• 更新日 : 2025年10月22日

施工体制台帳で一人親方の記入例とは?契約形態や健康保険、添付書類の扱いを解説するには?

施工体制台帳における一人親方の記入方法は、その契約形態によって取り扱いが異なります。仕事の完成を目的とする「請負契約」であれば下請負人として台帳の対象となることが多く、労務提供型の「常用契約」であれば作業員名簿に記載するのが一般的です。
この区別を正しく理解することが、適切な書類作成の第一歩となります。

この記事では、具体的な記入例を交えながら、一人親方と取引する際に元請負人が迷いやすい主任技術者や健康保険の扱い、必要な添付書類について分かりやすく解説します。

一人親方との契約形態は何か?

書類作成に着手する前に、その一人親方と締結している契約が「請負契約」なのか「常用契約」なのかを明確に区別する必要があります。契約の性質によって、一人親方が「下請負人」として扱われるのか、あるいは「作業員」として名簿に記載するのかが決まり、使用すべき書類が変わります。

請負契約の場合:下請負人として台帳に記載

「この工事一式を〇〇円で完成させる」といったように、仕事の完成に対して対価が支払われる契約が「請負契約」です。この場合、一人親方は独立した事業者として取り扱われるのが一般的であり、施工体制台帳に記載されます。ただし、建設業法上で形式的に「下請負人」と明記されているわけではなく、契約内容や現場の実態により判断が分かれる場合があります。

常用契約の場合:「適用除外」となり作業員名簿に記載

「1日あたり〇〇円で現場作業に従事する」といったように、労働力の提供に対して時間単位(日当など)で対価が支払われる契約が「常用契約」です。

この場合、一人親方は元請負人の指揮命令下で働く労務提供者とみなされ、施工体制台帳の対象外とされます。その代わりに、元請負人の「作業員名簿」に記載するのが原則です。国土交通省のガイドラインでも、常用契約は台帳記載の対象から除外されるとされています。

【記入例】請負契約の一人親方を施工体制台帳に記載する場合

請負契約を結んだ一人親方は、下請負人として施工体制台帳に記載します。屋号(なければ個人名)を事業者名として、主任技術者や健康保険の欄を正確に埋めることが重要です。

以下に、主要な項目の記入例と解説を示します。

項目記入例解説
商号又は名称〇〇工業屋号があれば屋号を記載。なければ一人親方本人の氏名「山田 太郎」を記載します。
代表者氏名山田 太郎一人親方本人の氏名を記載します。
建設業の許可なし建設業許可がなければ「なし」と記載。軽微な工事を請け負う一人親方は許可がない場合も多いです。
主任技術者氏名山田 太郎一人親方本人が技術者であるため、自身の氏名を記載します。資格が必要な場合はその資格名を併記します。
健康保険国民健康保険加入している健康保険の種類を記載。建設国保の場合は「建設国保」とします。
年金保険国民年金一人親方は国民年金に加入しているのが一般的です。

主任技術者の欄

請負契約の場合、一人親方は自らが主任技術者となります。そのため、主任技術者欄には自身の氏名を記入します。工事内容によって特定の資格が必要な場合は、その資格を保有していることを確認する必要があります。

健康保険・年金保険の欄

元請負人は、下請負人や作業員の社会保険加入状況を確認する責任があります。これは国土交通省の通達に基づいて求められているものであり、必要に応じて加入を促すよう指導することが推奨されています。

一人親方の場合は「国民健康保険」「国民年金」に加入しているのが基本です。保険証の写しを提出してもらい、加入状況を確認しましょう。

必要な添付書類

施工体制台帳と合わせて、以下の書類を保管しておく必要があります。

  • 下請負契約書の写し: 契約内容を証明する最も重要な書類です。
  • 保険証の写し: 健康保険の加入状況を客観的に証明するために必要です。

【記入例】常用契約の一人親方を作業員名簿に記載する場合

常用契約の一人親方は施工体制台帳の対象から外れ、元請負人の「作業員名簿」に記載します。その現場では自社従業員と同様に管理すべき対象となるためです。

これは、その現場においては、自社の従業員と同様に管理すべき対象となるためです。施工体制台帳と混同しないように注意してください。

項目記入例解説
氏名鈴木 一郎一人親方本人の氏名を記載します。
職種大工担当する作業の職種を記載します。
健康保険国民健康保険請負契約の場合と同様に、加入している保険の種類を記載します。
雇用年月日2025/09/17この現場で作業を開始した年月日を記載します。(※実際の雇用関係とは異なります)

再下請負通知書における一人親方の扱いは?

再下請負通知書は施工体制台帳の基礎となる書類です。請負契約を結んだ一人親方は、元請負人に対してこの書類を提出する必要があります。

一人親方は通常、さらに下請けに出すことは少ないため、「再下請負しません」という意思表示を兼ねて、自社情報を記入して提出するケースが多いです。元請負人はその通知書を受け取り、施工体制台帳に反映させます。

契約形態の正しい理解が、適切な書類作成の第一歩

本記事では、施工体制台帳における一人親方の記入例を、契約形態の違いに着目して解説しました。重要なのは、取引実態が「請負」なのか「常用」なのかを正しく判断し、それに応じて「施工体制台帳」と「作業員名簿」を使い分けることです。

曖昧に処理すると、建設業法違反や社会保険加入に関する問題が発生する恐れもあります。適切な書類作成は、コンプライアンスを守り、元請負人として自社を保護するための基本です。一人親方との契約時には、まず契約形態を確認することから始めましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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