- 作成日 : 2026年3月25日
早期離職を防ぐには?原因からフェーズ別の解決策を解説
早期離職の防止には、採用から定着まで段階的かつ継続的な対策が必要です。
- 採用時は仕事内容・価値観のすり合わせを重視
- 入社後は1on1やメンター制度で不安を軽減
- 定着期はキャリア支援と公平な評価がポイント
日々の上司の関わり方が定着率を左右します。マネジメント層の育成が不可欠です。
社員の早期離職は、企業にとって採用コストや人材育成の損失だけでなく、職場の士気や採用ブランドにも影響を与える深刻な課題です。近年は、中途採用者を含めて入社から数ヶ月以内に退職するケースも増えており、企業の成長を阻む要因となっています。
本記事では、早期離職の主な原因を明らかにしながら、採用前・入社後・定着期という各フェーズにおける対策を解説します。
目次
早期離職とは?
早期離職は、人事や労務の分野で頻繁に使われる言葉ですが、定義や背景を正しく理解していないと、適切な対策につながりません。新卒採用を中心に語られることが多いものの、近年では中途採用でも同様の課題が見られます。人材確保が難しくなる中で、企業経営に直結する重要なテーマとして認識されています。
早期離職は入社後3年以内に退職する状態を指す
早期離職とは、新たに採用した社員が入社後比較的短い期間で退職してしまうことを意味し、一般的には3年以内の離職が基準とされています。もともとは新卒社員を対象とした概念でしたが、現在では中途採用者にも用いられるようになっています。特に入社から数ヶ月で退職するケースは、企業にとって想定外の事態となりやすい傾向があります。
長年にわたり一定の割合で発生している
厚生労働省の調査によると、大卒新入社員の3年以内離職率はおおむね3割前後で推移しており、この水準は長期間にわたり大きく変化していません。このことから、早期離職は一時的な景気動向による問題ではなく、雇用や働き方の構造に根差した課題であると考えられます。企業規模や業種を問わず発生している点も特徴です。
参考:新規学卒就職者の離職状況(令和3年3月卒業者)を公表します|厚生労働省
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
人事・労務の年間業務カレンダー
毎年大人気!人事労務の年間業務を月別にまとめ、提出や納付が必要な手続きを一覧化しました。
法改正やシーズン業務の対応ポイントについて解説するコラムも掲載していますので、毎月の業務にお役立てください。
従業員の見えない不満や本音を可視化し、従業員エンゲージメントを向上させる方法
従業員エンゲージメントを向上させるためには、従業員の状態把握が重要です。
本資料では、状態把握におけるサーベイの重要性をご紹介いたします。
エンゲージメントサーベイを用いて、離職防止を推進する⽅法
離職防止には従業員エンゲージメントの向上が効果的です。そのために、従業員の状態把握が必要です。
本資料では、従業員の状態を把握する具体的な手段としてマネーフォワード クラウドサーベイをご紹介します。
エンゲージメント向上につながる福利厚生16選
多くの企業で優秀な人材の確保と定着が課題となっており、福利厚生の見直しを図るケースが増えてきています。
本資料では、福利厚生の基礎知識に加え、従業員のエンゲージメント向上に役立つユニークな福利厚生を紹介します。
早期離職が企業に与える影響は?
