- 作成日 : 2025年12月2日
建設業許可を取得するには?必要な種類、500万円の基準、取得条件から更新まで解説
建設業許可は、建設業を営む上で法令遵守と社会的信用を得るための重要な資格です。一定規模以上の工事を請け負うには、この許可を必ず取得しなければなりません。
この記事では、建設業の専門家として、建設業許可とは何か、どのような種類があるのか、そして「許可をとるには」どうすればよいのか、その具体的な取得条件や手続き、更新について分かりやすく解説します。
目次
そもそも建設業許可とは何か?
建設業法に基づき、一定規模以上の建設工事を請け負うために、都道府県知事または国土交通大臣から受ける許可のことです。
この制度は、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進することを目的としています。無許可の業者によるずさんな工事や、技術力・経営基盤のない業者によるトラブルを防ぐための重要な仕組みといえるでしょう。
許可が不要な「500万円未満」の工事とは?
建設業法では、比較的規模が小さい「軽微な建設工事」に限り、許可がなくても請け負うことが認められています。その基準となるのが「500万円」という金額です。
- 建築一式工事以外の場合:
1件の工事の請負代金が500万円未満(消費税込)の工事。 - 建築一式工事の場合:
1件の請負代金が1,500万円未満(消費税込)の工事、または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事。
これを超える規模の工事を請け負う場合は、必ず建設業許可が必要となります。
建設業許可の主な種類とは?
建設業許可は、請け負う工事の範囲や専門性に応じて、「一般建設業」と「特定建設業」の2種類、そして29の業種に区分されます。
一般建設業と特定建設業の違い
最も大きな違いは、元請として受注した工事を、下請に出せる金額の上限があるかどうかです。
| 許可の種類 | 下請に出せる契約金額(1件の工事あたり) |
|---|---|
| 一般建設業許可 | 5,000万円未満(建築一式工事は8,000万円未満) |
| 特定建設業許可 | 5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)で、上限なし |
29の業種区分
建設工事の専門性に応じて、全29の業種に分類されており、許可はこの業種ごとに取得します。
- 一式工事(2業種)
- 1. 土木一式工事
- 2. 建築一式工事
- 専門工事(27業種)
- 3. 大工工事
- 4. 左官工事
- 5. とび・土工・コンクリート工事
- 6. 石工事
- 7. 屋根工事
- 8. 電気工事
- 9. 管工事
- 10. タイル・れんが・ブロック工事
- 11. 鋼構造物工事
- 12. 鉄筋工事
- 13. ほ装工事
- 14. しゅんせつ工事
- 15. 板金工事
- 16. ガラス工事
- 17. 塗装工事
- 18. 防水工事
- 19. 内装仕上工事
- 20. 機械器具設置工事
- 21. 熱絶縁工事
- 22. 電気通信工事
- 23. 造園工事
- 24. さく井工事
- 25. 建具工事
- 26. 水道施設工事
- 27. 消防施設工事
- 28. 清掃施設工事
- 29. 解体工事
建設業許可を取得するには?(5つの取得条件)
建設業許可を取得するには、経営経験、技術力、誠実性、資金力、そして欠格要件に該当しないという5つの主要な要件をすべて満たす必要があります。
これらの要件は、建設業を健全に経営していくための能力があるかを証明するためのものです。
① 経営業務の管理責任者がいること
法人の場合は常勤の役員、個人の場合は事業主本人が、建設業に関する一定の経営経験を持っている必要があります。(例:5年以上の経営経験など)
② 専任技術者を営業所ごとに置いていること
許可を受けたい業種に関する、国が定めた資格または一定期間以上の実務経験を持つ技術者を、各営業所に常勤で配置する必要があります。これが許可の技術的な根幹をなす要件です。
③ 誠実性があること
請負契約に関して、不正または不誠実な行為をする恐れが明らかでないことが求められます。過去に法律違反などがあると、この要件を満たせない場合があります。
④ 財産的基礎または金銭的信用があること
工事の請負契約を履行するための、一定の資金力があることを証明する必要があります。(例:自己資本の額が500万円以上、または500万円以上の資金調達能力があることなど)
⑤ 欠格要件に該当しないこと
申請者や役員などが、破産手続開始決定を受けて復権を得ていない者であったり、法律で定められた特定の犯罪で刑に処せられたりしていないことなどが要件となります。
許可の申請と更新手続きは?
