- 更新日 : 2025年5月28日
山積み表とは?エクセル(Excel)での作り方やテンプレートを紹介
山積み表は、リソースの適切な配分と作業負荷の可視化を通じて、プロジェクト管理の効率化を支援する有効なツールです。エクセルや専用ツールを活用して、自身の業務に合った山積み表を作成し、業務の円滑な進行を目指しましょう。
山積み表とは?
山積み表(やまづみひょう)とは、作業の量や人員の負荷(忙しさ)をグラフの形で見えるようにした管理ツールです。主に「誰が」「いつ」「どれだけの作業を抱えているか」を時間軸に沿って一覧化し、仕事の偏りやリソースの不足に気づけるようにします。
言いかえると、「この人は今、どれだけの仕事を抱えているのか」「この週は作業が集中しすぎていないか」といったことを、棒グラフのような形でひと目で確認できる仕組みです。
また、山積み表は、「リソースヒストグラム」や「要員負荷ヒストグラム」とも呼ばれ、プロジェクト管理や生産管理の現場で広く利用されています。作業の計画段階でリソースの過不足を予測し、適切な調整を行うことで、プロジェクトの円滑な進行やコストの最適化を図ることができます。
リソース管理の“山”を見える化
山積み表という名前は、グラフにしたときに作業の量が“山”のように見えることからつけられています。多くの場合、横軸に日付や週などの時間、縦軸に作業量や人員数を設定します。各作業や担当者の負荷を積み重ねて表示するため、負荷が集中している箇所が「山」として視覚的に現れます。
たとえば、ある週に複数のタスクが重なると、その週の棒グラフが高くなり、「この週は忙しい」とすぐに判断できます。逆にグラフが低ければ「余裕がある」と判断できます。このように、山積み表は作業の分散状況を把握するのに適しています。
山積み表が使われている業界・現場
山積み表は、特定の業界に限らず、さまざまな業務現場で活用されています。代表的なものとしては、以下のような業種があります。
- 建設業界:建設業界では、複数の工程が並行して進行する中で、作業員や資材の配置を最適化する必要があります。山積み表を用いることで、各工程に必要なリソースを事前に計画し、過剰な人員配置や資材の不足を防ぐことができます。これにより、工期の遅延やコストの増加を抑えることが可能となります。
- 製造業界:製造業界では、生産ラインの稼働率や作業員の負荷を均等に保つことが求められます。山積み表を活用することで、各工程の作業量を可視化し、リソースの過不足を調整することができます。これにより、生産効率の向上や納期の遵守が実現されます。
- IT業界:IT業界では、プロジェクトごとに異なるスキルセットを持つ人材が必要とされます。山積み表を用いることで、各プロジェクトにおける人員の割り当てや作業負荷を管理し、リソースの最適化を図ることができます。これにより、プロジェクトの進行状況を把握しやすくなり、納期の遵守や品質の確保につながります。
- サービス業界:サービス業界では、季節や時間帯によって業務量が大きく変動します。山積み表を活用することで、繁忙期や閑散期のリソース配分を計画的に行い、サービス品質の維持や従業員の労働負荷の均等化を図ることができます。
- バックオフィス部門(経理・人事など):経理や人事などのバックオフィスでは、月次処理や年度末、人事異動の時期などに業務が集中します。山積み表を使えば、業務量の偏りや繁忙期の負荷を事前に把握できるため、作業の分散や人員の調整がしやすくなります。
山積み表を活用するメリット
山積み表は、作業の進行状況や負荷を見える化するだけでなく、業務全体のバランスやチームの連携、スケジュールの精度にも良い影響を与える便利なツールです。ここでは、代表的な3つのメリットに絞ってご紹介します。
業務の偏りを防ぎ、作業を均等に分担できる
山積み表の一番の利点は、誰がいつどのくらいの仕事を抱えているかがひと目でわかることです。グラフの山が高くなっている箇所を見ることで、業務が集中しているタイミングや担当者がすぐに特定できます。
これにより、特定の人に負荷が偏ったり、逆に手の空いている人がいたりといった“ムラ”に早く気づけます。結果として、作業の均等な割り振りが可能になり、チーム全体のパフォーマンスが安定します。
無理のないスケジュールが立てられる
山積み表には作業量と時間の情報がセットで入っているため、計画と実行のギャップを減らすのに役立ちます。人手が足りない時期には早めに増員を検討したり、逆に余裕がある時期には次の準備に充てたりと、無理のないスケジュールが立てやすくなります。
特に複数のプロジェクトを同時に進めている現場では、全体を俯瞰して「どこに手が回っていないか」「どこなら応援に行けるか」を判断するための大きな助けになります。
チーム内の情報共有がスムーズに
山積み表は、文字や数値だけでは伝わりにくい「忙しさ」を視覚的に共有できるツールです。メンバー同士が互いの負荷状況を把握できることで、サポートや相談がしやすくなり、無理のある依頼や不公平感も減ります。
