• 更新日 : 2025年12月5日

出向は出世コースなのか?目的や選ばれる人の特徴、メリットを解説

「出向は出世コース」と言われることがありますが、実際にはその捉え方は人によって大きく異なります。新しい環境で成長の機会を得る人もいれば、左遷と感じてキャリアに迷う人も少なくありません。

本来、出向は企業にとって人材育成や事業支援、組織強化を目的とした重要な施策ですが、目的設定や人選を誤ると、本人のモチベーション低下や離職リスクを招く可能性もあります。

本記事では、出向の定義や目的、出向が出世につながる人の特徴や人選に役立つツールをわかりやすく解説します。

 出向は出世コースになる場合もある

出向と聞くと、左遷や戦力外通告といった印象を抱く人もいますが、必ずしもそうではありません。

近年では、将来の管理職候補や次世代リーダーを育成するために、出向を活用する企業も増えています。なぜなら、異なる環境で業務を任せることで、視野の拡大や意思決定力、利害関係者との調整力が鍛えられるためです。

ただし、出向が出世につながるかどうかは、出向の目的や役割、出向先の状況によって変わります。

人材育成を目的とした出向で、本人が成果を上げて戻ってくるケースでは、本社からの評価が高まり、昇進機会が広がりやすくなります。一方で、単なる人員調整や業務補完としての出向では、必ずしも出世につながるとはいえません。

業務の成果だけでなく、「何を学んだのか」「どのように成長したのか」を本社側が把握できると、次の役割やポストを検討する際の評価材料となります。

つまり、出向先での経験をきちんと社内に伝えることが、帰任後のキャリアを前向きに進めるために重要であると、出向する従業員に十分認識してもらうことが大切です。

 出向とは?

出向とは、企業が社員を一定期間、他の会社やグループ企業に派遣し勤務させる制度です。出向元と出向先の間で業務内容や在籍期間が取り決められ、社員は出向先で業務に従事します。

転勤や派遣と混同されることがありますが、それぞれ役割と目的が異なります。転勤は同じ企業内で勤務地が変わることを指し、派遣は雇用主が派遣元にあるまま他社で働く形です。

一方、出向は企業間で社員を行き来させ、人材育成や事業支援などの目的を伴って行われます。

 出向の種類

出向の種類によって、雇用関係の扱いやキャリアの影響が異なるため、違いを詳しく解説します。

 在籍型出向

在籍型出向は、社員が出向元に籍を残したまま、出向先で勤務する形態です。

給与や評価は基本的に出向元が主導します。期間を定めて行われることが多く、経験を積んだ後に出向元へ戻ることを前提としています。

たとえば、社員に新しい環境での実務経験を積ませることで、視野や対応力を育てる目的で使われることが多いです。

また、グループ会社や取引先に人材を送り、経営面や業務面を支援することで、企業間の協力体制を強化する役割もあります。

 移籍型出向(転籍)

