個人事業主が会社設立で留意すべきこととは?事業拡大に必要な会計・税務の重要性

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個人事業主が会社設立で留意すべきこととは?事業拡大に必要な会計・税務の重要性

田中将太郎公認会計士・税理士事務所では、個人事業主法人化やスタートアップやベンチャー向けの創業支援に力を入れています。事務所の代表である田中将太郎さんが特に重視しているのは、経営という観点から会計データを分析・判断して、会社の設立をサポートすることです。つまり設立時のみならず、将来を見据えて中・長期的な支援を行っています。個人事業主の法人化のメリットとデメリット、留意すべき点や注意点について田中さんに伺いました。


田中将太郎公認会計士・税理士事務所
田中将太郎(たなかしょうたろう)様

北海道旭川市出身。旭川東高等学校を経て、慶応義塾大学で経済学、シカゴ大学経営大学院で経営学やファイナンスを学ぶ。公認会計士として、海外企業への国際監査や国内企業への国際会計基準IFRS導入に従事。その後、経営コンサルタントとして、大手金融機関、製造業、消費財、学術機関など幅広い業界の企業の成長戦略やマーケティング、M&A戦略の策定を支援。田中将太郎公認会計士事務所を設立し、税務申告、財務諸表監査、記帳代行業務に加え、スタートアップ・ベンチャー向けの創業支援や上場準備も支援。 世界各国での強いネットワークを活用した海外進出支援の強みも持っている。

 

経営者と同じ目線で考え、企業の成長を支援

会計やファイナンスの面でうまくいかない経営者を支援したい

――公認会計士・経営コンサルタントを目指したきっかけを教えてください。

もともと祖父も父も会社を経営していまして、経営が身の回りにある環境だったということもあり、事業を続けていくために必要なことについて自然と考えるようになりました。経営者はそれぞれに強みを持っていますし、いいアイデアを持ち、能力もあり、良いビジネスを展開できそうなのに、資金調達がうまくいかず、事業を大きくできない、優れた経営手腕を持ちながら、会計やファイナンスなどの財務指標がないために、自分たちの事業をプレゼンできないなどと、損をしていると感じる企業がたくさんあります。そうした企業の経営者を支援したいと思ったことが、この世界に入るきっかけです。会計やファイナンスの領域で知見をつけたいと考えて公認会計士の資格を取りました。

経営が身近な環境で育ったことが、起業したきっかけの一つに

――田中将太郎公認会計士・税理士事務所を設立されるまでの経緯は?

私のキャリアは主に2つあります。1つは公認会計士の資格を取ったのちに、監査法人に入社し、金融事業部で財務諸表の監査を担当したことです。仕事としてはかなり会計寄りと言えるでしょう。もう一つは経営コンサルタントとして企業戦略・マーケティング・事業の運営の仕方に関する仕事に携わったことです。そこでどうやって事業を数値化して分析するのか、企業についてのプロフェッショナルとしての技術を身に付けました。この2つのキャリアによって、経営者を支援していくうえでの重要な基礎を形成できたのではないかと考えています。

会計と経営の分野の仕事を数年経験したのちに事務所を設立することは、仕事を始めた当初からイメージしていました。おそらく父と祖父が経営者であったことが大きかったと思います。自分が会社を経営することへのハードルはさほど高くありませんでした。自分自身が起業を体験したことが、経営者と同じ目線で考えて支援・アドバイスするスタンスに繋がっていると感じています。

将来的には海外を目指す企業の成長を支援していきたい

――スタートアップやベンチャー向けの創業支援に力を入れている理由を教えてください。

経営コンサルティングをしていた時には、企業の売上をどうやって伸ばすかがメインの課題でした。売上の向上を図るためには、まず市場全体を分析していました。ほとんどの業界の市場が、10~20年といった中長期のスパンで見ると、少子高齢化の影響で衰退していくことが予測できます。医療業界ですら、2020~30年ぐらいには頭打ちになり、マーケットが縮小していくでしょう。

つまり日本のほとんどの産業は将来的には規模が縮小する現実があるのです。その状況を肌で感じた時に、“この現象は日本だけのものなのだろうか?”と疑問を感じました。実は経営コンサルタントの仕事をやめた後に、1年ほど色々な国へ旅をしていた時期がありました。その中で、日本周辺の新興国は若い人も多く、マーケットが急速に拡大し、新しいビジネスをどんどん立ち上げていく活力があることを肌で感じました。

