- 更新日 : 2025年12月5日
適性検査の性格診断を「配属・育成」まで活かすには?
「性格診断の結果だけで、入社後の活躍や定着を予測できるのだろうか?」
「うちの会社のミスマッチは、本当にこの診断テストで解決できるの?」
「診断結果を配属や育成にどう活かせばいいのか分からない」
上記のように、人事担当者の皆さんは、疑問を抱えていませんか?
本記事では、単なる検査の選び方でなく、結果の具体的な分析・判断基準から、配属・育成・チームビルディングに結果を活かす実践的なノウハウを解説しますので、ぜひ参考にしてください。
適性検査の性格診断とは
適性検査の性格診断とは、採用選考の過程で、応募者の性格や価値観、行動の特徴を客観的に測定するための検査のひとつです。
客観的なデータをもとに応募者の人物像を把握し、企業文化とのミスマッチを防ぐために、性格診断は採用活動の中でとても大切なツールとなっています。
性格診断で企業側が分かること
性格診断を行うことで、応募者が職務や組織で長く活躍できるかどうかを、多面的に予測できるようになります。
性格診断では面接だけでは分かりにくい内面の特徴を、客観的なデータとして把握できるからです。
たとえば、組織への適応力(社風にどれだけなじみやすいか)や、職務への適性(仕事内容に必要な性格的な特性)も分かります。
性格診断の結果から、ストレス耐性やプレッシャーへの対処方法についての予測が可能です。
また、得られたデータは、面接で感じた人物像を客観的に裏付ける材料としても活用できます。
これらの情報は、雇用のミスマッチを防ぎ、応募者が最大限に能力を発揮できるかを判断する上で有効です。
性格診断の3つの主な目的
性格診断は、応募者の定着と活躍を見極めるために大切な検査です。
性格診断によって内面の特性やストレスへの強さなどを客観的に評価できるため、企業の文化や仕事の内容と本人とのミスマッチを防げます。
組織・職務への適応性の評価
性格診断で適応性を評価することは、応募者が企業内で長く活躍し、定着できるかを見極めるためにとても大切です。
応募者の内面的な特性が、働く環境や仕事内容と合致しているかを客観的に見極められるからです。
評価の主な内容としては、まず企業文化との相性を測ります。たとえば、応募者の価値観が、協調性を重んじる雰囲気や競争を重視する雰囲気などの企業の社風と、どの程度合っているかを確認します。
仕事内容への適性も大切です。細かい事務作業が得意か、あるいは人と接する営業の仕事に向いているかなどもチェックします。
性格診断の評価によって、雇用のミスマッチを防ぎ、早期離職のリスクを減らせるでしょう。
ストレス耐性と情緒の安定性の確認
性格診断では、応募者が長期間にわたって安定して働けるかどうかを予測するために、ストレスへの強さや感情の安定性などを測定します。
これは、仕事中のプレッシャーや困難な状況にどう対応できるかが、早期に退職するリスクと大きく関わっているためです。
応募者が仕事上のストレスに直面したときに、どのように心のバランスを保てるかも評価します。
情緒の安定性が著しく低いと診断された場合には、入社後にメンタルの不調が起きたり、早期に退職したりする可能性が高いと判断する材料となります。
検査結果は、企業が長く活躍できる人材を確保するための判断材料となるでしょう。
面接の補助と人物理解の深化
性格診断は、面接時の客観的な補助資料として活用でき、応募者の人物像をより深く、多面的に理解するのに役立ちます。
面接という限られた時間や形式だけでは、応募者の隠れた側面を把握しにくいことがあるためです。
面接官が受けた応募者の印象をデータにもとづく客観的な視点で裏付けたり、これまで気づかなかった矛盾点を明らかにできます。
診断結果をもとに応募者の強みや弱みを抽出し、面接時により深く掘り下げる質問を考える材料としても活用されています。
性格診断を取り入れることで、主観的な判断に左右されず、一貫性のある採用判断が可能です。
