- 更新日 : 2024年12月20日
兼業とは?副業との違いやメリット・デメリット、注意点を解説!
兼業とは、本業と同等の他の仕事を掛け持ちすることです。兼業の働き方は、企業などに雇用されるものや、起業して事業主として働くものなど様々です。本記事では、兼業とは何かや副業との違い、メリット・デメリット、注意点について解説します。
兼業とは?
兼業とは、本業と同等の収入や労働時間の他の仕事を掛け持ちをして行うことをいいます。本項では、兼業の定義や副業との違いについて解説していきます。
兼業の定義
兼業という働き方に、明確な法的定義はありません。一般的には、本業の他に同等な他の仕事を兼務していることを、兼業と呼んでいます。
兼業には明確な定義がないため、兼業を禁止する法律もありません。そのため、兼業を認めるかどうかも企業の裁量で決められますが、近年では兼業を認める企業も増えています。
兼業と副業の違い
兼業・副業ともに、本業以外の仕事を掛け持ちして行うことは同じです。しかし、両方とも明確な法的定義がないため、大きな違いはなく区別することもほとんどありません。
一般的に、副業は本業よりも低い収入や短い労働時間でのサブ的な仕事と捉えられていて、兼業は本業と同等の収入や労働時間の仕事として捉えられることが多いです。
兼業が注目される背景は?
近年働き方が多様化して、兼業を希望する方が増えています。収入を増やすため、本業だけでは生活できない、時間を有効活用するためなど理由は様々です。兼業が注目されるようになった背景に、国が働き方改革や人材の流動化のために兼業を積極的に推進していく方針があります。
本項では、兼業が注目されるようになった「副業・兼業の促進に関するガイドライン」「モデル就業規則の改訂」について解説します。
副業・兼業の促進に関するガイドライン
2018年1月に厚生労働省が副業や兼業を促進するために、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成しました。このガイドラインは、兼業を導入する企業や労働者に対して、現行の法令のもとでの注意点や、導入の方法などをまとめたものです。
このガイドラインは、安心して副業や兼業をできるようなルールを明確化するために2020年9月に1度目の改定をしています。また、2022年7月には、労働者が適切な職業の選択と、多様なキャリア形成を図っていくために2度目の改定をしています。
モデル就業規則の改訂
2018年1月のモデル就業規則の改定により、労働者の遵守事項にあった「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」 という規定を削除しています。また、モデル就業規則に、副業、兼業についての規定を新設しています。
兼業のメリットは?
従業員が兼業すると、従業員だけでなく企業も様々なメリットを得ることが可能です。本項では、従業員が兼業することによる企業側のメリットについて解説します。
従業員の知識やスキルが向上し自社へ還元される
従業員が兼業することにより、社内だけでは取得できない知識やスキルを獲得できます。その結果、知識やスキルが社内に還元され、自社の生産性が向上し事業機会の拡大につながるでしょう。
従業員の自律性や自主性を促してモチベーション向上につながる
従業員が自社以外の仕事をすることにより、自律性や自主性を促してやりがいをみつけることができます。また、兼業することで収入が増えたり、成功したり、活躍の場が増えたりすることで、本業へのモチベーションの向上にもつながるでしょう。
優秀な人材流出の防止につながる
企業が兼業を認めることにより、企業を辞めずに兼業として従業員のやりたい仕事ができるようになります。その結果、企業の満足度が上がり、優秀な人材が流出することがなくなって企業の価値も低下せずに済みます。
企業がイメージアップすることで優秀な人材の獲得につながる
兼業を認めている企業ということをアピールすることで、企業のイメージアップにつながります。イメージアップすればその企業で働きたい人が増えて、優秀な人材の獲得につながるでしょう。
兼業のデメリットは?
従業員が兼業することを企業が認めることは、企業にとってメリットだけではありません。本項では、従業員が兼業することによる企業側のデメリットについて解説します。
自社の業務への影響がある
従業員が兼業すると自社の業務以外の仕事に時間を取られることになり、少なからずとも時間や労力がかかり疲労を感じる可能性もあります。その結果、作業効率が落ちて自社の業務に影響する可能性があるため注意が必要です。
労務管理が複雑になる
従業員が兼業している場合、2社に勤務しているなどの状況によっては、自社の労働時間と他社の労働時間を通算します。時間外労働に対する割増賃金についても、自社の労働時間と他社の労働時間を通算して発生し、支払義務があるのは後から雇用契約を締結した企業です。
兼業している従業員の労働時間を把握するためには、他社での労働時間を聴取する必要があり、兼業をしていない従業員よりも労務管理が複雑になります。
機密情報漏洩のリスクがある
兼業をしている従業員が、一方の企業で他方の企業の機密情報を漏らしてしまうリスクがあります。自社の保有している技術や重要な情報などが漏洩してしまった場合には、企業が受けるダメージも大きくなるでしょう。兼業をする従業員には、事前に秘密保持契約を交わしておくことが大切です。
優秀な人材の流出につながる可能性がある
従業員が兼業をすることで、一方の企業に魅力を感じたり、独立や起業につながったりすることがあります。その結果、優秀な人材が流出してしまう可能性もあるでしょう。
企業が兼業を認める場合の注意点は?