その一方で、日本の企業の多くは大きなポテンシャルを持っているにも関わらず、日本国内という枠組みからなかなか抜け出せない状況があります。スタートアップが立ち上がっても、日本語で日本製品を作り、国内で完結しているケースが多いのです。地方で起業しても、最終的に東京進出がゴールになっているケースも少なくありません。
海外には大きなマーケットがあり、大きなビジネスチャンスがあるという認識を持ち、視野を広げることが重要なので、多くのスタートアップが海外進出にしていくサポートをしたいと思っています。

個人事業主が法人化する際に留意しなければならないポイント

法人化の大きなメリットは社会的な信頼性を得やすいこと

――個人事業主が法人化するメリットとはどのようなことでしょうか?

法人化の主なメリットは大きく分けると、3つあります。1つ目のメリットは社会的な信頼性を得やすいことです。法人でなければ契約できないケースもでてくるでしょう。法人化することにより、事業展開の幅が広がる、取引先が広がる、より大きな仕事を受けやすくなるなどの効果が期待できます。

信頼性は、外部のクライアントに対するものだけではなく、企業内部に対しても影響します。例えば、従業員を雇う場合にも、個人事業主よりも法人の方が、一般的にはより良い人材を獲得しやすいでしょう。組織内外に向けた信頼性を築きやすいことが大きなメリットです。

2つ目はファイナンスや資金調達の観点でのメリットです。株式会社にすることで、投資家からの資金調達がしやすくなり、金融機関からの融資も受けやすくなります。決算書を見た時に、個人事業主は前年度にいくら稼いだかというスポット的な判断をされるのに対して、法人の場合には、時系列の中で蓄積された企業価値で算定されるため、ファイナンスの観点でも法人化は有利です。

3つ目は税務上のメリットです。これは売上規模などにもより、ケースバイケースですが、個人の所得税率よりも法人税率の方が低い場合が多いです。そのため、法人の方が手元に残る税引き後の利益が大きくなり、将来に向けてより多くの金額を再投資できます。また、個人事業主よりも法人の方が、税金対策として行える施策が、多いこともメリットと言えるでしょう。

法人化のデメリットは作業が増えることとコストがかかること

――法人化するデメリットとはどのようなことでしょうか?

デメリットの主なものは2つあります。1つ目のデメリットは作業的な面倒が増えることです。法人化すると、定款・登記・決算書などを作成しなければなりません。株式会社ならば役員報酬を決めるためには株主総会の決議が必要であるなど、かなり細かく定められています。基準に沿う必要があり、手間がかかることがデメリットです。

2つ目のデメリットは金銭的なコストがかかることです。利益がなかったとしても、均等割と呼ばれる法人の税金が7、8万円かかります。その他にも決算書の作成、登記の変更、税務申告などの管理コストがかかります。

起業するには新しいことに挑むチャレンジ精神が必要

――個人事業主が法人化する際にどんなマインドが必要でしょうか?

ビジネスを展開していくためには、付加価値を生む必要があります。ユーザーにとっての価値とは何か、その価値をどのようにビジネスにつなげていくのかを把握することが必要です。もう1つ、重要なのはチャレンジする姿勢を持つことです。起業するのは簡単なことではありません。起業する方々と話していて感じるのは、みなさん、不安と戦っているということです。

「本当にこのビジネスで利益が出るか?」「従業員に給料を払い続けられるか?」「事業計画通りに上手くいくか?」などなど。新しいビジネスを立ち上げる場合には、不確実性が必ず付きまといます。不確実性に対する許容度を持つこと、チャレンジする姿勢を維持し続けることが求められるでしょう。

法人の種類の選択基準は、迷ったら株式会社、どちらでもいいなら合同会社

――法人化する場合に株式会社と合同会社でどちらを選択すべきか、基準を教えてください。

株式会社と合同会社での大きな違いは、法人の所有者と経営者に関する部分です。株式会社は基本的には経営者と法人の所有者である株主は異なるため、所有と経営の分離がなされています。一方、合同会社は所有と経営が一体となっており、合同会社の経営者は所有者となります。中小企業は所有と経営が一致しているオーナー社長が多い実情があります。その場合は合同会社という形態が、実態と合っています。合同会社のほうが設立コストも低いですし、運営のコストと手間も低いため、お勧めできる法人形態です。

