- 更新日 : 2025年12月5日
職場でわざと音を立てる人の心理とは?パワハラ・モラハラにあたる可能性と対処法
職場で「わざと大きな音を立てる人」に悩まされた経験がある人はいませんか。このような行動は、周囲に深刻なストレスを与えることが多く、とくに職場では集中力の低下や人間関係の悪化、さらには休職や離職といった問題につながる可能性があります。当記事では、「わざと音を立てる人」の心理状態やパワハラ・モラハラにあたるかどうか、また職場での具体的な対処法を解説します。
目次
わざと音を立てる人の性格傾向
わざと大きな音を立てる人は、感情的になりやすく、衝動的に行動してしまう人や、おおざっぱで細かいことを気にしない人に多い傾向があります。
また、プライドが高く自己中心的で、自分の行動が周囲の人にどのような影響を与えるかを想像できない人もいます。こうした人は、気づかないうちに他人に不快感を与えたり、威圧的な態度を取っていることも少なくありません。
一方で、意図的に音を立てることで自分の存在を誇示したり、ストレスを発散していたりする場合もあります。そのため、単に性格傾向によるものとせず、ストレスの有無や心理状態も考慮して対応することが必要です。
わざと音を立てる人の心理状態とは
わざと音を立てる人の背景には、さまざまな心理が隠れています。ストレスや性格傾向、他者への影響を意識しない無自覚な行動など、代表的な6つの心理状態を紹介します。
1. ストレスが限界に近いというサイン
ドアを強く閉めたり、物にあたったり、または舌打ちのような音を立てる行為は、本人のストレスが限界に近いサインの可能性があります。たとえば繁忙期の過度な業務量や、業務の進捗状況が思わしくない場合などにプレッシャーを感じ、無意識にイライラを表現していると考えられるでしょう。
こうした行動は周囲には攻撃的にみえますが、実は本人のストレスが限界で、感情をうまくおさえきれないというSOSのサインが隠れていることもあります。普段は穏やかな人がこういった行動を取る場合は、心身の疲弊が溜まっているサインかもしれません。
2. 自分を強く見せたい傾向
わざと大きな音を出す行為は、自分を大きく見せたいという心理が隠れていることも考えられます。とくにプライドの高い人や自分に自信が持てない人にこの傾向が多く見られます。見下されたくないという思いから、あえて威勢よくふるまうのが特徴的です。
PCのキーを大きな音を立てて叩いたり、書類やファイルを乱暴に置いたりなど、周りの人に威圧感を与え話しかけづらい雰囲気を意図的に出しています。わざと大きな音を立てることで自分がイライラしている様子を露骨に表し、不機嫌であることをアピールしたいと考えているのです。
3. 性格・無自覚によるもの
いちいち音を立てる人の中には、細かいことを気にしないおおざっぱな性格で、無自覚に音を立てている場合もあります。物の扱いが雑になったり、動作が乱暴になったりしても、それが周囲にどのような影響を与えるか想像できていないのです。
また本人に悪意がなく、他の場合のような攻撃やストレスなどの心理状態とは異なります。ただし、このタイプは注意しなければ改善されにくい傾向があります。
4. 注目を集めたい心理
わざと大きな音を立てる行為は、間接的な自己主張の手段となっている場合があります。構って欲しい、自分の存在を認めて欲しいという承認欲求が満たされていないことの裏返しです。
わざと大きな音を立てて周囲の関心をひくことによって「どうしたの?」「何かあった?」と気にかけてくれるのを期待している心理が隠れています。とくに自己主張や自分の意見を言葉で伝えることが苦手な人に多く見られる傾向です。
このような人は、大きな音を立てることで、無意識に自分の不満や存在感を周囲に示そうとしている可能性があります。
5. 嫌がらせ・攻撃的な意図があるケース
わざと大きな音を立てる行為が、単なるストレスの発散や自己主張ではなく、特定の人に嫌がらせをしたいという意図を含んでいるケースもあります。
職場では、書類を叩きつけるように置いたり、棚の開き戸を勢いよく閉めたりするなど、特定の人の前だけで行われるのが特徴的です。不快感を通り越して威圧感を与える行為を継続的に行い、相手にネガティブなメッセージを送ります。
このような意図的で継続的な威圧行為は、モラハラ・パワハラにあたる可能性が高いため、個人の問題として抱え込まず、上司や人事部などに相談することが大切です。
6. 育ちや環境の影響
自分の出す音に無関心な人や生活音がうるさい人は、育ちや過去の環境が影響していることがあります。
たとえば、マンションやアパートなどの集合住宅とは異なり、隣接した家がない戸建てで育った場合は、親から生活音についての配慮を教わる機会が少なくなるかもしれません。
「ドアを静かに閉める」「ものを乱暴に扱わない」といった所作は、家庭のしつけや価値観によるところが大きいでしょう。
このような人は、意図的ではなく自然にふるまっているだけで悪気がない場合がほとんどです。安易に指摘するのではなく、背景にある価値観のずれを理解したうえで、配慮しながら伝えることが求められます。
大きな音を立てる人は病気や発達特性の可能性がある?
