- 更新日 : 2026年1月14日
職場のハラスメントをなくすには?企業の防止策・対応手順や事例を解説
職場のハラスメントをなくすには、会社全体で防止策を定め、周知・実行することが欠かせません。ハラスメントは従業員の心身の健康を害するだけでなく、企業の信頼や生産性の低下にもつながります。
この記事では、ハラスメント対策が必要な理由や種類、発生する背景からふまえ、中小企業の経営者、営業担当、人事・労務、経理の担当者の方がすぐに取り組める具体的な防止対策と、実際にハラスメントをなくすための行動をとった企業事例をわかりやすく解説します。
目次
職場でハラスメントをなくすには?
ハラスメントのない職場づくりを始めるには、会社全体で防止の「仕組み」を確立することが欠かせません。この仕組みは、法律(労働施策総合推進法)で企業に義務づけられている「方針の明確化および周知・啓発」「体制整備」「迅速かつ適切な事後対応」の3つの柱で構成されます。適切な職場環境を保つため、まずこれらの土台を作りましょう。
ハラスメント防止の「方針と体制」を明確にする
ハラスメント防止の第一歩は、会社としての強い姿勢を明確に示すことです。就業規則や社内規定にハラスメントの禁止事項、懲戒規定、そして相談窓口の設置についてはっきり明記します。また、相談窓口の担当者は、守秘義務をふまえ、公平で適切な対応ができるようになるよう、あらかじめ研修を実施するなど、体制を整えましょう。
関連記事|就業規則のハラスメント防止規定の記載例
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全従業員への周知・啓発を徹底する
ハラスメント防止の周知・啓発は、社内研修やeラーニングを全従業員に向けて定期的に実施します。研修では、ハラスメントの種類や詳しい事例、防止の心がけ、相談窓口の利用方法などをわかりやすく説明しましょう。周知を徹底することで、ハラスメントに対する「共通認識」が生まれ、ハラスメントを生まないコミュニケーションにつながります。
関連資料|ハラスメント 就業規則 記載例(一般的な就業規則付き)
相談窓口の設置と発生時の迅速な対応ルールの策定
ハラスメントが起きた時のために、相談受付から事実確認、被害者・加害者への適切な措置、再発防止の措置までの流れを定めた対応ルールを作成します。とくに、事実確認の際は、公平かつ迅速な対応が求められます。ルールをはっきりさせることで、万が一ハラスメントが発生しても、会社として慌てず適切な措置をとれるようになります。
企業で取り組むべきハラスメント防止対策【5ステップ】
ハラスメントをなくすには、会社全体が一丸となって、防止対策を仕組み化し、それを実行していくことが重要です。
ハラスメント防止対策を会社全体の仕組みとして設計し、ステップに沿って実行することが重要です。ここでは、実務で押さえておきたい5つのステップを紹介します。
1. 会社方針の周知
ハラスメント禁止のメッセージを、就業規則や服務規律、ハラスメント防止規程などに明記し、社内報やメール、社内掲示などで従業員に周知します。「パワハラやセクハラを決して容認しない」という経営トップの姿勢を繰り返し示すことで、組織全体の意識をそろえやすくなります。
2. 相談窓口の設置と周知
社内または社外の機関に相談窓口を設け、従業員が安心して利用できるようにします。窓口の担当者は、守秘義務と公正な対応の重要性を理解していることが欠かせません。相談方法(メール・電話・面談など)や対応時間をあらかじめ明示し、「相談しても不利益な取り扱いはない」こともセットで伝えましょう。
3. 研修・啓発の実施
全従業員に対して、ハラスメントの種類や具体例、グレーゾーンの判断、相談窓口の使い方などをテーマにした研修を定期的に実施します。とくに管理職向けには、「業務上必要かつ相当な範囲」を意識した指導方法や、部下のメンタルヘルスへの配慮など、マネジメントとハラスメント防止を両立する研修が重要です。
4. 迅速かつ適切な事後対応のルール化
ハラスメントが起きた際の初動対応から、事実確認、被害者・行為者への措置、再発防止策までのフローを事前に決めておきます。労働施策総合推進法(パワハラ防止法)では、相談対応や事実確認、被害者への配慮など、事後対応に関する措置が求められています。実際の相談があってから慌てて対応方法を考えるのではなく、ルールとして明文化しておくことが大切です。
5. プライバシー保護と不利益取り扱い防止の徹底
相談者や関係者の氏名や内容がむやみに漏れないよう、情報管理のルールを定めます。また、「相談したこと」を理由に評価を下げたり、不利益な配置転換を行ったりすることは厳に慎まなければなりません。プライバシー保護と不利益取り扱い防止を徹底することで、従業員がハラスメントを「自分ごと」として相談しやすくなり、早期発見・早期対応につながります。
ハラスメント対策が企業に今すぐ必要な理由とは?
