- 作成日 : 2025年8月25日
エクセルでヒストグラムを重ねる!データの傾向を比較・分析する実践ガイド
エクセルで複数のヒストグラムを重ねると、データセットごとの傾向の違いを簡単に比較・分析できます。
そもそもヒストグラムとは、数値データの「ばらつき」や「分布」を可視化するグラフのこと。これを重ね合わせることで、例えば「改善前後の品質データ」や「2つの商品の売上」といった異なる条件のデータを、ひとつのグラフで直感的に比べることが可能になります。
この記事では、ヒストグラムを重ねて作成する具体的な手順から、分析に役立つグラフ作成のコツまでをわかりやすくご紹介します。
エクセルでヒストグラムを作成する
エクセルで複数のヒストグラムを重ねると、異なるデータグループの傾向をひと目で比較・分析できます。基本的な作り方から、見やすく表示するコツまでを解説します。
まず、ヒストグラムを作成する前に、エクセルにデータ分析ツールが有効になっているかを確認しましょう。
1. 準備:データ分析ツールの有効化
まず、エクセルに「データ分析」ツールを追加します。これは初回のみ必要な設定です。
「ファイル」タブから「オプション」→「アドイン」と進みます。管理(A)が「Excel アドイン」になっていることを確認し「設定」をクリック。「分析ツール」にチェックを入れてOKを押すと、「データ」タブに「データ分析」が表示されるようになります。
2. 基本的なヒストグラムの作成
次に、基本となるヒストグラムを一つ作成します。
グラフ化したい数値データと、階級(ビンの範囲)を列に用意します。階級とは「10, 20, 30」といったデータの区切りです。
「データ」タブの「データ分析」から「ヒストグラム」を選択し、ダイアログボックスを開きます。「入力範囲」に元データ、「ビン範囲」に階級の範囲をそれぞれ指定し、「グラフ作成」に必ずチェックを入れて「OK」をクリックすると、度数分布表とヒストグラムが作成されます。
エクセルでヒストグラムを重ねて比較する方法
複数のヒストグラムを重ねて表示することで、異なるグループや条件におけるデータの分布の違いを比較できます。例えば、異なる期間の売上データや、異なる製造ラインでの製品の品質データを比較する際に役立ちます。エクセルでヒストグラムを重ねる主な方法は、散布図を活用する方法と、データ分析ツールで生成したグラフを加工する方法の2つがあります。
散布図を活用して重ねる方法(推奨)
この方法は、柔軟性が高く、見栄えの良い重ね合わせヒストグラムを作成しやすいという利点があります。
1. 各データの度数分布を求める
比較したいデータセットごとに、上記「エクセルでヒストグラムを作る方法」の手順で個別にヒストグラムを作成し、それぞれの度数分布表(階級と度数が記載された表)を準備します。この際、ビンの範囲はすべてのデータセットで共通のものを使用してください。
2. 散布図を作成する
新しいシートに、各データセットの度数分布表の「階級」と「度数」を並べます。 例えば、以下のようにデータを配置します。
階級 | データAの度数 | データBの度数 |
---|---|---|
10 | 5 | 3 |
20 | 12 | 8 |
30 | 8 | 15 |
… | … | … |
* 階級とすべての度数データを選択し、「挿入」タブから「散布図」を選択します。
* 散布図の種類は「マーカーと折れ線」が見やすいですが、必要に応じて棒グラフ形式に変更するとヒストグラムに近い形で表示できます。
3. 棒グラフに変換して重ねる
- 作成された散布図上で、各データ系列(折れ線)を選択し右クリック、「データ系列の書式設定」を選択。
- 「系列のオプション」で「塗りつぶしと線」のアイコンをクリック、「塗りつぶし」で「データ系列の書式設定」→「グラフの種類の変更」から「集合縦棒」などを選択すると、棒グラフとして表示。
必要に応じて「線の色」や「太さ」を調整します。
各データ系列に対してこの操作を繰り返すことで、複数の棒グラフが重ねて表示されます。棒グラフの幅や間隔を調整することで、ヒストグラムとして見やすくできます。
データ分析ツールで生成したグラフを加工する方法
この方法は、データ分析ツールで自動生成されたヒストグラムグラフをベースに加工するため、より手軽に重ね合わせることができますが、細かい調整には限界がある場合があります。
1. 各データセットのヒストグラムを個別に作成する
上記「エクセルでヒストグラムを作る方法」の手順で、比較したいデータセットごとにヒストグラムを作成します。この際、各ヒストグラムの階級は必ず同じ設定にしてください。
2. グラフをコピーして貼り付ける
作成されたヒストグラムグラフをそれぞれコピーします。一つのシートに、コピーしたグラフをすべて貼り付けます。
3. グラフの種類を変更し、軸を調整する
- 重ね合わせたいグラフを選択し、「グラフのデザイン」タブから「グラフの種類の変更」を選択。
- 「組み合わせ」を選択し、各データ系列のグラフの種類を「集合縦棒」に設定。
必要に応じて、一方のデータ系列を「第2軸」に設定することで、スケールの異なるデータを重ねることも可能です。
各棒グラフの重なりと要素の間隔を調整して、見やすいように設定します。「データ系列の書式設定」の「系列のオプション」でこれらの項目を調整できます。
例えば、「系列の重なり」を100%に設定すると、棒が完全に重なり合います。視認性の観点から80%程度に調整することも検討するとよいでしょう
