- 更新日 : 2026年1月14日
エンゲージメント向上における人事の役割|具体的な施策や管理職へのアプローチ方法も紹介
エンゲージメントとは、従業員が会社のために貢献したいという心理状態を表す言葉です。単なる「忠誠心」とは異なり、会社と従業員の対等な関係性がこの言葉には含まれています。
人材の流動化が進む中、エンゲージメントについて「どうやったら向上させられる?」「向上のために人事ができることとは?」などと疑問に思っている人もいるでしょう。
そこで本記事では、エンゲージメント向上における人事の役割について詳しく解説します。また、エンゲージメントを高めるためにできる施策の例もまとめています。
目次
そもそもエンゲージメントとは?
エンゲージメントとは、従業員が企業のビジョンや戦略に深く共感し、組織の目標達成に向けて自発的に貢献しようとする意欲を表す言葉です。
日本語では「貢献意欲」「熱意」「愛着心」「絆」などと訳されます。ただ、単なる「忠誠心」とは異なり、企業と従業員が対等な立場で互いの成長に貢献するという双方向の関係性に主眼が置かれているのが特徴です。
現代の日本社会では終身雇用や年功序列が以前よりも薄れてきており、優秀な人材ほどより良い環境を求めて転職する流れが進んでいます。
このような状況下で企業が存続・成長するためには、貴重な人材を流出させないための魅力的な組織づくりが重要です。こうした背景から、離職防止や組織力の強化に直結するエンゲージメントの向上が注目されているというわけです。
エンゲージメントを構成する要素
エンゲージメントを構成する要素は主に以下の3つです。
- 理解度
- 帰属意識
- 行動意欲
1つ目の理解度とは、企業のビジョンや経営方針などを理解している度合いのことです。会社の目指すゴールやその道筋を明確に理解することで、自分の仕事が単なる作業ではなく目標を達成するための重要な業務だと認識できるようになります。
2つ目の帰属意識とは、自分が所属する組織や同僚・上司に対して持っている愛着の度合いのことです。組織への帰属意識が高まれば会社の一員としてさらに貢献したいという気持ちが芽生え、チームワークや組織全体のパフォーマンス向上につながります。
3つ目の行動意欲とは、自らの役割以上の貢献をしようとする自発的で前向きな意欲のことです。理解や共感だけでは実際の行動に結びつきません。行動意欲があって初めて、エンゲージメントが企業の業績向上という結果をもたらします。
エンゲージメント向上における人事の役割
エンゲージメント向上における人事の役割は主に以下の3つです。
- エンゲージメントを測定する
- エンゲージメント向上のための施策を実施する
- 管理職向けのアプローチを行う
まずはエンゲージメントサーベイを企画・実施して、組織全体のエンゲージメントのレベルを調査します。それと同時に、どの部署でどのような層が課題を抱えているのかも把握しましょう。
次に、サーベイの結果をもとにエンゲージメント向上のための施策を考えて実施します。ときには、会社のトップや経営層を巻き込むことも重要です。
そして管理職向けのアプローチを行うのも人事の役割です。サーベイ結果の分析方法や研修などを行い、彼らが効果的なマネジメントを実践できるよう支援します。
エンゲージメントを測定する方法
実際に従業員のエンゲージメントを測定する方法について解説します。
1. エンゲージメントサーベイを実施する
従業員のエンゲージメントを測定するためには、組織の現状を客観的な数値で把握することから始める必要があります。そのための手法が「エンゲージメントサーベイ」です。
エンゲージメントサーベイには、以下の2種類あります。
- 年次サーベイ:年に一度、じっくりと多角的な質問で組織全体を測定する調査方法
- パルスサーベイ:毎週・毎月といった短いスパンでコンディションの変化をチェックする調査方法
まずは年次サーベイで組織全体のエンゲージメントを測り、その後パルスサーベイでスコアの変化を追っていくのが一般的なアプローチです。
2. サーベイの結果を分析する
続いて、サーベイで得られたデータを分析して取り組むべき重要課題を特定します。
分析するときの指標は以下の3つです。
- 総合指標
- レベル指標
- ドライバー指標
総合指標とは、組織全体のエンゲージメントを表す指標です。過去のスコアや同業他社の平均値と比較することで客観的に今のエンゲージメントを把握できます。
