• 作成日 : 2026年1月5日

パワーポイントであるべき姿と現状のギャップを可視化するには?As-Is/To-Be分析のテクニック

ビジネスにおける課題解決や業務改善プロジェクトにおいて、最も重要なのは「現状(As-Is)」と「あるべき姿(To-Be)」の差、すなわちギャップを正確に認識することです。

しかし、言葉だけで「現状はこうで、理想はこうです」と説明しても、その深刻さや改善の必要性が相手に伝わりにくいことがあります。そこで役立つのが、パワーポイント(PowerPoint)を使った視覚的なフレームワークです。

本記事では、As-Is/To-Be分析の基本概念から、パワーポイントでギャップを効果的に見せるためのテクニック、そして説得力のあるスライド構成までを解説します。この手法をマスターして、提案力を向上させましょう。

現状とあるべき姿のギャップを分析するには?

ビジネスにおける課題解決には、まず現状と理想の差を正確に把握することが欠かせません。そのための最も代表的な手法がAs-Is/To-Be分析(アズイズ・トゥービー)です。

As-Is/To-Be分析とは、組織や業務の「現在の状態(As-Is)」と「将来目指すべき理想の状態(To-Be)」を定義し、その間にある「ギャップ(乖離)」を埋めるための課題を導き出すフレームワークです。

As-Is/To-Be分析を行う3つのメリット

As-Is/To-Be分析を行うと、関係者間の認識ズレを防ぎ、施策の根拠が明確になることで、優先順位がつけやすくなります。

例えば、言葉だけで議論していると、現場担当者と経営層で現状の捉え方や目指すゴールの高さが食い違うことがよくあります。この分析で両者を可視化すれば、チーム全体が共通の地図を持って議論できるため、合意形成がスムーズに進みます。

また、なんとなく良さそうだからという理由ではなく、現状と理想の間にあるギャップを埋めるためにこの施策が必要だと論理的に説明できるようになります。これにより、決裁者からの承認や予算も得やすくなるでしょう。

さらに、理想と現実の差分を洗い出すことで、無数にある問題の中でどれが最も経営にインパクトを与えるのか、どこがボトルネックなのかが判断しやすくなります。限られたリソースをどこに集中すべきか、迷わず決定できるのも大きなメリットです。

As-Is/To-Be分析を構成する3つの要素

As-Is/To-Be分析を行う際は、常に以下の3点セットで考えます。

  1. As-Is(アズイズ):
    現在の姿。単なる不満の列挙ではなく、数値データや客観的事実に基づいた「構造的な現状」を把握します。なぜその問題が起きているのか、背景まで掘り下げることが重要です。
  2. To-Be(トゥービー):
    あるべき姿。単なる願望ではなく、市場環境や競合状況、自社のリソースを考慮した「実現可能かつ野心的な目標」を設定します。SMARTの法則(具体的、測定可能など)を用いて定義します。
  3. Gap(ギャップ):
    乖離。現状と目標の間にある差です。このギャップこそが「解決すべき課題」であり、ここを埋めるためのアクションプランが「提案内容」となります。

変革の必要性を論理的に説明する活用シーン

As-Is/To-Be分析手法は、以下のビジネスシーンで「なぜ今、変える必要があるのか」を説得するために効果的です。

  • システム導入プロジェクト:
    「手書き伝票でミスが多発している現状(As-Is)」に対し、「全自動化でリアルタイムに在庫管理できる状態(To-Be)」を描き、その差分である「システム構築」の予算を承認してもらう。
  • 業務プロセス改革(BPR):
    「属人化して担当者が休めない業務フロー(As-Is)」に対し、「誰でも対応可能な標準化されたフロー(To-Be)」を定義し、マニュアル化や人材育成の必要性を訴える。
  • 中期経営計画の策定:
    「現在の市場シェアと売上(As-Is)」と「3年後に目指す業界No.1のポジション(To-Be)」を対比させ、そこに至るまでのロードマップを描く。

