- 作成日 : 2025年12月24日
きくらげ栽培は儲かる?収益モデルや成功するためのポイント、注意点を解説
きくらげ栽培は「空き家やコンテナで始められる」「未経験でも参入しやすい」というイメージから、新規農業ビジネスの中でも特に注目されています。しかし、その一方で「簡単には儲からない」「失敗して撤退した」という声も耳にします。きくらげ栽培への参入で、本当に利益を出すことはできるのでしょうか。
この記事では「きくらげ栽培は儲かるのか?」という疑問に答えるため、具体的な収益モデルから、失敗しないための注意点、初期費用やフランチャイズの実情まで、成功に必要な情報を網羅的に解説します。これからきくらげ農家になりたい方、事業の多角化や空き家活用を考えている経営者の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
きくらげ栽培は儲かる?その収益性ポテンシャル
結論から言えば、きくらげ栽培は「正しい知識と方法で運営すれば、高い収益性を期待できるビジネス」です。しかし、安易に「儲かる」と飛びつくと、思わぬ落とし穴にはまる可能性もあります。
きくらげ栽培がビジネスとして高いポテンシャルを持つ主な理由は以下の通りです。
高い単価と希少性
現在、日本国内で消費されるきくらげの約9割は安価な中国産(主に乾燥)です。しかし、食の安全意識の高まりから、肉厚で食感の良い「国産・生」きくらげの需要が非常に高まっています。国産品は輸入品の数倍の価格で取引されることも珍しくありません。
高い回転率
きくらげ栽培は、主に空調管理された施設内(コンテナやビニールハウス、空き家の活用など)で行われます。天候に左右されず、1年を通して計画的に栽培・収穫が可能です。菌床(きんしょう)を投入してから約1〜2ヶ月で収穫が始まり、3〜4ヶ月程度収穫が続くため、資金の回転が早いのが特徴です。
省スペース・省労力
きくらげは菌床を棚に並べて立体的に栽培(菌床栽培)します。露地栽培のように広い土地を必要とせず、比較的小規模なスペースでも効率的に生産が可能です。
なぜ今、きくらげ栽培が注目されるのか?
きくらげ栽培が注目される背景には、単なる「儲かるかも」という期待以上の、明確な市場ニーズが存在します。
市場での圧倒的な国産品不足
前述の通り、市場は輸入品で占められています。しかし、消費者は「安全・安心な国産」を求めています。特に、飲食店や高級スーパーでは、他店との差別化のために、食感も香りも良い国産の「生」きくらげを仕入れたいという需要が年々高まっています。
健康志向ブームとの合致
きくらげは、食物繊維が豊富であることに加え、特にビタミンDの含有量が全食品の中でもトップクラスです。ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、免疫機能の維持にも関わるとされ、健康志向の高い消費者に強くアピールできる食材です。
農業参入のハードルの低さ
きくらげ栽培は、農業経験がゼロの人でも参入しやすい特徴があります。
- 場所を選ばない:露地(畑)を必要としないため、都市近郊や使われなくなった空き家、倉庫、コンテナハウスなどでも栽培が可能です。
- 重労働が少ない:主な作業は菌床の管理、収穫、パック詰めであり、稲作や野菜栽培のような大規模な土木作業や重量物の運搬は比較的少ないです。
- サポート体制の存在:近年は、きくらげ栽培フランチャイズや、栽培キット・菌床の販売企業による研修サポートも充実しており、未経験者が技術を学びやすい環境が整っています。
きくらげ栽培の収益モデル
きくらげ栽培で「儲かる」仕組み、つまり収益モデルは、売上とコストのバランスで決まります。
収入の柱(売上)
きくらげ栽培の売上は、主に「生」「乾燥」「加工品」という3つの販売形態を組み合わせることで最大化されます。
特に国産の生キクラゲは希少価値が高く高単価ですが、日持ちしないリスクを乾燥品や加工品で補う戦略が一般的です。
- 生きくらげの販売:最も主流な販売形態。スーパー、直売所、飲食店、卸売市場などへ出荷します。単価は高いですが、日持ちしない(冷蔵で1週間程度)ため、安定した販路の確保が必須です。
- 乾燥きくらげの販売:収穫したきくらげを乾燥させることで、長期保存(1年程度)が可能になります。付加価値が乗り、生よりも高い単価で販売できます。設備投資(乾燥機)が必要ですが、販路が格段に広がり、在庫リスクも減らせます。
- 加工品の販売:佃煮、ピクルス、ラー油漬けなどに加工して販売します。規格外品の活用にもなり、さらに高い付加価値を目指せます。
主要なコスト(支出)
きくらげ栽培のコストは、施設導入にかかる初期費用と、空調・菌床代を中心としたランニングコストの2つに大別されます。
