• 作成日 : 2025年6月24日

解体工事施工技士の合格率は?難易度や取得のメリット、効果的な学習方法を解説

解体工事のスペシャリストを目指す上で気になる「解体工事施工技士」。その合格率や難易度はどの程度なのでしょうか。建設業の技術革新や環境配慮への要求が高まる中、解体工事の専門知識を持つ技術者の需要はますます高まっています。この記事では、最新の合格率データを基に、試験の難易度、取得するメリット、具体的な試験内容、効果的な勉強法まで、受験を考える皆さまが知りたい情報を分かりやすく解説します。合格への確かな一歩を踏み出すために、ぜひご一読ください。

解体工事施工技士とは?

解体工事施工技士(かいたいこうじせこうぎし)は、解体工事現場における施工計画の作成、工程管理、品質管理、安全管理などを担う専門技術者のための国家資格です。

国土交通大臣認定の資格であり、建設業法に定められた「登録解体工事試験」の合格者に与えられます。 この資格を持つ技術者は、建築物や土木構造物の解体工事において、専門的な知識と技術に基づき、工事全体を円滑かつ安全に進めるための指揮・監督を行います。

具体的には以下のような多岐にわたる業務を担当します。

  • 解体方法の選定
  • 現場の調査
  • 重機や作業員の配置計画
  • アスベストなどの有害物質の調査・除去計画
  • 騒音・振動・粉じんといった周辺環境への対策
  • 廃棄物の適正処理 など

建設リサイクル法の施行以降、資源の有効活用や環境保全が強く求められるようになり、解体工事の専門性はより一層高まりました。解体工事施工技士は、これらの法規制を遵守し、環境負荷を低減しながら安全に工事を進める上で、なくてはならない役割を果たしています。

他の施工管理技士(建築、土木、電気工事など)が新設工事を中心に扱うのに対し、解体工事施工技士は「壊す」ことに特化した専門知識が求められる点が大きな違いです。構造物に関する知識はもちろん、解体特有の危険性や環境問題への深い理解が必要とされます。

解体工事施工技士の合格率と難易度

受験する上で最も気になるのが、試験の難易度と合格率ではないでしょうか。

解体工事施工技士試験の合格率は、次のとおりです。

過去3年の合格率データ

  • 令和4年度:55.9%(受験者数:1,930人 合格者数:1,078人)
  • 令和5年度:56.2%(受験者数:2,184人 合格者数:1,228人)
  • 令和6年度:63.5%(受験者数:2,140人 合格者数:1,359人)

受験者の半数以上が合格していますが、簡単な試験ではないため油断は禁物です。しかし、適切な学習と事前準備をすれば、十分に合格可能な難易度といえます。

他の建設系資格と比べると合格率は若干高い

1級・2級建築施工管理技士や1級・2級土木施工管理技士といった他の施工管理技士資格と比較すると、解体工事施工技士の合格率は若干高い水準にあることが多いです。これは、比較的新しい資格であることや、受験者層(ある程度の経験を持つ技術者が多い)などが影響している可能性があります。しかし、試験範囲は専門的であり、決して簡単な試験ではありません。十分な準備が必要です。

解体工事施工技士試験の合格ライン

解体工事施工技士試験は、「四肢択一式」と「記述式」の2つの形式で構成されています。それぞれの合格基準点は以下のとおりです。

  • 四肢択一式:50点以上/100点
  • 記述式:50点以上/100点
  • 合計:110点以上/200点

この基準点を全て満たした場合に合格となります。各分野で最低5割以上得点する必要があり、どちらか一方が基準を下回れば不合格となるため、バランスの取れた学習が求められます。特に記述式では、施工管理の実務に関する理解が求められるため、単なる暗記だけでは対応が難しい傾向があります。合格率などの数字だけに振り回されず、試験内容を理解し、着実に学習を進めることが合格への道です。

解体工事施工技士を取得するメリット

解体工事施工技士の資格を取得することは、個人のキャリアアップだけでなく、所属する企業にとっても多くの利点があります。主なメリットをいくつかご紹介します。

1. 主任技術者・監理技術者になれる

建設業法では、一定規模以上の建設工事現場には、主任技術者または監理技術者の配置が義務付けられています。解体工事施工技士の資格は、解体工事におけるこれらの技術者要件を満たすため、現場で責任あるポジションに就くことが可能になります。これは、一人親方や中小企業の工務店にとっても、受注できる工事の幅を広げる上で大きな後押しとなります。

2. 公共工事の受注に有利になる(経営事項審査での加点)

公共工事の入札に参加する際に必要な経営事項審査(経審)において、解体工事施工技士の有資格者は技術力評価の対象となることがあり、企業の評点アップに繋がります。評点が上がることで、入札で有利になり、より大きな規模の公共工事を受注できるチャンスが広がります。

3. 企業の技術力・信頼性の向上

有資格者が在籍していることは、その企業の解体工事に関する専門性や技術力の高さを対外的に示す証となります。発注者からの信頼を得やすくなり、民間工事の受注においても有利に働くことが期待できます。特に、コンプライアンスや安全管理が重視される現代において、有資格者の存在は企業の信頼性を高める上で欠かせません。

