- 作成日 : 2024年10月4日
債務整理中は資金調達が難しい?主な創業融資の方法や注意点を解説
債務整理中の資金調達は簡単ではありません。債務整理を進めている方が創業資金を集めるとき、通常の融資を受けることは難しいため、いくつかの手段を検討する必要があります。
この記事では、債務整理中の資金調達ついて、具体的な方法と、注意をすべき点を解説するので、ご参考にしていただければと思います。
目次
債務整理中は資金調達が難しくなる場合も
債務整理の手続き中と、その手続きが終わった後も、しばらくの間は資金調達をするのが難しくなります。債務整理を行うと信用情報に事故情報(異動情報)が登録され、新たな借入れが難しくなるからです。この情報が登録されていると、金融機関は「この人は返済能力が低い」と評価する可能性が高くなってしまいます。
また、債務整理中に借入れをしてしまうことで、債務整理がうまくいかなくなる恐れもありますので、この点にも注意が必要です。任意整理中に債務を増やしてしまうことで債権者との交渉が決裂してしまう危険性があります。他にも個人再生でも再生計画が不認可となったり、自己破産でも免責不許可となったりする可能性が生じるでしょう。
債務整理中でも利用できる資金調達方法
債務整理中だと通常の方法で融資を受けたりするのは困難です。ただ、債務整理中であるなど特殊な状況下でも「日本政策金融公庫の創業融資」であれば受け入れてくれる可能性があり、家族・知人からの借入れができる可能性もあります。
日本政策金融公庫の創業融資
日本政策金融公庫では創業者向けに比較的利用がしやすい融資制度が運用されています。そのうちの一つに「新規開業資金」と呼ばれる制度があり、廃業歴のある方や、債務整理中の方が再チャレンジする場合でも利用できることがあります。
要件を満たして審査にも通れば、最大で7,200万円(うち運転資金の限度は4,800万円)もの資金を融資してもらえます。さらにこの資金を前の事業に係る債務の返済に充てることも認められており、スムーズに債務整理を進めるとともに事業に再挑戦することも可能です。
ただ、この創業融資が利用できるのは、新事業を立ち上げる方(または事業を開始しておおむね7年以内)で、次の全ての条件を満たす方となっています。
- 廃業歴がある方
- 廃業した当時の負債が次の事業に影響を与えない程度に整理され、見込まれていること
- 廃業の理由がやむを得ないものであること
家族・知人からの借入れ
債務整理中でも、貸金業者などでなければその影響を受けずにお金を貸してくれる可能性があります。例えば、家族、身近な親族や知人・友人などからの信用があればそこから借入れを行い、新たな事業の立ち上げ資金を調達することも可能でしょう。
しかも、家族や知人からの借入れであれば金融機関のように厳格な手続きを必要としないことが多いため、返済条件なども柔軟に対応してもらえます。審査も行わず、スピーディに調達することも期待できます。
ただし、身近で信頼関係のある方とはいえ、きちんと返済をしないとその関係性が壊れてしまう恐れがあります。そのため返済計画についてはきちんと策定することと、借入れに関して書面に残しておくことも忘れてはなりません。
債務整理中に資金調達を進める場合のポイント
債務整理中の資金調達は難易度が非常に高いため、通常の創業時に比べて次のポイントに意識を向けることが重要です。
- 債務整理の状況・返済計画を具体的に示す
- クオリティの高い事業計画書を作成する
- 専門家と連携する
- 複数の手段を検討する
債務整理の状況・返済計画を具体的に示す
資金を出してくれようとしている方、その交渉先や依頼先に対して、債務整理の手続きの種類(任意整理、個人再生、自己破産など)や現在の状況、今後の返済計画について、具体的に説明することが重要です。
債務整理中だという事情は資金調達の交渉においてとても不利な事実ですが、これを隠して手続きを進めるべきではありません。債務整理を行っている事実を隠していると後々大きなトラブルに発展する可能性が高いでしょう。
そのため正直に情報を共有すし、綿密に策定した返済計画を提示するようにしましょう。「債務整理中だが、その後はこの計画通りに返済をしていける」とアピールすることで、信頼獲得を図れます。
クオリティの高い事業計画書を作成する
事業計画書は、立ち上げる事業への熱意や将来性、収益性などを伝えるために重要な役割を担っているツールです。債務整理中であるという状況をカバーするためにも、特に質の高い事業計画書を作成する必要があります。市場分析、競合分析、収支計画などを詳細に記載し、実現可能性の高い計画を提示しましょう。
専門家と連携する