利益を確保するためには、スタート時の設備投資額だけでなく、年間を通じて発生する光熱費をいかにコントロールできるかが鍵となります。
- 場所代:土地の購入・賃借、空き家や倉庫の改修費、コンテナハウスの購入費など。
- 設備費:栽培棚、空調設備(エアコン)、加湿器、換気扇、照明など。
- 菌床代:栽培の土台となる菌床の購入費用。
- その他:乾燥機、冷蔵庫、包装機、軽トラックなど。
- 光熱水道費:最も大きな割合を占める変動費。特に夏場・冬場の電気代は要試算。
- 菌床代:収穫サイクルごとに継続的に購入が必要です。
- 人件費:規模が大きくなれば雇用が必要になります。
- 資材費:包装材、段ボールなど。
きくらげ栽培の立ち上げには、規模によりますが、一般的に数百万円〜1,000万円程度の初期費用を見込むケースが多いです。
また、ランニングコストに関しては、特に空調にかかる電気代が季節によって大きく変動する点に注意が必要です。収穫開始や販路開拓まで売上が立たない期間も、光熱費や菌床代といった支払いは発生し続けるため、初期費用とは別に、最低でも半年分程度の運転資金を用意しておくことが安全な経営のポイントです。
きくらげ栽培の始め方
きくらげ農家になるには、単に栽培設備を整えるだけでなく、事前に「誰に売るか」を決めた事業計画を策定することが成功の近道です。
未経験から始める場合は、独学での小規模スタートやフランチャイズへの加盟など、自分の予算とリスク許容度に合わせた参入ステップを踏む必要があります。
ステップ1:事業計画と知識の習得
まずは「どのくらいの規模で」「何を(生・乾燥)」「どこに売るか」を具体的に定めた事業計画を立てます。
- 趣味・副業レベル:まずは自宅の空きスペースできくらげ栽培キットを試してみるのも良いでしょう。ただし、これはあくまで「栽培体験」であり、ビジネス(儲かる)レベルではありません。
- 専業レベル:しっかりとした事業計画書を作成し、初期費用の資金調達(自己資金、日本政策金融公庫の融資など)を計画します。
- 知識の習得:栽培方法、病害虫対策、経営ノウハウを学びます。独学だけでなく、先進農家が実施する研修プログラムへの参加も非常に有効です。
以下の記事では、事業計画書の書き方を詳しく紹介しています。テンプレートも用意しているので、ぜひ参考にしてください。
ステップ2:参入方法の検討(フランチャイズの活用)
事業を始めるにあたり、完全に独立して行うか、サポート体制のあるきくらげ栽培フランチャイズ(FC)に加盟するかは大きな分岐点です。FC加盟は、特に未経験者にとって魅力的な選択肢となります。
- メリット:確立された栽培マニュアル、専門家による研修、高品質な菌床の安定供給、時には販路の紹介サポートまで受けられる点です。失敗のリスクを大幅に軽減できます。
- デメリット:加盟金やロイヤリティといったコストが発生します。また、栽培方法や販売先に制約が設けられる場合もあります。
- 判断のポイント:加盟する場合は、契約内容を精査し、サポート体制が本当に自分の目指す経営スタイルに合っているかを見極める必要があります。
ステップ3:栽培場所の確保と設備導入
計画に基づき、場所を決定します。空き家や中古プレハブ、使わなくなった倉庫を安価に入手し、断熱改修を施して利用するケースも増えています。その後、必要な空調設備(エアコン)、加湿器、栽培棚、換気扇などを導入します。
ステップ4:菌床の手配
きくらげ栽培の「種」にあたる菌床を手配します。品質の良い菌床を安定的に供給してくれる業者を見つけることが、成功の第一歩です。
ステップ5:栽培管理と収穫
菌床を施設に搬入し、温度・湿度・CO2濃度・光を管理しながら栽培を開始します。きくらげが発生し始めたら、適切なサイズで収穫します。
ステップ6:出荷・販売
収穫したきくらげを洗浄・選別し、パック詰めして出荷します。同時に、新規の販路開拓も継続的に行います。
きくらげ栽培を成功させるポイント
きくらげ栽培を成功させる鍵は、徹底した環境管理による「安定生産」と、リスクを分散した「戦略的な販売」の両輪を高いレベルで維持することにあります。 単に作るだけでなく、コスト管理やブランディングまで含めた経営的な視点を持つことが、長期的に利益を出し続けるための絶対条件です。 では、具体的にどのような点に取り組むべきか、それぞれ詳しく解説します。
栽培環境を「24時間」徹底的に管理する
きくらげ栽培の失敗で最も多いのが、カビやキノコバエなどの害虫発生です。これは、温度・湿度の管理不備や、換気不足、不衛生な環境が原因です。 成功の鍵は、センサーやタイマーなども活用しながら、きくらげにとって最適な環境を「毎日」「24時間」維持し続けることです。
高品質な菌床を厳選して仕入れる
