• 更新日 : 2025年6月24日

休憩は何時間から必要?深夜労働は追加で取るべき?上限や分割についても解説

労働時間に応じて、いつから休憩を与える必要があるのかは、労働基準法で明確に定められています。この本記事では、労働時間ごとの休憩時間の義務や、休憩時間の取り扱いに関するルールを詳しく解説します。​これにより、法令遵守と従業員の健康確保を両立させる職場環境の実現を目指しましょう。

休憩は何時間から必要?

労働基準法第34条では、労働時間に応じて休憩時間の付与が義務づけられています。労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えることが法律で義務づけられています。この規定はすべての雇用形態に適用され、パート・アルバイトにも例外なく適用されます。

勤務時間ごとの休憩時間

  • 5時間勤務:休憩の義務なし(ただし、任意の休憩を与えることは可能)
  • 6時間勤務:義務なし。ただし、1分でも超えると45分の休憩が必要
  • 8時間勤務:45分以上の休憩が必要
  • 8時間超:60分以上の休憩が必要

6時間、8時間勤務ちょうどの場合

例えば、6時間勤務では休憩は不要ですが、6時間1分勤務した場合は45分の休憩を確保する必要があります。また、8時間ちょうどの勤務であれば45分で足りますが、8時間1分勤務した場合は、1時間の休憩が必要になります。

「6時間ちょうど」や「8時間ちょうど」の勤務時間は休憩時間の分岐点であるため、1分単位での労働時間管理が重要です。企業側が誤って休憩を与えずにいた場合、未払い賃金の請求や労基署からの指導につながるおそれがあります。業務の繁忙にかかわらず、休憩時間は労働時間の構成要素として明確に区分する必要があります。

法定より長い休憩を与えることは可能

勤務時間が9時から18時まで(実働8時間+1時間休憩)の勤務であれば、労働基準法上は45分の休憩で基準を満たします。「6時間を超え8時間以下」の労働時間に対して、最低限必要とされる休憩時間は45分だからです。

とはいえ、多くの企業では1時間の休憩時間を設けていることが一般的です。これは、就業規則や労働契約書で「休憩は60分とする」と定めているケースが多く、労働基準法で定める最低基準よりも手厚い内容になっているためです。

企業の自主的な判断によって「法定より長い休憩を与える」ことは可能ですが、反対に法定基準を下回る休憩しか与えないことは認められていません

労働時間が長くなるにつれて休憩の扱いにも注意が必要であり、特に就業規則と実態の整合性が取れていない場合は、労使トラブルの原因になることもあります。

労働時間が8時間を超えたら追加で休憩はとるべき?

労働時間が8時間を超える場合、休憩は少なくとも1時間(60分)以上与えなければなりません。この基準は、残業によって実働が9時間、10時間、12時間に延びた場合も同様で、休憩は1時間以上あれば法的には足りるとされています。つまり、労働時間がさらに長くなったとしても、法律上は追加の休憩時間を義務づける規定はなく、1時間で足りるという扱いです。

しかし、現場では、残業を含めた長時間勤務において、1時間の休憩だけでは十分な回復が難しいというケースも少なくありません。そのため、企業としては、法定基準を満たしつつ、必要に応じて追加の休憩時間を確保する対応を積極的に検討することが望まれます。業務の特性や従業員の負担を考慮しながら、柔軟に制度を設計する姿勢が求められます。

深夜労働の場合の休憩時間

深夜(午後10時から午前5時)にまたがる勤務では、通常の休憩に加えて、健康への配慮から追加の休憩を設けることが望まれます。例えば、看護師などの16時間夜勤では、2〜3時間の休憩が推奨されています。

例えば以下のような勤務と休憩の組み合わせが現場では採用されています。

深夜勤務の例①:16時間夜勤(看護・介護・警備など)

  • 勤務時間:17:00〜翌9:00(実働16時間)
  • 休憩:仮眠を含む2〜3時間程度
    • 例:20:00〜21:00(1時間)、深夜2:00〜4:00(2時間の仮眠)
      ※仮眠中でも緊急対応がある場合は、その時間は労働時間とみなされることがあります。

深夜勤務の例②:10時間シフト制(物流・運輸業など)

  • 勤務時間:22:00〜翌8:00(実働10時間)
  • 休憩:1時間+15分程度の小休憩
    • 例:2:00〜3:00(1時間)、6:00頃に15分の小休憩