企業が兼業を認める場合には、注意しておかなければならない様々な点があります。本項では、企業が兼業を認める場合の注意点について解説します。
就業規則に兼業のルールなどを記載しておく
兼業を認める場合であっても、兼業を認める条件や兼業する場合の届け出、企業秘密の漏洩の禁止など、兼業に関するルールを就業規則に記載しておく必要があります。就業規則にきちんと兼業のルールを記載していない場合、トラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。
兼業についての届出制度の制定
兼業をする場合には、適切な労務管理を行うために、他社での業務内容や労働時間の届け出をしてもらう必要があります。また、情報漏洩などのトラブルを防ぐために、自社の業務に支障をきたさないための誓約書などを提出してもらうとよいでしょう。兼業を認める場合には、届出制度の制定をすることが重要です。
秘密保持義務などの確保
従業員が兼業を始める場合に疎かになりがちな、従業員の職務専念義務や秘密保持義務、競業避止義務をどう確保するかが注意点になります。
職務専念義務とは、就業時間中に職務に専念しなければならない義務のことです。秘密保持義務とは、自社の技術や機密情報などを漏洩させない義務になります。競業避止義務とは、自社に不利益になるような競業行為を禁止することです。
兼業に関するルールを徹底することが企業と従業員の双方のメリットとなる
企業が従業員に兼業を推進する場合、ルールを決めずにただ認めるだけでは、お互いの兼業に対する認識が異なりトラブルに発展する可能性があります。
一方、企業と従業員の兼業に対する双方の認識が共有できていれば、従業員のスキル向上による企業の生産性の向上、優秀な人材の獲得や流出防止につながります。
兼業を企業と従業員双方の大きなメリットにつなげるためには、就業規則などの社内規定に兼業に関するルールを記載して徹底することが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
AIによる勤怠管理の方法は?シフト作成や給与計算の自動化についても解説
近年、多くの企業が勤怠管理にAIを活用し、出退勤の管理を効率化しています。本記事では、AIを活用した勤怠管理の概要やメリット、具体的な活用場面などを詳しく紹介します。勤怠管理のAI活用によって何が実現可能になるのかを理解し、業務効率化に役立…
詳しくみる退職時に有給消化ができない?トラブルなく40日取得するポイントを解説!
退職時に有給を40日間消化するためには、会社の理解や業務の引き継ぎなど、考慮すべきポイントはいくつかあります。 本記事では、退職時に有給を40日間スムーズに取得するためのポイントをまとめました。記事を読むと、退職時のトラブルを回避しながら、…
詳しくみる働き方改革で残業が規制される?時間外労働の上限規制改正について解説!
時間外労働の上限規制は、働き方改革の推進により2019年4月(中小企業は2020年4月)から設けられました。特別条項付きの36協定を締結した場合でも無制限に労働者に時間外労働をさせることはできず、これに違反すると法律違反となります。規制内で…
詳しくみる働き方改革関連法案をわかりやすく解説!今後の適用予定
長時間労働といった問題の解決に向けて、さまざまな働き方関連法案が可決されています。すでに多くのものが施行済となっていますが、企業規模や業種によっては、2023年や2024年に適用対象となるものがあります。いつから、どんな規制が適用予定となっ…
詳しくみる夏季休暇は有給扱いできるのか?休暇の違いや運用方法、注意点を解説
企業における夏季休暇の扱いについては、働き方改革関連法案を正しく理解すると、適切な制度運用が可能になります。 本記事では、夏季休暇を有給扱いにする際の準備や具体的な運用方法、注意点について解説します。従業員の働きやすさと企業の生産性向上の両…
詳しくみる本当に「自由」?個人事業主・フリーランスの労務管理
そもそもフリーランスの定義は? 「フリーランス」とは、「特定の企業や団体、組織に専従しない独立した形態で、自身の専門知識やスキルを提供して対価を得る人」として定義され、これまではカメラマンやコンサルタント、小説家といった限られた職種の方がメ…
詳しくみる