収穫量は菌床の品質に大きく左右されます。安価なだけで質の悪い菌床を選ぶと、収量が上がらず、結果的にコスト高になります。 目先の安さではなく、信頼できるメーカーから、自社の栽培環境に合った高品質な菌床を仕入れることが重要です。
販路を多角化して経営リスクを分散させる
販路が一箇所(例:特定の卸売業者のみ)だと、買い叩かれたり、契約が切れた際に経営が一気に苦しくなります。
- JA、市場への卸
- 地元のスーパー、八百屋への直納
- 飲食店への直接営業
- 直売所での販売
- ECサイト(ネット通販)での乾燥品販売
これらを組み合わせ、リスクを分散させることが安定した「儲け」につながります。
収穫サイクルを最適化して売上を最大化する
一度にすべての菌床を入れ替えると、収穫できない期間(空白期間)が生まれ、キャッシュフローが悪化します。 菌床の搬入時期をずらしてローテーションを組むことで、1年を通して途切れなく収穫・出荷できる体制を整えることが、売上の最大化につながります。
ブランディングで商品価値と単価を高める
ただ「きくらげ」として売るのではなく、「〇〇産」「無農薬」「肉厚」といった付加価値を伝える工夫も必要です。 レシピ付きのパッケージにする、乾燥きくらげをお土産用に加工するなど、消費者が手に取りたくなるブランディングを行うことで、競合他社との差別化と単価アップを図ります。
きくらげ栽培で失敗しないために知るべき注意点
きくらげ栽培で失敗しないためには、表面的な利益率だけでなく、潜在的なリスクや法的な制約を事前に把握し、対策を講じておくことが不可欠です。
安易な参入による損失を防ぐため、事業化の前に必ず確認すべき具体的な注意点を解説します。
初期費用とランニングコストを厳しくシミュレーションする
空調設備、加湿器、棚、菌床などを揃えるための初期費用が発生します。また、収穫期を通して施設内の温度(約20〜25℃)と湿度(約80〜90%)を維持するための光熱費(特に電気代)が継続的にかかります。
「儲かる」試算をしていても、特に真夏と真冬の電気代は予想以上にかかるものです。これらを甘く見積もると利益がすべて吹き飛びます。施設の断熱性を高める、電力会社との契約プランを見直すなどのシミュレーションが必須です。
栽培開始前に確実な販路を確保する
生きくらげは鮮度が命であり日持ちしないため、栽培を始める前に確実な販路を確保しておくことが必須です。 ただ「作れば売れる」わけではないため、収穫後に売り先が見つからず大量廃棄となるリスクを避けるには、事前の営業活動と出荷先の確定が欠かせません。
適切な栽培技術と衛生管理知識を習得する
適切な温度管理や衛生管理の知識が不可欠です。知識がないまま始めると、カビの発生、害虫の侵入、菌床の乾燥などで収量が激減し、失敗に直結します。
自宅や空き家活用の法的リスクを確認する
自宅の敷地内や、譲り受けた空き家で栽培を始める場合、その土地の用途地域や、建築基準法、消防法などに抵触しないかを確認する必要があります。特に事業用として建物を改修・使用する場合は、後々のトラブルを避けるためにも自治体や専門家への相談が賢明です。
胞子による健康被害(アレルギー)への対策を講じる
きくらげは栽培中に大量の「胞子」を飛ばします。閉鎖された室内で作業するため、胞子を吸い込み続けると「過敏性肺炎(キノコ栽培者肺)」やアレルギーを引き起こすリスクがあります。
作業時の防塵マスク着用を徹底する、換気システムを適切に稼働させるなど、作業者の健康を守るための対策が必須です。
廃菌床(使用済み菌床)の処分計画を立てる
収穫が終わった後の菌床(廃菌床)は、産業廃棄物として処理費用がかかる場合があります。 大量に出る廃菌床をどう処分するか、事前に計画が必要です。
近隣の畑作農家に堆肥(たいひ)原料として無料で引き取ってもらうルートを開拓するなど、処分コストを抑える工夫も経営の重要課題です。
準備と対策を徹底し、きくらげ栽培で儲かる経営を実現しよう
きくらげ栽培は、国産品不足を背景に、正しい戦略で挑めば「きくらげ栽培は儲かる」といえる高いポテンシャルがあります。まずはその好機を見極めましょう。
しかし、決して「楽して稼げる」ビジネスではありません。成功には光熱費の厳密な試算、徹底した環境管理、そして何より事前の販路確保が不可欠です。リスクへの対策も万全にしておきましょう。
まずは栽培キットでの体験や、フランチャイズ説明会での情報収集から始めてみてください。 確かな準備を重ね、安定した収益を生む未来を切り拓きましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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