許可の申請は、営業所の所在地を管轄する都道府県知事または地方整備局長などに対して行います。許可の有効期間は5年間で、事業を継続するには更新手続きが必要です。
申請窓口
- 1つの都道府県内のみに営業所を置く場合:その都道府県の知事(例:東京都庁)
- 2つ以上の都道府県に営業所を置く場合:国土交通大臣(窓口は管轄の地方整備局)
許可の更新
建設業許可の有効期間は5年間です。引き続き建設業を営む場合は、有効期間が満了する日の30日前までに、許可を受けた行政庁に対して更新の申請を行う必要があります。
許可取得後に必要なことはあるか?
許可を取得した建設業者は、営業所と工事現場の見やすい場所に、法律で定められた標識(許可票・看板)を掲示する義務があります。
この標識(通称「金看板」)には、商号、代表者名、許可を受けた建設業の種類、許可番号、許可年月日などを記載する必要があります。これは、その業者が正規の許可業者であることを、一般の人が外部からでも確認できるようにするための重要な義務です。
また、毎年の事業年度が終了した後、4ヶ月以内に決算内容などを届け出る「決算変更届」の提出も義務付けられています。
建設業許可は、事業の信頼性と成長の証
本記事では、建設業許可について、その基本的な意味から種類、取得条件、そして取得後の義務までを解説しました。
建設業許可は、単に500万円以上の工事を請け負うために必要な手続きというだけでなく、企業の経営体制や技術力を公的に証明する、社会的信用の証です。許可の取得は、事業のコンプライアンスを確保し、より大きな工事に挑戦するための第一歩といえるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
バックオフィス業務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
建設業法のガイドラインとは?発注者も知るべき法令遵守のポイントを解説
建設工事の適正な取引を実現するために、国土交通省は「建設業法令遵守ガイドライン」を公表しています。これは、複雑な建設業法の内容を分かりやすく解説した、発注者・受注者双方にとっての羅針盤となるものです。 この記事では、建設業の専門家として、こ…
詳しくみる造園施工管理技士1級は難しい?合格率や勉強法、仕事内容を解説
1級造園施工管理技士は「難しい」と言われます。造園業界において価値の高い国家資格ですが、取得難易度が高いことも広く知られています。具体的に何が難しく、どう対策すれば良いのでしょうか? この記事では、造園施工管理技士1級の難しさの背景にある試…
詳しくみる一人親方に主任技術者は必要?特定専門工事の条件、安全書類の書き方まで徹底解説
原則として、建設工事の現場には主任技術者の配置が必要です。ただし一人親方の場合は原則不要です。しかし、一定の条件下では、下請の一人親方が主任技術者を配置することが必要となる場合があります。 この記事では、「どのような場合に主任技術者が必要に…
詳しくみる建設工事の「工種」とは?建設業法で定められた29業種の種類と区分の考え方を解説
建設工事を業者に依頼する際、その工事が建設業法で定められた「工種(こうしゅ)」、すなわち29種類の専門業種のどれに該当するかを理解しておくことは、適切な業者選定とコンプライアンスのために非常に重要です。 この記事では、建設業の専門家として、…
詳しくみる建設業法の支払期日はいつ?発注者・元請けが知るべきルールと遅延の罰則を解説
建設工事の請負代金の支払期日は、当事者間の合意だけでなく、建設業法によって重要なルールが定められています。特に、元請負人と下請負人の間の取引では、下請事業者を保護するための厳格な規定が存在します。 この記事では、建設業の専門家として、発注者…
詳しくみる建設業法の工期と契約日はどう決める?着工前契約のルールや契約工期と実施工期との違いを解説
建設工事の契約において、「契約日」と「工期」の関係は、建設業法によって厳格にルールが定められています。特に「契約書を交わす前に着工する」ことは重大な法令違反であり、発注者・建設業者双方にとって大きなリスクとなります。 この記事では、建設業の…
詳しくみる