注意点として、仮眠中であっても、緊急時に呼び出しがあるなど、実質的に業務対応が求められる時間は休憩ではなく労働時間とみなされることがあります。対応ルールを明確にし、運用には十分に配慮することが求められます。

なお、仮眠や小休憩を休憩時間として扱う場合は、就業規則であらかじめ時間帯・方法・分割の有無などを具体的に定めておきます。

例えば、以下のような記載が考えられます。

「深夜勤務においては、法定休憩のほか、業務の性質に応じて仮眠時間を含む追加の休憩を設ける。仮眠中に業務対応が生じた場合は、当該時間を労働時間として扱う。」

このように、深夜労働では法定どおりの対応にとどまらず、実務に応じた柔軟な設計が求められます

こまめな休憩時間を別途取らせることはできる?

飲食店やコールセンターなど、業務が途切れにくい現場では、法定休憩とは別に2時間おきに15分程度の短い休憩を繰り返し与える運用が採用されることがあります。これは、1時間のまとまった休憩だけでは身体的・精神的な負担が大きい場合に、集中力や作業効率を維持するための対応として取り入れられています。

業務の特性に応じて、追加で複数回の休憩を設けること自体に問題はありません。例えば、実働8時間に対して通常の休憩60分に加え、15分休憩を数回付与し、合計で2時間程度の休憩を与えている職場もあります。

また、長時間パソコン作業を伴う業務の場合にも、1〜2時間ごとに10〜15分の目や身体の負担軽減のための小休憩を挟むケースが見られます。これは、作業効率の維持だけでなく、労災リスクの低減や健康配慮として運用されている例です。

こうしたこまめな休憩を取り入れる場合は、就業規則で運用ルールを明確にし、労働時間と休憩時間の区別が曖昧にならないよう管理することが求められます。

休憩時間は何時間までとれる?上限はある?

労働基準法では、休憩時間について「下限(最低限の時間)」は定められていますが、「上限」についての明確な規定は設けられていません。労働時間が8時間を超える場合には60分以上の休憩を与える必要がありますが、これが2時間や3時間であっても、法律上は違反にはなりません

昼の閑散時間が長い飲食業や分割勤務が多い学校警備業務などでは、2時間以上の休憩時間を間に挟んで勤務する形態もあります。

しかし、あまりに休憩が長くなると、1日の拘束時間が伸びてしまうことがあり、労働者に負担をかけてしまう可能性もあります。

休憩時間を分割することはできる?

休憩時間は分割して与えることが可能です。合計時間が法定の最低時間を満たしていれば、15分+30分(合計45分)や30分+30分(合計60分)といったように、分けて与えることも法律上は認められています

ただし、休憩時間をあまりに細かく分けると、実質的に休めない休憩になってしまうため、労働者の実態に合わせた適切な運用が求められます。

就業規則で分割休憩について記載する場合は、次のように記載しておくとよいでしょう。

「休憩時間は、労働時間中に合計60分与えるものとし、業務の状況に応じて複数回に分割して付与することがある。」

このように、柔軟に分割できる運用を明示しておくことで、現場の実態に即した休憩管理が可能になります。

休憩時間を取れなかった場合の対応

休憩を取れなかった時間は、労働時間として扱う必要があり賃金の支払いが必要になります。たとえ就業規則上に休憩時間が設定されていたとしても、実際に業務から解放されていなければ、その時間は「休憩」とはみなされません。

以下のようなケースでは、休憩時間が無効と判断されることがあります。

  • 休憩中に電話対応や来客応対を求められた
  • 緊急対応や待機を指示されていた
  • 明確な休憩時間が与えられず、業務の合間に自由利用できる時間がなかった

また、会社側の指示や業務調整の不備によって休憩を取らせなかった場合には、労働基準法違反に該当し、罰則の対象となる可能性があります

やむを得ない事情で休憩が取れなかった場合は、後から別の時間に休憩を補うなどの対応が求められます。

休憩時間は無給?有給?

