- 更新日 : 2025年11月19日
給料と労災給付は同時にもらえる?支給の条件を解説!
労災で働けないため休職すると、労災保険から休業補償給付を受けることができます。支給額は、休業1日について給料の約60%で、治癒するまで打ち切りはありません。賃金が支払われないことが支給要件で、会社から給料が支払われると受け取れない場合があります。その際は金額ではなく、何割の給料が支払われるかで判断されます。
目次
労災給付を受けるには?支給条件と給料との関係
仕事中にケガをした場合の「労災保険給付」は、まず「業務遂行性と業務起因性を満たしていること」という労災認定要件があります。ただ単に仕事中のケガというだけでは保険給付は行われません。また、休業補償給付には個別の支給要件があります。
休業補償給付については、以下のように一部労働した場合は給料の支払額も要件に関係しています。
一定割合以上の給料が支払われている場合には労災給付は支給されない
本来、仕事中の労災事故は、雇用している事業主に無過失の補償責任があり、労働基準法上は被災労働者や遺族に対する補償義務が定められています。労災保険は、事業主に保険加入を義務づけて速やかに被災労働者等に保険給付する制度です。休業補償給付は、以下の要件を満たす場合に支給されます。
- 労働、あるいは通勤によるケガや病気であること
- 労働できないこと
- 賃金を受け取っていないこと
支給額は、後述するように直近3カ月間に支払われた賃金総額をその間の総日数で割った金額の60%です。原則として、賃金が支払われていれば支給されません。ただし、所定労働時間の一部だけ労働し、その分の賃金が支払われている場合は、実際に労働した部分についての賃金額と給付基礎日額との差額の60%に相当する額は支給されます。
そもそも労災で休職した場合、休職期間中の給料は支払われる?
労災で従業員が休職する場合には、労災保険から休業補償給付や療養補償給付といった給付が行われます。このうち、休業補償給付は本来、職場の安全配慮義務を怠った事業主が負うべき労働基準法上の休業補償を労災保険が代わりに担うものです。
労災保険から休業補償給付が支払われると、会社の従業員に対する休業補償の支払い義務は免除されます。このため休業補償給付の支給条件には「賃金を受けないこと」があり、労災で休職している従業員に対して給料は支払われないことが一般的です。
しかし、休業補償給付には待期期間があり、休業を開始してから3日間は給付が行われません。この3日間の待期期間は、労災保険法上は休業補償給付が支給されません。しかし、労働基準法上の休業補償の支払い義務があり、労災休職中の従業員に対しても会社から休業補償が支払われます。
また、労災保険の休業補償給付を補ったり慰謝料としたりするために、会社が労災休職中の従業員に給料を支払う場合もあります。
休業補償給付は、給料の約60%です。労災保険では、保険給付事業とは別の社会復帰促進等事業から休業特別支給金が給料の約20%支給されますが、これと合わせても約80%にとどまります。
労災に遭わなかったら受け取ることができたはずの金額に近づけるため、労災休職中の従業員に対して給料を支払う場合があります。あるいは労災が会社の責任によって引き起こされたもので従業員には非がない場合、あったとしても軽い場合に、迷惑をかけたことに対する補償として何割かの給料支払いがあることが考えられます。
労災で休職した場合に受け取ることのできる保険給付
労災保険は、仕事や通勤でのケガや病気、死亡といった出来事があった場合に、必要な給付を行う公的保険です。労働者を働かせる会社は必ず労災保険に入らなければならず、労災に遭った従業員は該当する保険給付を受けることができます。休職した場合に支給の対象になる労災保険給付は「療養補償給付」「休業補償給付」「障害補償給付」があります。
療養補償給付
療養補償給付は、労災によるケガや病気で医療機関にかかる際の費用を対象とする給付です。病院・診療所、薬局で労災指定となっている医療機関への支払いについて、労災保険から給付を受けることができます。内容は以下の通りです。
- 給付金額:診察代や治療費、入院費、薬代など、かかった費用の全額
- 給付方法:現物支給
- 申請方法:かかる医療機関から申請
現物支給とは、治療行為そのものを意味します。健康保険では7割の現物支給ですが、労災保険では全額が支給されます。診察や治療を行った労災保険指定医療機関に給付が直接行われ、窓口での支払い・精算は必要ありません。労災保険から指定を受けていない医療機関にかかった場合は、窓口で支払い・精算をいったん行い、後日に銀行振り込みを受ける形で給付を受け取ることができます。
休業補償給付
労災でケガを負ったり病気になったりして、休職する際に労災保険から支払われる給付が休業補償給付です。給料から給付基礎日額を計算し、この金額をもとに計算した給付額が支払われます。
