• 作成日 : 2025年12月11日

太陽光発電は儲かる?実際の収支や利回り、やめたほうがいい理由まで解説

太陽光発電は本当に儲かるのでしょうか。実際、儲かったという声もあれば、やめたほうがいいという意見も存在します。

この記事は、太陽光発電投資を検討する方に向けて、収益性の実態、利益を生み出す仕組み、実際の収支シミュレーション(実質利回り)、そしてビジネスの将来性について詳しく解説します。

太陽光発電は本当に儲かる?

適切な条件下での計画的な投資であれば、儲かる可能性は高いと言えます。しかし、太陽光発電ビジネスは、売電で儲ける投資から自家消費でコスト削減する投資へと、その性質を大きく変えています。

現在の収益は、主に「売電収入」と「自家消費による電気代削減」の2つから成り立ちます。これらが初期費用や維持費(ランニングコスト)を上回れば、儲かる状態となります。利益の大きさは、設置条件、導入する制度、そして特に自家消費をどれだけ最大化できるかによって大きく変動します。

太陽光発電が儲かる仕組みは?

現在の太陽光発電が利益を生み出すビジネスモデルは、主に「売電収入」と「自家消費による電気代削減」の2つで構成されています。特に重要なのは、一般に売電よりも自家消費の経済的メリットが圧倒的に大きくなっているという点です。

1. FIT制度による安定した売電収入

FIT制度(固定価格買取制度)は、国が定めた固定価格(売電単価)で、一定期間(個人・家庭用は原則10年間、企業・産業用は原則20年間)、電力会社が発電した電気を買い取ることを法的に保証する制度です。

この制度のおかげで、導入後の売電価格が市場の電力価格に左右されず長期間固定されるため、収益予測が立てやすく、安定した収益源となる点が大きなメリットです。

参考:なっとく!再生可能エネルギー|FIT・FIP制度|資源エネルギー庁

2. 自家消費による電気代削減効果

自家消費とは、発電した電気を売電せず、自社の工場やオフィス、あるいは自宅でそのまま使用することです。なぜこれが儲かるのかと言えば、電力会社から購入する電気の単価(例:35円/kWh)が、FITで売電する単価(例:16円/kWh)よりもはるかに高くなっているためです。

  • 発電した電気を売電した場合:16円の収入
  • 発電した電気を自家消費した場合:35円分の電気代を払わずに済む(=35円の節約)

この差額が、売電するよりも自家消費した方が経済的に得である理由です。電気料金が高騰すればするほど、自家消費のメリットは大きくなります。

3. ランニングコストの低さ

太陽光発電ビジネスの構造的な強みとして、一度設置すれば発電の際に燃料費が一切かからない点が挙げられます。

太陽光というエネルギー源は無料で、尽きることもありません。火力発電のように燃料(石油、石炭、天然ガス)を国際市況に左右されながら買い続ける必要がないため、売上(売電収入や削減額)に対する利益率が非常に高くなりやすい収益構造を持っています。

太陽光発電はやめたほうがいいと言われる理由は?

「太陽光発電は儲からない」「やめたほうがいい」といった否定的な意見が出る主な理由は、以下の通りです。

売電単価の下落

やめたほうがいいと言われる最大の理由は、FIT制度(固定価格買取制度)における売電単価が年々下落し続けていることです。

制度開始当初(2012年)は産業用で目安として40円/kWh以上でしたが、現在は10円/kWh前後まで低下しています。このため、かつてのように「売電するだけで楽に儲かる」というビジネスモデルは成立しづらくなりました。現在の低い単価だけを見て、「これでは投資回収できない」と判断する人が増えているのです。

初期費用の回収

太陽光発電システムの導入には、個人宅(家庭用)であっても100万円以上、企業(産業用)であれば数千万円規模の高額な初期費用が必要です。

この投資額を回収するまでに、一般的に約10年〜15年かかると試算されます。この期間の長さに加え、その間に機器が故障しないか、シミュレーション通りに発電し続けるかといった不確実性をリスクとして捉え、「やめたほうがいい」と考える向きが強いのです。