また、プロジェクトの進捗報告や会議の場でも活用できるため、チーム全体の共通認識が生まれやすくなります。結果として、連携が強化され、ミスや手戻りの防止にもつながります。
山積み表の作業計画に使える2つの考え方
山積み表を使ってスケジュールを立てる際には、作業をどの順で積み上げていくか、という「考え方」も重要です。
特に活用されているのが、フォワード方式とバックワード方式の2つです。どちらも山積み表の基本的な考え方として知られており、それぞれに特徴があります。
フォワード方式:開始日から順に積み上げる方法
フォワード方式は、作業の開始日を起点に、順番にタスクを積み上げていく方法です。たとえば「このタスクは○月○日に始めるから、△日間かかって、その後は…」というように、計画を前に向かって組み立てていきます。
この方式のメリットは、実行ベースでの見通しが立てやすいという点です。最初のタスクを出発点として積み重ねていくため、作業の流れや所要時間を現実的に把握しやすく、「今から始めて、どこまで進むのか」が明確になります。
たとえば、製造業のように工程が順番に進む業務では、この方法が適しています。また、進行中にスケジュールの見直しが必要になった場合も、フォワード方式であれば柔軟に再調整ができます。
ただし、納期が厳格に決まっている場合は、後半の作業が圧迫されることがあるため注意が必要です。
バックワード方式:納期から逆算して計画を立てる方法
バックワード方式は、納期やゴールを起点に、そこから逆算して作業計画を立てていく方法です。たとえば「○月○日に完了させるには、△日かかるから、その前に…」といった形でスケジュールを組み立てます。
この方式の大きな特徴は、納期厳守を重視できる点です。いつまでに終わらせる必要があるのかを最初に定め、その達成に向けて逆算することで、遅れを防ぐための対策が立てやすくなります。
たとえば、クライアントとの契約や決算など、絶対に遅らせられない業務では、このバックワード方式が有効です。また、進行中に作業の遅れが出た場合でも、どこが原因で、どれくらい調整が必要かを把握しやすくなります。
一方で、タスクを詰め込みすぎて「詰まったスケジュール」になってしまうリスクもあるため、余裕を持った設定が必要です。
実際の業務では、フォワード方式とバックワード方式のどちらか一方にこだわるのではなく、状況やプロジェクトの性質に応じて使い分けることが重要です。
- 作業内容が明確で順番に進めやすい業務 → フォワード方式
- 納期重視、絶対に外せない締切がある業務 → バックワード方式
この2つの考え方を理解しておくことで、山積み表の精度が高まり、計画の立て直しや調整もスムーズに行えるようになります。
エクセルで山積み表を作るには?
山積み表をもっとも手軽に作成できるのがエクセルです。ここでは、建設業における工程管理を目的とした山積み表をエクセルで作成する手順を解説します。
1. 必要項目の入力
まず、エクセルで山積み表を作成するためのデータを用意します。以下の項目を列に入力します。
- 期間: 日付または週など、管理したい時間単位を入力します(例:4/15、4/22、4/29など)。
- 工程: 実施する作業工程を入力します(例:基礎工事、外壁工事、内装工事など)。
- 必要人数: 各工程でその期間に必要な作業員の人数を入力します。
以下は、データ入力例です。
2. 積み上げ棒グラフの作成
次に、準備したデータをもとに積み上げ棒グラフを作成します。
- データ範囲の選択: エクセルシートで、入力したデータ全体(期間、工程、必要人数を含む)を選択します。
- 「挿入」タブの選択: エクセルの上部メニューにある「挿入」タブをクリックします。
- グラフの種類の選択: 「グラフ」グループの中から、「縦棒/横棒グラフの挿入」をクリックします。
- 「2-D縦棒」の「積み上げ縦棒」を選択: 表示されたグラフの種類の中から、「2-D縦棒」にある「積み上げ縦棒」を選択します。
これで、基本的な積み上げ棒グラフが作成されます。横軸に「期間」、縦軸に「必要人数」、そして各期間に各工程の必要人数が積み上げられたグラフが表示されます。
3. グラフのカスタマイズ
作成されたグラフを見やすくするために、必要に応じて以下のカスタマイズを行います。
- グラフタイトルの追加: グラフを選択し、「グラフのデザイン」タブにある「グラフ要素を追加」から「グラフタイトル」を選択し、適切なタイトル(例:「建設プロジェクト工程別必要人数」)を入力します。
- 軸ラベルの追加: 同様に、「グラフ要素を追加」から「軸ラベル」を選択し、横軸に「期間」、縦軸に「必要人数」と入力します。
- 凡例の調整: 凡例は各色の棒がどの工程を示しているかを表しています。必要に応じて、凡例の位置を変更したり、表示/非表示を切り替えたりできます。「グラフのデザイン」タブの「グラフ要素を追加」から「凡例」を選択して調整します。
- 色の変更: 各工程の色を変更したい場合は、グラフ内の該当する積み上げ部分を右クリックし、「データ系列の書式設定」から「塗りつぶし」の色を選択します。
4. ピボットテーブルで日付をまとめて作成