現状とあるべき姿のギャップを分析する流れ

いきなりパワーポイントで図を描き始めるのではなく、まずは情報を収集し、現状と理想を言語化するプロセスが重要です。効果的なAs-Is/To-Be分析を実施するには、情報収集、現状分析、将来像設定、ギャップ特定、施策立案という5つのステップを体系的に進めます。

以下の手順で思考を整理しましょう。

STEP1:包括的な情報収集と現状把握

まず、組織の現状を正確に把握するための情報収集を行います。定量データ(売上、コスト、処理時間、エラー率など)と定性データ(従業員の声、顧客フィードバック、業務フローなど)の両方を収集します。インタビュー、アンケート、業務観察、データ分析など、複数の手法を組み合わせることで、多角的な現状理解が可能になります。

重要なのは、表面的な事象だけでなく、根本原因まで掘り下げることです。「なぜなぜ分析」や「フィッシュボーン図」などの手法を活用し、問題の真因を特定します。また、組織文化や暗黙知など、見えにくい要素も考慮に入れる必要があります。

STEP2:As-Is(現状)の構造化と可視化

収集した情報を整理し、現状を構造的に表現します。業務プロセス図、組織図、システム構成図、データフロー図などを作成し、現状の全体像を可視化します。パワーポイントで現状分析を表現する際は、複雑な情報を階層化し、重要なポイントを強調することが重要です。

現状の問題点や課題は、具体的な数値やエビデンスと共に提示します。「処理時間が長い」ではなく「平均処理時間が競合他社の2.5倍(当社:45分、他社平均:18分)」のように、定量的に表現することで説得力が増します。また、問題の影響範囲や深刻度も明確にし、優先順位付けの根拠とします。

STEP3:To-Be(あるべき姿)の具体的な設計

あるべき姿を設定する際は、組織のビジョン、戦略、外部環境を考慮します。ベンチマーキングによって業界のベストプラクティスを参考にしつつ、自社の独自性も加味した理想像を描きます。To-Beは、3〜5年後の中期的な目標として設定することが一般的です。

To-Beの定義では、SMART原則(Specific:具体的、Measurable:測定可能、Achievable:達成可能、Relevant:関連性、Time-bound:期限設定)に基づいて目標を設定します。例えば、「顧客満足度を向上させる」ではなく、「2026年3月までに顧客満足度スコアを現在の65点から85点に向上させる」のように明確に定義します。

STEP4:ギャップの特定と優先順位付け

As-IsとTo-Beを比較し、ギャップを体系的に整理します。ギャップは、プロセス、人材、技術、組織構造など、複数の観点から分析します。各ギャップの大きさ、影響度、解決の難易度を評価し、マトリックスで整理することで、取り組むべき優先順位が明確になります。

ギャップ分析では、相互依存関係も考慮する必要があります。あるギャップの解決が他のギャップに与える影響を分析し、効果的な順序で取り組めるよう計画します。パワーポイントでギャップ分析を示す際は、視覚的なギャップチャートや比較表を活用し、差異を一目で理解できるようにします。

STEP5:実行可能な施策の立案とロードマップ作成

特定したギャップを埋めるための具体的な施策を立案します。各施策について、実施内容、必要リソース、期待効果、リスク、スケジュールを明確にします。Quick Win(早期に成果が出る施策)とLong-term Initiative(長期的な取り組み)をバランスよく組み合わせることで、継続的な改善モメンタムを維持できます。

実装ロードマップでは、施策の実施順序、マイルストーン、成果指標を時系列で示します。依存関係や制約条件を考慮し、現実的なスケジュールを設定することが重要です。また、定期的なレビューポイントを設け、進捗確認と計画修正の機会を確保します。