レベル指標とは、仕事に対してやりがいや熱意を持っているかを表す指標です。部署別、役職別、勤続年数別、年代別などに分解して分析すれば、どの部署でどのような層がエンゲージメントの低下に直面しているのかを具体的に把握できます。
ドライバー指標とは、「人間関係」「成長機会」「評価の公正性」といったエンゲージメントの要因を示す指標です。従業員のエンゲージメントに最も影響を与えている要因を見つけられます。
上記のような指標をもとに細かくスコアを分析することで、勘に頼ることなくしっかりとした施策を設計できます。
3. 結果をもとに施策を実行する
分析結果をもとに、具体的なアクションプランを策定して実行に移しましょう。
このとき、「全社で取り組むべきこと」と「各部署で取り組むべきこと」を分けて考えるのがポイントです。
たとえば、「評価制度への不満」が課題なら、人事制度の大幅な見直しが必要となります。一方で、「上司とのコミュニケーション不足」が課題なら、各部署の管理職が実践する1on1ミーティングの改善といった現場レベルのアクションが求められます。
分析によって判明した課題に応じて、適切な主導者を決めて次のアクションを計画しましょう。
4. 再びエンゲージメントサーベイを行う
実行した施策が実際に従業員のエンゲージメント向上につながったのか、その効果を検証することが重要です。
一定期間後に再度サーベイを行い、施策を実行した部署のスコアが他の部署と比較して改善したかどうかを確認します。なお効果の有無を測る場合は、パルスサーベイが有効です。
スコアが改善していれば、成功の要因を分析して他の部署へ横展開できないかを検討しましょう。もし改善が見られなければ、施策が的を外していた、あるいは効果が不十分だったと判断できます。再び分析のフェーズに戻って、新たな打ち手を検討するのが望ましいです。
PDCAサイクルを回すことにより、着実にエンゲージメントを向上させられるでしょう。
エンゲージメント向上のための人事施策
エンゲージメント向上のための人事施策を5つ紹介します。
客観的かつ公平な人事評価制度を設計・運用する
従業員の評価基準や評価項目がまだ曖昧な場合は、客観的かつ公平な人事評価制度を設計しましょう。頑張った分だけ正当に報われると実感できれば、エンゲージメントも向上しやすいです。
たとえば「360度評価」を採り入れると良いでしょう。直属の上司だけでなく同僚や他部署のメンバーも加わることによって、より公正で客観的な評価が可能となります。
また、個人で設定した目標に対する達成率をもとに評価を行う「MBO」を導入するのも有効です。事前に設定された目標や数値の達成度を測るため、感情や主観が入りにくくなります。
上記のような、上司の主観に左右されない透明性の高い評価制度をいくつか組み合わせて運用することが推奨されます。
コミュニケーションを活性化させる環境を整備する
エンゲージメントを向上させる取り組みとして、コミュニケーションを活性化させる環境を整備するのも有効です。従業員同士のコミュニケーションが活発になれば、信頼関係やチームワークが強化されやすくなります。
具体的には、以下のような施策や制度を実践してみると良いでしょう。
- フリーアドレス制度
- カフェスペースの設置
- サンクスカード
- ピアボーナス(少額の報酬やポイントを送り合う取り組み)
- シャッフルランチ
コミュニケーションが自然と発生するような環境づくりをすれば、困ったときに相談しやすくなったり会議で意見を出しやすくなったりします。
また、信頼関係が強くなってチームとしての一体感が生まれるでしょう。結果的に組織全体のパフォーマンスも向上する可能性があります。
現代に合った働き方制度を導入する
現代に合った働き方制度を導入するのもエンゲージメント向上の施策として効果的です。従業員が自分のライフスタイルや家庭の事情に応じて柔軟に働けるようになり、「会社が一人ひとりを大切にしている」と実感して帰属意識や愛着心が高まる可能性があります。
具体的には、以下のような制度です。
- リモートワーク
- フレックスタイム制度
- 時短勤務
- 時間単位での有給取得制度
- 週休3日制度
各従業員がさまざまな事情を抱えていることを会社側が考慮し、自分に合った働き方を自主的に選択できるように制度を整えることが大切です。
制度を整備して柔軟な働き方を推進すれば、実際に従業員の生活スタイルが大きく変化することが起きたとしてもキャリアを諦めることなく働き続けられます。会社としても貴重な人材を失わずに済むというメリットがあります。