早期離職は「人が辞める」ことにとどまらず、企業全体にさまざまな悪影響を及ぼします。ここでは、企業が被る影響を解説します。
採用・育成にかかったコストが回収不能になる
早期離職が起きると、採用から研修までに費やした費用と時間が無駄になります。求人広告費や人材紹介料、面接に関わる人件費、初期研修の講師料や教材費など、1人あたり数十万〜100万円以上の投資が必要となることも珍しくありません。さらに、その社員の業務引き継ぎや、代替人材を探すための再採用にも追加のコストが発生します。戦力化する前に退職されることで、こうした費用は全く回収できず、結果として人事施策の費用対効果が大きく損なわれます。
チーム内の士気低下や人間関係の悪化を引き起こす
早期離職によって発生するのはコスト面の損失だけではありません。突然の退職は、周囲のメンバーにも大きな心理的影響を及ぼします。現場で新人を育成していた社員にとっては、「自分の努力が無駄になった」と感じやすく、モチベーションの低下を招くこともあるでしょう。小規模なチームでは、1人が抜けることで業務量の再分配が必要になり、残された社員の業務負担が増すことでストレスが高まりやすくなります。結果として、連鎖的な離職の引き金となる恐れもあるのです。
企業イメージや採用ブランドが損なわれる
入社した社員が短期間で退職する企業は、外部から「定着率が低い」「働きづらい会社なのではないか」と見られる可能性が高くなります。転職希望者は企業の評判をSNSや口コミサイトで確認する傾向が強く、「新人がすぐ辞める」といった声が広がれば、企業ブランドに悪影響を与えるでしょう。そうした評判が定着すると、優秀な人材ほど応募を避けるようになり、採用活動全体の競争力が低下してしまいます。人がすぐに辞める会社という印象は、信頼や安心感に敏感な求職者にとって大きな懸念材料となります。
早期離職が起こる理由は?
早期離職は、一つの明確な原因から発生するのではなく、職場環境や人間関係、将来性など複数の要素が重なり合って起こります。ここでは、早期離職に至る代表的な理由を解説します。
仕事内容や労働条件のミスマッチ
入社前に聞いていた業務内容や条件と、実際に配属された仕事が大きく異なると、社員は早期に不満を抱きやすくなるでしょう。「想像以上に残業が多かった」「任される業務がスキルや希望と合っていなかった」「評価制度が機能していなかった」といった事例では、社員は期待とのギャップに直面します。このようなズレが積み重なると、「この会社に居続ける意味はない」と判断し、離職を選ぶ可能性が高まります。
社風や価値観の不一致
組織の文化や雰囲気が個人の価値観と合わない場合、職場での居心地の悪さを感じやすくなります。「実力主義が極端で、助け合いの文化がない」「意見を言いづらい風土で、上下関係が厳しい」など、働くうえでの基本姿勢が合わなければ、社員は心理的な負担を抱えることになるでしょう。自分の働き方に誇りを持っていたり、柔軟なコミュニケーションを求めている人にとっては、早期離職の理由となり得ます。
人間関係やコミュニケーションの不足
職場の上司や同僚との信頼関係が築けないと、日々の業務が孤独なものになってしまいます。特に新入社員にとって、質問や相談ができる相手の存在は不可欠です。周囲に遠慮して話しかけられない状況が続いたり、返答が冷たかったりすると、「ここには自分の居場所がない」と感じるようになり、離職の選択肢が現実味を帯びてきます。
入社前後のフォロー体制の不足
内定後から入社までの期間や、入社後すぐの期間に十分なサポートが得られないと、新人は会社への信頼を築けません。入社直後の不安定な時期に、「説明が不十分」「歓迎されていないと感じた」「放置されている印象を受けた」などと感じた場合、早期離職へとつながります。企業側の受け入れ準備不足が、新人にとっての「会社の印象」を決定づける要因になってしまうこともあります。
将来のキャリア展望が描けない
