様に位置づけられ、連結決算やガバナンスの対象に含まれます。また、孫会社は新規事業展開やリスク分散のために設立されるケースも多いです。
親会社・子会社・孫会社の関係
企業グループの支配関係は次のように整理できます。
| 親会社 | 子会社を直接支配する |
|---|---|
| 子会社 | 孫会社を直接支配する |
| 親会社 | 孫会社を間接的に支配し、会計やガバナンス上は親会社の責任範囲に含まれる |
なお、同じ親会社を持つ子会社同士は「兄弟会社」と呼ばれ、経営資源や取引関係で連携する場合があります。
子会社と孫会社の違い
企業グループを理解する上で、子会社と孫会社の区別は重要です。両者は主に次のような違いがあり、関連会社や兄弟会社との関係性も整理して把握する必要があります。
- 支配関係と議決権の割合
- 会計処理(連結子会社と非連結子会社)
- 関連会社・兄弟会社との違い
ここでは、子会社と孫会社の違いや、ほかの会社との関係を解説します。
支配関係と議決権の割合
子会社と孫会社の最大の違いは、誰が議決権を持ち、どのように経営を支配しているかです。
| 区分 | 議決権保有割合 | 支配関係の特徴 |
|---|---|---|
| 子会社 | 50%以上 | 親会社が直接支配 |
| 孫会社 | 50%以上 | 子会社を介した間接支配 |
| 関連会社 | 20%以上50%未満 | 重要な影響を受ける関係 |
また、形式的に50%未満でも、役員派遣や資金面の影響により「実質的に支配」と判断される場合は子会社として扱われます。
会計処理(連結子会社と非連結子会社)
会計上、子会社や孫会社は「連結子会社」として扱われ、親会社の財務諸表に含められるのが原則です。
| 区分 | 会計処理の方法 |
|---|---|
| 子会社・孫会社 | 原則「連結子会社」として合算 |
| 非連結子会社 | 影響が小さい・一時的な支配の場合は除外 |
連結方法は、主に次の2つです。
| 連結方法 | 詳細 |
|---|---|
| サブ連結 | 子会社を通じて孫会社を取り込む方法 |
| フラット連結 | すべての子会社を親会社へ直接合算 |
関連会社・兄弟会社との違い
子会社・孫会社に加え、企業グループを語る上で「関連会社」「兄弟会社」も理解しておく必要があります。
会計処理の違いも重要です。子会社・孫会社は「連結法」で財務諸表を合算しますが、関連会社は「持分法」を用いて出資比率に応じた損益を反映します。
| 区分 | 支配関係の特徴 | 会計処理の方法 |
|---|---|---|
| 子会社 | 親会社が直接支配 | 連結法 |
| 孫会社 | 子会社を介した間接支配 | 連結法 |
| 関連会社 | 重要な影響を受ける関係 | 持分法 |
| 兄弟会社 | 同じ親会社を持つ関係 | 個別処理 |
子会社・孫会社を設立する目的
企業が子会社や孫会社を設立する背景には、次のような目的があります。ここでは、それぞれの観点から具体的な目的を解説します。
事業拡大や新規事業参入
子会社を設立することで、既存の事業領域を広げやすくなり、市場シェアの拡大につながります。
新規事業に参入する際も、子会社を通じて立ち上げることで、コストを抑えながら素早い事業展開が可能です。さらに、孫会社はジョイントベンチャーや海外進出といったリスクの高い分野を切り出して進めやすく、柔軟な戦略が取れます。
M&Aにおいても、買収先を子会社や孫会社として組み込むことで、シナジー効果を最大化し、事業再編をスムーズに進めることができます。
リスク分散とガバナンス強化
子会社や孫会社を設立することは、事業リスクや不祥事の影響を分散する手段の1つです。特定の事業を独立させておけば、失敗した場合の損失を限定でき、親会社への影響を抑えられます。
また、子会社化によって責任の所在が明確になり、ガバナンス体制の強化にもつながります。孫会社を含むグループ経営では「ガバナンス・ギャップ」が生じる可能性がありますが、内部監査や規程整備により管理の徹底が可能です。