メンテナンスと故障のリスク

太陽光パネル自体の寿命は25年以上と長いものの、発電した電気を変換するパワーコンディショナは10年〜15年程度で交換が必要となり、数十万円の費用が発生します。また、設備は常に屋外にあるため、台風、地震、積雪、雹(ひょう)などの天災リスクにさらされます。

保険でカバーできる部分もありますが、予期せぬ修理費用が発生して収支計画が狂う可能性や、定期的なメンテナンスの手間とコストを懸念して、否定的な意見が出ることがあります。

太陽光発電の収支と実質利回りは?

太陽光発電投資の収益性を正確に測る際は、単純な「表面利回り」ではなく、税金やメンテナンス費用、保険料といった全ての維持費を考慮に入れた「実質利回り」で判断することが不可欠です。

  • 表面利回り(目安):(年間収益)÷(初期費用)
  • 実質利回り(目安):(年間収益 - 年間維持費)÷(初期費用)
    ※シンプルなケースとして

企業(産業用)の収支モデル

企業がビジネスとして導入する場合、売電目的から自家消費目的にシフトするだけで、収支は劇的に改善します。

ケース1:売電のみ(50kW)
  • 初期費用:1,200万円
  • 年間実質収益:400,000円
  • 実質利回り:3.33%
  • 投資回収期間:30年
ケース2:全量自家消費(50kW)
  • 初期費用:1,200万円
  • 年間実質収益(削減額 – 維持費):1,500,000円
  • 実質利回り(自家消費):12.5%
  • 投資回収期間:8年

個人(家庭用)の収支モデル

個人が家庭用として導入する場合、利回りよりも「初期費用を何年で回収できるか」を重視します。目安は10年〜15年です。

4.5kW家庭用
  • 初期費用:150万円
  • 年間の経済的メリット(①節約額 + ②売電収入):108,500円
  • 投資回収期間:150万円 ÷ 108,500円 ≒ 13.8年

※もし蓄電池を導入して自家消費率を上げられれば、回収期間はさらに短縮されます。

太陽光発電の導入に必要な初期費用と維持費は?

初期費用は容量や設置条件によって大きく異なり、家庭用(4〜5kW)で120万〜180万円程度、維持費は年間で導入費用の1%〜2%程度が目安です。

経済産業省のデータや業界団体の調査によると、太陽光発電システムの設置費用(初期費用)は年々下落傾向にあります。これにより、以前よりも投資の元が取れる可能性が高まっています。

設置費用の相場

区分対象kW単価(目安)
家庭用(10kW未満)個人約25万円〜35万円
産業用(10kW以上)企業・投資家約18万円〜28万円

ランニングコスト

実質利回りを計算するために、以下の維持費を必ず考慮する必要があります。

  • メンテナンス・点検費用:パネル清掃、機器の定期点検など。発電効率の維持に必要です。
  • パワーコンディショナ交換費用:寿命は10年〜15年です。交換費用(15万〜30万円)を収支計画に含める必要があります。
  • 保険料:台風、地震などの自然災害(天災リスク)による設備被害に備える損害保険。
  • 税金:産業用は固定資産税(償却資産税)、個人でも売電所得が一定額を超えれば所得税(雑所得)がかかります。
    ただし、課税関係は個別性が高いため実施する際は所轄税務署に確認をすることをお勧めします。

太陽光発電のメリットとデメリットは?

