• 作成日 : 2025年12月23日

行政書士のビザ業務は儲かる?資格・収益・集客について解説

日本で暮らす外国人の増加に伴い、行政書士によるビザ申請・入管手続きのニーズは高まっています。なかでも「ビザ業務(入管業務)に特化した行政書士は儲かるのか?」という疑問を持つ方も多いでしょう。

本記事では、行政書士が取り扱うビザ業務の内容や収益性、申請取次資格の取得方法、開業戦略などを解説します。

行政書士のビザ業務(入管業務)とは?

行政書士が対応するビザ業務や入管業務は、日本で生活・活動する外国人に関する在留資格手続きのサポートを中心としています。呼び方は異なりますが、基本的には同じ内容を指しており、行政書士が取り扱う代表的な国際業務です。

ビザ業務と入管業務は同じ範囲を指す

「ビザ業務」と「入管業務」という2つの言葉は、実務上はほぼ同じ業務範囲を意味します。行政書士にとってはどちらも、日本で活動する外国人が必要とする在留資格の取得や変更、在留期間の更新、永住許可などの手続きを支援する仕事です。あわせて、帰化申請に関する書類作成や手続きのサポートを行う行政書士もいます。

行政書士の実務では在留資格に関する申請手続きを「入管業務」と呼ぶのが一般的で、これは「出入国在留管理庁」(旧:入国管理局)に関連する申請業務を意味します。

一方、「ビザ業務」は主に一般向けの言い回しであり、行政書士が提供するサービスの内容をわかりやすく伝えるために使われる表現です。名称は異なっても、業務の実態に大きな違いはなく、どちらの呼称もほぼ同じ範囲を指しています。

外国人の在留資格取得や変更などを代理・支援する業務

行政書士が提供するビザ・入管業務では、外国人や外国人を雇用する企業などから依頼を受け、在留資格に関する各種申請手続きを代理または支援します。主な業務内容には、「在留資格認定証明書交付申請」「在留資格変更許可申請」「在留期間更新許可申請」「永住許可申請」「資格外活動許可申請」「再入国許可申請」などが含まれます。また、「帰化許可申請」は入管業務とは別の手続きですが、書類の作成や申請をサポートする行政書士もいます。

これらの申請には多くの法的要件が絡むため、正確な知識と書類作成能力が求められます。

行政書士のビザ業務は儲かる?

外国人の在留資格手続きの需要が高まるなか、行政書士によるビザ・入管業務は注目を集めています。では、この業務は収益性の面でも魅力的なのでしょうか。

高単価な報酬で収益性が高い

ビザ業務は、1件あたりの報酬が8万〜15万円前後になることが多く、行政書士業務の中でも収益性が高い分野です。たとえば配偶者ビザの申請代行では15万円前後、就労ビザで10万円程度、経営・管理ビザのような複雑な申請では20万〜30万円前後が相場とされています。難易度が高く、必要書類が多い案件では、報酬が30万円以上に達することもあります。

報酬が高い理由として、外国人の在留や生活に直結する重要な手続きを担う点、入管法や関連法規への専門知識が必須である点、そして言語・文化の違いを踏まえて対応する能力が求められる点が挙げられます。このようなスキルと責任の重さが、報酬設定にも反映されています。

外国人増加により市場が拡大中

ビザ業務の需要は、日本に在留する外国人の増加により年々拡大しています。法務省(出入国在留管理庁)の統計によれば、2024年末時点で在留外国人数は約376万人を超え、前年比で約10%増加しました。こうした増加の背景には、少子高齢化と労働力不足を補うために外国人労働者の受け入れが進んでいることがあります。

外国人労働者を雇用する企業の数も増加傾向にあり、それに伴って就労ビザや家族滞在ビザなどの申請件数も上昇傾向にあります。このような環境下では、ビザ申請に不慣れな個人や企業が行政書士のサポートを求めるケースが多くなり、業務の依頼数も今後拡大していくことが見込まれます。

参考:令和6年末現在における在留外国人数について

継続案件や紹介による安定収入が見込める

入管業務は一度きりで完結する案件ばかりではありません。在留資格の更新や、配偶者・家族の呼び寄せなど、同じ依頼者から継続して案件を受ける機会が多くあります。さらに、対応が丁寧で信頼を得られれば、外国人同士の口コミや紹介によって新たな依頼につながることも珍しくありません。加えて、外国人を多数雇用している企業と顧問契約を結ぶことができれば、定期的なビザ申請の手続きや相談業務を通じて、継続的な収益が見込めます。このように、入管業務は単発で終わらず、ストック型のビジネスにも発展しやすいという特徴があります。

ビザ業務で高収入を得るには?