4. 個人のキャリアアップ・処遇改善

資格を取得することで、社内での昇進や昇給、資格手当の支給などに繋がるケースが多くあります。また、より良い条件を求めて転職する際にも、解体工事施工技士の資格は大きなアピールポイントとなり、有利な条件を引き出しやすくなります。自身の市場価値を高めるための有効な手段と言えるでしょう。

5. 専門知識・技術力の客観的な証明

資格取得に向けた学習を通して、解体工事に関する体系的な知識や最新の技術、関連法規などを深く学ぶことができます。合格することで、これらの知識・技術を習得していることが客観的に証明され、日々の業務においても自信を持って判断・指示ができるようになります。

このように、解体工事施工技士の資格は、法令遵守、企業の競争力強化、個人のスキルアップといった多方面にわたるメリットをもたらします。特に、解体工事を専門とする、あるいは今後強化していきたいと考える企業や技術者にとって、取得を目指す価値のある資格です。

解体工事施工技士の試験概要

解体工事施工技士試験は、四肢択一式問題と記述式問題で構成されています。いずれも基準点を満たすことで、資格を取得できます。

四肢択一式問題は、マークシート方式で行われ、解体工事に関する幅広い知識が問われます。記述式問題は、実際の施工現場を想定した設問に対して、記述で答える形式です。

主な出題科目は以下の通りです。

  • 土木工学等:土質工学、コンクリート工学、測量、設計・構造計算の基礎など、土木分野の基礎知識。
  • 建築工学等:建築構造、建築材料、建築施工、建築設備など、建築分野の基礎知識。
  • 鋼構造物解体工学:鋼構造物の特性、解体工法、安全対策など。
  • コンクリート構造物解体工学:コンクリート構造物の特性、解体工法(圧砕、切断、破砕など)、安全対策など。
  • 施工管理法:施工計画、工程管理、品質管理、安全管理、環境保全、建設副産物対策など、工事全体のマネジメントに関する知識。
  • 副産物・廃棄物対策:解体時に発生する廃棄物等の対策、適切な処理方法などの知識。
  • 法規:建設業法、労働安全衛生法、建築基準法、廃棄物処理法、建設リサイクル法など、解体工事に関連する法律や規則。

これらの科目から、バランスよく出題されます。基礎的な知識から、解体工事特有の専門的な内容まで、幅広い学習が求められます。

解体工事施工技士に合格するための効果的な勉強方法

解体工事施工技士の合格に必要な勉強時間は、個人の実務経験、予備知識、学習効率などによって異なりますが、一般的には60時間から100時間程度が1つの目安とされています。全くの初学者や実務経験が浅い場合は、より多くの時間が必要になることもあります。

重要なのは、総勉強時間だけでなく、学習の質と効率です。以下に、効率的な学習方法のポイントをいくつか挙げます。

自分に合った学習スタイルを選ぶ

自分に合った学習方法を選ぶことが、継続のコツです。

  • 独学:参考書や過去問題集を中心に、自分のペースで学習を進める方法です。費用を抑えられますが、自己管理能力とモチベーション維持が求められます。
  • 講習会・セミナー:専門学校や資格予備校などが開催する講座に参加する方法です。体系的に学べる、疑問点を直接質問できるといったメリットがあります。費用はかかりますが、効率的に学習を進めたい方に向いています。
  • 通信講座・eラーニング:テキストやDVD、オンライン動画などで学習する方法です。時間や場所に縛られずに学べるのが利点です。サポート体制が整っている講座を選ぶと良いでしょう。

効率的に学習計画を立てる

やみくもに勉強するのではなく、計画的に進めることが大切です。

  1. 目標設定:試験日から逆算して、いつまでに何をどの程度学習するか、具体的な目標を設定します。
  2. スケジュール作成:週単位、日単位で学習スケジュールを立て、無理のない範囲で継続できる計画を作成します。通勤時間や休憩時間などのスキマ時間も有効活用しましょう。
  3. インプットとアウトプットのバランス:参考書を読むなどのインプット学習だけでなく、過去問題を解くなどのアウトプット学習をバランス良く行うことが、知識の定着に繋がります。

過去問題を繰り返し解く

過去に出題された問題を繰り返し解くことは、出題傾向を把握し、実践力を養う上で非常に効果的です。最低でも過去3~5年分の問題には取り組みましょう。間違えた問題は、なぜ間違えたのかを理解できるまで解説を読み込み、関連知識も合わせて復習することが大切です。

苦手分野を克服する

過去問演習などを通して、自分の苦手な分野を把握したら、重点的に学習時間を割り当てましょう。参考書の該当箇所を読み返したり、別の教材で補強したりするなどして、着実に克服していくことが得点アップに繋がります。

学習は継続することが何よりも大切です。モチベーションを維持するために、短期的な目標を設定したり、一緒に勉強する仲間を見つけたりするのも良い方法です。自分に合ったスタイルで、効率的に学習を進めていきましょう。

解体工事施工技士の合格率を知り、計画的な対策で合格を目指そう

解体工事施工技士の合格率は、最新データを見ても決して簡単な試験ではないことがわかります。

しかし、難易度を正確に把握し、試験内容や評価されるポイントを理解した上で、計画的に学習を進めれば、合格は十分に手が届く目標です。

資格取得は、主任技術者や監理技術者への道を開き、キャリアアップや企業の信頼性向上に直結します。この記事で解説した合格率、難易度、メリット、勉強法を参考に、自信を持って解体工事施工技士試験への挑戦を始めてください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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