太陽光発電ビジネスの最大のメリットは長期的な収益性(特に自家消費によるコスト削減)と環境貢献です。一方、デメリットは高額な初期費用と天候や制度変更などのリスクです。

主なメリット
  • 電気代の削減(自家消費):個人の家計、企業の経費を直接的に削減します。
  • 長期安定収益(売電):FIT制度により、長期間にわたり安定した収入源となります。
  • 環境貢献(CSR・ESG投資):企業にとっては、脱炭素経営やRE100への取り組みとしてアピールポイントとなります。
  • 非常用電源としての活用:災害時の停電でも、自立運転機能や蓄電池があれば電気が使用できます。
注意すべきデメリットとリスク
  • 高額な初期費用:導入にはまとまった資金が必要です。
  • 天候による発電量の変動:日射量が収益に直結するため、天候不順が続くとシミュレーション通りにいかないリスクがあります。
  • 売電価格の下落:新規導入時のFIT買取価格は年々下落しています。
  • 天災リスクと設備の劣化:台風による破損やパワコンの故障など、突発的な支出が収支を悪化させる可能性があります。

太陽光発電で儲かる可能性を高めるポイントは?

太陽光発電所の収益を最大化するには、いくつかの重要なポイントがあります。

1. 発電効率を維持する

太陽光発電で儲けるには、パネルを常に最適な状態に保つ必要があります。

パネル表面の汚れや、野立て(特に企業の発電所)の場合は雑草の影がないように、定期的なメンテナンスを行います。影は発電量を大幅に低下させる原因となります。

2. 発電量を増やす

過積載とは、パワコンの容量(例:50kW)に対し、より多くのパネル(例:70kW分)を設置する技術です。朝夕や曇りの日など日射が弱い時間帯の発電量を底上げでき、年間の総発電量が増加するため、実質利回りの改善に繋がります。

3. 初期費用と売電価格のバランス

重要なのは、投資対効果(実質利回り)です。高い売電価格で高い初期費用を払うよりも、現在の売電価格で安くなった初期費用で導入する方が、実質利回りが高くなるケースも多々あります。

太陽光発電ビジネスの将来性は?

売電価格の下落をもって「将来性がない」と判断するのは早計です。むしろ、「自家消費」と「環境価値」という新たな軸で、将来性は非常に高いと言えます。

1. 自家消費と蓄電池市場の拡大

FIT制度を利用すれば、10年または20年という長期間にわたり、国が保証する固定価格での安定した収入源となります。これは収支計画の安定化に大きく寄与します。

2. 企業の脱炭素ニーズ

企業にとって、太陽光発電は単なるコスト削減(電気代削減)に留まりません。RE100やESG投資への対応として、自社の屋根や土地に太陽光パネルを設置することは、環境に配慮する企業としての価値を高める重要なビジネス戦略となっています。この需要は将来性を強力に下支えします。

参考:環境省RE100の取組|地球環境・国際環境協力|環境省

3. 技術革新

発電効率がより高いパネル(例:ペロブスカイト太陽電池など)の技術革新も進んでいます。これにより、狭い面積でも大きな発電量が得られるようになれば、投資効率はさらに向上します。

FIT制度終了後も収益を上げる方法は?

FIT期間が終了すると、これまで固定されていた売電単価は適用されなくなり、売電価格は電力会社が提示する自由な価格に移行します。これはFIT期間中の単価と比べて大幅な下落となるため、売電を続けるメリットが著しく低下します。

最も賢明な対策は、売電の割合を減らし、自家消費率を高めることです。安く売電するよりも、高い電気を買わない方が、実際の収支は圧倒的に良くなります。FIT制度終了後は、売電に頼るモデルから、電力の自給自足モデルへと移行する最大のチャンスなのです。

太陽光発電で賢く収益を上げるために

この記事では、太陽光発電は儲かるのかという疑問に対し、個人・企業それぞれの視点から、その仕組み、実際の収支、リスク、そして将来性まで解説しました。

太陽光発電ビジネスは、売電で儲ける投資から自家消費でコスト削減する投資へと、その性質を大きく変えています。儲かったという過去の成功体験に囚われず、現在の市場環境(高い電気代)を最大限に活用することが成功のポイントです。

個人にとっては家計防衛と資産形成、企業にとっては経費削減とCSR活動を両立する強力なビジネスツールとなります。「やめたほうがいい」という意見も参考にしつつ、ご自身の状況における実質利回りを冷静に試算し、長期的な視点で賢い投資判断を行ってください。


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