• 作成日 : 2025年8月19日

リスケジューリングとは?意味や流れを解説

ビジネスシーンで頻繁に耳にする「リスケ(リスケジューリング)」とは、一般的には一度組まれた予定(スケジュール)を改めて組み直すことを指します。

急なトラブルや状況の変化に対応するためには欠かせない業務ですが、その進め方一つで、相手に与える印象は大きく変わります。場合によっては、今後の関係性に影響を与えてしまうことも少なくありません。

この記事では、銀行融資におけるリスケジューリングの基本的な意味から、具体的な進め方のステップ、注意点などをわかりやすく解説します。

リスケジューリングとは?

企業の資金繰りが悪化した際に、一時的に財務状況を安定させるための手法がリスケジューリングです。一般的に「リスケ」とも呼ばれ、金融機関との合意に基づき、既存の借入金に対する返済条件を見直すことを指します。

これは、経営の立て直しを図るための時間的猶予を生み出すことを目的とした、財務戦略上の一つの選択肢となり得ます。本章では、リスケジューリングの基本的な定義と、なぜ今この手法が注目されているのか、その背景を説明します。

借入金の返済条件を変更する手続き

リスケジューリングとは、金融機関との交渉を通じて、借入金の返済スケジュールを再設定する手続きを意味します。

具体的には、一定期間、元金の返済を据え置き、利息のみの支払いに変更してもらう、あるいは返済期間を延長して月々の返済額を減額してもらうといった対応が考えられます。これにより、企業はキャッシュ・フローの圧迫を緩和し、手元資金を確保することが可能になります。ただし、これは債務免除ではなく、あくまで返済の先延ばしである点を理解しておくことが肝心です。

リスケが注目される現代の経済背景

現代の経済環境は、予測困難な変動要因に満ちています。原材料価格の高騰、国際情勢の不安定化、あるいは急激な市場の変化など、多くの企業が自社の努力だけでは抗えない外部要因に直面しています。

こうした状況下で、一時的に資金繰りが悪化する企業が増加傾向にあります。金融機関側も、貸付先企業の倒産を避けるため、将来性が見込まれる企業に対しては、リスケジューリングに柔軟に応じる姿勢を見せています。そのため、事業再生を目指す企業にとって、現実的な選択肢として広く認知されています。

リスケジューリングを実行するメリットとデメリット

リスケジューリングは、資金繰りに窮した企業にとって強力な解決策となり得る一方で、いくつかの無視できないデメリットも含んでいます。

この手法を選択する際は、目先の資金繰り改善という短期的な視点だけでなく、将来の事業展開に与える影響までを考慮した、総合的な判断が求められます。ここでは、リスケジューリングがもたらすメリットとデメリットの両方を詳しく見ていきましょう。

メリット①:資金繰りの安定化と倒産回避

最大のメリットは、資金繰りの抜本的な改善です。月々の元金返済が猶予または減額されることで、手元資金が枯渇する事態を避けられます。

これにより、仕入れ代金や人件費などの支払いを滞りなく行えるようになり、事業活動の継続が可能になります。資金繰りの安定は、経営者の精神的な負担を軽減し、目先の資金調達に追われることなく、冷静な経営判断を下すための基盤を整えます。結果として、倒産の危機を回避する直接的な手段となり得ます。

メリット②:経営改善に集中できる時間的猶予

返済負担が軽減されることで、企業は経営の立て直しに集中するための貴重な時間を獲得できます。

資金繰りのプレッシャーから解放され、コスト削減、新規販路の開拓、不採算事業の見直しといった、本質的な経営改善策の策定と実行にリソースを振り向けることが可能になります。この期間を活用して、収益構造を根本から見直し、持続可能な事業モデルを再構築することが、リスケジューリングの本来の目的です。金融機関も、この前向きな姿勢を評価します。