移籍型出向は、出向元との雇用契約を終了し、出向先に正式に所属を移す形です。

組織再編や事業譲渡、子会社化のタイミングで行われることが多く、社員本人にとっては勤務先だけでなく、雇用主そのものが変わることになります。

出向先の事業が拡大段階にあり、そこでの役割が継続的に必要とされる場合には、移籍型出向が選択される事例があります。

たとえば、グループ内で新会社が設立された際に、立ち上げメンバーとして長期的に関わるケースです。

本人にとっては、新しい事業の中核として、キャリアを築く機会になることもあるでしょう。

 出向の4つの目的

出向は、単に人員を移すための制度ではありません。

企業は、経営上の課題や人材戦略に応じて、さまざまな目的で出向を活用します。ここでは、代表的な4つの目的を整理しておきましょう。

 1.人材育成

異なる環境に身を置くことで、社員は新しい考え方や業務スキルに触れる機会を得ます。

とくに、若手や中堅社員にとっては、自社内にとどまっていては、得られない視点を養うことにつながるでしょう。

出向先では、業務上の課題解決や複数の関係者を巻き込む場面も多く、結果として、リーダーとしての判断力や折衝力が育まれます。

将来的な管理職候補を育成するための計画的なキャリア形成の一環として、出向を位置づけている企業も増えています。

 2.雇用調整

事業の縮小や再編が必要になったとき、社員の雇用を維持するための手段として出向が用いられる場合があります。

出向元にとっては人件費の負担を抑えつつ、社員が働き続けられる環境を確保できる点が特徴です。

とくに、コロナ禍以降は一時的に人員が余剰となった業種で、この目的による出向が増えました。

雇用関係を守りながら、働く場を確保するための現実的な方法として注目されています。

 3.出向先の事業支援

グループ会社や取引先に対して、経営や業務を支える人材を送り込む目的で出向が行われるケースもあります。

たとえば、経営再建を進める企業に経験者を出向させたり、新規事業の立ち上げをサポートする目的で、経験者を送り込んだりするケースです。

さらに、出向元と出向先の関係が強まることで、グループ全体としての事業推進がしやすくなります。単に人員を補うだけでなく、経営面での結びつきを深める手段としても、出向は有効といえるでしょう。

 4.人材交流

出向は人材交流を通じて、企業文化や知識を相互に共有するためにも活用されます。

異なる会社や部署の人材が交わることで、業務の進め方や価値観に触れる機会が生まれ、視野が広がりやすくなります。

こうした交流によって、グループ全体のネットワーク形成が進み、連携しやすい基盤が整っていくでしょう。また、人材の流動性が高まることで、新しいアイデアや改善策が生まれやすくなり、組織全体の柔軟性向上にもつながります。

 出向を命じられる人の特徴

出向は評価が高い人だけに通達されるとは限りません。

将来の活躍を期待されて新しい経験を積ませる場合もあれば、人員配置の調整として行われる場合もあります。

ただし、どのような意図であっても、出向を任される人には、主に以下の3つの共通点があります。

  • 柔軟性
  • 責任感
  • 対人関係への適応力

異なる組織や環境で業務を進めるには、従来のやり方にこだわらず、相手に合わせて考え方を切り替える力が欠かせません。

また、出向先では自律的に判断しながら周囲と協力していく必要があるため、責任感の強さや幅広いコミュニケーション力が求められます。

ここからは、年代によって異なる、出向に選ばれる理由と役割の違いを確認していきましょう。

 20代・30代で出向に選ばれる人の特徴

若手や中堅層の出向は、将来の成長を見据えたポテンシャル育成を目的として行われることが多いです。

まだ経験が浅い段階で異なる現場に身を置くことで、判断力や課題解決力が磨かれます。

この年代で選ばれやすいのは、次のような特徴をもつ人です。

  • 新しい仕事や環境に対して前向きに取り組める
  • 変化があっても対応できる柔軟性がある
  • 部署や立場が異なるメンバーと協力しながら業務を進められる

こうした人材は、出向先で結果を残しやすく、その経験が帰任後のリーダーシップ形成にも役立ちます。

 40代・50代で出向に選ばれる人の特徴

キャリアの中盤以降で出向に選ばれる場合は、役割の性質が若手とは異なり、マネジメントや事業運営の安定化を期待されることが多くなります。

具体的には、次のようなケースが想定されるでしょう。

  • 出向先の組織運営や改善に経験を活かせる
  • 外部の利害関係者との調整が必要なポジションを担当できる
  • 新規事業や拠点立ち上げにおいて、基盤づくりを担える

この年代は、これまでに築いた人脈と実務経験を生かし、出向先を支える橋渡し役になることが求められます。

 出向でキャリアが伸びる人・停滞する人の違い

出向はキャリアにとって必ずしもプラスに働くとは限りません。

出向先でどのように行動するかによって、評価が変わります。ここでは、成長につながりやすい人と、反対に評価が下がりやすい人の違いを整理していきましょう。

 キャリアを伸ばす人の特徴

出向先で成果を残し、帰任後に評価が高まる人には、次のような共通点があります。

  • 主体的に行動できる
  • 調整力が高い
  • 本社との関係を適切に維持できる

このような動きができる人は、出向先での実績が可視化されやすく、帰任後のキャリア形成にも直結します。

 出向で評価を落とす人の傾向

反対に、次のような行動が続くと、評価が下がることがあります。

  • 指示を待つだけで自分から動かない
  • 出向先のやり方に馴染めず、周囲との連携が進まない
  • 成果や改善点を本社に伝えず、何をしているかわからない状態になる