多様なキャリア形成を支援できる仕組みを作る
多様なキャリア形成を支援できる仕組みを作ることも重要です。自分に合った目標や目指したいキャリア像が明確になれば、それを達成するために行動意欲も高められる場合があるためです。
具体的な施策や制度とその内容を以下にまとめました。
| 社内公募制度 | 別部署や新プロジェクトに、社員が自らの意思で応募できる |
|---|---|
| さまざまなキャリアパスの設計 | 管理職を目指すコースだけでなく、専門性を極めるコースを設計する |
| キャリア面談の制度化 | 上司や人事部の担当者に中長期的なキャリアについて相談できる面談を定例化する |
| 社内副業・兼業制度 | 業務時間中に所属している部署以外で働くことを認める |
従業員が自分に合ったキャリアパスを見つけられるように多様な選択肢を設けたり、なりたいキャリア像を叶えられるようにさまざまな制度を導入することが推奨されます。「この会社でなら、自分の夢や目標を実現できる」と帰属意識も向上する可能性があります。
ライフステージを考慮した福利厚生を採り入れる
従業員の健康や生活を支援するために、ライフステージを考慮した福利厚生を採り入れるという方法もあります。
たとえば、以下のような福利厚生です。
- 延長保育料の補助
- 介護のための時短勤務制度
- 不妊治療支援
- ベビーシッター割引
- 記念日休暇
- ワーケーション支援
今まで以上に福利厚生を充実させると、「社員一人ひとりのライフステージを考慮してくれている」と実感して会社への信頼感が深まりやすくなります。
また、若い世代や子育て世代だけでなく中堅向けの福利厚生も増やすことで、どの従業員も長期的に働きやすくなります。結果として、帰属意識の強化にもつながるでしょう。
エンゲージメント向上のために人事が行うべき管理職へのアプローチ
エンゲージメント向上のために人事が行うべき管理職へのアプローチについても紹介します。
エンゲージメントサーベイの結果を分析する方法を共有する
まず、エンゲージメントサーベイの結果を分析する方法を人事が管理職にレクチャーしましょう。
結果を共有するだけでは、管理職は何をすべきか分からず施策が実施されない可能性があります。
それを防ぐために、各部署の管理職を集めてサーベイ結果の読み解きワークショップを開催すると良いでしょう。
単にスコアの高低を見るだけでなく、どの項目が各部署のエンゲージメントに影響しているか詳しい見方を解説します。管理職自身が「うちのチームの真の課題は何か」を特定できるようになることが目的です。
結果の見方や活かし方が分かれば、それぞれの部署に合った次のアクションを考えやすくなるでしょう。
エンゲージメント向上のために管理職向けの研修を行う
サーベイ結果の活かし方やエンゲージメントを向上させるために有効な施策について研修することも大切です。
多くの管理職は、部下の意欲を引き出すための専門的なマネジメントスキルを学んだ経験がありません。よって、以下のようなことを学べる場を設けましょう。
- 1on1ミーティングの実践方法
- 面談時の質問方法や部下の話の聞き方
- 効果的なフィードバックの仕方など
座学だけでなくロールプレイングを通じて実践的なスキルを習得できる研修プログラムであると、なお良いです。各部署で従業員のエンゲージメントを向上させるために有効な関わり方を実践できるようになるでしょう。
エンゲージメントが向上した部署の施策を横展開する
エンゲージメント向上に成功した部署の施策を横展開すれば、効率的に組織全体のエンゲージメントを底上げできます。
まずは、エンゲージメントスコアが伸びた部署の管理職に「具体的にどのような取り組みをしたのか」「何が成功の要因だったのか」などを詳しくヒアリングしてみましょう。その内容を社内報で特集記事にするという方法もあるほか、スコア改善に成功した管理職を講師として迎えて社内勉強会を開催するという活かし方もあります。
他の管理職は、リアルな成功事例を知ることにより具体的な再現イメージが湧くため、自部署でも施策を真似しやすくなります。また「うちの部署でも何か新しい施策ができるかもしれない」とモチベーションが高まる可能性もあるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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