デメリット①:新規融資が困難になる可能性

リスケジューリングを実行すると、その情報は金融機関内で共有され、一般的に「要注意先」やそれに類する債務者区分に分類されます。その結果、リスケジューリング期間中はもちろん、その後の一定期間においても、金融機関からの新たな融資を受けることは極めて困難になります。

設備投資や事業拡大のための資金調達が制限されるため、成長の機会を逃す可能性があります。将来の事業計画に必要な資金をどう確保するか、代替案をあらかじめ検討しておくことが不可欠です。

デメリット②:信用情報への影響と金利負担の増加

リスケジューリングの事実は、企業の信用格付けに直接的な影響を及ぼします。取引先や信用調査会社に知られた場合、与信取引の見直しを求められるなど、事業運営に支障が出ることも考えられます。

また、返済期間が延長されることに伴い、支払う利息の総額は増加します。さらに、交渉の過程で、適用金利が引き上げられるケースも少なくありません。短期的な返済負担は軽減されますが、長期的に見ると企業の財務負担は増大する点を認識しておくべきです。

リスケジューリング交渉を成功に導く手続きの流れ

リスケジューリングは、単に金融機関にお願いすれば認められるものではありません。自社の窮状を正確に伝え、かつ再建への強い意志と具体的な道筋を示す、計画的で誠実な対応が交渉の成否を分けます。

準備不足のまま交渉に臨むことは、かえって金融機関の不信感を招きかねません。ここでは、交渉を円滑に進め、合意形成に至るまでの一連の手続き例を、段階を追って説明します。

1. 現状分析と資料の準備

交渉の始まりは、自社の経営状況を客観的かつ正確に把握することです。過去数期分の決算書試算表資金繰り表などを用意し、なぜ資金繰りが悪化したのか、その原因を徹底的に分析します。

窮境に陥った原因を明確に説明できないと、金融機関は今後の改善も見込めないと判断します。同時に、不動産登記簿謄本や商業登記簿謄本、借入金の一覧表など、金融機関から提出を求められる可能性のある書類一式を事前に準備しておくことで、迅速な対応が可能になります。

2. 経営改善計画書の策定

リスケジューリング交渉において、最も中核となるのが「経営改善計画書」です。これは、返済負担を軽減してもらった暁に、どのようにして経営を立て直し、最終的に正常な返済軌道に戻すのかを具体的に示す設計図です。

窮境原因の分析、具体的な改善策(売上向上策、経費削減策など)、行動計画(スケジュール)、そしてそれらを踏まえた損益計画や資金繰り計画(数値計画)を盛り込みます。具体的で実現可能な計画書を作成することが、金融機関の信頼を得る上で欠かせません。

3. 金融機関への相談と交渉

資料と計画書が整ったら、いよいよ金融機関へ相談を持ちかけます。まずはメインバンクに相談するのが一般的です。

返済が困難になる前に、できるだけ早い段階で誠実に状況を説明することが、信頼関係を維持する上で大切です。複数の金融機関から借り入れがある場合は、全ての取引金融機関に対して公平に、同時に説明を行うのが原則です。交渉では、経営改善計画書の内容を基に、再建への熱意と計画の実現可能性を粘り強く説明し、理解を求めていきます。

4. 合意後の履行と定期的な報告

全ての取引金融機関からリスケジューリングの同意が得られたら、合意書(覚書など)を締結します。その後は、経営改善計画書に定めたアクションプランを誠実に実行していく段階に移ります。

計画の進捗状況については、月次試算表や資金繰り表などを添えて、金融機関への定期的な報告が求められます。この報告を怠ると、金融機関との信頼関係が損なわれ、支援の打ち切りにもつながりかねません。計画通りの実行と透明性の高い報告が、将来の正常化への道を開きます。

リスケジューリングと他の金融手法との違い

事業再生の局面では、リスケジューリング以外にも様々な金融手法が検討されることがあります。中でも代表的なのが、DDS(Debt Debt Swap、デット・デット・スワップ)とDES(Debt Equity Swap、デット・エクイティ・スワップ)です。