ビザ業務は高収益が期待できる分野ですが、実際に収入を伸ばすには的確な準備と戦略が欠かせません。ここでは、行政書士がビザ・入管業務で安定した収入を得るために押さえておきたいポイントを紹介します。

申請取次行政書士の資格を取得する

入管業務を行ううえでは、「申請取次行政書士」の資格を取得しておくことが実務上ほぼ必須といえます。通常の行政書士でも書類作成はできますが、依頼者に代わって出入国在留管理庁へ申請書を提出できるのは、申請取次の届出をした行政書士のみです。この資格を持てば、原則として外国人本人の出頭が不要になり、利便性の高いサービス提供が可能になります。取得には所定の研修受講と届出が必要ですが、約3か月で取得でき、専門知識も身につくため、実務の土台としても重要です。

専門性と信頼性で依頼につなげる

高収入を得るためには、制度への深い理解と実務経験を積み、専門家としての信頼を築く必要があります。入管法や関連制度は改正が多いため、常に最新の知識が求められます。また、英語や中国語などの語学力があれば、外国人本人と直接やり取りができ、他事務所との差別化につながります。語学よりも誠実な対応と的確な説明力が重要とされており、こうした対応が評価されることで、口コミや紹介を通じて依頼が増える傾向にあります。

ターゲット戦略と集客で安定収入を狙う

どれだけ専門性が高くても、依頼者を集められなければ収益には直結しません。「技能実習に特化」「企業向け就労ビザ専門」など、得意分野を明確にし、情報発信に工夫を凝らすことが重要です。自所のホームページやブログで入管情報を多言語で発信し、SEO対策を行うことで、より安定した集客が期待できます。加えて、他士業や外国人支援団体との連携を強化すれば、紹介や顧問契約につながるチャンスも広がります。

申請取次行政書士資格の取得により可能になる業務は?

申請取次行政書士資格を取得すると、通常の行政書士には認められていない「入管手続きの代理提出(申請書の提出取次)」が可能になります。これにより、原則として外国人本人の出頭を免除して手続きを進めることができるため、業務範囲が大きく広がります。以下では、どのような業務を行えるのかを説明します。

外国人本人に代わって出入国在留管理庁へ申請を提出できる

この資格を取得する最大のメリットは、外国人本人に代わって行政書士が出入国在留管理庁へ申請書を提出できる点です。通常、在留資格の認定・変更・更新・永住許可などの申請は、外国人本人または法定代理人が直接入管窓口に出頭して行わなければなりません。

しかし、申請取次行政書士が手続きを代行すれば、原則として依頼者の出頭が免除され、行政書士が代理で書類提出や必要な確認を行うことができます。これにより、外国人本人の負担が軽減されるだけでなく、企業や学校などからの依頼にも迅速に対応できるようになります。就労ビザや経営・管理ビザなどの企業案件では、この「取次権限」が欠かせない存在となります。

入管業務の幅が広がり、継続的な案件を受任できる

資格を持つことで、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請、永住許可申請、資格外活動許可申請、再入国許可申請など、外国人の在留に関する主要な手続きを一括して取り扱えるようになります。これらの業務は1件あたりの報酬単価が比較的高く、更新申請や家族呼び寄せなどの継続案件が発生しやすいため、安定した収益を見込めます。

さらに、外国人を雇用する企業からの依頼にも対応できるため、法人向けの顧問契約を締結することも可能になります。企業の人事部門や学校、留学生支援団体などと継続的な関係を築けば、定期的な在留資格申請や相談対応による「ストック型の収入源」を確保できます。

資格を取得することで、単発業務にとどまらず、長期的に収益を積み上げられる点は、この資格ならではの大きな強みといえるでしょう。

申請取次行政書士資格を取得するまでの流れは?