ハラスメント対策は、コンプライアンス遵守だけでなく、企業の経営と成長に直結する課題です。対策を怠ると、「法的リスク」「企業イメージの失墜」「生産性の低下」という大きな問題につながります。
法的リスク
ハラスメント対策は、2020年(令和2年)6月に「改正労働施策総合推進法」(パワハラ防止法)が施行され、大企業には施行と同時に対策が義務づけられており、2022年(令和4年)4月からは中小企業にも対策が義務化されています。ハラスメントが発生し、企業が適切な対応をとらなかった場合、損害賠償請求や行政指導の対象となるおそれがあり、経営に大きな影響を及ぼすことになります。
企業イメージの失墜
ハラスメントの問題が外部に漏れた場合、企業のイメージは大きく損なわれ、社会的信頼を失います。このような問題は、採用活動にも悪影響を及ぼし、優秀な人材の獲得が年々難しくなってきています。企業イメージの失墜は、取引先との関係や顧客離れにもつながる可能性があり、長期的な経営基盤を揺るがす結果となります。
生産性の低下
ハラスメントが起こると、被害者は心身の健康を害し、業務への集中力や意欲を失います。また、職場の雰囲気が悪化し、周囲の従業員の士気や生産性も低下します。職場の人間関係がギスギスしたり、不安や緊張が高まったりすることで、従業員同士の連携がはっきりしなくなり、組織全体のパフォーマンスが低下します。適切な対策を講じることは、従業員を守り、企業の持続的な成長を保つために欠かせません。
職場で起こるハラスメントの種類は?
職場で起こるハラスメントにはさまざまな種類がありますが、とくに代表的なものとして、「パワハラ」「セクハラ」「マタハラ」の3つがあげられます。それぞれのハラスメントの定義を正しく理解し、認識を合わせることがハラスメントのない職場づくりの第一歩となります。
パワーハラスメント(パワハラ)
パワハラは、「優越的な関係を背景とした言動」であり、「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」、かつ「労働者の就業環境が害されるもの」の3つの要素すべてを満たすものを指します。上司から部下への行為だけでなく、先輩・後輩間、あるいは同僚間、さらには部下から上司に対しても成立する場合があります。
実際の行為の類型としては、「身体的な攻撃」「精神的な攻撃」「人間関係からの切り離し」「過大な要求」「過小な要求」「個の侵害」の6つが厚生労働省によって示されています。
セクシュアルハラスメント(セクハラ)
セクハラは、「職場において行われる性的な言動」に対する労働者の対応によって、その労働者が解雇や降格などの不利益を受けたり、「性的な言動」により職場の就業環境が害されたりすることです。行為者や被害者の性別は問われず、異性間だけでなく同性間でも成立します。
セクハラには、「対価型」と「環境型」の2つの類型があります。対価型は、性的な言動を拒否したことで不利益を受けること、環境型は、性的な言動により仕事をする上で不快な環境になることを指します。
マタニティハラスメント(マタハラ)
マタハラは、「妊娠・出産に関する言動」または「育児・介護などに関する言動」によって、女性労働者が不利益な取り扱いを受けたり、就業環境を害されたりすることです。妊娠・出産したこと、または育児休業などを取得したことを理由とする解雇や降格などがこれにあたります。
関連資料|モラルハラスメント チェックシート(エクセル)
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ハラスメントが起こりやすい職場の特徴と原因は?