これらの手法は、リスケジューリングと同様に企業の財務改善を目的としますが、その性質や企業に与える影響は大きく異なります。自社の状況に最も適した手法を選択するためには、それぞれの特徴を正しく理解しておくことが不可欠です。

リスケジューリングとDDSの違い

DDSは、既存の短期借入金や返済期限の近い長期借入金を、返済優先順位が低い劣後ローンに切り替える手法です。

金融機関は、この劣後ローンを自己資本と見なすことができるため、企業の自己資本比率が改善し、財務内容が見かけ上向上します。リスケジューリングが単なる返済の猶予であるのに対し、DDSは債務の性質そのものを変更する点で異なります。ただし、DDSを実施するには、事業再生計画の実現可能性が極めて高いと判断される必要があります。

リスケジューリングとDESの違い

DESは、金融機関が保有する債権を、企業の株式(エクイティ)に転換する手法です。これにより、企業の負債は減少し、資本が増加するため、財務諸表は劇的に改善します。

債務が資本に変わるため、返済義務が消滅する点が最大の特徴です。しかし、その代償として、金融機関が株主となり経営への関与を強めることになります。経営の自由度が大きく制約される可能性があるため、導入には慎重な検討が求められます。

手法選択の比較表

以下に、リスケジューリング、DDS、DESの主な違いをまとめます。

手法目的債務の扱い経営への影響実施の難易度
リスケジューリング返済負担の一時的な軽減返済を猶予(債務は残る)比較的小さい比較的低い
DDS財務内容の改善(自己資本の増強)劣後ローンへ転換中程度高い
DES抜本的な財務改善(債務の削減)株式へ転換(債務消滅)大きい(株主として関与)非常に高い

リスケジューリングを検討する際の注意点

リスケジューリングは、適切に活用すれば事業再生への力強い一歩となりますが、その実行には慎重な判断が求められます。

これは万能薬ではなく、あくまで時間的猶予を得るための対症療法に過ぎないという認識を持つことが肝心です。安易な選択や準備不足は、かえって経営の選択肢を狭める結果を招きかねません。最後に、リスケジューリングを検討する上で心に留めておくべき点について説明します。

安易な選択は将来の選択肢を狭める

リスケジューリングは、前述の通り、新規融資の道が閉ざされるなどのデメリットを伴います。そのため、「少し資金繰りが苦しいから」といった安易な理由で選択すべきではありません。

まずは、自社の努力で改善できる点はないか、例えば遊休資産の売却や経営者自身の役員報酬の削減など、あらゆる自助努力を検討し、実行することが先決です。金融機関も、企業側が身を削る努力をしているかどうかを厳しく見ています。リスケは、あらゆる手を尽くした後の最終手段と位置づけるべきです。

専門家(弁護士・税理士など)への相談の利点

リスケジューリングの交渉や経営改善計画書の策定は、高度な専門知識と経験を要します。自社だけで対応することが困難な場合は、事業再生に詳しい弁護士や税理士、公認会計士といった専門家の支援を仰ぐことを強く推奨します。

専門家は、客観的な視点から経営状況を分析し、実現性の高い改善計画の策定を支援してくれます。また、金融機関との交渉に同席し、専門的な見地から説明を補足することで、交渉を円滑に進める助けとなります。

リスケは再建への通過点

リスケジューリングは、資金繰りの危機を乗り越え、企業が再生へと向かうための貴重な時間をもたらす手法です。しかし、それはゴールではなく、本格的な経営改善の始まりに過ぎません。リスケによって得られた猶予期間を最大限に活用し、経営改善計画を着実に実行していく強い意志と行動がなければ、根本的な問題解決には至りません。

金融機関との誠実な対話を通じて信頼関係を構築し、実現可能な再建計画を示すことが成功の条件です。必要であれば専門家の知見も借りながら、この困難な局面を乗り越え、事業を再び成長軌道に乗せていく。リスケジューリングは、そのための戦略的な通過点として位置づけられるべきでしょう。


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