• 作成日 : 2025年12月24日

ジェネリック医薬品で薬局は儲かる?収益の仕組みや取り扱いポイントなど解説

薬局運営において、ジェネリック医薬品の取り扱いは収益性と経営の安定を左右する極めて重要なテーマです。「ジェネリックは儲かる」と言われる背景には、薬価差益や調剤報酬加算といった、国策に基づく明確なビジネスモデルが存在します。

しかし、導入には在庫管理の複雑化や供給不安といったリスクも伴います。本記事では、収益が生まれる仕組みの解説に加え、機会損失を防ぐためのメーカー選定や、患者さんの信頼を得るための運営ノウハウを徹底解説。社会貢献と利益確保を両立させ、長期的に安定した薬局経営を実現するための必須知識をお届けします。

ジェネリック医薬品で薬局は儲かるのか?

結論から言えば、現在の日本の制度において、ジェネリック医薬品を積極的に扱うことは、薬局の「運営を安定させる」ために、非常に重要な要素となっています。

ただし、それは決して「不当に儲けている」ということではありません。 国が定めたルールに基づき、医療費の抑制という社会的な要請に応える薬局が、正当に運営を継続できるように設計されたビジネスモデルだからです。

ジェネリック医薬品で薬局が儲かるといわれる収益の仕組み

ジェネリック医薬品による収益は、主に「薬価差益」と「国の制度による加算」という2つの柱で成り立っています。これらは、薬局が社会的な役割を果たしながら運営を継続するための、正当な仕組みです。

仕組み1. 薬価差益(やっかさえき)

薬局運営を支える重要な柱の一つが、ジェネリック医薬品を扱うことで確保しやすくなる「薬価差益(公定価格と仕入価格の差額)」です。 ジェネリック医薬品は多くのメーカーが製造しており、仕入れの工夫次第で先発医薬品よりもこの「差益」を生み出しやすく、それが薬局の健全な運営基盤となっています。

  • 薬価(公定価格):国が定めた薬の価格です。患者さんへの請求や保険請求は、すべてこの価格を基準に行われます。
  • 仕入価(納入価):薬局が医薬品卸業者から薬を仕入れる際の価格です。
薬価差益 = 薬価 - 仕入価

この差額が、薬局の運営費や人件費を賄うための原資(利益)の一部となります。※消費税等の詳細は割愛した簡易的な式です

仕組み2. 国からの評価(調剤報酬加算)

もう一つの柱は、ジェネリック医薬品の普及に貢献した薬局を、国が診療報酬で評価する「後発医薬品調剤体制加算」という制度です。これが、「ジェネリックを推進すると薬局の収益につながる」と言われる、最も直接的な理由です。

国は、国民医療費の抑制という課題を解決するため、ジェネリック医薬品の普及を強く推進しています。そして、その方針に協力し、実績を上げている薬局に対して、後発医薬品調剤体制加算という明確なインセンティブ(報酬)を用意しています。(※名称や要件は診療報酬改定により変動します)

具体的には、その薬局で調剤する薬のうち、ジェネリック医薬品が占める割合(置換率)が一定の基準を超えた場合、「地域医療への貢献」として評価され、処方箋1枚ごとに追加の報酬が算定できるというものです。

つまり、薬局がジェネリックをお勧めするのは、単なる利益追求ではなく、国の医療政策に協力し、その対価として適正な評価(報酬)を受け取るという、公的な制度に基づいた結果なのです。

ジェネリック医薬品を導入しない場合の機会損失と運営リスク

ジェネリック医薬品による収益は、国の制度として確立されているため、制度を活用しないと運営において不利な状況に置かれるというリスクと表裏一体であることを意味します。

これから薬局を開業・運営する上で、ジェネリック医薬品に取り組まないことが、どのような「運営上のリスク(機会損失)」につながるのか、解説します。

競合薬局との収益の差

現代の薬局運営において、先ほど解説した「後発医薬品調剤体制加算」は、もはや「取れたらラッキーなボーナス」ではありません。多くの薬局がこの加算の取得を前提に運営計画を立てており、実質的に「薬局運営の標準」となりつつあります。

もし、近隣の競合薬局がこの加算を取得していて、自局だけが取得していない場合どうなるでしょうか。 同じ枚数の処方箋を受け付けていても、処方箋1枚あたりの売上に「数十円の差」が生まれ続けることになります。

人件費や家賃といった固定費は同じようにかかりますから、この積み重ねは、長い目で見ると薬局の運営体力(資金力)の差に直結してしまいます。

設備や人材への投資機会の喪失

特に薬局を開業した直後など、運営基盤を固める時期において、手元の資金(運転資金)は非常に重要です。 加算が取れないということは、本来得られるはずだった運営資金を、毎月取りこぼしている(=機会損失)状態と言えます。

この資金は、本来であれば、より良い設備の導入や、スタッフの働きやすい環境づくりのために使えたはずのものです。 したがって、ジェネリック医薬品への取り組み(加算の取得)は、単なる目標ではなく、薬局の運営を長く、安定して続けていくための「必須の条件」であると考えるのが自然です。

薬局が知っておくべきジェネリック医薬品の社会的背景

国が「加算」制度を設けてまでジェネリック医薬品を推進するのは、「国民皆保険制度の維持」と「患者さんの負担軽減」という、医療における2つの切実な課題を解決するためです。 薬局経営の視点だけでなく、この社会的な背景を理解することが不可欠です。

背景1. 国の医療制度(国民皆保険)を守るため

最大の目的は、日本の医療の根幹である「国民皆保険制度」を守ることです。 日本は超高齢社会を迎え、医療費は増大の一途をたどっています。このままでは制度の維持が困難になるため、国は薬価の安いジェネリック医薬品の使用を、医療費適正化の「切り札」として位置づけ、強力に推進しているのです。