ハラスメントは、個人の性格だけの問題ではなく、職場環境や企業風土に潜む「原因・要因」が重なって表面化するケースが少なくありません。自社の職場がハラスメントの温床になっていないか、次のポイントをチェックしてみましょう。
企業風土やコミュニケーションの不足
昔ながらの「上下関係が絶対」という意識が強く、上司の指導の名のもとにハラスメントが黙認されやすい企業風土は、問題の温床となります。また、従業員同士の対話が少なく、相互理解や信頼関係が築けていないと、何気ない言動が相手を不快にさせても、その自覚が生まれにくくなります。
管理職・リーダーのマネジメント能力不足
業務指導とハラスメントの境界線を理解できていない管理職が、部下への「指導」を逸脱した行動だと自覚できずにハラスメントに至ってしまうことがあります。論理的ではない理由で叱責するなど、マネジメントスキルが不足している場合もハラスメントにつながりやすいでしょう。
業務負荷の偏り
特定の従業員に業務が集中しすぎたり、達成不可能なノルマが課されたりすることで、精神的な余裕がなくなることがハラスメントの誘因になることがあります。ストレスがたまった従業員が、それを解消するかのように他の従業員に対して不適切な言動をとってしまうケースも考えられます。
関連資料|パワハラ アンケート
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ハラスメントが起きた時の会社の対応手順
ハラスメントの相談を受けたにもかかわらず、会社が適切な対応をとらなかった場合、法的責任や企業イメージの低下といった大きなリスクにつながります。ハラスメントが発生したときには、感情に流されることなく、あらかじめ決めた対応手順(フロー)に沿って対応することが重要です。代表的な5つのステップは次のとおりです。
| 手順 | 対応内容 |
|---|---|
| 1. 相談の受付 | 相談者の話を真摯に傾聴し、守秘義務を伝え、安心感をもって話せる環境を作ります。 |
| 2. 事実確認 | 相談者、行為者、第三者へのヒアリングを別々に行い、客観的な証拠もふまえて事実関係を正確に把握します。 |
| 3. 被害者・行為者への措置 | 事実確認の結果をふまえた上で、就業規則の規定に従って、行為者への懲戒処分や配置転換、被害者のケアを行います。 |
| 4. 再発防止措置 | 事案をふまえた社内研修の実施、社内規定の見直しなどを行い、再発防止策を講じます。 |
| 5. プライバシー保護の徹底 | 相談者のプライバシーを保護し、相談したことによる不利益な取り扱いがないようにルールを定めます。 |
関連資料|ハラスメント調査報告書(ワード)
従業員一人ひとりにできるハラスメント防止の心がけ
ハラスメントをなくすには、会社による制度やルール作りだけでなく、従業員一人ひとりが「自分ごと」としてハラスメント防止の意識を持つことが大切です。
ハラスメントのない職場を築くために、私たちは日々のコミュニケーションや行動において、次の点にとくに気をつけなければなりません。
相手の価値観や状況を尊重する
人にはそれぞれ、仕事の進め方、プライベートな状況、価値観の違いがあります。自分の基準だけで物事を判断せず、相手の個性や考え方を尊重する姿勢を持ちましょう。たとえば、体調や育児・介護の状況は人それぞれ異なります。安易な憶測や決めつけで発言するのではなく、相手の立場をふまえて配慮を示すことが求められます。
業務指導と感情的な叱責を区別する
指導を行う立場にある人は、業務の改善点をはっきりさせ、建設的なフィードバックを心がけましょう。指導の目的は、相手の成長と業務の遂行であり、決して相手の人格を否定したり、感情をぶつけることではありません。指導が業務上必要かつ相当な範囲を逸脱していないか、常に自問自答しましょう。
職場に「心理的安全性」を確保する
誰もが安心して発言できる環境は、ハラスメントを生まない土台となります。「こんなことを言ったら怒られるのではないか」「質問したらバカにされるのではないか」といった不安があると、コミュニケーションは滞り、問題が表面化しにくくなります。積極的に相手の意見を聞き、間違いを恐れずに提案や相談ができるような風通しの良い雰囲気を作りましょう。
ハラスメントのない職場づくりで企業価値を高めよう
職場のハラスメントをなくすことは、単に従業員を守るためだけでなく、企業が持続的に成長し、競争力を高めていくための欠かせない要素となります。ハラスメントのない職場は、従業員が安心して働くことができ、一人ひとりが自分の能力を最大限に発揮できる環境です。
ハラスメント対策を徹底し、心理的安全性の高い職場を実現することは、優秀な人材の定着につながり、結果として企業の生産性を高めます。さらに、企業の社会的信頼も向上し、採用力の強化にもつながるでしょう。
「ハラスメントのない職場づくり」への取り組みを、単にリスク回避と捉えるのではなく、企業の価値を高めるための前向きな投資として考えることが、これからの時代、非常に重要になります。
関連資料|ハラスメントのテンプレート・ひな形(ワード・エクセル)一覧
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