
はじめまして。公認会計士・税理士の石動龍と申します。
青森県八戸市で開業しており、公認会計士・税理士として顧問先の会計チェックや税務申告、経営コンサルティングなどを中心業務としています。なお、司法書士、行政書士など他資格も保有しています。
今回の連載では、はじめて経理業務に取り組む人が将来のキャリアパスを描けるまでを、私の経験を通して横断的に解説します。
私のキャリア:上場企業から地方の中小企業へ
私は現在、地方で開業しているため、顧問先は非上場の中小企業だけです。独立前は上場企業で働いており、公認会計士の監査対応や各種開示書類の作成を行っていました。小さい会社から上場企業まで、ひととおりの経験があります。
経理初心者が掴んでおくべき二つのポイント
一口に「経理」と言っても、内容は多岐にわたります。また、企業規模や上場・非上場の違いなどによっても、仕事内容は大きく違います。
経理初心者の方にとっては、イメージが掴みにくく、何から学べばよいかわからない状態かもしれません。安心してください。誰でも最初はそうです。
私ももちろんそうで、まったくの経理未経験からスタートし、キャリアを重ねて、現在は会計の専門家として働いています。経理のスキルは汎用性があるので、しっかりノウハウを身に付けることができれば、将来のキャリアにもメリットが大きいでしょう。
私は大学を卒業して、新聞記者になりました。色々あって転職し、経営企画業務を経て、上場している外航海運会社で初めて経理部に配属されました。
簿記1級の資格は取得しており、ある程度の経理に関する実務知識を持ち合わせていたものの、初めて体験する経理は分からないことの連続でした。
特に、「用語」や「業務の流れ」がわからず、苦労したように記憶しています。これらが理解できていれば、上司から怒られることも減ったはずで、ストレスも少なかったでしょう。
そのため、最初に経理業務を担当することになったとき、覚えておくべきことはこの二つになります。「用語」と「業務の流れ」がわかっていると、企業の規模に関わらず、スタートでつまずく可能性は低くなるといえるでしょう。
具体的な経理の業務内容
それでは、ざっくりと具体的な経理業務について解説します。
現金や預金の支払や入金を記録します。
発行した請求書、受け取った請求書をもとに仕訳を作成します。
従業員が提出した領収書をチェックし、立て替えた費用を精算します。
期日までに買掛金の支払いが行われたか、売掛金が入金されたかを確認します。未回収の売掛金がある場合は、営業担当者に速やかに回収を促します。
企業規模によって、とくに小規模企業では取引先への領収書や請求書の発行も経理担当者が行う場合があります。
棚卸資産がある場合は、実地棚卸を行うこともあります。
大企業では人事部が行う場合が多いものの、小規模企業では経理担当者が労務業務を行うことが多いです。従業員の勤怠チェック、給与計算、給与支払いを行います。
年末に従業員の負担する所得税を確定するため、各従業員から提出された扶養控除申告書や控除書類をもとに、還付額や納付額を計算します。
このほか、会計監査人の設置義務がある会社であれば、監査法人の対応があります。資金調達の際に金融機関とやり取りをすることもあるでしょう。製造業であれば、原価計算も行うことになります。
また、規模や業種によって適用する会計基準が異なるので、勤め先に合わせて知識をアップデートする必要があるでしょう。
経理業務に必須な知識と学習法
経理業務では簿記の知識が必須になるため、簿記の資格を取ることを検討してもよいでしょう。小さい会社であれば、簿記3級の資格を取るだけで、日常業務にある程度は対応できます。
一般的に、簿記3級に合格するには100時間程度の学習が必要といわれています。合格率も40~50%と高くなっていますので、まずはここを目指すと良いでしょう。市販のテキストと過去問題集に何周か取り組めば、合格できる可能性は高いです。
また、一年間の経理の業務スケジュールについては、経理初心者向けの書籍が複数出版されています。評価の高いものを一冊購入し、あらかじめ読んでおくと、準備がしやすくなるでしょう。
継続的学習の重要性
1日1時間の勉強時間を確保できれば、およそ3ヶ月で100時間になります。スキマ時間を利用して、朝早起きして30分、昼食を急いで食べて15分、夕食後に15分だけ勉強すれば、負担は少なく学習を継続しやすいでしょう。
学習効果を大きくする方法は、「連続して休まない」ことにあります。
私は経理未経験からスタートし、最終的に独学で公認会計士試験に合格し、現在に至ります。はじめて経理業務を担当してから、ほぼ毎日、何らかの形で経理業務に触れています。そうすると、知識が蓄積し、覚えたことを忘れる可能性は低くなります。
一方で、大学受験でのみ勉強した日本史や古文・漢文に関する知識は、ほとんど完全に忘れてしまいました。使わなければ記憶が劣化するのは当然なので、これから経理担当者としてキャリアを構築したいと思っている方は、なるべく断続的にでも、知識を確認することをおすすめします。
まとめ
今回は経理初心者向けの学習戦略の概略を解説しました。経理の「用語」や「業務の流れ」を理解し、継続的に学習を重ねることが成功へのカギです。
次回は「会社に関する法律と経理の基本」をテーマに掘り下げます。経理業務と法律は密接に関わるため、このテーマは経理初心者にとって非常に重要です。次回もぜひご覧ください。
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