性格診断(適性検査)の種類
性格診断には、SPI、玉手箱、GAB、TALなど種類があり、それぞれ測定する特性や形式が異なります。各検査の特徴をしっかり理解することで、自社が求める人材像に合った検査を選べます。
また、適性検査の種類について、下記の記事で詳しく解説しています。 適性検査の種類について知りたい方は、ぜひご覧ください。
SPI(総合適性検査)
SPIの性格検査は、応募者の「人となり」や「働き方」を客観的に把握し、企業や職種への適応しやすさを予測するために欠かせない検査です。
SPIの性格検査では、応募者の行動特性、意欲、情緒、価値観など、多角的な側面を約300問で測定できます。
また、回答の一貫性や虚偽の傾向がないかどうか、つまり正直に答えているか(ライ・スケール)も重要なポイントとなります。
もし回答に矛盾や極端な虚偽の傾向が見られると、診断結果の信頼性が下がり、不採用の理由になる場合もあります。
能力検査とは異なり、「正解」を探すことよりも、素直な気持ちで正直に答えることが大切です。
玉手箱
玉手箱は、トップクラスのシェアを誇り、応募者の性格に加え、仕事への意欲やモチベーションも詳しく測定できる適性検査です。
単なる基本的な性格特性だけでなく、企業や職種への適合性(性格検査)や、応募者がどのような環境で力を発揮できるか(意欲検査)も、多角的なデータで判断できます。
玉手箱の結果には、応募者が自己を過度に良く見せようとしていないか(信頼性・一貫性)を厳しくチェックする仕組みが備わっています。企業は面接で得た印象を客観的なデータで裏付け、虚偽回答による採用リスクを最小限に抑えることが可能です。
玉手箱は、選考の公平性を保ちつつ、入社後の定着と活躍を高い精度で予測するための有効なツールです。
GAB
GABの性格診断は、とくに応募者の組織適応性とストレス耐性を、深く掘り下げて測定することに特化しています。
検査では、企業や組織の文化への適合度に加え、プレッシャー下での精神的な安定性や回復力を重点的に把握できるからです。
協調性やチームワークの能力、指導力やリーダーシップといった点も重視されます。こうした診断の結果は、どの部署に配属すればよいか考える際や、入社後の教育や育成をする上での参考資料として活用されます。
高いレベルのコミュニケーション能力などが求められる職種で、応募者の性格と能力がチェックされる検査です。
TAL
TALの性格診断は、図形配置問題というユニークな形式を用いて、応募者の精神構造や衝動性、メンタルヘルスを深く測ることに重点を置いているのが特徴です。
本人が意識していない行動パターンを分析するため、面接では見抜きにくい潜在的な特性や、組織での役割適性を高い精度で詳しく把握できるからです。
とくに、ストレス耐性や衝動性、組織でのリーダーかフォロワーかといった役割適性が重視して測定されます。
質問内容がストレートであるため、応募者が意図的に虚偽の回答をしようとすると、回答の中に矛盾が出やすくなります。
図形問題など、知識では対策しにくい要素が多いことから、採用の公平性を保ちつつ、応募者の一貫した特性を測定するうえで有効なツールと言えるでしょう。
性格診断の結果を「配属・育成」に活かす方法
性格診断は、入社後のパフォーマンス最大化と定着に欠かせません。性格診断によって個人の特性に合った配属先を選べるほか、一人ひとりのやる気を高める指導や、早期離職のリスクに先手を打ったサポートが実現できるからです。
配属先の決定|職務特性との「相性」分析
適性検査の結果は、採用後にどの部署へ配属するかを決める際、個人の性格や特徴と、職務や職場の雰囲気とがどれだけ合っているかの分析に活用されます。
単に能力があるかどうかだけでなく、その人の行動特性が職務に必要な特性と合致しているかを見極め、入社後のパフォーマンスを最大化できるからです。