実際にどちらを勧めるかは、経営者の考え方次第です。外部から投資を受けたい場合は所有と経営が分離している必要があるため、株式会社にすべきです。投資を受けたくない場合には、どちらでもいいのではないかと考えています。合同会社には、コストが低く、求められる要件も少ないためメリットもありますが、世間的な認知度があまり高くないため、社会的な信頼性が低いと判断されてしまうリスクもあります。迷った場合は株式会社、どちらでもいいという場合は合同会社を勧めています。

会社設立を決断してから設立まで約1か月半の期間が必要

――個人事業主が法人化を進める場合の時間とプロセスを教えてください。

株式会社か合同会社かで異なりますが、印鑑の作成、口座への資本金の振り込みなど、準備期間には最低でも1週間はみておくべきでしょう。その後、司法書士や行政書士に依頼して会社設立の手続きを行います。その期間も1週間くらいはみておきます。さらに法務局で登記の処理をする期間が1~2週間かかるため、設立を決断してから登記簿謄本が手元に届くまでに、1か月くらいはみておくといいでしょう。

ただし、登記簿謄本が届いた後も、法人を運営していくためにやることがあります。銀行口座の開設、法人のクレジットカードの作成などをすると、1~2週間かかります。そのため、法人設立準備から実際の会社の運用までは1か月から1か月半ぐらいはかかると考えておくといいでしょう。

法人設立を専門家に頼まずに自分一人で行う場合は、念のためもう少し長く設立期間を見積もっておくとよいと思います。資本金の金額の設定など、設立時に注意すべきこともありますし、会社を運営してから資本金や決算の年度の設定を変更すると、余計なコストがかかるため、中長期的には専門家に依頼して会社を設立したほうが安心できるでしょう。

データの共有・分析が可能なクラウド会計が企業の成長に貢献

――法人化に向けて、クラウド会計の強みという点で再認識することはありますか?

弊社では基本的にクラウド会計しか使っていません。クラウド会計の主な強みは3つあります。1点目は、国税庁が推し進めている電子帳簿を作りやすいというメリットです。

2点目は、正確性です。会計を作っていくうえでは人的ミスが発生しますが、クラウド会計を使うことで金融機関を含めた他のシステムとの連携をしっかり行えるため、手作業による人的ミスを最小限にとどめることができます。数字の正確性と網羅性を担保しやすい、というメリットです。

3点目としては経営者もデータをすぐに見られるメリットが考えられます。会計データに齟齬があった場合や経営がうまくいかない場合に、会計事務所と経営者が同じデータをすぐに共有できることは強みになります。経営管理にも役立つため、企業の成長にも大きく貢献してくれていると実感しています。

法人化するにあたっては創業融資や補助金などの最低限の知識が必要

――田中将太郎公認会計士・税理士事務所として、実際に法人化する企業をどのようにサポートしていますか? また今後のビジョンは?

会社の設立手続きの基本的なサポートに加え、経営者が将来的にどのようなビジネスを作りたいのかをヒアリングして、クライアントごとにカスタマイズしたサポートを行っています。経営者が、創業前から創業融資や補助金などの知識もしっかりと知っておくと、起業後もスムーズに事業運営を行うことができます。

会社設立全般のお手伝いをし、会計や税務申告までをトータルにサポートするのが我々の仕事だと認識しています。会社設立と会計・税務は密接な関わりがあるため、全体的に支援していくことで効率的かつ円滑なサポートが可能になります。

会社を設立するうえで重要なのは、情報を収集することと、どのような事業を展開するのか、明確なビジョンを描くことです。起業家があまり知識を持たない状態で、専門家に丸投げしているケースが少なくありません。最低限、誰に何を頼むべきかを把握しておくことが必要です。そのうえで費用対効果を考えて、ここは依頼しよう、ここは自分でやろうとうまく算段することが、法人を設立するうえで重要です。

弊社のお客さまで多いのは、事業を成長させていきたい、変えていきたいという熱意や挑戦心を持っていらっしゃる方々です。そういう方々に満足していただけるために、サービスの充実を目指しています。今後、成長意欲あふれる経営者の方々に選んでいただけるように、邁進していく所存です。

※掲載している情報は記事更新時点のものです。

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