将来にわたって自分が成長し続けられるかどうかをイメージできない職場では、長期的に働く理由を見つけにくくなります。キャリアの方向性が見えず、ロールモデルがいない環境では、将来の自分の姿が描けなくなり、「このままではキャリアが停滞するのでは」という不安が強まることもあるでしょう。特に若手社員は成長志向が高いため、キャリア支援や人材育成に力を入れていない企業からは離れる傾向があります。
このように、早期離職の理由は一つではなく、それぞれが密接に関連しながら社員の決断を後押ししています。企業としてはこれらの背景を理解し、採用から定着までのプロセス全体で対策を講じていく必要があります。
早期離職の防止・解決策は?【フェーズ別】
早期離職を防ぐためには、入社後に慌てて対応するのではなく、「採用前」「入社直後」「定着期」の3つの段階に分けて、あらかじめ対策を講じておくことが重要です。それぞれのフェーズでの課題を見極め、一貫性のある人材マネジメントを行うことで、定着率の向上と離職の抑制につながります。
【採用前】ミスマッチを防ぐ採用プロセスの見直し
採用段階でのミスマッチは、早期離職の主要な原因の一つです。候補者との相互理解を深め、現実に即した情報提供を行うことで、定着率を高めることができます。
- 適性検査や構造化面接を導入し、スキル・志向・価値観を多面的に評価
- 企業文化や業務内容について、良い点だけでなく課題も含めて正直に開示
- 採用説明会や選考で現場社員との座談会・職場見学を実施
- 内定者懇親会や事前配属チームとの面談を通じて人間関係の不安を軽減
- オファー面談でキャリアパスや評価制度の概要も共有する
これにより、「入社してみたら話が違った」という事態を防ぎ、入社前からの信頼関係を構築できます。
【入社直後】オンボーディングで安心とつながりを築く
入社直後は、社員が「会社に馴染めるか」「自分の選択は正しかったか」と感じやすいタイミングです。この時期の丁寧なフォローが、離職を防ぐ鍵となります。
- 入社初日にオリエンテーション・職場案内・制度説明を実施
- メンター(またはバディ)制度を設け、相談できる相手を確保
- チーム歓迎会やランチ会などで、早期の人間関係構築を促進
- 短期(1週間〜1ヶ月)ごとの進捗確認とフィードバック面談を実施
- 小さな成功体験を積ませ、自信と自己効力感を育む機会を設計
これにより、新人が「自分は見守られている」「受け入れられている」と実感しやすくなり、安心して会社に馴染めるようになります。
【定着期】キャリア支援と公正な評価で未来を描かせる
中長期的な定着には、「ここで働き続けたい」と思える理由が必要です。特に若手社員にとっては、将来のキャリアパスと自己成長の実感が重要です。
- 年に数回、上司とのキャリア面談を実施し、将来の目標を共有
- 社内でのジョブローテーションや研修機会を計画的に提供
- MBO(目標管理制度)などで、成果や行動を具体的に評価
- 昇進・昇給のルールを明示し、評価基準の透明性を高める
- 成果だけでなく、努力や成長のプロセスも評価対象に含める
このように社員の将来に対して企業が責任を持って支援する姿勢を示すことで、長く働く意欲を引き出せます。
【全フェーズ】心理的安全性と働きやすい職場環境の構築
制度や施策だけでなく、日々の職場の雰囲気やコミュニケーションの質も、早期離職防止には欠かせません。
- 上司による1on1面談の定期実施(業務だけでなく心情の把握も)
- ミスや意見が言いやすい風土をつくり、報告・相談のハードルを下げる
- ハラスメント・パワハラ対策を明文化し、安心して働ける体制を整備
- フレックス勤務・リモートワーク制度の導入と柔軟な運用
- メンタルヘルス支援や社内カウンセリング制度の導入
心理的安全性と働きやすさは、どのフェーズでも欠かせない基盤です。日々の信頼関係と風通しの良い環境づくりが、定着率を大きく左右します。
早期離職の防止におけるマネジメント層の役割は?
