- 作成日 : 2025年11月13日
建設業許可なしで下請けに発注すると違法?リスクや対処法を解説
建設業を営むうえで「建設業許可」が必要かどうかは、請け負う工事の規模によって法律で厳格に定められています。しかし無許可業者への発注や、許可がないままの工事請負が行われているケースも存在し、重大な法令違反となる可能性があります。
本記事では、建設業許可の要否、許可を取得するメリット、無許可で請け負った場合のリスクなどを解説します。
目次
建設業許可なしの下請けに発注すると違法?
建設業法では、一定の金額や工事内容を超える請負契約を無許可業者に発注することは違法とされています。ここでは、どのような条件で違法となるのか解説します。
建設業許可なしで一定規模以上の工事を発注すると違法
請負金額が500万円を超える工事を無許可業者に発注すると、建設業法違反となります。建設業法では、1件あたりの工事請負金額が税込500万円以上(建築一式工事の場合は1,500万円以上、または木造住宅150㎡以上)の工事を行う際には、元請・下請を問わず建設業許可が必要です。この基準を超えた金額で無許可業者に発注した場合、元請も下請も法的責任を負うことになります。行政処分や罰則の対象となり、社会的信用を失うリスクもあります。
軽微な工事であれば無許可でも発注できる
請負金額が500万円未満の工事であれば、建設業許可がなくても発注して問題ありません。建設業法では「軽微な工事」として、一定の金額や規模を下回る場合に限り、許可を不要としています。たとえば、建築一式工事であれば1,500万円未満または延べ床面積150㎡未満の木造住宅、その他の工事であれば500万円未満の工事が該当します。小規模リフォームや外構工事など、個人事業主が請け負う工事の多くはこの範囲内に収まります。ただし、複数契約に分けて金額を小さく見せる行為は違法と見なされるため注意が必要です。
元請と下請、法人・個人を問わず建設業許可は必要?
建設業許可が必要かどうかは、「法人か個人か」や「元請か下請か」ではなく、工事の金額や内容によって判断されます。500万円以上の工事を請け負う場合には、すべての事業者に許可取得が義務付けられており、個人事業主であっても例外ではありません。
事業形態に関係なく、工事の規模で許可の要否が決まる
許可が必要かどうかは事業形態ではなく、請負金額が基準です。建設業法では、工事を請け負う者に対して、一定の金額を超える案件については建設業許可を取得する義務を課しています。具体的には、500万円(税込)以上の建設工事(建築一式工事は1,500万円以上)を請け負う場合、法人か個人かを問わず、元請であっても下請であっても許可が必要です。一人親方などの個人事業主も、同様に許可の対象となります。
一人親方や個人事業主でも許可を取得して活動している
個人でも建設業許可を取得して活躍しているケースは珍しくありません。多くの一人親方が正式な許可を得て、法令を順守しながら建設工事を行っています。建設業界では、発注側の元請企業が「許可を持っている業者」を条件とすることが増えているため、個人でも許可を取得することが重要になってきています。
建設業許可が不要なケースは?
建設業を営むには原則として許可が必要ですが、例外として許可が不要とされる工事も存在します。ここでは、「軽微な工事」や「付帯工事」といった例を通じて、許可不要の範囲を解説します。
軽微な工事に該当する場合は建設業許可が不要
工事の請負金額が基準以下であれば、建設業許可なしでも合法に工事を請け負えます。建設業法施行令では、「軽微な工事」に該当するものは許可不要とされています。建築一式工事で請負金額が税込1,500万円未満、または延べ床面積150㎡未満の木造住宅工事、その他の工事で請負金額が税込500万円未満のものが該当します。
このような小規模工事であれば、建設業許可を持たない個人事業主や小規模業者でも違法ではありません。リフォームや内装仕上げなど、比較的低額な案件を取り扱う業者にとっては、現実的に許可がなくても対応できる業務が多く存在します。
主たる工事に付随する「付帯工事」も許可不要とされる
許可を持つ主工事の一部であれば、別途の許可は必要ありません。建設業法では、主たる工事に付随して行う「付帯工事」についても、別業種の許可を取得せずに施工できるとされています。たとえば、電気工事業の許可を持つ業者が電気配線工事を行う際に必要な内装解体工事などが該当します。
ただし、付帯工事が主工事よりも高額になる場合や、工事の目的が独立していると判断される場合には、別業種の許可が必要とされる可能性があるため、注意が必要です。あくまでも主たる工事に密接に関係し、補助的な位置付けであることが条件です。
法的に不要でも、許可を取得しないリスクは存在する
許可が不要でも、無許可での営業は信用面でのリスクを伴います。
法律上は軽微な工事に該当すれば建設業許可は必要ありませんが、実務上は注意が必要です。たとえば、工事に欠陥があった場合、無許可業者であることが顧客や元請に不安を与え、信頼を損なうことがあります。
また、元請企業が下請先に許可業者のみを選定基準とするケースも増えており、無許可であることで取引のチャンスを逃す可能性もあります。したがって、許可が不要な業務を中心とする場合でも、長期的な事業展開を考えるなら、建設業許可の取得を検討する価値は十分にあります。
許可が不要な場合でも建設業許可を取得するメリットは?