パワーポイントで現状とあるべき姿を図解で見せるテクニック

現状とあるべき姿を分析した内容をパワーポイントスライドに落とし込む際、どのようなレイアウトにするかで伝わり方が変わります。ギャップの種類や強調したいポイントに合わせて、代表的な図解パターンを紹介します。

1. 左右対比(Before/After)型

ビフォーアフターを直感的に強調したい場合に適したレイアウトです。 スライドを左右に二分割し、左側に「As-Is(現状)」、右側に「To-Be(あるべき姿)」を配置します。

配色の工夫として、As-Isはグレーや青などの寒色系を使って停滞感や問題の深刻さを表現し、To-Beはオレンジや赤、明るい緑などの暖色系を使って希望や活力を表現すると、視覚的なコントラストが生まれます。

左右のボックスの間に大きな右向き矢印を配置し、その中に課題や解決策を記述することで、「この課題を乗り越えることで理想に行ける」というストーリーが一目で伝わります。

2. 階段(ステップアップ)型

現状から理想へ向かうプロセスや、段階的な成長を説明するのに適しています。 スライドの左下をスタート地点(As-Is)、右上をゴール地点(To-Be)とし、その間を埋めるステップを階段状の図形で描きます。

一足飛びには行けない高い目標に対して、「フェーズ1で基盤整備」「フェーズ2で運用開始」「フェーズ3で定着拡大」といったように、着実なステップを踏んで到達する計画を示すことで、実現可能性をアピールできます。

横軸に時間、縦軸に成果をとることで、いつまでに何を実現するかが明確になります。

3. ギャップ強調(ウォーターフォール)型

売上目標やコスト削減など、数値的な目標との乖離を強調したい場合は、棒グラフやウォーターフォール図(滝グラフ)を使います。 例えば、現在の売上の棒グラフと目標売上の棒グラフを並べ、その高さの差分を「ギャップ」として矢印や吹き出しで明示します。これは、「あと〇〇億円足りない」という危機感を煽るのに有効です。

また、現状の数値に対し、「施策Aの効果」「施策Bの効果」を積み木のように足していき、最終的に目標数値に達する様子を表現することで、各施策がどれだけギャップ解消に貢献するかを定量的に示すことができ、経営層への説得力が格段に増します。

4. レーダーチャート(多角的評価)型

一つの指標だけでなく、スキルや機能など複数の要素におけるギャップを同時に見せたい場合に最適です。 パワーポイントのグラフ挿入機能でレーダーチャートを作成し、系列1に「現状のスコア」、系列2に「あるべき姿(目標スコア)」を入力します。これらを重ねて表示することで、「技術力は足りているが、営業力が不足している」といった凹凸が一目でわかります。

面積の差がそのまま「組織の伸びしろ(ギャップ)」として認識されるため、人材育成やシステム機能比較などで威力を発揮します。

5. 曲線とイラストを使ったストーリー型

論理だけでなく、感情や困難な道のりを表現したい場合に有効なレイアウトです。 左のAs-Is(現在地)と右のTo-Be(目的地)の間を、直線ではなく曲線や山あり谷ありの道で繋ぎます。その道のりの途中にある障害物(岩や壁のイラスト)を「課題」として描き、それを乗り越えるための道具(橋や梯子のイラスト)を「解決策」として配置します。

「変革には痛みが伴うが、それをチームで乗り越えていこう」というメッセージを込める際に適しており、プロジェクトのキックオフミーティングなどでメンバーの共感を呼ぶのに役立ちます。

パワーポイントで説得力を高めるスライド作成のコツ

パワーポイントで分析した現状とあるべき姿のギャップを伝えるには、情報の見せ方やストーリー構成にも工夫が必要です。データと感情の両方に訴えかけるスライドを目指しましょう。

