
4月から社会人になり、経理職に就いた人もいるかもしれません。はじめて経理の仕事に触れたときは、わからないことが多いと思います。
私もそうでした。簿記1級に合格しており、会計処理に関する知識は身についていましたが、経理業務に関するルールが理解できていなかったため、慣れるまで半年ほどかかりました。なるべく同じ苦労をしないよう、経理に取り組む際のルールについて学んでいきましょう。
個人と法人の違いについて
まず、「法人」という概念について説明します。事業を行う単位は、大きく分けて個人と法人があります。
多くの人が経理担当者として勤務するのは、いわゆる「会社」と呼ばれる組織でしょう。この「会社」と呼ばれる組織が、代表的な法人です。
法人とは、根拠法に従って設立され、法律上で自然人と同じく権利や義務などを持つことが認められた組織です。例えば、株式会社の根拠法は会社法です。会社法の第三条に「会社は、法人とする。」と規定されており、以後の条文に定義や設立方法などが定められています。
代表的な法人としては、株式会社があるほか、合同会社や合資会社、NPO法人なども法人に該当します。今回はこのうち、多くの人が勤務している株式会社を前提に説明します。
会社を取り巻く法律について
会社の運営にあたっては、様々な法律が関係します。代表的なものとしては、会社設立の根拠法である会社法や、法人の納税について定めた法人税法などが挙げられます。
そのほか、労働条件に最低限の基準を設けることで、労働者保護を目的とした労働基準法や、労働現場での安全と衛生を確保することを目的とした労働安全衛生法などがあります。
また、業界ごとに適用される法律もあります。
廃棄物処理や人材紹介など、許認可が必要な業種については、それぞれのルールについて法令が定められており、ルールに従って会社を運営することが求められます。
このうち、株式会社で経理業務を担当するにあたって、どの会社にも関わってくるのが「会社法」と「法人税法」です。
なぜ経理業務が必要なのか

そもそも、経理業務は何のために行う必要があるのでしょうか。まず、経理のない世界について考えてみましょう。
「どんぶり勘定」という言葉を聞いたことがあると思います。職人がどんぶりにもらったお金を入れて、そこから支払を行ったことが語源の一つといわれ、大雑把な収支管理を意味します。
毎日の収支を記録していなければ、どうしてお金が増えたり減ったりしているのか、いずれわからなくなります。いつどのようにお金を使ったかを、正しく記憶することはできません。しっかり記録しなければ、どうしてお金が増減しているかわからなくなります。
そこで発明されたのが「複式簿記」です。
複式簿記は、入出金や取引の内容を記録し、後から確認できるようにまとめた技術です。遅くともイタリアで記録がある600年前から現代まで、大きく形を変えることなく使われています。複式簿記を含む、取引を記録することなどを総称して「会計」といいます。
一口に会計といっても、いくつか種類があります。難しく覚える必要はなく、会計を学べば商売に役立つと理解してください。会計の概念を身に付けられれば、どんぶり勘定から抜け出すことができます。
「会計」は、大きく分けて二種類あります。
一つは、税務署や債権者など、外部への報告を主な目的にした外部向けの「財務会計」です。所得税や法人税の申告、上場企業の決算発表などが該当します。もう一つは、社内の経営会議や予算作りのデータ収集などを目的にした会計で、「管理会計」といいます。
それぞれの定義はなんとなく、「外部向けと内部向けの会計がある」と覚えていただければ大丈夫です。
経理担当者が主に扱っている内容はこのうち「財務会計」に関する業務が主です。日々の取引を記録し、会社法や法人税法で義務付けられた書類を作成するための手続きを行います。
株式会社の会計に関するルール
会社法は、「株式会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない。」と定めているほか、貸借対照表や損益計算書などの計算書類を作る義務について定めています。この規定に従って、株式会社は日々の経理業務を行っています。
そして、会社法にはもう一つ、経理に関する重要な条文があります。「株式会社の会計は、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うものとする。」という規定です。
それでは、一般に公正妥当な会計基準とはなんでしょうか。簡単に言うと、会社の状況によって適用される会計基準は異なります。
「金融商品取引法」が適用される上場企業などは、会社法の計算書類とは別に、「有価証券報告書」などの書類を作成して提出する義務が定められています。そのような企業が適用する会計基準は、主に投資家保護のため、難易度が高い内容です。
それに対して、多くの中小企業は株式を公開しておらず、投資家が存在しません。また、経理人員も少なく、高度な会計処理に対応することは不可能です。
そのため、より簡易的な「中小企業の会計に関する基本要領」(中小会計要領)が定められており、多くの中小企業はそのルールに沿って経理業務を行っています。
経理担当になったときは、勤務先の会社がどのような会計基準に沿っているか、まず確認してみましょう。
まとめ
今回は会社経営における法律と会計の基本について解説しました。本記事のまとめは以下のとおりです。
次回は「ITスキルで経理業務を効率化する方法」をテーマに掘り下げます。経理業務にとってITスキルは欠かせないものです。次回もぜひご覧ください。
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