
フリーランスの仕事の中で、最も無駄な業務が未払金の回収です。ぼくもフリーランスになるまでは、取引先がちゃんと代金を払わないことがあるなんて思ってもみませんでした。
会社員とフリーランスでは、給料や報酬に対する意識が全く異なります。会社員は、毎月決まった日にだいたい同じ金額が同じ会社から自動的に振り込まれるので、未払いを気にすることがありません。
一方で、フリーランスは、毎月取引する相手や金額が異なります。さらに、仕事を完了してからどれくらいの期間で振り込まれるのかは確認しないとわかりません。振り込みが予定より1カ月遅れれば、家賃や経費が支払えないこともあるので、振込日や未払いにとても敏感になります。
この会社員とフリーランスの意識のギャップを認識し、未払金を回収する業務がフリーランスには必要です。(執筆者:元国税局職員・お笑い芸人 さんきゅう倉田)
目次
未払い対応が「素晴らしいA社」「いい加減なB社」
先月と先々月、A社とB社で1件ずつ未払いがありました。しかし、その対応は担当者によって異なります。
A社は、振込日より前にメールをくれました。しかも、謝罪とともに遅延の理由も添えられていました。
A社「本日振り込み予定のところ、手続きが漏れていたことが判明しました。大変申し訳ございません。今月末の入金となります。原因は、在宅ワーク期間中に請求書をメールで経理に回して処理していたのですが、ファイルを圧縮した際に数人分の請求書が抜け落ちてしまったことによります。私の確認不足により、ご迷惑をおかけし、申し訳ございません。」
理由も振込日も明らかにされています。なによりも、こちらが気づく前に連絡があったことが大変ありがたい。素晴らしい担当者です。
こちらから遅延を指摘する場合、預金口座を確認し、確実に振り込まれていないことを確認し、請求書を出したか確認し、過去のメールを確認し、何度も何度も確認して連絡しないといけません。
だから、ご自身で気づいて連絡をくださる取引先は大変貴重です。
一方、遅延があっても連絡をしてこない会社もあります。B社がそうでした。
さんきゅう「間違っていたらすみません。どうやら振り込みがないようです…」
B社 「ちょっと確認しますね。何月分とか記入ありましたっけ」
さんきゅう「口座の摘要欄のことですか?ありません」
このやりとりのあと、B社から連絡はありません。遅延に対して何も感じていないようです。謝罪もないし、今後どうなるのかもわかりません。
この会社からの振り込みは先月も遅延しており、ぼくの中で担当者に対する不信感が募ってしまいます。
フリーランスは締め日&支払日を管理しよう
報酬の受け取りにあたっては、まず、締め日と支払日を確認する必要があります。これによって、自らが行った仕事に対する報酬の支払日を把握することができます。
月末締めの会社がほとんどですが、25日締めや15日締めの会社もありますし、支払日は翌月20日や翌月30日などばらばらです。稀に、翌々月という会社もあります。
メディア関連の仕事は締め日に注意
取材や執筆、テレビ出演であれば、こちらの役務の提供をもって仕事の完了とみなさないこともあります。この場合、雑誌の発売やオンエアの後の最初の締め日で締めて、それに対応した支払日に振り込まれることになります。場合によっては、決済が半年後になることもあるでしょう。
下請法では、仕事の完了から60日以内に支払いが行われない場合、利息を支払うことが定められていますが、利息が支払われることはほとんどないと思います。
遅延に気づくため、締め日&支払日を管理
締め日と決済日を確認しておかないと、いつの時点で支払遅延になるのかがわかりません。こちらが遅れていると思っても、取引先の社内規定では問題がない可能性もあります。
来月は振り込まれるかな、などと不安に感じるより、締め日と支払日を確認して、1日でも遅れたら問い合わせをするようにしましょう。
支払遅延に気づいたら速やかに連絡すべき
取引先の支払い漏れや遅延に気づいても、入金を催促するのは気が引けるという方もいるでしょう。しかし、あなたの労働の対価として支払われるお金です。請求に気まずさを感じる必要は何一つありません。
「遅れてるかな?」と気づいたら、まず、締め日と決済日を確認し、いつからが「遅延」にあたるのか明確にします。そして、1日でも遅延したら速やかに確認しましょう。数日遅れて振り込まれることは基本的にはないし、あったとしても連絡をすべきだからです。
ただし、本当に振り込まれていないのか何度も確認してから催促しましょう。
フリーランスは売上管理を徹底しよう
たくさんの会社と取引をしていると、振り込みが遅れること、決済日を知らされないことはままあります。
臆することなく、事前の確認と遅延後の催促を行い、自分の売上を管理することがフリーランスには必要です。
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