債務整理と資金調達の両面について、弁護士や税理士、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、連携することが重要です。専門家は債務者の状況を客観的に評価し、最適な資金調達方法や交渉戦略などをアドバイスしてくれるでしょう。
また、専門家のサポートを受けることで資金調達における信頼性を高めることができます。債務者だけで計画を立てても「また債務超過になってしまうのではないか」と疑われても仕方ありません。しかし、ここに専門家の視点を取り入れることで計画内容に信憑性や説得力が生まれます。
複数の手段を検討する
債務整理中の資金調達は、通常時の資金調達よりも難易度が高いため、複数の手段を検討し、柔軟に対応することが大事です。
金融機関からの融資だけでなく、クラウドファンディング、補助金・助成金、投資家からの出資など、多様な選択肢の検討を同時に進めましょう。万が一のことを考えて、複数の選択肢を用意しておけば、どれか一つがうまくいかず失敗しても潰しが利きます。
ただ、あれこれ手を出してもうまくいかないので、それぞれの資金調達方法の特徴を理解し、自分の置かれている状況に合った手段を選ぶことが大切です。
債務整理中に資金調達を行う際の注意点
債務整理中に資金調達を行う場合、自身の返済能力を適切に評価したうえで借入れを行わなければいけません。これは普段の借入れからいえることですが、債務整理中は特に慎重に対応しましょう。債務整理がうまくいっても、再び破産状態に追い込まれる可能性があります。
また、上述のとおり、債務整理中の新たな借入れは債権者との交渉に悪影響を与える可能性があるため注意が必要です。裁判所を利用する債務整理でも、不認可や免責不許可などの判断を下される恐れがあります。
このようなリスクを避けるため、自分の現状をよく整理するとともに、専門家に相談して客観的な評価も受けておきましょう。第三者の評価も参考に、慎重に決断を下します。
債務整理中の資金調達は特に慎重になろう
債務整理中に創業資金を集めることはなかなか難しいことです。うまくいかない確率が高く、仮に資金調達ができたとしても過去の債務が原因で再び債務超過に陥る危険もあります。
日本政策金融公庫の創業融資や家族・知人からの借入れなどの方法もありますが、同じことの繰り返しにならないよう「今、資金調達をすべきか」「いくら資金調達すべきか」など慎重に判断するようにしてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
資金調達を成功に導くプレゼンの方法は?ピッチ資料の参考事例も公開
資金調達を成功させるには、金融機関や投資家が納得できるプレゼンと、魅力的なピッチ資料が欠かせません。 本記事では、効果的なプレゼンのポイントや、投資家を惹きつけるピッチ資料の作成方法、成功事例を詳しく解説します。 資金調達を成功させるにはプ…
詳しくみるベンチャー企業向けの資金調達方法は?出資や融資、助成金の特徴を徹底解説
ベンチャー企業が資金調達を成功させるためには、さまざまな資金源を理解し活用することが重要です。本記事では、出資、融資、助成金といった多様な選択肢を解説し、それぞれの特徴や利点を比較します。 ベンチャー企業が資金調達をする主な方法 ベンチャー…
詳しくみるファンドから資金調達する仕組みとは?投資・出資の違いやメリットも解説
会社設立を考えている方や個人事業主の中には、ファンドからの資金調達を検討している方もいるでしょう。本記事では、ファンドから資金調達するまでの流れやファンドから資金調達するメリットなどについて解説します。また、投資・出資など似た用語との違いも…
詳しくみる女性起業家におすすめの資金調達方法は?成功のポイントやジャンルを解説
近年、女性起業家の割合は増加傾向にありますが、資金調達は男性に比べて障壁が高いといわれているのが現状です。ただし、日本政策金融公庫からの融資や国や地方自治体から支給される補助金・助成金の活用など資金調達方法は多く存在します。 本記事では、女…
詳しくみる資金調達とは?経営者が知っておくべき3つの方法とメリットデメリットを解説
会社を経営していく上で、運転資金は欠かせないものです。債務の支払いや設備投資、給与の支給など、運転資金がなければ会社の経営サイクルは上手く循環していきません。運転資金を調達することを「資金調達」と呼びますが、調達方法は3つあります。 「負債…
詳しくみる二回目の創業融資を受けるには?審査のコツや事業計画書の書き方を解説
日本政策金融公庫の創業融資は、二回目も受けることが可能です。ただし、審査が厳しくなる可能性があり、事情によっては審査に通らないかもしれません。また、追加融資の申し込みで提出する書類は異なり、事業計画書の書き方も変わることに注意が必要です。 …
詳しくみる