出向先で孤立してしまうと、業務が進みにくくなるだけでなく、本社からの信頼も保ちにくくなり、結果、出向によって評価を下げてしまうことになるのです。

 出向のメリット・デメリット

出向は、企業や社員にとってプラスに働く側面がありますが、注意点も存在します。

人事が制度を運用する際には、よい影響と同時に起こりうるリスクを理解しておくことが重要です。

 出向のメリット

出向は、社員の成長と組織力の強化という両面において、企業に多くのメリットをもたらします。

大きなメリットのひとつは、社員の育成です。

社員が異なる環境で働くことにより、新しいスキルや知識、多様な考え方に直接触れられます。これにより、従来の職場では生まれなかった新しい視点をもつ人材が育ちやすくなります。

このように視野が広がった人材は、帰任後は出向元で業務における改善提案やプロジェクト推進など、多岐にわたる場面でその経験を活かし、貢献することが期待できるでしょう。

さらに事業の縮小や再編時に、出向によって社員の雇用を維持できる場合があり、社員の働く環境を確保しながら、グループ全体で最適な人材配置を実現できるのも大きな利点です。

そしてグループ会社や取引先とで人材交流を行うことで、協力関係が強固になり、事業全体の推進力向上につながる効果も期待できるでしょう。

 出向のデメリット

出向制度を運用するにあたっては、いくつか注意すべき要素があります。

まず、社員が出向を望まない異動と受け取ってしまうと、モチベーションが著しく低下する可能性があるでしょう。

また、出向期間中の評価基準が、出向元と出向先のどちらの基準で行われるのかが曖昧になりやすく、本人に不公平感が生じる原因にもなり得ます。

さらに、出向先での十分なフォローアップや業務支援が欠けている場合、社員は職場で孤立感を覚えたり、業務に対する不安を抱えたりするケースも考えられるでしょう。

この状態が長期化すると、心理的な負担が非常に高まり、結果として離職につながるリスクを高めてしまいます。

こうした課題を未然に防ぎ、出向を成功させるためには、人事部門の丁寧な設計とフォロー体制の構築が不可欠です。

具体的には、「誰を、どの出向先に、どのような役割で配置するか」を戦略的に、かつ社員本人の納得感を得られるように丁寧に設計することです。そして、出向が始まってからも、出向元と出向先の両方で適切なフォロー体制を整えておくことが欠かせません。

 出向を成功させるためのポイント

出向制度を効果的に活用するためには、感覚的な判断に頼らず、適性の見極めとフォローアップの仕組みを整えることが重要です。

ここでは、実務で活用できる2つの方法を紹介します。

 適性検査で出向に向く人材の特徴を知る

出向に向いている人材には、一定の性格傾向や行動特性があります。

柔軟性や周囲を巻き込む力、自律的に動く姿勢などがその一例です。これらは経験だけでは判断が難しいため、データにもとづいて把握することが有効です。

マネーフォワード クラウド適性検査では、社員の人物タイプや業務内容との相性を可視化でき、活躍している社員に共通する特徴を分析できます。

こうした情報をもとに、出向候補者のリスクや適性を客観的に判断することで、配置の精度を高めることが可能になるでしょう。

マネーフォワード クラウド適性検査の詳しい内容については、こちらから無料で体験できますので、ぜひお試しください。

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 クラウドサーベイで出向後のフォロー体制を整える

出向を成功させるためには、出向した時点で終わりにせず、その後のサポートを継続することが欠かせません。

出向先での満足度やストレスの状況を定期的に把握することで、早い段階で課題を察知できます。

マネーフォワード クラウドサーベイを活用すると、出向者の状態を継続的に測定し、必要なタイミングで配置転換や面談を実施できます。データに基づいたフォロー体制を整えることで、離職防止にも役立つでしょう。

無料で体験できますので、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。

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