日付をまとめて表示するために、まずピボットテーブルを作成し、日付をグループ化します。
- データ範囲の選択: エクセルシートで、入力したデータ全体(日付、工程、必要人数を含む)を選択します。
- 「挿入」タブの選択: エクセルの上部メニューにある「挿入」タブをクリックします。
- 「ピボットテーブル」の選択: 「テーブル」グループの中から、「ピボットテーブル」をクリックします。
- ピボットテーブルの作成: 「ピボットテーブルの作成」ダイアログボックスが表示されます。通常は自動で範囲が選択されているため、そのまま「OK」をクリックします。新しいシートにピボットテーブルが作成されます。
- フィールドの配置: ピボットテーブルのフィールドリストから、以下のフィールドをそれぞれの領域にドラッグ&ドロップします。
- 「期間」を「行」へ
- 「工程」を「列」へ
- 「必要人数」を「値」へ(値フィールドの設定で「合計」になっていることを確認します)
- 日付のグループ化: ピボットテーブルの「行ラベル」にある日付のいずれかのセルを右クリックし、「グループ化」を選択します。
- グループ化の設定: 「グループ化」ダイアログボックスが表示されます。
- 週単位でまとめる場合: 「単位」から「日」を選択し、「間隔」に「7」と入力します。「開始日」と「終了日」が適切に設定されているか確認し、「OK」をクリックします。
- 月単位でまとめる場合: 「単位」から「月」を選択し、「OK」をクリックします。
- 年単位でまとめる場合: 「単位」から「年」を選択し、「OK」をクリックします。
これで、ピボットテーブルの行ラベルに、選択した単位でまとめられた日付が表示されます。
作成したピボットテーブルをもとに積み上げ棒グラフを作成すれば、期間ごとの必要人数が可視化されます。
5. 最大人数(能力)を追加する場合
もし、各期間で確保できる作業員の最大人数(能力)が決まっている場合は、それを折れ線グラフにし、能力線として追加することも有効です。
- 能力データの追加: ピボットテーブルの元データに、グループ化された期間に対応する能力データを追加します。
- グラフへの追加: 作成したグラフ上で右クリックし、「データの選択」をクリックします。「追加」ボタンをクリックし、「系列名」に「能力」などと入力、「系列の値」に先ほど追加した能力データの範囲を選択して「OK」をクリックします。
- グラフの種類の変更: グラフを選択し、「グラフのデザイン」タブの「グラフの種類の変更」をクリックします。「すべてのグラフ」タブの「組み合わせ」を選択し、「能力」のグラフの種類を「折れ線」に変更して「OK」をクリックします。
作業負荷の計算に使えるエクセル関数
エクセルの関数をうまく使えば、負荷の自動計算やグラフへの反映もスムーズになります。代表的な関数をいくつかご紹介します。
- IF関数: 作業期間中の日付にだけ人数を表示するなど、条件に応じて値を表示・非表示にする際に使用します。
- SUM関数: 特定の期間における総リソース必要量や、特定のリソースの全期間にわたる総作業量を計算するために使用します。
- SUMIF関数: 特定の条件(例:特定の種類のタスクやリソース)に基づいて、リソース必要量を合計するのに便利です。
- SUMIFS関数: 複数の条件に基づいてデータを合計することができ、より詳細なリソース使用状況の分析を可能にします。
- VLOOKUP関数: 別シートから作業名や基準データを自動参照し、関連する情報を取得する際に便利です。
山積み表に関連した用語
ここでは、山積み表に関連した実務でよく使われる用語を紹介します。
山崩し(やまくずし)
山積み表でリソースの負荷が特定の時期に偏っている場合に、それを平準化する作業を指します。負荷が集中している期間の作業を、余裕のある時期にずらすことで、リソースの過剰負荷を避けることができます。
能力線(のうりょくせん)
各日または各週に使えるリソースの上限を示す線です。山積み表において、この線を超えると「過負荷状態」と判断され、リソースの再配分や外注対応などの調整が必要になります。
無限山積み(むげんやまづみ)
初期の計画段階で、リソースの制約を無視して必要な作業量をそのまま積み上げる方法です。現実的ではありませんが、必要作業量を見積もるための出発点として用いられます。
有限能力山崩し(ゆうげんのうりょくやまくずし)
実際の人員や時間などのリソース制限を考慮しながら、山積みされた負荷を調整するプロセスです。無理のないスケジュールを作るためには、この手順が欠かせません。
山積み表を使って、仕事の進め方を見直そう
山積み表を使えば、作業の流れや負荷の状況をひと目で把握できるようになります。まずは考え方を理解し、エクセルやツールを活用して自分の業務に合った形で取り入れてみましょう。スムーズな仕事の流れを実現する第一歩になります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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