- 作成日 : 2025年6月20日
工事写真の小黒板の書き方とは?必須項目や例、撮影方法、アプリを紹介
工事写真に写す黒板には、「どこで・何を・いつ施工したのか」を正しく記録する役割があります。
公共工事では必須とされることも多く、書き方や撮影のタイミングを間違えると、記録としての価値が損なわれてしまうこともあります。
この記事では、黒板に記載すべき項目や写真の撮り方、さらに電子小黒板アプリの活用方法まで、現場で役立つ実践的な情報をわかりやすく解説します。
目次
工事写真における黒板の役割とは?
工事写真における黒板とは「小黒板(ここくばん)」とも呼ばれ、現場で撮影する写真の中に一緒に写し込む「情報を記載した板」のことで公共工事・民間工事を問わず、現場の記録として広く使われています。
「いつ・どこで・何を・どのように」施工したのかを、黒板に手書きまたはアプリで表示し、その内容と一緒に現場を写真に残します。
黒板がないと、写真を見ただけでは現場の状況がわかりづらくなります。たとえ写っているものが施工中の部材だったとしても、それが「どこの場所で、どの段階の作業なのか」が伝わらなければ、後から確認することができません。
たとえば、ただの鉄筋の写真だけでは、それが柱の配筋なのか、梁の配筋なのかわからず、用途や位置も判断できません。しかし、黒板に「○○工事」「柱C1」「配筋完了」「2025年4月10日」と書かれていれば、その写真がいつ・どこで・どの作業を記録したものか、はっきり読み取れます。
工事写真の黒板は義務ではないが実質的に必要
工事写真に黒板を写し込むことは、法令で明確に義務づけられているわけではありませんが、公共工事や多くの元請契約では、黒板によって必要な情報を写真に記録することが、実質的に求められています。
たとえば、国土交通省が定める「営繕工事写真撮影要領」では、撮影時に黒板などを使って「工事名」「撮影場所」「施工状況」などを明確に示すことが推奨されています。
このような基準に沿った形で写真を整理しておかないと、検査や提出時に「情報が足りない」「記録として不備がある」と判断される可能性もあります。
つまり、工事の写真が報告資料や品質証明として認められるためには、必要な情報を黒板でしっかり伝えることが前提とされています。
小黒板付きの写真はトラブル回避にもつながる
小黒板を写した工事写真は、検査官や発注者への報告資料としても使用されます。
特に公共工事では、工事写真の提出が求められますが、その際には「黒板に必要な情報がきちんと記載されているか」がチェックされます。
また、後日になって「この作業は確かに行われていたのか」「施工のどの時点で問題が起きたのか」といったことを確認したい場面が出てくるかもしれません。
そんなときでも、小黒板がきちんと写った写真があれば、状況を客観的に説明することができます。
工事写真に写す黒板に書くべき項目
黒板には、写真を見る人に「どこで・何を・いつ行ったか」を正しく伝えるためのものです。現場の状況が明確にわかるよう、一定のルールに従って情報を記載しましょう。
基本は「5W1H」
小黒板に書く内容は、「5W1H」という考え方に沿って整理するとわかりやすくなります。
- When(いつ):撮影した日付や時刻
- Where(どこで):現場の位置や部位(例:2階 柱C1)
- Who(誰が):必要に応じて立会者や施工者名
- What(何を):対象の作業内容(例:鉄筋組立)
- Why(なぜ)/目的:品質や出来形の証明として記録が必要な理由
- How(どうやって):施工の状態や方法(例:型枠設置中)
このように整理すると、どんな情報が求められているのかが見えてきます。
国土交通省で明記されている項目
国土交通省の「営繕工事写真撮影要領」では、黒板に記載すべき項目が定められています。
現場によって多少の違いはありますが、一般的に求められる主な項目は次のとおりです。
記載項目 | 内容の例 |
---|---|
工事名 | 「○○道路改良工事」など、正式名称 |