軽微な工事のみを行う場合は法律上建設業許可が不要とされていますが、それでも許可を取得しておくことには大きなメリットがあります。
工事金額の上限がなくなり、より多くの仕事を請け負える
許可があれば、500万円を超える工事も合法に請け負えます。無許可の状態では、建築一式工事を除き、請け負える工事の金額は税込500万円未満に制限されます。この制限は「軽微な工事」に該当するため許可不要ですが、事業を拡大したいと考える事業者にとっては大きな壁となります。
建設業許可を取得すれば、工事金額の制限がなくなり、大型案件や公共工事なども含めて幅広い仕事を請け負うことが可能になります。金額の上限を気にせずに営業活動を展開できることは、売上の増加や市場拡大に大きく貢献します。
元請から選ばれやすくなり、取引機会が広がる
許可があることで、法令順守を重視する元請からの信頼が高まります。近年の建設業界ではコンプライアンス意識が高まっており、多くの元請企業は下請業者に建設業許可の取得を条件としています。法律上は軽微な工事であれば許可が不要ですが、元請から見れば「無許可業者との契約はリスクが高い」と判断されやすく、敬遠される可能性があります。
そのため、許可を持っていることが「安心して仕事を任せられる業者」としての証明となり、結果として受注機会の拡大につながります。大手ゼネコンなどでは、現場入場の前提条件として建設業許可の提出を求めることも一般的です。
社会的信用力が向上し、事業の成長につながる
許可取得は対外的な信頼性の証明となり、ブランディングにも貢献します。建設業許可を得るには、一定の経営経験や専任技術者の配置、財務要件などを満たす必要があります。つまり、許可を取得しているということ自体が、「一定の基準をクリアした健全な事業者」であることの証明になります。
元請側も、許可のない業者に比べて安心して発注できるため、信頼関係が築きやすくなります。また、許可があることで大規模な工事も一括で任される機会が増え、企業としてのブランド力が高まります。結果として、新たな取引先や案件が増加し、事業拡大にもつながります。
建設業許可なしで工事を請け負った場合のリスクは?
建設業許可がないまま一定金額以上の工事を請け負うと、元請・下請の双方に法的・信用上のリスクが発生します。
無許可業者には刑事罰と営業停止処分が科される
軽微な工事の範囲を超える工事を無許可で請け負うと、建設業法第3条違反として処分の対象になります。違反した業者には、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、法人であれば1億円以下の罰金という重い刑事罰が科される可能性があります。これに加え、行政処分として3日以上の営業停止命令が出されることもあります。
また、違反事実が国土交通省などの公的サイトに公表されることで、社会的信用が著しく低下します。さらに、建設業法違反によって「許可欠格要件」に該当すれば、5年間は新たな建設業許可の取得ができなくなるなど、長期的な事業制限を受けることになります。
元請業者も行政処分や信用失墜の対象となる
無許可の業者に違法な発注を行った元請業者にも責任が及びます。元請業者が、建設業許可のない下請業者に500万円を超える工事を発注した場合、建設業法違反と見なされ、7日以上の営業停止処分が科される可能性があります。許可業者であっても、発注管理の不備として監督官庁から指導・処分を受けるリスクが存在します。
さらに、こうした違法発注が明るみに出ると、発注者や取引先からの信頼を大きく損ない、企業全体のブランド価値や受注機会にも影響を与えかねません。現在では、法令順守の観点から、元請企業が下請業者に許可取得を求める動きが一般的となっており、たとえ軽微な工事であっても無許可業者との契約を避ける傾向が強まっています。
建設業許可の有無を確認する方法は?
工事を発注する際、下請業者が建設業許可を取得しているかどうかを確認することは、法令順守とリスク回避のために重要です。ここでは、建設業許可の有無を確認する方法や確認時の注意点について解説します。
建設業許可証の写しを提示してもらう
最も直接的な方法は「建設業許可証」を業者に見せてもらうことです。建設業者が許可を取得している場合、許可行政庁から発行された「建設業許可通知書(許可証明書)」を保有しているはずです。この書面には、許可番号、業種、許可の種類(一般・特定)、許可年月日、有効期限などが明記されています。契約前に業者にこの許可証のコピーや原本を提示してもらい、記載情報を確認することが重要です。
また、名刺やホームページ、会社案内などに「国土交通大臣許可(般-〇〇)第××××号」などと記載されていることもありますが、それだけでは真偽は判断できません。必ず書面で確認しましょう。
国土交通省や各都道府県の検索システムで確認する
公的な検索サイトを使えば誰でも許可の有無を確認できます。国土交通省や各都道府県では、インターネット上で建設業許可を受けた業者を検索できる「建設業者情報検索システム」などを提供しています。事業者名や所在地、許可番号などを入力することで、最新の許可状況を確認できます。
たとえば、以下の公的検索サイトがあります。情報が表示されない場合は、許可が失効しているか、無許可の可能性があります。
許可の種類や有効期限も確認することが重要
許可があっても、有効期限切れや対象外業種の可能性があります。建設業許可には「一般建設業」と「特定建設業」の区分があり、さらに業種別に細かく分類されています(例:とび・土工、内装仕上、管工事など)。確認時には、依頼したい工事の種類がその許可に該当するかを確認する必要があります。
また、建設業許可は通常5年ごとの更新制です。更新がなされていなければ失効している場合もあるため、「有効期限」にも注意して確認しましょう。書類や検索結果で最新の状態を確認し、不明点があれば許可行政庁に直接問い合わせるのも有効です。
業者へ発注する際は、建設業許可の取得有無を確認しよう
建設業許可なしで下請発注を行うことは、軽微な工事を除いて建設業法違反となり得るため細心の注意が必要です。原則として元請・下請の区別なく一定規模以上の工事には許可が求められることを忘れてはいけません。無許可のまま工事を行えば、下請業者は懲役刑や罰金・営業停止処分等の厳しい罰則に直面し、元請業者も営業停止処分や信用失墜といった重大なリスクを負います。
たとえ今、許可が不要な場合でも、建設業許可を取得しておくメリットは大きいでしょう。適法かつ円滑に建設事業を営むために、許可制度を正しく理解し、上手に活用していくことが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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