給付金額:休業1日につき給付基礎日額の60%相当額
給付期間:休業開始後4日目から1年6カ月の間
※休業開始後3日間は待期期間として給付されません。
※1年6カ月経過後、その後も療養のための休業が見込まれる等、一定の要件を満たせば、傷病補償年金として定期的に支給される年金で支給されます。
また休業補償給付が行われる際は、休業特別支給金も支払われます。休業特別支給金の金額は、休業1日につき給付基礎日額の20%相当額です。
障害補償給付
労災によるケガや病気で障害が残った場合には、労災保険の障害補償給付が行われます。障害が残ったことを支給理由とする給付であるため、ケガや病気が治癒の状態になっていることが給付を受けるためには必要です。残った障害の程度により障害等級が決まり、決定された障害等級に応じた年金や一時金が支払われます。
給付形態:障害等級第1級から第7級までは年金(障害補償年金)払い
障害等級第8級から第14級までは一時金(障害補償一時金)払い
給付金額:
- 障害補償年金
| 第1級 | 第2級 | 第3級 | 第4級 | 第5級 | 第6給 | 第7級 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 313日分 | 277日分 | 245日分 | 213日分 | 184日分 | 156日分 | 131日分 |
- 障害補償一時金
| 第8級 | 第9級 | 第10級 | 第11級 | 第12級 | 第13級 | 第14級 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 503日分 | 391日分 | 302日分 | 223日分 | 156日分 | 101日分 | 56日分 |
また障害補償年金の給付が行われる際は障害特別年金、障害補償一時金の給付が行われる際は障害特別一時金も支払われます。
- 障害特別年金
| 第1級 | 第2級 | 第3級 | 第4級 | 第5級 | 第6給 | 第7級 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 313日分 | 277日分 | 245日分 | 213日分 | 184日分 | 156日分 | 131日分 |
- 障害特別一時金
| 第8級 | 第9級 | 第10級 | 第11級 | 第12級 | 第13級 | 第14級 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 503日分 | 391日分 | 302日分 | 223日分 | 156日分 | 101日分 | 56日分 |
障害補償給付には、障害特別支給金の制度もあり、以下の金額が障害等級に応じた定額の一時金として支払われます。
| 第1級 | 第2級 | 第3級 | 第4級 | 第5級 | 第6給 | 第7級 |
| 342万円 | 320万円 | 300万円 | 264万円 | 225万円 | 192万円 | 159万円 |
| 第8級 | 第9級 | 第10級 | 第11級 | 第12級 | 第13級 | 第14級 |
| 65万円 | 50万円 | 39万円 | 29万円 | 20万円 | 14万円 | 8万円 |
労災で休職する際は給付の活用を検討しよう
仕事中や通勤中の事故によるケガ、労働が原因の病気などは、労災として労災保険から給付が行われます。働けない状況になり休職する場合には、休業補償給付を受けることができます。
しかし休業補償給付は、原則として賃金の支払いがないことが必要ですが、一部労働してその分の給料が支払われている場合は、実際に労働した部分についての賃金額と給付基礎日額との差額の60%に相当する額が支給されます。労災で休職する際は休業補償給付以外にも療養補償給付、障害補償給付といった給付を受けることができます。支給要件を確認して、正しく理解しておきましょう。
よくある質問
労災給付と給料を同時に受け取ることはできますか?
休業した場合に受け取る休業補償給付は、休業補償の代わりであり、原則として給料が全額支払われている場合は支給されません。詳しくはこちらをご覧ください。
そもそも労災で休職した場合、休職期間中に会社から給料は支払われますか?
待期期間として休業補償給付が行われない3日間については、会社に労働基準法上の休業補償の支払い義務があります。また慰謝料の意味で給料が支払われるケースもあります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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