• 作成日 : 2026年1月5日

建設業許可「500万円の壁」とは?税抜き・税込みの扱いや、分割・追加工事の注意点まで解説

建設工事を発注する際によく耳にする「500万円」という金額。これは、建設業法において、建設業の許可を持つ業者でなければ請け負うことができない工事と、許可がなくても請け負える「軽微な建設工事」とを分ける重要な基準額です。

この記事では、この「500万円の壁」の正しい考え方、契約を分割する「抜け道」がなぜ違法なのか、そして500万円未満の工事でも守るべきルールについて、発注者の皆様が知っておくべきポイントを分かりやすく解説します。

そもそも建設業法が定める「500万円」とは何か?

「500万円」とは、建設業の許可を持っていなくても請け負うことができる「軽微な建設工事」の上限金額です。(建設業法 第3条)

建設業法では、建設工事の品質確保や発注者の保護のため、一定規模以上の工事を請け負うには、都道府県知事や国土交通大臣から「建設業許可」を受けることを義務付けています。しかし、比較的小規模で、技術的にも簡易と考えられる工事については、許可がなくても請け負える例外が設けられており、その基準となるのが「500万円」という金額なのです。

「軽微な建設工事」の具体的な基準

許可を取得しなくても取り扱える「軽微な建設工事」の具体的な基準は、以下のとおりです。

  • 建築一式工事以外の場合:
    1件の工事の請負代金が500万円未満(消費税込)の工事。
  • 建築一式工事の場合:
    以下のいずれかに該当する工事。

    1. 1件の請負代金が1,500万円未満(消費税込)の工事。
    2. 請負代金にかかわらず、延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事。

出典:建設業の許可とは|国土交通省

「500万円」の金額はどのように計算されるか?

「500万円」は消費税込みの金額で判断し、発注者が提供する材料費も含まれます。この金額の計算方法を誤ると、意図せず法令違反となる可能性があるため、注意が必要です。

「税抜き」か「税込み」か?

「500万円」は消費税込み(税込)の金額で判断します。これは、建設業許可事務ガイドラインで、請負代金の額は「取引に係る消費税及び地方消費税を含む」と明記されているためです。

例えば、契約金額が税抜490万円であっても、消費税(10%)を加えると539万円となり、500万円を超えるため、建設業許可が必要な工事となります。

発注者が提供する材料費は含まれるか?

発注者が提供する材料費も、「500万円」の計算に含まれます。工事代金に含まれる材料費はもちろん、発注者が別途購入して建設業者に提供する材料(無償支給材)がある場合、その材料の市場価格や運送費なども請負代金の額に合算して計算する必要があります。

契約を500万円未満に分割する「抜け道」は許されるか?

建設業許可を逃れる目的で、本来一つの工事であるものを意図的に複数に分割して契約することは、法律で明確に禁止されており、罰則の対象となります。

「500万円を超えそうだから、300万円と250万円の2本の契約に分けよう」といった行為は、典型的な脱法行為です。これは、無許可業者による施工を防ぎ、工事の品質と安全を確保するという法の趣旨に反するため、建設業法施行令第1条の2第4項で厳しく禁じられています。

「正当な理由」がある分割とは?

工種が全く異なる場合(例:塗装工事と電気設備工事)や、工期や工区が明確に分かれており、それぞれの工事が独立していると客観的に認められる場合などです。発注者側の予算の都合や、単に手続きを簡略化したいといった理由は「正当な理由」には該当しません。

追加工事で500万円を超えた場合はどうなるか?

追加工事も、当初の契約と一体の工事であると見なされるのが原則です。当初の契約金額が400万円でも、その後の追加工事で100万円が発生し、合計が500万円以上となった場合、その追加工事の契約時点(または、超えることが予見された時点)で、建設業許可が必要となります。

500万円未満の工事でも守るべきルールはあるか?

建設業許可が不要な工事であっても、主任技術者の配置義務や契約書の作成義務など、建設業法の多くの規定は遵守する義務があります。

許可が不要だからといって、建設業法のすべてのルールが免除されるわけではありません。

主任技術者の配置(500万円未満の工事)

金額の多寡にかかわらず、建設業の許可を受けている業者はすべての建設工事現場に、その工事の技術上の管理を行う「主任技術者」を配置しなければなりません。(建設業法 第26条第1項)

これは、建設業許可の有無にかかわらず、建設工事を行うすべての業者に課せられた義務です。工事の品質と安全を確保するため、現場に技術的な責任者を置く必要があります。

契約書の作成義務

建設業法第19条に基づき、工事の大小にかかわらず、必ず書面(または電子契約)で契約を締結する義務があります。口約束での契約は認められていません。口頭での合意だけでは建設業法違反となり、行政処分の対象になり得るため、必ず書面で契約しましょう。

施工体制台帳の作成(500万円以下)

施工体制台帳の作成義務は、元請業者が下請契約を結んだ場合に発生します。ただし、公共工事以外では、下請契約の総額が5,000万円(建築一式の場合は8,000万円)以上の場合に義務が発生するため、500万円以下の工事で直ちに必要となるケースは少ないです。

「500万円の残高証明」とは何か?

500万円の基準額とは直接関係なく、建設業許可を「取得・更新」する際に、財産的基礎(資金力)を証明するために提出する書類の一つです。

これは、建設業法第7条第4号で定められた許可要件の一つです。500万円以上の工事を扱う前提となる建設業者は、その契約を履行できるだけの資金力(具体的には、500万円以上の自己資本があること、または金融機関発行の500万円以上の預金残高証明書が提出できることなど)を証明する必要があります。

発注者として「500万円」の基準をどう意識すべきか?

発注する工事が500万円(税込)を超える場合は必ず許可業者に依頼すること、そして無許可業者に契約の分割といった脱法行為を持ちかけないことが重要です。

建設業法は、建設業者だけでなく、発注者にも適正な取引を求めています(建設業法 第18条など)。許可業者は、法律で定められた技術力や経営基盤、誠実性といった基準をクリアした事業者です。発注者自身がこの500万円の基準を正しく理解し、コンプライアンスを遵守した取引を心がけることが、工事の品質を確保し、トラブルを防ぐための第一歩となります。

正しい理解が、コンプライアンスと品質確保の鍵

本記事では、建設業法における「500万円」という基準について、その意味や注意点を解説しました。

この「500万円の壁」は、建設業許可の要否を分ける重要なラインです。発注者としても、この基準が「消費税込」であり、「材料費も含む」ことを理解しましょう。意図的な分割契約といった「抜け道」に頼ることなく、コンプライアンスを遵守した取引を心がけることが重要です。許可が不要な小規模な工事であっても、契約書の締結や主任技術者の配置といった法律上のルールを守ることが、トラブルを防ぎ、工事の品質を確保するための第一歩といえるでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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