大きな音を立てる人の背景には、性格や心理の問題ではなく、心身の病気やADHDなどの発達特性が関係している場合もあります。ここでは、ストレス障害やADHDなどが行動に及ぼす影響も含めて紹介します。
ストレス障害による行動変化
わざと大きな音を立てる行為は、なんらかのストレスによるメンタル不調、とくに適応障害のような、医学的な対応が必要なものによる行動変化が原因の場合があります。
メンタル不調によって感情のコントロールが困難となり、大きな声を出したり、物を乱暴に扱うという攻撃的な行動が見られることがあります。転職や配置転換といった環境の変化や、人間関係のトラブルなどが引き金となって発症することが多いです。
本人自身がストレスの限界を感じてSOSのサインを出している可能性があるため、産業医に相談して専門機関への受診を促すなど、慎重に対応することが求められます。
ADHDなどの発達特性との関連
発達障害のひとつであるADHD(注意欠如・多動性障害)の特性が原因で、無意識のうちに大きな音を立ててしまうケースも見られます。
この特性の人は、不注意な行動や衝動的な行動を取ることが少なくありません。ドアを静かに閉めたり、ものをそっと置いたりといった動作の微調整が苦手な場合があります。また、自分が発する音が騒音となり、迷惑をかけていることに気づきにくい特性もあります。
わざとではないということを理解したうえで、具体的な行動をやさしく伝えることが必要でしょう。
職場でわざと大きな音を立てる人はパワハラ・モラハラに該当する?
職場で意図的に大きな音を立てて威圧感を与える行為は、パワハラやモラハラに該当する可能性があります。ここでは厚生労働省が定めるパワハラの定義やモラハラの特徴を紹介します。
厚生労働省のパワハラの定義
パワハラ(パワーハラスメント)とは、労働施策総合推進法により以下の3つの要素すべてを満たすものと定義されています。
- 優越的な関係を背景とした言動であること
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動によること
- 労働者の就業環境が害されるような言動であること
立場が上司と部下の関係であって、これらの条件を満たす度を超えた威圧的な行為が見られ、部下が強いストレスを感じている場合はパワハラに該当する可能性が高いと考えられます。
ただし、必ずしも「上司から部下への行為」とは限りません。部下が上司より専門的な知識や経験をもち業務上優位な立場にある場合や、同僚や部下が集団で上司に行う場合も、優越的な関係にあてはまる可能性があります。
継続性があればパワハラと認定されるリスク
職場で、たとえば上司が「書類やファイルを叩きつけるように置く」「扉を乱暴に閉める」など、わざと大きな音を立てるような威圧的な行為を繰り返し行うとします。こうした行為を上司が無自覚で行っていたとしても、部下がストレスを感じているならパワハラに該当する可能性があります。
とくに継続性が見られるかどうかもパワハラ認定の判断基準となるため、日時や言動を記録しておくことが大切です。
意図的に威圧する行為はモラハラの可能性も
パワハラが職場内で優位性の関係を背景として起こるものに対して、モラハラ(モラルハラスメント)は道徳や倫理に反した嫌がらせで、職場や家庭内など、どこにでも起こります。
職場では上司と部下だけでなく同僚同士でも起こり、特定の人を無視したり大きな音を立てて威圧感を与えたりする行為も、モラハラに該当する可能性が高いです。繰り返されると相手はメンタル不調を発症し、休職や離職につながることも考えられます。
職場で大きな音を立てる人による組織的なリスク
職場で頻繁に大きな音を立てる人がいると、周囲の社員が不快感やストレスを抱えやすくなります。その結果、職場の雰囲気が悪化したり、生産性が低下したりするケースも考えられるでしょう。ここでは職場で起こりうる具体的なリスクについて紹介します。