労働基準法では、休憩時間は「労働から完全に解放された時間」とされており、原則として賃金の支払い義務はありません。これは、業務から離れ、自由に使える時間であることを前提としているためです。

したがって、正社員・パート・アルバイトなど雇用形態にかかわらず、休憩中に業務をしていない限りは無給とするのが基本的な考え方です。

ただし、休憩中でも、会社から業務対応を求められた場合は、その時間は休憩とはみなされず、労働時間に含まれます。例えば、電話番や来客対応、巡回、機械の監視などを休憩中に行っていた場合には、その時間に対して賃金を支払う必要があります

休憩時間が無給であることを明確にするためには、就業規則や雇用契約書に「休憩時間中は賃金が発生しない」と明記しておくことが基本です。

また、業務対応が発生した場合の扱いについても、事前にルール化しておくことで、従業員との間での認識のズレを防ぐことができます。

休憩時間に出かけてもよい?

休憩時間中の外出は、労働基準法第34条第3項により、原則として労働者の自由に利用できる時間とされています。​そのため、休憩時間中に外出することは基本的に認められています。例えば、外食やさまざまな手続き、買い物、または自席での仮眠など、個人の判断で自由に過ごすことが認められています。

ただし、事業場内に休憩施設が整備されており、外出を制限する合理的な理由がある場合には、外出を許可制や届出制とすることも可能です。​例えば、職場の規律保持や業務の円滑な運営を目的として、休憩時間中の外出に一定の制限を設けることが認められています。

したがって、休憩時間中の外出は原則として自由ですが、職場の実情や業務の性質に応じて、適切なルールを設けることが望ましいとされています。​就業規則に明確な規定を設け、労使間での合意を図ることが、トラブルの防止につながります。

休憩時間で違法になるケースとは?

労働基準法第34条では、休憩時間に関する基本的なルールが定められており、これらのルールに違反すると、企業は法的責任を問われる可能性があります。以下に、違法となり得る主なケースを解説します。

休憩を取らせない・自由に使わせない

休憩を取らせなかったり、休憩中に業務を強いたりした場合は違法です。休憩時間は、労働者が業務から完全に解放され、自由に利用できる時間でなければなりません。

また、就業規則で定められていても、実態として休憩が取れていなければ労働時間とされます。

一斉付与や自由利用原則の違反

労働基準法では、休憩は原則として労働時間の途中に、全従業員に一斉に与える「一斉付与」の方式が基本とされています。この原則に従わず、一部の従業員だけを業務に従事させ続けるような運用をしている場合、法令違反となるおそれがあります。

ただし、業務の性質上、一斉に休憩を取ることが難しい職場、サービス業、運輸業、警備業など一定の業種では、交代で休憩を取らせるなどの方法も認められています。また、労使協定を締結することにより、対象業務以外であっても一斉付与の例外とすることが可能です。

休憩時間は、労働者の自由に利用できることが原則です。ただし、警察官や常勤消防団員、児童自立支援施設職員など、一定の範囲の属する場合には、休憩を自由に利用させなくても差し支えありません。これらの者は、緊急対応が必要であったり、児童から離れることが難しかったりすることがその理由です。

虚偽の休憩申告の強要

企業が従業員に対して、実際には休憩を取らせていないにもかかわらず、勤怠記録上で休憩を取ったと虚偽の申告をさせる行為は、労働基準法違反となります。このような行為は、労働基準監督署の調査対象となり、企業全体の信用を損なうリスクがあります 。

就業規則との不整合

就業規則に記載された時間と実際の運用が食い違っていると、トラブルの元になります。例えば、規則では一斉に1時間休憩と定めているのに、現場では交代制で分割休憩を取っているケースなどが該当します。分割休憩や交代制勤務の場合は、その旨を就業規則に明確に記載しましょう。

休憩は何時間から必要なのか、制度と実態を見直そう法定ルールに則った休憩管理で、働きやすい職場を実現しよう

労働時間に応じた適切な休憩時間の設定と管理は、従業員の健康と企業の法令遵守の両立に欠かせません。休憩時間に関する法定ルールを理解し、就業実態に即した形で制度設計することで、無用なトラブルを避け、働きやすい環境を整えることができます。

休憩は何時間から必要なのか、制度と実態を見直そう

休憩は6時間を超える勤務で45分、8時間を超える勤務では60分以上の休憩を与えることが義務とされています。ただし、実際の職場では就業規則や業務の性質により、交代制や分割休憩、長めの休憩など、柔軟な運用がなされることもあります。

制度として休憩は何時間から必要なのかを確認するだけでなく、実態とのズレがないか、休憩が適切に取得されているかを定期的に見直すことも欠かせません。

法定ルールに則った休憩管理は、労働者の健康と生産性の維持につながります。休憩制度の整備と明確な運用ルールの共有によって、働きやすい職場環境を築いていきましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事