- 更新日 : 2026年1月14日
残業75時間は違法?法律上の上限規制と企業が取るべき対策を詳しく解説
飲食業や建設業など、業界を問わず慢性的な人手不足が指摘される中、時間外労働(残業)の管理は、企業の存続と従業員の健康を守る上で欠かせません。労働基準法による残業時間の上限規制が強化された今、特に「月残業75時間」という数値が、法令違反や健康リスクの警戒ラインとして実務で注目されています。
この記事では、なぜ残業75時間という数字が重要なのかという法的根拠から、残業75時間が現場にもたらす具体的なリスク、そしてそれを超えないための実務的な対策を、経営者・人事・従業員それぞれの視点からわかりやすく解説します。
目次
月残業75時間=合法なの?
残業75時間は直ちに法律違反とはなりませんが、法的な上限規制の複雑な条件を満たす必要があります。月75時間という数値は、管理上、合法と危険の分岐点となります。
法律上の上限・原則(36協定の枠)
原則的な上限(月45時間)が適用されている企業で月残業75時間が発生した場合、それは明確な労働基準法違反となります。月75時間の残業には、必ず特別条項付き36協定の締結と、その厳格な条件の順守が必要です。
関連記事|36協定における残業時間の上限とは?わかりやすく解説!
“月75時間”が分岐点となる根拠
月残業75時間は、特別条項の上限である「月100時間未満」「年720時間以内」「平均80時間以内」といった複数の条件を守るための実務的な目安です。
ある月が残業75時間を超えたら、翌月以降の残業をさらに抑えないと「2ヶ月平均80時間以内」や「年720時間以内」という条件を満たせなくなる可能性が高くなります。
月75時間以内であれば、他の月の管理を適切に行うことで、特別条項のすべての条件をクリアすることができる可能性が高まります。
関連記事|36協定と80時間規制とは?過労死ラインの考え方や罰則について解説
特別条項の上限規制に違反した場合の罰則
特別条項の上限規制に違反した場合、労働基準法違反となり、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることがあります。また、労働基準監督署からの是正勧告や、企業名が公表されるリスクも伴います。
関連資料|~時間外労働の上限規制とその対応方法を解説~ 2020年4月から中小企業も対象に!残業規制とその対策とは?
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残業75時間は違法?なぜ“75時間”が危険ラインなの?
残業75時間という数値は、単に「多い残業時間」という意味ではありません。
労働基準法が定める時間外労働の上限規制を逆算すると、残業75時間は違法となる寸前の“危険ライン” に位置づけられます。
45時間の原則上限、特別条項付き36協定で許容される例外、そして過労死ラインとされる「平均80時間」。これら複数の条件をすべて満たしながら業務を回すには、残業を月75時間以内に抑えることが実務上ほぼ必須 となります。
つまり残業75時間は、企業が必ず管理すべき警戒ラインであり、法違反や健康被害が顕在化する直前の水準といえます。
残業75時間が違法の手前といわれる理由は?
労働基準法では、36協定を締結していても、原則として残業の上限は「月45時間・年360時間」と定められています。
これを超える残業を認めるには、特別条項付き36協定が必要ですが、以下の規制は必ず遵守しなければなりません。
- 時間外労働は年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計は、月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計は、2ヶ月から6ヶ月の平均で80時間以内
- 月45時間を超えられるのは年6ヶ月まで
特に、「平均80時間以内」の条件が厳しく、ある月で残業75時間を超えると翌月以降に使える残業枠が急激に減る ため、違法へつながりやすくなります。
このため、残業75時間は「合法か違法かを分ける分岐点」と実務で認識されています。
関連資料|36協定 新様式 記入例
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残業75時間の法的根拠とは?年720時間・平均80時間との関係
残業75時間が警戒ラインとされる最大の理由は、年720時間の上限規制を守るための“設計値” にあるためです。
特別条項では月45時間を超えられるのは年6ヶ月までと決められており、以下の計算が成り立ちます。
この式が示すように、75時間を超えた残業を複数回行うと、年720時間の上限規制を簡単に突破してしまいます。
さらに、残業75時間は過労死ラインとされる「2〜6ヶ月平均80時間」にも極めて近いため、健康リスクも急上昇します。
残業75時間が企業にもたらす3つの重大リスク
残業75時間が常態化すると、法令違反の可能性だけでなく、従業員の健康、離職率の上昇、採用難、割増賃金の増加といった多方面にリスクが拡大します。
特に、月60時間超の残業には50%以上の割増率が適用されるため、残業75時間のうち15時間は大きなコスト負担となり、企業財務への影響も無視できません。
企業にとって残業75時間は「管理ミスでは済まない重大リスク」であり、制度と仕組みで抑制することが不可欠です。
健康・安全面のリスク
厚生労働省が定める労災認定の基準では、「発症前2ヶ月から6ヶ月の平均で80時間」を超える残業が認められると、過労死との関連性が強いと判断される傾向があります。
月75時間は、この平均80時間超という「過労死ライン」のすぐ手前に位置します。この時間が数ヶ月続くと、企業が予期しないタイミングで従業員の健康を害し、過労死や労災のリスクが高くなります。企業は、月75時間を健康管理を徹底すべき危険な水準として警戒すべきでしょう。
関連記事|過労死ラインは何時間?人事労務担当者が気をつけること
企業風評のリスク
残業75時間が常態化すると、従業員はきついと感じ、優秀な人材の離職につながります。また、求人市場では「長時間労働の企業」というネガティブな印象を与え、採用活動を難しくします。SNSや口コミサイトによる企業風評リスクにつながる可能性も否定できません。