国が本気で推進している以上、この流れは今後も続いていきます。薬局としてこの社会的要請に応えることは、地域医療を担う一員としての重要な役割でもあります。

背景2. 患者さんの「経済的な負担」を軽くするため

もう一つの目的は、患者さんの切実な悩みである「経済的な負担」を軽くすることです。 「同じ効果で、お薬代を安くしたい」。これは特に慢性疾患などで長期的に薬を服用する患者さんにとって、生活に直結する共通の願いです。

「同じ効果で、お薬代がこれだけお安くなりますよ」という提案は、このニーズに真正面から応える行為です。 これは患者さんの生活を守るだけでなく、薬局への「信頼」を築き、「かかりつけ薬局」として選ばれるための、非常に大切な取り組みの一つなのです。

薬局運営におけるジェネリック医薬品の取り扱い方ポイント

ジェネリック医薬品を適切に扱うための鍵は「在庫管理の複雑さをコントロールすること」と「患者さんの不安を解消すること」の2点に集約されます。

メリットを最大化し、運営のリスクを減らすための具体的なポイントを解説します。

効率的な在庫管理

運営上の最大のリスクは、方針なき採用によって在庫の種類が増えすぎ、期限切れによる「廃棄(ロス)」が発生してしまうことです。 ジェネリック医薬品は、一つの先発品に対して非常に多くのメーカーが製造しています。

もし、「AクリニックはX社」「B病院はY社」と、処方元に合わせて無計画に採用してしまうと、薬局内の在庫はあっという間に管理不能な状態になります。 患者さんに薬を届けるための在庫が、逆に運営を圧迫する「廃棄損」とならないよう、明確な管理方針が必要です。

バランスを重視したメーカー選定

メーカー選定においては、単なる「薬価差益(利益)」だけでなく、「安定供給・品質・効率」のバランスを重視して、採用メーカーを絞り込むことが不可欠です。 具体的には、以下の3つの視点で選定を行います。

  1. 安定供給(患者さんへの責任):最も優先すべきは、「いつでも薬を確保できること」です。欠品や供給停止は、患者さんの治療を止め、信頼を損なう重大な問題です。供給力のあるメーカーを選ぶことは、地域医療の一員としての責任です。
  2. 品質・信頼性(患者さんの安心感): 次に、「患者さんが飲みやすいか」という視点です。味や大きさなどの製剤工夫はメーカーごとに異なります。「飲みにくい」という理由は服薬の中断に繋がるため、患者さんが安心して継続できる品質のメーカーを選ぶ配慮が必要です。
  3. 適切な在庫管理(運営の効率化): 最後に、「管理のしやすさ」です。「主に対応するメーカーを数社に絞り込む」といった方針を決め、在庫の種類をシンプルに保つこと。これが管理の負担を減らし、廃棄リスクを最小限に抑えるコツです。

先発メーカーが公認したAG(オーソライズド・ジェネリック)を選ぶことで、供給不安リスクを下げる戦略もあります。

患者さんへの丁寧な説明

患者さんへの対応で最も大切なことは、メリットを伝える前に、まず「不安を取り除くこと」です。 「安くなる」と聞いても、「効き目は同じ?」「なぜ安いの?」という疑問が解消されなければ、患者さんは安心して切り替えることができません。

  • 「特許が切れたから安くなる」
  • 「国が厳しく審査しているから安全」

といった理由を丁寧に説明し、不安を解消した上で、「お薬代の負担が軽くなりますよ」という患者さん側のメリット(ベネフィット)をお伝えしましょう。 無理に勧めるのではなく、納得して選んでいただくプロセスの積み重ねが、かかりつけ薬局としての深い信頼につながります。

薬局でジェネリック医薬品を導入する際の注意点

ジェネリック医薬品の導入には、メリットだけでなく「供給不安」や「患者さんの拒否感」といった、運営を揺るがすリスクも伴います。 安定した運営を続けるためには、こうした負の側面も事前に正しく理解し、トラブルへの備えをしておくことが重要です。

製造トラブル等による供給停止の可能性

近年、ジェネリック医薬品を取り巻く大きな課題として、メーカーの製造トラブル等に端を発する「全国的な供給不足(品薄)」があります。 いくら安定したメーカーを選定していても、業界全体の影響で特定の薬が入手困難になるケースはゼロではありません。 こうした「予期せぬ供給ストップ」が起こりうることを前提に、特定の1社だけに依存しすぎない体制を作っておくなど、常にリスクへの警戒が必要です。

見た目や味の変化による患者さんの拒否感

成分は同じでも、メーカーによって添加物やコーティングが異なるため、「前の薬と色が違う」「味が苦い」といった使用感の変化が生じることがあります。 これが患者さんの「飲み間違い」や「効いていないのではないか」という不安(拒否感)につながり、トラブルになるケースも存在します。 「安くなる」というメリットだけでなく、こうした「変化」が患者さんのストレスになる可能性にも、十分に注意を払う必要があります。

ジェネリック医薬品の仕組みを理解し、地域医療に貢献しよう

「ジェネリックを推進すると薬局が儲かる」という言葉の裏には、国の医療費抑制や患者さんの負担軽減に貢献することで、薬局の運営が安定するという正当な仕組みがあります。

しかし、それは決して自動的に利益が生まれるような単純な話ではありません。 適切な在庫管理やメーカー選定、そして患者さんの不安に寄り添う丁寧な説明など、日々の地道な努力と配慮があって初めて成り立つものです。

こうした一つひとつの真摯な取り組みこそが、これからの薬局経営を支え、患者さんから信頼される「かかりつけ薬局」への第一歩となるでしょう。


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