• 更新日 : 2026年1月14日

エリア社員とは?メリット・デメリットや運用におけるポイントを紹介

エリア社員とは、就業する地域が限定されている正社員のことです。従業員のライフステージや家庭の事情を考慮して、多様な働き方を支援できるようにと導入する企業が増えています。

実際にエリア社員制度の導入を検討している人の中には「具体的にどのような制度なのか知りたい」「導入するとどのようなメリットがある?」と気になる人もいるでしょう。

そこで本記事では、エリア社員の概要やメリット・デメリットについて詳しく解説します。また、運用におけるポイントやエリア社員制度を導入している企業例などもまとめています。

エリア社員とは?

エリア社員とは、勤務する地域(エリア)が限定されている正社員を指します。企業によっては「地域限定正社員」や「エリア総合職」などと呼称している場合もあります。

原則として本人の同意がない限り転居を伴う転勤がなく、慣れ親しんだ土地で働き続けられるのが特徴です。待遇面については無期雇用が基本であり、福利厚生に関しても総合職と同じ内容が適用されるのが一般的です。ただし、キャリアアップに関しては部長職以上にはなれないといった上限を設けている企業も存在します。

最近、従業員の多様な働き方を支援できるようにと、エリア社員の制度を導入する企業が増えています。また、転勤を理由とした離職を防げるだけでなく、地域に根ざした働き方を希望する層を受け入れて優秀な人材を確保することも可能です。

総合職や一般職との違い

エリア社員、総合職、一般職の違いについて以下の表にまとめました。

雇用形態エリア社員総合職一般職
転勤の有無限定された地域内で転勤あり
(転居を伴う転勤は原則なし)
全国・海外転勤あり原則なし
職務内容総合職に準ずる基幹的業務、または地域に密着した業務基幹的業務
(将来の幹部候補としての業務)
定型的・補助的業務
(一般事務、営業事務など)
責任・裁量の範囲比較的大きい最も大きい限定的
給与水準総合職より低い最も高いエリア社員より低い
主なキャリアパス支社や拠点での管理職候補将来の経営層や管理職候補事務の管理職やリーダー

エリア社員制度を導入する3つのメリット

転勤のない働き方を用意することで、優秀な人材の採用や定着を促進し、地域に根ざした深い信頼関係の構築によって事業の競争力を高められる点がメリットです。

ここでは、エリア社員の制度を導入するメリットを3つ紹介します。

1. 優秀な人材の応募数が増える可能性がある

エリア社員の制度を導入すれば、これまで「全国転勤あり」という条件に対して応募することをためらっていた人材にアプローチできるようになります。

たとえば、地元に貢献したいという意志を持つ優秀な学生、親の介護があるために実家を離れられないが豊富な経験・スキルを持つ社会人などです。それまでの条件や求人では応募してもらえなかった優秀な求職者が、「転勤なしなら」と会社の選考を受けてくれる可能性があるでしょう。

また、多様な働き方を認める先進的な企業として、採用活動でアピールすることも可能です。競合他社との明確な差別化にもなるため、以前よりも応募数が増えることにも期待できます。

2. 転勤を理由とした離職を防げる

エリア社員制度を導入して総合職からの転換も許可すれば、転勤を理由に社員が離職することを防げるようにもなります。

「パートナーの勤務地を離れられない」「子育ての環境を変えたくない」「親の介護で地元を離れられない」など、社員はさまざまな事情を抱えています。こういった家庭の事情で優秀な社員がキャリアを諦めざるを得ないケースは少なくありません。

もしエリア社員の制度を導入すれば、社員の多様なライフステージやさまざまな事情に寄り添った働き方を提供できます。

それにより、今まで培ってきた知識やスキルを活かし続けてもらうことも可能となります。また、貴重な人材やノウハウの流出を防ぎ、組織全体の力を維持・向上させることにも期待できるでしょう。

3. 地域密着型サービスを強化できる

エリア社員のような地域に精通した社員が腰を据えて勤務し続けることで、顧客との間に深い信頼関係を築けます。

たとえば、金融機関や不動産業において、数年ごとに担当者が変わるよりも10年以上同じ担当者のほうが顧客の立場からしても安心できるでしょう。顧客と強固な信頼関係を築くことができれば、持続的な売上にも期待できます。