さらに、グループ法人税制を活用することで、節税効果を得られる場合もあります。
従業員保護や経営基盤の安定
子会社の設立は、従業員の雇用維持に有効な手段でもあります。特例子会社制度を利用すれば、障がい者雇用を目的とした子会社を設立し、雇用率に加算できる点は大きなメリットです。
また、子会社や孫会社に事業を切り出すことで経営責任を明確にでき、親会社の負担を軽減するとともに、子会社経営者の育成にもつながります。
さらに、不採算部門を子会社化することで、親会社本体の健全性を維持しながら効率的な経営を実現可能です。
子会社化・孫会社化のメリット
子会社や孫会社を設立することには、税務面・経営面・人材育成の観点から、主に4つのメリットがあります。ここでは、具体的なメリットを整理して解説します。
節税効果や資金調達が柔軟になる
子会社を設立することで、さまざまな節税メリットを享受できます。さらに、資金調達の選択肢も広がる点が魅力です。
主な節税メリットは次のとおりです。
また、資金調達面でのメリットは主に次の2つです。
- 子会社単位で銀行融資を受けやすい
- 事業リスクを分散させた資金調達が可能
- 新規事業への投資判断を柔軟に行える
意思決定のスピードアップにつながる
大企業のような大規模組織では、意思決定に時間がかかりがちです。子会社・孫会社化によって、意思決定がスムーズになります。意思決定につながるメリットは次のとおりです。
- 少人数での機動的な組織運営が可能
- 孫会社を設立すれば、現場での判断権限が明確化
- 市場の変化に素早く対応できる
- 子会社の社長に経営を任せることで、責任感と効率的な意思決定を両立
結果として、グループ全体の対応力や競争力の向上につながります。
事業売却やM&Aを行いやすい
子会社・孫会社化は、事業売却やM&Aの際にも大きなメリットがあります。
- 事業単位で法人を切り出せるため、売却(カーブアウト)が容易
- 株式譲渡の形で売却でき、人事異動や複雑な手続きを軽減
- 孫会社をM&Aの受け皿にすることで、親会社への影響を最小化
これにより、企業グループ全体の戦略的な事業再編や成長戦略が進めやすくなります。
人材育成や経営責任の明確化につながる
子会社や孫会社は、人材育成の場としても機能します。
- 損益責任(P&L)を子会社単位で持たせることで、成果責任を明確化
- 貸借対照表(BS)の管理も任せることで、資金管理能力を育成
- 経営を任された人材が、将来のリーダーとして育つ
- 子会社・孫会社ごとに業績評価が可能となり、社員の当事者意識も向上
結果として、グループ全体での人材育成の強化と経営基盤の安定化につながります。
子会社・孫会社のデメリット・注意点
子会社や孫会社を設立することは、事業拡大やリスク分散といったメリットがある一方で、次のように注意すべきデメリットも存在します。ここでは、子会社・孫会社設立のデメリットを具体的に解説します。
管理コスト・ランニングコストの増加
子会社や孫会社の数が増えると、経理・総務・法務といった管理業務が重複し、コストが増大します。また、会社数に比例して、次のようなランニングコストが膨らみます。
- 事務所の家賃・光熱費
- 法人カードの年会費
- システム費用 など
加えて、各社ごとに法人税申告や会計監査が必要となるため、業務負担も増加する点に注意が必要です。
税務調査・不祥事リスク
子会社を利用した脱税を疑われる可能性があるため、税務調査が複雑化する点には注意が必要です。
また、子会社や孫会社で不祥事が発生すると、親会社も連帯責任を問われる場合があります。不祥事は法的責任だけでなく、グループ全体の評判に悪影響を与えるリスクも高いです。
ガバナンスの複雑化(特に海外孫会社)
孫会社は親会社からの監督が届きにくく、情報共有が遅れたり「ガバナンスの死角」が生じやすい傾向にあります。特に海外の孫会社では、文化や法制度、言語の違いによってコンプライアンス違反や労務問題が起こりやすくなります。