財務リスク(割増賃金の上昇)
月75時間の残業が発生すると、企業はコスト面でも大きな負担を負います。
2020年4月以降、中小企業を含むすべての企業において、月60時間を超えた時間外労働(月75時間の場合の15時間分)の残業代には、50%以上の割増率が適用されています(月60時間以下の部分は25%以上)。
残業75時間が常態化すると、この高率の割増賃金が企業の財務を圧迫します。
関連資料|時間外労働の割増賃金計算シート
関連記事|長時間労働の基準とは?36協定と過労死ラインをわかりやすく解説
月残業75時間を“超えないため”の3ステップ実務対応
月残業75時間という警戒ラインを超過しないためには、場当たり的な対応ではなく、企業全体で仕組みを構築することが不可欠です。
ステップ1 – 現状把握と75時間ライン定義
長時間労働対策の第一歩は、自社の実態を正確に知ることです。過去12ヶ月間の部門ごとの月別時間外労働時間を正確に把握しましょう。とくに、以下の指標を勤怠管理の最重要ラインとして定義し、社内に周知します。
- 月75時間:年720時間上限を守るための実務上の絶対警戒ライン
- 6ヶ月平均80時間:過労死ラインに直結する指標
- 月60時間:割増賃金率が50%以上に引き上がる境界線
関連資料|残業時間管理表(ワード)
ステップ2 – 勤怠管理システム・モニタリング設計
リアルタイムで時間外労働時間を把握できるよう、勤怠管理システムを活用しましょう。閾値アラートを多段階で設定することで、手遅れになる前の段階で、従業員本人と管理職に自動通知するようにします。
- 閾値アラートの多段階設定
従業員本人と管理職に対し、以下の多段階で自動通知を行うようシステムを設定します。
第1アラート: 月45時間(原則上限)第2アラート: 月60時間(高率割増の境界)最終アラート: 月75時間(実務上の絶対警戒ライン) - 平均時間ダッシュボードの表示
現在の残業時間だけでなく、「過去2ヶ月〜6ヶ月の平均時間」をリアルタイムで表示し、平均80時間以内という最も危険な上限を管理職が常に意識できるようにします。
ステップ3 – 健康・制度・現場マネジメント設計
月75時間に近づいた従業員には、具体的なフォローと、根本的な労働環境の改善が必要です。月80時間を超えそうな従業員からの申し出があった場合は、速やかに医師による面接指導を実施するなどの対応をします。また、代替休暇を付与する制度を導入することも、労働時間の削減につながります。
また、管理職に対し、従業員の残業時間が月75時間を超えないよう、業務の割り振りや効率化について教育します。評価制度を「時間」ではなく「成果」に移行することで、長時間労働を評価しない組織文化を醸成しましょう。
関連資料|社労士が解説! 時間外労働の管理 労基法違反から守る10のルール
月残業75時間に関するよくある疑問・Q&A
Q1:月75時間残業は違法ですか?
直ちに違法とはなりません。特別条項付き36協定が締結されており、かつ「年720時間以内」「平均80時間以内」といったすべての条件を満たす限りは違法となりません。条件の一つでも満たさなければ、労働基準法違反となります。
Q2:月75時間残業で残業代はどうなりますか?
原則より高い割増率が適用されます。月75時間の残業のうち、60時間を超えた部分(15時間)の残業代には、50%以上の割増率が適用されます(月60時間以下の部分は25%以上)。この引き上げは、20203年4月より中小企業を含めた全ての企業に適用されています。
関連記事|残業代の割増率とは?25%・35%・50%の違いや計算方法を解説
Q3:中小企業でも75時間を意識すべき?
中小企業も大企業と同様に、月75時間ラインを意識すべきです。残業時間の上限規制は、2024年4月以降、ほぼ全ての企業に適用されています。法令違反や健康リスクを避けるためにも、月75時間ラインを目安においた実務的な運用が有効となります。
Q3:建設業や運送業など、2024年4月以降も特例がある業種の上限は?
建設業、自動車運転の業務(運送業)、医師など一部の業種は、2024年4月以降も特例が適用されますが、それらの業種にも上限が設けられています。
- 建設業
他の業種と同様に時間外労働の上限は年960時間、月45時間超は年6回以内、月100時間未満、平均80時間以内となります。
ただし、災害の復旧・復興の事業に限り、月100時間未満、平均80時間以内は適用されません。 - 運送業
他の業種同様に時間外労働の上限は年960時間となりますが、月45時間超は年6回以内、月100時間未満、平均80時間以内は適用されません。 - 医師
具体的な上限時間は今後、省令で定めることとされています。
これらの業種においても、月75時間(または年960時間を守るための月80時間)を実務上の管理目標とすることが有効です。
関連資料|36協定特別条項上限時間&注意点かんたんチェック表
関連記事|時間外労働の上限規制とは?2024年の変更点を厚生労働省の指針をもとにわかりやすく解説
勤怠管理を正しく見直し、長時間労働のリスク軽減を
月残業75時間は、法律上の上限を攻める数値であり、過労死ライン(月平均80時間)に極めて近いという二重の意味で、企業と従業員にとって警戒ラインであることを解説しました。
企業は、月75時間を「安全な時間」ではなく、「これを超えてはならない危険な数値」として認識し、勤怠管理システムを導入して、月75時間以内におさえるための仕組み作りが重要です。従業員側も、自身の残業時間が残業 月 75時間に近づいていないか、自社の制度や健康状況を確認すべきでしょう。
明確な指標、チェックリスト、そしてシステムを用いた運用こそが、長時間労働のリスクを切り縮め、企業と従業員双方の健康と信頼を保つことにつながります。
関連資料|システム導入だけでは変わらない? 勤怠管理DXのあるあるなお悩みと再設計のポイント
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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