早期離職を防止するうえで、管理職の果たす役割は重要です。いかに制度や採用プロセスを整えても、現場で部下と直接接するマネージャーの対応次第で、社員の定着率は大きく変わります。
管理職の対応力が早期離職の防止に直結する
マネージャーは、社員にとって最も身近な組織の代表であり、職場環境そのものを象徴する存在です。そのため、上司との関係性が悪いと、それだけで職場への不満が募り、離職へとつながるケースが多く見られます。入社後間もない社員は、仕事への不安や戸惑いを多く抱えており、マネージャーの対応が冷たい、理解がないといった印象を受けると「この会社に居ても成長できない」と感じてしまいます。
また、上司が部下の声に耳を傾けず、一方的な指示のみを行うようなマネジメントは、心理的安全性を損ない、コミュニケーション不全を引き起こします。これらはすべて早期離職の要因となるため、マネージャー自身が自らの対応が離職リスクに影響を与えるという認識を持つことが、第一歩になります。
マネジメント教育で必要なのは「育成」と「傾聴」のスキル
マネージャー向けの教育では、業務管理やKPIだけでなく、「人材育成」と「対話力」に重点を置く必要があります。以下のような教育項目が効果的です。
- 部下の性格・価値観に合わせたコミュニケーション手法
- 定期的な1on1ミーティングの進め方と、信頼関係の築き方
- 承認・励まし・フィードバックの適切な伝え方
- キャリア相談の基本的な対応姿勢と聞き方
- 離職兆候を示すサインの見極めと初期対応の方法
これらを含んだマネジメント研修を継続的に実施することで、現場のリーダーが部下とより良い関係を築けるようになり、結果として定着率の向上につながります。若手社員との世代間ギャップを埋めるためにも、「正解を与えるのではなく、共に考える姿勢」が求められています。
段階的な施策の積み重ねで早期離職を防止しよう
早期離職は、採用ミスや新人の不安、職場環境や評価制度の不備など、さまざまな要因が複合して発生します。これを防ぐためには、「採用前」「入社直後」「定着期」の各フェーズに応じた対策を講じることが不可欠です。マネジメント層への教育やコミュニケーションの質の向上は、離職を未然に防ぐうえで有効です。早期離職の解決策を段階ごとに実践し、社員が安心して働き続けられる環境づくりを行うことが、組織の安定と成長につながります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
- # 採用・組織
CAB適性検査とは?IT人材の採用で活かす目的やGAB・SPIとの違いを解説
企業のIT人材獲得競争が激化する中、候補者の潜在能力を客観的に評価する手法として「CAB適性検査」が注目されています。特にプログラマーやSEといった専門職の採用において、その効果を…
詳しくみる - # 採用・組織
従業員エンゲージメントとは?低い企業のデメリットや高める方法を解説
従業員エンゲージメントを向上させることが会社の発展には有効だと知り、高める方法が気になっている人事担当者もいるでしょう。従業員エンゲージメントが低いと生産性の低下したり優秀な人材の…
詳しくみる - # 採用・組織
KKDとは?見積りのフレームワークは仕事でどう活用する?
KKDとは「経験・勘・度胸」のことで、日本の製造業で古くから重視されてきた手法です。KKDによる判断は的確で失敗も少ないと評価される一方、論理性や客観性のなさを指摘されることも多く…
詳しくみる - # 採用・組織
オフボーディングとは?メリットや効果的な進め方・成功のポイントを解説
従業員の退職は、企業にとって「終わり」ではなく、次の成長につながる重要な分岐点です。近年注目されているオフボーディングは、退職時の手続きを整えるだけでなく、引き継ぎの質向上やナレッ…
詳しくみる - # 採用・組織
組織設計とは?進め方や原則・再編との違いを解説
企業の成長や環境変化に対応するためには、「組織設計」が欠かせません。組織設計とは、目指す戦略を実現するために最適な組織構造や役割、情報の流れを整えるプロセスです。 しかし実務では「…
詳しくみる - # 採用・組織
人事評価エラーの種類とは?原因や防ぐための対策を紹介
本記事では、代表的な人事評価エラーの種類、その原因から具体的な対策までを詳しく解説します。公正な人事評価は、社員のモチベーションを高め、企業の成長を支える土台です。しかし、評価者の…
詳しくみる