ビザ業務で本格的に活動するためには、申請取次行政書士資格の取得が実務上不可欠です。この資格を取得することで、依頼者本人に代わって出入国在留管理庁へ申請書を提出できるようになります。ここでは、取得までの流れと要件を解説します。

日本行政書士会連合会が実施する研修の受講が必要

申請取次行政書士の資格を取得するには、まず日本行政書士会連合会(日行連)が実施する「申請取次関係研修会(事務研修会・実務研修会)」を受講する必要があります(一般的に「申請取次研修」と呼ばれる)。この研修は、出入国在留管理制度や申請実務に関する専門知識を身につけることを目的としています。研修は原則として行政書士登録後に受講でき、登録前の段階では申し込むことができません。

研修は年に数回実施され、近年ではオンライン(VOD方式)での受講にも対応しています。内容は、おおむね4時間程度の講義と修了試験、そしてレポート提出が含まれており、実際の申請業務に即した実践的な構成になっています。研修を修了した後は、所属する行政書士会を通じて所定の書類を提出し、法務省(出入国在留管理庁)に申請取次者としての届出を行うことで、正式に「申請取次行政書士」として登録されます。

参考:令和7年度申請取次関係研修会の開催について|日本行政書士会連合会

資格取得の要件・注意点

研修の受講にあたっては、いくつかの要件を満たす必要があります。まず、行政書士として正式に登録済みであることが前提です。また、行政書士としての品位保持義務に反する事由がなく、過去に懲戒処分などがある場合は届出が認められないこともあります。届出時には、研修の修了証明書、本人確認書類、誓約書などの提出も必要です。

資格取得後は、申請取次業務を行うたびに、「申請等取次記録簿」を作成・保管し、所属する行政書士会へ年次報告を提出する義務も発生します。また、入管制度や実務は随時見直しが行われるため、定期的な研修受講や情報収集によって知識を更新し続けることも重要です。

ビザ業務に特化した行政書士の開業モデルは?

ビザ業務は、専門性の高さと安定したニーズから、独立開業時に特化しやすい分野です。ただし、効率的に事務所を運営するためには、開業初期の設計と明確な戦略が欠かせません。ここでは、実際の開業プロセスに沿って、入管業務特化型モデルの具体像を紹介します。

特化分野を明確化し、ターゲットを絞って開業する

入管業務に特化した開業を行う場合、まずは「誰のどんなビザを扱うか」を明確にします。たとえば、以下のようなモデルがあります。

  • 留学生専門
    日本語学校・専門学校などと連携し、留学ビザや就労ビザへの在留資格変更をサポート。
  • 外国人雇用企業向け
    建設業・介護業界などの企業と顧問契約を結び、技能実習・特定技能の申請を代行。
  • 国際結婚専門
    日本人配偶者ビザや永住許可申請をメインに扱い、個人顧客からの口コミや紹介で集客。

このように、業務対象を絞ることで「専門性のある事務所」として認知されやすく、マーケティングや紹介も効果的になります。汎用的な「なんでも屋」よりも、ひとつの強みに特化した方が、依頼者側の信頼を得やすいでしょう。

集客はウェブ活用とリアルな接点の両輪で設計する

入管業務で安定的に依頼を得るには、事務所の存在を認知してもらう仕組みづくりが重要です。開業当初はホームページを立ち上げ、「配偶者ビザ申請サポート」「特定技能ビザ取得マニュアル」など、具体的な情報提供型のコンテンツを日本語と英語などで発信することが効果的です。SEO対策やGoogleマップ登録(Googleビジネスプロフィール)も、問い合わせ増加につながります。

また、外国人支援団体、行政書士会の国際関連部会、通訳者ネットワークなどに参加し、外国人コミュニティや企業との「リアルな接点」も作ります。地域の日本語学校の事務担当者へ挨拶に行く、技能実習監理団体へ情報提供に訪問するなど、地道な営業活動も信頼構築に役立ちます。

ビザ業務は専門性と戦略で収益につながる

行政書士のビザ業務は、専門性と社会的ニーズの高さを兼ね備えた分野です。単価が比較的高く継続性のある業務である一方、収益化には資格取得、専門性の習得、そして明確なターゲティングと集客戦略が欠かせません。申請取次行政書士資格を起点に実務能力を高め、信頼される対応を積み重ねることで、安定した収入を実現することができます。入管業務は、行政書士としてのキャリアを築くうえで、十分に主軸となり得る実践的なフィールドといえるでしょう。


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