定量データと定性情報を組み合わせる

「効率が悪い」という定性的な主張だけでは弱いため、「作業時間30時間/月」という定量データを添えて補強します。To-Beについても同様に、「効率化する」だけでなく「作業時間ゼロへ」と数値で示すことで、ギャップの大きさが具体的に伝わります。 定性的な「現場の悲鳴」と、定量的な「経営数字」を組み合わせることで、現場担当者から経営層まで、あらゆる立場の人の納得感を得ることができます。

問題箇所を「爆発マーク」で視覚的に強調する

As-Is(現状)の業務フロー図などにおいて、問題が発生している箇所に「爆発マーク」や「稲妻」、「もくもくとした雲」などのアイコンを配置します。 淡々とフロー図を見せるのではなく、「ここがボトルネックです」「ここでムダが発生しています」と視覚的に指し示すことで、聴衆の視線を強制的に誘導します。「ここさえ直せばTo-Beに近づく」ということが直感的に伝わり、解決策への期待感を高めることができます。

「危機感→希望→解決策」のストーリーで語る

スライド単体ではなく、プレゼン全体をAs-Is/To-Beの物語にします。 まず「深刻な現状」を見せて、「このままだとマズイ」という危機感を共有します。次に「目指すべき輝かしい未来」を提示して、「こうなれたら素晴らしい」というワクワク感を作ります。最後に「その差を埋めるための具体的な手段」を提示します。この順序で構成することで、聴衆は自然と「その解決策をやるしかない」という結論へ導かれ、アクションへの合意をスムーズに取り付けることができます。

As-Is/To-Be分析で変革の道筋を示そう

会社や組織の現状とあるべき姿を分析する手法には、As-Is/To-Be分析(アズイズ・トゥービー)があります。この手法は、組織が抱える問題の本質を突き止め、目指すべき未来への道筋を示すための強力な手法です。

パワーポイントでこのギャップを可視化する際は、数値データや具体的なエピソードを交えて「なぜ今、変わる必要があるのか」を論理的に語ることが重要です。

今回紹介したフレームワークと表現技術を組み合わせることで、ステークホルダーの心を動かし、プロジェクトを成功へと導く確かな提案書を作成してください。

広告

この記事をお読みの方におすすめのガイド5選【部署別紹介】

最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。

経理担当者向け

①Excel関数集 32選まとめブック

Excel関数集 32選まとめブック

経理担当者の方をはじめ、ビジネスパーソンが知っておきたい便利なExcel関数集を初級~上級までギュッと網羅。新人社員の研修用などにもお使いいただけます。Google スプレッドシートならではの関数もご紹介しています。

無料ダウンロードはこちら

②勘定科目・仕訳辞典(税理士監修)

勘定科目・仕訳辞典(税理士監修)

勘定科目・仕訳に関する基本知識、および各勘定科目の仕訳例を具体的かつ網羅的にまとめた、50ページを超えるガイドを無料で提供しております。お手元における保存版としてでだけでなく、従業員への印刷・配布用としてもぜひご活用ください。

無料ダウンロードはこちら

人事労務担当者向け

①入社・退職・異動の手続きガイドブック

入社・退職・異動の手続きガイドブック

書類の回収・作成・提出など手間のかかる入社・退職・異動(昇給・昇格、転勤)の手続き。

最新の制度をもとに、よくある質問やチェックポイントを交えながら、各手続きに必要な情報をまとめた人気のガイドですす。

無料ダウンロードはこちら

②社会保険・労働保険の手続きガイド

社会保険・労働保険の手続きガイド ‐入社・退職・異動編‐

企業において社会保険および労働保険の加入・喪失手続きは必ず発生し、手続きを誤れば保険事故が発生した際に従業員が不利益を被る可能性があります。

各保険の基本的な手続き方法を入社・退職・異動のシーン別にギュッとまとめた分かりやすいガイドです。

無料ダウンロードはこちら

総務・法務担当者向け

契約書ひな形まとめ30選

契約書ひな形まとめ30選

業務委託契約書や工事請負契約書…など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など、使用頻度の高い30個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。

無料ダウンロードはこちら


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事