棒の幅を調整して、階級ごとの比較ができるように調整しましょう。
エクセルで見やすいヒストグラムを作るには
見やすいヒストグラムは、データの傾向や違いを瞬時に理解するために非常に重要です。以下の点に注意して、ヒストグラムをデザインしましょう。
適切な階級(ビン)幅を設定する
階級幅が広すぎるとデータの詳細が失われ、狭すぎるとノイズが多くなって全体像が掴みにくくなります。データの性質や目的によって最適な階級幅は異なりますが、一般的にはデータの数を考慮し、5~20程度の階級数になるように調整すると良いとされています。
Sturgesの公式(k=1+log_2n、ここでkは階級数、nはデータ数)やScottの選択など、階級数を決定する統計的な方法もありますが、まずはいくつかの階級幅を試してみて、最もデータの傾向を明確に示せるものを選ぶのが実践的です。
明確なタイトルと軸ラベル
グラフのタイトルは、何を表しているのかを簡潔に示しましょう。
X軸(階級)とY軸(度数または割合)には、それぞれ適切なラベルと単位を明記することで、グラフの内容がより明確になります。
凡例の活用
複数のヒストグラムを重ねる場合は、どの棒がどのデータセットを表しているのかを示す凡例を必ず表示しましょう。色分けだけでなく、必要に応じてマーカーの種類も使い分けると、さらに分かりやすくなります。
色の使い方
見やすい色の組み合わせを選びましょう。異なるデータセットを比較する際は、対比しやすい色を選ぶことが重要です。また、色覚多様性にも配慮し、多くの人が判別しやすい配色を心がけましょう。
グラフのサイズと配置
グラフが小さすぎると詳細が見えにくく、大きすぎると全体が見渡しにくくなります。シート内で適切なサイズに調整し、データや他の情報とのバランスを考慮して配置しましょう。
補助線の活用
平均値や中央値、目標値など、特に注目させたい値がある場合は、補助線(垂直線など)を追加することで、データの位置関係をより明確にできます。
パーセンテージ表示の利用
度数だけでなく、各階級のデータが全体の何パーセントを占めるかを示すパーセンテージをY軸に表示したり、データラベルとして追加したりすると、異なるサンプルサイズのデータを比較する際に役立ちます。
ヒストグラムを作る際の注意点
ヒストグラムは強力なデータ分析ツールですが、正しく理解して使用しないと誤った解釈につながる可能性があります。以下の点に注意して作成・分析を行いましょう。
データの性質を理解する
ヒストグラムは連続的な数値データの分布を見るのに適しています。カテゴリデータには棒グラフを使用するなど、データの種類に応じた適切なグラフを選択しましょう。
また、外れ値(異常値)が含まれている場合は、ヒストグラムの形状が大きく歪むことがあります。外れ値をどのように扱うか(除外するか、別途分析するかなど)を検討する必要があります。
階級幅の影響を考慮する
階級幅の選び方によってヒストグラムの見た目は大きく変わります。複数の階級幅で試してみて、データの真の分布を最もよく表すものを見つけましょう。一つのヒストグラムだけで結論を急がないことが重要です。
サンプルサイズに注意する
データ数が少ない場合、ヒストグラムはデータの真の分布を正確に反映しないことがあります。特に、複数のヒストグラムを比較する際は、サンプルサイズが大きく異なる場合に注意が必要です。パーセンテージで表示することで、サンプルサイズの違いによる影響を緩和できる場合があります。
比較対象を明確にする
複数のヒストグラムを重ねて比較する際は、何と何を比較しているのか、その目的を明確にしましょう。比較対象が曖昧だと、グラフから得られる洞察もぼやけてしまいます。
Y軸のスケールを揃える(比較時)
異なるヒストグラムを比較する際に、Y軸(度数)のスケールが異なると、見た目の印象が大きく変わってしまい、誤解を招く可能性があります。比較するヒストグラムは、できる限りY軸の最大値を揃えるか、パーセンテージ表示に統一するなどして、公平な比較ができるように心がけましょう。
解釈の際には統計的な知識も併用する
ヒストグラムはあくまで視覚的なツールです。データの平均、中央値、標準偏差、歪度、尖度といった統計量と合わせて分析することで、より深く正確なデータ理解につながります。
これらのポイントを押さえることで、エクセルを用いたヒストグラム作成がより効果的になり、データの傾向を正確に把握し、ビジネスにおける意思決定に役立てることができます。
エクセルでヒストグラムを重ねてデータの違いを比較
エクセルでヒストグラムを作成し、複数のグラフを重ねて表示することで、異なるデータの傾向をひと目で比べることができます。散布図や集合縦棒グラフを使えば、自由度の高い見やすいグラフが作成できます。
階級の幅や色使い、凡例や軸ラベルを工夫することで、よりわかりやすいグラフに仕上がります。サンプル数の違いや外れ値の影響にも気を配り、必要に応じてパーセンテージ表示や補助線を取り入れると、比較がしやすくなります。
ヒストグラムは数字だけでは見えにくい違いや分布の特徴がわかります。目的に合った使い方で、日々の分析や資料作成に役立ててみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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