また、その土地で生まれ育ったり長く暮らしたりしているエリア社員は、データだけでは分からない地域の文化や商習慣などを肌感覚で把握している人が大半です。そのような感覚を活かせば、地域に最適化された商品開発や細部まで配慮されたサービス提供ができるようになります。結果として競合他社との差別化になり、自社の商品やサービスのファンも増やせる可能性があります。

エリア社員制度を導入する3つのデメリット

エリア社員の制度を導入するデメリットを3つ紹介します。

1. 雇用管理が複雑になる

エリア社員制度を導入すると、総合職やエリア社員、一般職など処遇の異なる複数の正社員区分が社内に混在することになるため、人事管理の手間が増加します。

たとえば、総合職・エリア社員・一般職の給与テーブルを別々で管理したり、それぞれの職務範囲や評価基準を明確に定義したりなど、業務量が大幅に増えることが予想されます。また、エリア社員から総合職へコース転換する制度を設ける場合は、申請プロセスや適用条件なども詳細にルール化しなければなりません。

もし管理体制や制度の中身が曖昧だと、現場が混乱したり個別の例外対応に追われたりする可能性もあります。そうなると、人事部門の負担はさらに大きくなってしまうでしょう。

2. 待遇差について不満を持たれる可能性がある

異なる処遇の社員が同じ職場で働くことで、社員間に不公平感が生まれるリスクがあることも理解しておきましょう。

たとえば、転勤のリスクを負っている総合職の社員から「同じような仕事をしているのにエリア社員と同等の給与は不公平だ」という不満が出る可能性があります。反対にエリア社員からは「成果は同じなのに転勤がないだけで昇進の上限が決まっているのはおかしい」という意見が出ることも考えられます。

社員の間で不公平感が蔓延したり不満が募ったりすると、組織が一体感を失って全体の士気が下がることもあるでしょう。

3. 拠点や支社の廃止がしにくくなる

エリア社員を採用すると、経営判断として特定の地域の拠点や支社を閉鎖したり縮小したりする必要が生じた際の対応が難しくなる点にも注意が必要です。

勤務地を限定することを約束して採用したエリア社員は、原則として他の地域へ転勤させることができないためです。加えて、エリア社員は無期雇用の正社員であるため、簡単に解雇することもできません。整理解雇も法的なハードルが高く、強行すると不当解雇と見なされることも考えられます。

このように、事業の再編や撤退といった経営における重要な意思決定を行う際に、エリア社員が足枷となってしまう可能性があることは理解しておく必要があります。

エリア社員制度を導入・運用するときのポイント

エリア社員の制度を導入・運用するときのポイントを4つ紹介します。

拠点ごとに教育体制を整える

エリア社員の制度を実際に導入する前に、拠点ごとの教育体制を整えておきましょう。

エリア社員は特定の地域に留まり続けるため、本社で行われる集合研修やセミナーなどに参加する機会が限られがちです。その結果、本社勤務の社員との間に情報格差やスキル格差が生まれてしまうリスクがあります。

従業員間の格差を防ぐべく、拠点ごとに以下のような教育体制を整えることが推奨されます。

  • eラーニングシステムの導入により、全社員が同じ内容の研修を受けられるようにする
  • 本社で行われる研修をオンラインで同時配信する
  • 各拠点に指導役となる先輩社員(メンター)を配置し、OJTを強化する

上記のような取り組みを実施し、どこにいても質の高い教育を受けられる体制を構築しましょう。

また、総合職と同等の教育を受けられるようにすれば、将来的にエリア社員が総合職に転換する際の研修がスムーズになるというメリットもあります。

業務の範囲を明確にする

総合職とエリア社員が同じ職場で働く場合は、それぞれの業務範囲を明確に定義しておく必要があります。

業務範囲が曖昧だと、総合職の社員から「なぜ違う業務なのか」エリア社員から「総合職と同じ仕事を任せてもらえないのはなぜか」と疑問を持たれる可能性があるためです。

そのため、職務記述書を用いて以下のようにまとめると良いでしょう。

  • 総合職:将来の幹部候補として、全国規模のプロジェクトや新規事業の立ち上げを担う
  • エリア社員:特定地域の顧客との長期的な関係構築や地域に特化したサービスの改善を担う