たとえば、「活動性・積極性」のスコアが高い人の場合は、新規開拓や提案が多い営業や企画の仕事が向いています。一方、スコアが低い場合は、じっくりと考える経理や研究開発のような職種が適しています。
「協調性・チーム志向」が高い人は、メンバー同士の連携や調整が求められるプロジェクトやチームリーダーの役割を担う部署に向いています。
また、「慎重性・計画性」が高い人は、リスク管理やルールの順守が重要となる法務や品質管理などの部門で力を発揮することが期待できるでしょう。
適性検査の結果に基づいて、個人の特性を最大限に活かせる場所に配属することが、早期の退職を防ぎ、社員がしっかりと活躍できる職場づくりにつながります。
社員の育成|特性に合わせた「動機付け」と「指導」
適性検査の結果は、入社後の社員育成で役立ちます。個人ごとの意欲や感情の特徴を分析することで、それぞれに合ったマネジメントを実現できるからです。
社員一人ひとりの性格や、やる気のもとを正しく把握することで、指導の方法を個別に工夫でき、その人の力を最大限に引き出せます。
たとえば、「達成意欲」が強い社員には、明確な数値目標や昇進などのゴールを示すことで、やる気を高めることが効果的です。
一方で、「内省性」が高い社員には、これまでのプロセスをしっかり認めながら、丁寧に改善点を伝える指導が向いています。逆に、内省性が低い社員には、結果とやるべき行動をシンプルに伝えるとよいでしょう。
「ストレス耐性」に関する情報から、対人関係でストレスを感じやすい社員である場合は、落ち着いて仕事に集中できる環境を優先的に整えることも有効です。
社員一人ひとりの特性に合わせた動機付けと指導を行うことが、定着率の向上と人材の早期戦力化につながります。
早期離職防止|リスクの「早期発見」と「先回りケア」
適性検査の結果は、早期離職のリスクを事前に特定し、リスクに応じた「先回りケア」を行うための貴重なデータとして活用されます。
なぜなら、応募者の情緒的な安定性や環境の変化に対する抵抗力といった特性を知ることで、どのような状況で離職につながるストレスを感じやすいか、事前に予測できるからです。
たとえば、情緒的安定性のスコアが低い人には、入社後のフォロー面談の回数を増やすなど、とくに丁寧にサポートします。
また、「変化への抵抗」のスコアが高い場合は、異動や配置転換をなるべく避けるほか、どうしても変更が必要な場合には、事前にしっかり説明を行いましょう。
さらに、協調性が極端に高い人材は不満を溜め込みやすい傾向があるため、定期的な面談で「本音で話しにくいことはないか」といった質問をして、素直に話しやすい雰囲気を作ります。
性格診断によるリスクの早期発見と個別ケアこそが、従業員のメンタルヘルスを守り、人材の定着率を高める大きなポイントです。
性格検査をチームビルディングに活かすステップ
性格検査の結果をチーム内で共有することは、相互理解を深め、生産性を高めます。
検査の結果は個人の優劣を評価するものではなく、共通言語として活用することが大切です。それぞれの特性に合わせた役割分担を行い、継続的に業務に組み込んでいくことが、成功のポイントとなります。
ステップ1:目的と「共通言語」の確立
性格診断の結果をチームビルディングに活用する最初のステップは、「相互理解とコミュニケーション改善」を目的とすることにチーム全員で合意することです。
診断結果は、個人の評価や優劣を比べるために使うのではありません。あくまで、メンバー同士の相互理解を深めるための道具として活用する必要があります。
まずは、診断で扱われる主な性格特性(外向性・協調性・慎重性など)の意味をチームの全員が理解し、共通の認識を持てるようにしましょう。
こうした特性を「共通の言葉」として使えるようにすると、メンバーは性格の違いについて感情的にならず、冷静で建設的な話し合いができるようになります。
診断結果をチーム内の共通言語として活用し、安全に意見を言い合える心理的な環境をつくることが、効果的なチームビルディングの土台となります。