さらに、架空取引や在庫横流し、キックバックといった不正リスクが高まるため、内部監査体制の整備が欠かせません。
ブランドイメージへの影響
子会社や孫会社で不祥事が発生すると、「〇〇グループ」として報道されることが多く、親会社のブランドも毀損されます。また、子会社化によってブランド名を統一した場合、従来のブランド力が弱まり、顧客離れにつながるリスクがあります。
特にインターネット時代では、不祥事が一度拡散するとグループ全体のイメージ低下につながる可能性が高いため、十分な配慮が必要です。
子会社・孫会社を設立する際の5つのポイント
子会社や孫会社を設立する際には、次のポイントを多角的に確認することが重要です。ここでは、設立時に押さえておくべき5つのポイントを解説します。
定款と事業目的の整合性を確認する
子会社・孫会社を設立する際は、会社法に基づき「定款」に事業目的を明確に記載する必要があります。
事業目的は親会社との関連性や将来的な展開を踏まえて設計することが重要です。定款に記載のない事業を行うと違法行為とみなされ、登記が受理されないリスクもあります。
将来的な多角化に備えて、事業目的は広めに設定しておくと、柔軟に対応できるでしょう。
設立手続きの流れ(登記・出資・資本金)を確認する
子会社・孫会社を設立するには、定款の作成・公証人認証・登記申請といった手続きが必要です。資本金の払い込みや株式引受人の決定も同様です。
親会社が過半数の出資比率を持つ会社が「子会社」と定義され、さらにその子会社が過半数を持つ会社は「孫会社」と定義されます。出資比率によっては「関連会社」と区分されるため、事前に確認しておきましょう。
登記が完了することで、法人としての権利義務を有することになります。
税務・会計上の取り扱いを理解する
子会社・孫会社は独立した法人として、それぞれ課税や会計処理を行います。
親会社は子会社株式を資産として保有し、グループ全体の業績を連結決算で報告する必要があります。100%子会社の場合には「グループ法人税制」が適用することができ、損益通算によって税務効率を高めることも可能です。
孫会社も個別に課税対象となりますが、連結決算を通じて最終的に親会社の業績に影響を与えます。
ガバナンス体制と責任範囲を明確化する
子会社・孫会社は独立した法人格を持ちながら、親会社が実質的に経営を支配します。そのため、取締役の選任や監督体制を含むガバナンスの整備が欠かせません。
親会社の責任は出資額に限定され、直接的な債務責任を超えることはありませんが、グループ全体のリスク管理やコンプライアンス遵守は求められます。過度な支配や利益相反が生じると、会社法上の責任問題に発展する可能性があるため注意が必要です。
海外で子会社・孫会社を設立する際に注意する
海外で設立する場合は、現地の会社法や商習慣に従うことが不可欠です。
国ごとに出資比率の制限や設立要件が異なるため、事前の調査が必要となります。税務面では二重課税防止条約を含む国際課税ルールへの対応が求められます。
また、為替リスクや送金規制、現地通貨建て取引への対応も不可欠です。反腐敗法や労働法など現地のコンプライアンスを守りつつ、親会社によるガバナンス体制を確立しましょう。
子会社・孫会社を正しく理解して経営戦略に活かそう
子会社や孫会社の仕組みを正しく理解することは、企業が持続的に成長する上で欠かせません。
前述したメリットを組み合わせることで、経営基盤を安定させることができます。一方で、注意すべき点も少なくありません。特にガバナンスや会計処理、海外展開時のコンプライアンス対応は、企業グループ全体に影響を及ぼす重要な要素です。
定款の整備や設立手続き、税務・会計上の取り扱いを正しく理解し、ガバナンス体制を整備することで、子会社・孫会社を経営戦略に効果的に活用できるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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