業務の範囲だけでなく、期待される役割や責任の範囲なども一緒に言語化しておくと納得してもらいやすいです。

総合職とエリア社員の違いを明確にしておくと、業務内容に差があることに不満も持たれにくくなるほか、評価や待遇差に対しても不公平感が出にくくなるでしょう。

納得感のある給与体系にする

総合職とエリア社員に給与差を設ける場合は、根拠を明確に説明できるようにすることも重要です。「転勤がないからなんとなく給与が低い」という曖昧な理由では、エリア社員の不満を募らせてしまう可能性があります。

そのため、給与に差分を設ける理由も含めて、納得感のある給与体系を構築しましょう。たとえば、全国転勤の可能性がある総合職には、そのリスクや負担に対する対価として転勤リスク手当を支給している企業もあります。また、エリア社員には地域貢献度といった別の評価軸でインセンティブを設定している企業もあります。

このように、それぞれの働き方や役割の違いを考慮し、客観的で公平な給与体系を設計するよう工夫するのが望ましいです。

なお、エリア社員の給与は総合職の8割〜9割程度に設定している企業が多く見受けられます。ボーナスも総合職より低く設定することも可能ではありますが、合理的な範囲にとどめることが推奨されます。

多様なキャリアパスを設ける

エリア社員にも総合職と同様に多様なキャリアパスを用意することが大切です。「エリア社員は課長までしか昇進できない」といった画一的なキャリアパスでは、向上心の高いエリア社員がいた場合に本人のモチベーションを下げてしまう恐れがあります。

たとえば、総合職と同様にマネジメントできるコースを用意したり、特定の分野を極める専門コースを設けたりすると良いでしょう。また、本人の希望やライフステージの変化に応じて、総合職へ転換できる制度を整備するという方法もあります。

さまざまなキャリアパスを用意すれば、社員のキャリアや希望などに柔軟に対応できるようになるため、優秀な人材の流出を防ぐことにもつながります。

エリア社員制度を導入している主な企業

エリア社員の制度を導入している主な企業や各会社の制度の内容を紹介します。

株式会社ファーストリテイリング

世界的なアパレルブランドのユニクロやジーユーを展開する株式会社ファーストリテイリングは、「地域正社員」という制度を運用しています。地域正社員として採用されると、転居を伴う異動は本人の希望がない限り原則としてありません。

地域正社員の異動は、自己申告によってのみ可能です。たとえば、社内公募によって国内外のさまざまなポジションに挑戦できるほか、転勤ありのグローバルリーダー職へ転換することもできます。

株式会社ファーストリテイリングは、地域に根ざした店舗づくりを目指しています。それぞれの店舗がその地域に合った商品やサービスを提供できるよう、地域正社員を積極的に採用しているのでしょう。

参考:ユニクロ(UNIQLO)地域正社員(フルタイマー) 中途採用|ファーストリテイリング

株式会社ニトリ

家具・インテリアの大手である株式会社ニトリは、「マイエリア制度」を導入しています。これは、従業員が働く地域を指定することによって、就業場所を転居することなく通勤できるエリアに制限できるという制度です。

マイエリア制度の利用期間については規制がないため、いつでも申請・解除ができます。そのため、結婚や出産などをきっかけに、従業員の好きなタイミングで利用を申請したりもとの働き方に戻ったりすることが可能です。

また、この制度を申請したとしても、給与が減額されることも役職が制限されることもありません。エリア社員に転換したからといって、家計が圧迫される心配がない点も魅力です。

ただ、対象者のみ条件が設けられており、入社から一定期間が経った総合職の社員が対象となっています。

参考:【ニトリHD】ワークライフバランスの推進:転勤なし・報酬の 減額なしの「マイエリア制度」を3月より導入 | 株式会社ニトリホールディングスのプレスリリース

株式会社NTTデータ

大手IT企業である株式会社NTTデータは、「地域会社」の制度を導入しています。たとえば「株式会社NTTデータ北海道」や「株式会社NTTデータ九州」など、地域ごとに独立した会社が9社あります。

また、採用も各社が独自に行っており、地域会社に就職した人の勤務地はその会社が事業を展開するエリアに限定されるのが特徴です。転勤も基本的にはなく、事業の状況や本人の希望などをもとに決定されます。

地元に貢献しながら最先端のITプロジェクトに携われるのが、地域会社の魅力でしょう。特にUターンやIターン就職を希望する求職者は、地域での安定した生活と大手企業でのやりがいのある仕事を両立できます。

参考:【公式】NTTデータ地域会社 経験者採用情報|NTTデータ


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