- 作成日 : 2025年12月2日
建設工事の見積期間はどれくらい設けるべきか?建設業法上のルール、土日の扱いや罰則まで解説
建設工事を発注する際、建設業法で定められた「見積期間」を建設会社に提供する義務があることをご存知でしょうか。このルールを知らずに短い期間で見積もりを要求してしまうと、トラブルの原因となったり、法律に抵触したりする可能性があります。
この記事では、建設業の専門家として、法律で定められた見積期間の具体的な日数や、土日・祝日の扱い、そしてルールを守らなかった場合のリスクについて、発注者の皆様が知っておくべきポイントを分かりやすく解説します。
目次
そもそも建設業法が定める「見積期間」とは何か?
建設工事の見積もりを依頼する発注者が、受注者となる建設会社に対して、適正な見積書を作成するために与えなければならない、法律で定められた準備期間のことです。(建設業法 第20条第4項)
この規定が設けられている背景には、建設工事の見積もりが、現地の調査や資材・労務費の積算など、複雑で時間を要する作業だからです。不当に短い期間で見積もりを強いると、どんぶり勘定や不正確な金額提示につながり、後のトラブルの原因となります。適正な見積期間を設けることは、公正な取引関係を築くための第一歩です。
法定の見積期間は具体的にどれくらいの日数か?
工事の請負契約金額(税込)に応じて、1日以上、10日以上、15日以上という3段階の期間が定められています。
建設業法では、工事の規模(予定価格)によって、建設会社が見積もりを作成するために必要な期間の長さが異なると考え、以下の通り最低限確保すべき期間を定めています。
| 工事の予定価格(消費税込) | 設けるべき見積期間 |
|---|---|
| 500万円未満 | 1日以上 |
| 500万円以上、5,000万円未満 | 10日以上 |
| 5,000万円以上 | 15日以上 |
【注意点】
この期間には、見積もり依頼の書面を交付した日(初日)は含まれません。例えば、500万円の工事の見積もりを月曜日に依頼した場合、中10日を空ける必要があるため、見積書の提出期限は翌々週の金曜日以降となります。
見積期間に土日や祝日は含まれるか?
建設業法の条文上は、土日や祝日を除外する明確な規定はありません。 法律上は、カレンダー通りの日数(暦日)で計算されます。
しかし、建設会社や協力会社の多くは土日・祝日を休日としており、その間は積算作業や資材価格の確認などが進まないのが実情です。そのため、法律で定められた最低限の日数に加えて、休日分を考慮した、余裕のある期間を設定することが、実務上は強く推奨されます。 トラブルを避け、より精度の高い見積もりを得るためにも、発注者側の配慮が求められる点といえるでしょう。
見積期間を短縮できる「やむを得ない事情」とは?
災害時の緊急復旧工事など、客観的に見て期間の短縮に合理的な理由がある場合に限られます。 発注者側の都合(「店舗の開店が迫っている」「予算消化の期限が近い」など)は、原則として認められません。
建設業法では、例外的に見積期間を短縮できるケースとして「やむを得ない事情」がある場合を定めていますが、これは非常に限定的に解釈されるべきものです。
「やむを得ない事情」に該当する具体例
- 地震や水害などによる被災箇所の、緊急を要する復旧工事
- 事故などにより、放置すると二次災害の危険があるインフラの補修工事
「やむを得ない事情」に該当しない例
- 発注者側の計画の遅れによる、しわ寄せ
- 担当者の単純な見積もり依頼忘れ
- 予算執行の都合
受注者(建設会社)が同意したとしても、発注者側の都合で一方的に期間を短縮することは、優越的地位の濫用にあたる可能性があり、避けるべきです。
見積期間を守らなかった場合の罰則は?
見積期間の規定に違反しても、直接的な罰金や拘禁刑といった刑事罰はありません。 しかし、建設業法違反として、国土交通大臣や都道府県知事から指導や勧告を受ける可能性があり、企業の信頼を損なうリスクがあります。
建設業法は、建設業者だけでなく、発注者に対しても公正な取引を求めています。法定の見積期間を設けない、または不当に短縮するといった行為は、建設業法に定められた「発注者の義務」に違反することになります。
違反が悪質であると判断された場合、行政からの指導の対象となるだけでなく、企業のコンプライアンス意識が低いと見なされ、社会的な信用を失うことにもつながりかねません。
適正な見積期間が、公正な取引と質の高い工事の第一歩
本記事では、建設業法に定められた見積期間のルールについて、発注者の皆様が知っておくべきポイントを解説しました。
工事を発注する際は、契約金額(税込)に応じた法定期間を確保し、土日祝日も考慮した余裕のあるスケジュールを組むことが重要です。適正な見積期間を設けることは、単に法律を守るというだけでなく、建設会社との良好なパートナーシップを築き、詳細で精度の高い見積もりを得て、最終的に質の高い工事を実現するための不可欠な第一歩といえるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
バックオフィス業務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
建設業許可通知書とは?取得方法、証明書との違い、再発行の手順まで解説
建設業許可通知書は、建設業許可の申請が行政庁によって正式に認められた際に、申請ごとに発行される「許可の証明書」となる非常に重要な公文書です。許可取得の原本証明として、大切に保管する…
詳しくみる解体工事に必要なのは許可?登録?500万円の基準や建築一式との違い、資格要件を解説
解体工事をビジネスとして行うには、「建設業許可」または「解体工事業登録」のいずれかが必要です。この2つは、請け負う工事の金額(500万円)によって必要となる手続きが異なります。また…
詳しくみる建設業法の施工体制台帳とは?作成義務となる金額や書き方、添付書類まで解説
建設工事を元請として受注し、下請業者に工事の一部を発注する際、建設業法で「施工体制台帳」の作成が義務付けられていることをご存知でしょうか。この書類は、工事の全体像を明確にし、適正な…
詳しくみる2級管工事施工管理技士は難しい?合格率や受験資格、取得のメリットを解説
2級管工事施工管理技士は、主任技術者として現場の施工管理を担当できる国家資格です。国土交通省が管轄し、配管工事を管理する専門技術者の能力を認定するものです。この資格を取得することで…
詳しくみる建設業許可の本店移転手続きはどうする?他県への移転、必要書類、期限まで解説
建設業許可を持つ事業者が本店(主たる営業所)を移転した場合、法律で定められた期限内に、必ず「変更届出書」または「許可換え新規申請」の手続きを行わなければなりません。この手続きを怠る…
詳しくみる建設業法の「500万円の壁」とは?許可不要の工事、分割契約の違法性や抜け道のリスクまで解説
建設工事を発注する際によく耳にする「500万円」という金額。これは、建設業法において、建設業の許可を持つ業者でなければ請け負うことができない工事と、許可がなくても請け負える「軽微な…
詳しくみる