離職や休職による人件費コスト増
職場にわざと大きな音を立てるような人がいると、周囲の社員や特定の社員が強いストレスを感じ、離職や休職につながる恐れがあります。
厚生労働省の令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、1年間にメンタル不調で1か月以上休職または退職した労働者がいた事業所の割合は、12.8%にものぼっています。
社員が休職すれば、他の社員の業務量が増えて残業代が発生し、離職すれば補充のための採用、教育コストがかかるのが必然です。結果的に組織の人件費効率を悪化させることにつながります。
参考:厚生労働省|令和6年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況
チームの雰囲気や生産性の低下
職場でわざと大きな音を立てる行為により、周囲の社員が常に緊張感や不快感を抱くことが考えられます。結果としてチームの信頼関係が損なわれてコミュニケーションが減少するなど、雰囲気が悪くなる可能性が高いでしょう。
気を取られたり萎縮したりすることで集中力が低下し、作業効率が落ちることも少なくありません。このような状況が続けば、組織全体の生産性に悪影響を及ぼすことも考えられます。
職場で大きな音を立てる人の対処法
職場で大きな音を立てる人に対しては、個別対応だけでなく職場全体で取り組むことが大切です。ここでは社員から相談を受けた場合の具体的な対処法を紹介します。
職場全体でマナーとして注意喚起する
職場で個人的に注意すると角が立ち、仕事に支障をきたす可能性もあるため、まずは職場全体でマナーの共有を図りましょう。
具体的には「ドアは静かに閉めよう」「備品は大切に扱いましょう」といった基本的な行動をポスターにして掲示したり、朝礼で周知したりするなど職場全体に音の基準を再認識させます。
とくに集中力を必要とする業務が多い職場では、周囲の社員への配慮を組織として促すことで、個人への直接的な対応を避けられ、職場の雰囲気を改善する効果が見込めます。
本人にやんわり注意する
職場でマナーの共有後も改善が見られない場合は、本人と面談する機会を設けましょう。直接注意する場合は、強く指摘するのではなく、配慮を意識した伝え方が大切です。
たとえば「最近大きな音が気になりますが、仕事で悩んでいることがありませんか?」と相手の状況や気持ちを尊重しながら、やんわりと改善を促します。関係性を損なわずに相手に気づきを与えられ、改善につながる可能性が高いでしょう。
席替えや配置転換をする
わざと大きな音を立てるような行為が、特定の社員への影響が大きい場合は、レイアウトを変更したりデスクの向きを変えたり、パーテーションを設置して席を離すなどの工夫が有効です。
必要に応じて配置転換も検討し、環境面で周囲のストレスを軽減します。ただし本人が排除されたと感じないように配慮し、職場全体の快適な環境づくりとして行うと良いでしょう。
こうした対応によりストレスの緩和と職場の雰囲気の改善が期待できます。
産業医や専門機関に相談する
「わざと大きな音を立てる」行為の背景に、強いストレスや悩みを抱えていると考えられる場合は、職場の産業医や専門機関に相談しましょう。産業医は、プライベートに配慮しながら医学的な対応が必要かどうか判断し、必要であれば本人に受診を促すことが可能です。
また、厚生労働省の総合労働相談コーナーでは、職場の人間関係やパワハラなど、あらゆる分野の労働問題に関して無料相談に対応しています。専門家に相談することで、その行為がハラスメントに該当するかどうかの判断も含め、客観的かつ適切な対応策を検討できます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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