ステップ2:個人の特性を「オープン」にし、違いを学ぶ
ステップ2では、診断結果を互いに共有し、自分とほかのメンバーの特性の違いをより深く理解するための体験型ワークを行います。
さまざまな行動傾向を持つメンバーの考え方や判断の流れを知ることで、チーム内で対立するのではなく、多様性を受け入れる基盤ができるからです。
たとえば、本人の同意を得た上でスコアの数値ではなく、「この人は意思決定が慎重なタイプ」といった行動傾向をみんなで共有します。
「締切が迫ったとき、あなたはどんな行動をとりますか?」など、共通の状況を想定し、それぞれがどのように行動するかを話し合う体験型のワークも効果的です。
お互いの違いを理解し合うことで、チームのコミュニケーションの質が高まり、より強い連携が生まれます。
ステップ3:役割分担と相補性の確保
ステップ3では、診断結果から得られた特性に基づき役割分担を最適化し、メンバー同士が相性を補い合える関係性を構築します。
個人の「強みの発揮」を意識した役割分担を行うことで、チーム全体の生産性と効率性が向上するためです。
たとえば、外向性や活動性が高い人には、外部との交渉やチームの士気を高める役割を担当してもらいます。
一方で、内向的で慎重なタイプの人には、データ分析やリスクアセスメントなど、注意深さが求められる役割が適しています。
コミュニケーションを取る際も、協調性が高い人には「チームのために」と働きかけたり、論理的なタイプの人には「データや根拠」を示したりするように、相手の特性に合わせた伝え方を工夫しましょう。
それぞれの特性を活かした役割分担と、相互の違いを尊重したコミュニケーションスタイルの適応は、成果を出せるチーム作りに欠かせません。
ステップ4:業務・プロジェクト運営への継続的な組み込み
性格診断の結果は、一度きりの研修で終わらせるのではなく、日々の業務フローやプロジェクトの運営に継続して取り入れることが大切です。
メンバーそれぞれの特性に配慮した仕組みを日常的に活用すれば、多様な意見が生かされる文化が定着し、チームとして安定した成果を上げやすくなるからです。
たとえば会議では、内向的なメンバーの意見もきちんと聞く時間をあらかじめ設けるなど、特性を配慮したルールを導入します。
新しいプロジェクトチームを作る際には、意識的に異なる特性のメンバーをバランスよく配置することで、さまざまな角度から意見を出せるような設計を目指します。
メンバーの特性理解を日常業務にしっかりと根付かせることが、持続的にチームの力を高めるためのポイントです。
チームビルディングにおける注意点
性格診断の結果をチームビルディングに活かすには、信頼関係を守ることが重要です。
診断結果を人にラベルを貼るために使ったり、個人のプライバシーを軽視したりしてはいけません。無理に診断内容を共有させることは避け、メンバーが安心してコミュニケーションできる土台を作ることが大切です。
ラベル付け・評価に使わない
性格診断の結果を「あなたは○○な人だ」とレッテル貼りに使ったり、人事評価の材料にしたりすべきではありません。
診断結果をそのまま評価に結びつけてしまうと、メンバーが診断内容を素直に受け入れなくなり、チーム内の信頼関係が壊れてしまう可能性があるからです。
性格診断はあくまでお互いを理解し合い、コミュニケーションを円滑にするためのツールとして活用することが大切です。
強制的な共有を避ける
性格診断の結果は、個人のプライバシーに配慮し、強制的な共有は避けるべきです。
結果を公開するかどうかは、必ず本人の意志を尊重する必要があるからです。
「相互理解のために活用する」という目的をはっきりと伝え、自発的な共有を後押しする姿勢が、信頼関係を築くうえで大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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