作業名(工種) | 配筋工、型枠工、舗装工 など |
撮影場所 | 「1階 柱B1」「通り芯 No.2+5.0m」など |
撮影日(時刻) | 「2025年4月15日」など。時間が必要な場合も |
施工状況 | 「配筋完了」「コンクリート打設中」など |
寸法や規格 | 必要に応じて設計寸法・実測値、材料の規格など |
立会者名/会社名 | 公共工事では立会者や施工会社名が必要なことも |
天候や補足 | 屋外作業では「晴れ」「雨」などの天候、略図も有効 |
これらの情報を正確に記載することで、工事写真が正式な資料として活用できるようになります。
工事写真における黒板の例
例1:建築現場(鉄筋工事・柱)
工事名 :令和6年度 ○○庁舎新築工事 工種 :配筋工 撮影場所:2階 柱C1 撮影日 :2025年4月15日 施工状況:配筋完了 寸法 :設計 D13@200/実測 D13@200 施工者 :△△建設株式会社 |
例2:道路工事(舗装版打設)
工事名 :○○市 道路改良工事 第3工区 工種 :舗装工 撮影場所:No.5~No.7間 路盤部 撮影日 :2025年3月22日 施工状況:コンクリート打設中 材料規格:RC-40、厚さ150mm 天候 :晴れ |
例3:道路工事(舗装版打設)
工事名 :○○工業団地造成工事 工種 :配管工 撮影場所:南側区域 Φ150配管 終点付近 撮影日 :2025年4月8日 施工状況:埋設前(設置完了) 配管番号:G-3系統 立会者 :発注者 ○○市都市整備課 佐藤 |
地域や元請によって追加指定がある場合も
公共工事の場合、都道府県や市町村ごとに細かな運用ルールが定められていることがあります。
たとえば「地盤高さ(GL)の記載」「配管番号の明示」など、地方独自の項目が追加されることも少なくありません。
また、民間工事であっても、元請会社の方針や報告書作成の都合により、黒板の様式や記載内容が指定される場合があります。
そのため、着工前に「どんな情報を黒板に書くべきか」を確認しておくことが大切です。
ひな形やテンプレートが用意されている現場も多いので、事前に共有されている場合は活用しましょう。
工事写真に写す黒板の書き方のポイント
工事写真に黒板が写ったときに、誰が見ても読みやすく、内容がはっきり伝わるように工夫しましょう。
文字は崩さずに書く
現場では急いで書くこともありますが、写真として使う前提で、読み手を意識した書き方を心がけましょう。小黒板に書く文字は、見た人に一目で内容が伝わることがポイントです。
- 文字は丁寧に、崩さずに書きましょう(楷書を意識)
- 小さすぎる文字は写真に写らないので、大きく・濃く書くことが基本です
- 黒板のフチぎりぎりには書かず、中央に寄せて余白を残すとバランスよく見えます
たとえば数字の「1」と「7」や、「0」とアルファベットの「O」など、似た形で間違えやすい文字には特に注意が必要です。
屋外は耐水チョークも検討する
屋内なら通常のチョークで問題ありませんが、屋外や雨天時には「耐水チョーク(ゲルチョーク・雨ん棒)」などを使うと、はっきりと書けます。
- チョークは白か黄色など、黒板とコントラストの強い色を選びます
- 細すぎると読みにくいため、ある程度太く書けるものが安心です
情報のレイアウトを決めておく
黒板に書く情報が多いときは、「どこに何を書くか」を決めておくと見やすくなります。
おすすめの配置例:
- 上段:工事名、日付、天候などの基本情報
- 中段:作業名、撮影場所、施工状況などのメイン情報
- 下段:寸法・規格、立会者名などの補足情報
さらに、行間はゆったりと、項目ごとに少し間隔を空けて書くと、読みやすさが向上します。
必要に応じて「略図」を活用する
位置関係や方向がわかりづらい作業では、簡単な略図を黒板に描くのも効果的です。
- 配管の経路、撮影の向き、柱や梁の位置関係などを図で補足
- 方角(例:「←北側」)や矢印を入れると、より明確に伝わります
- 複雑な図になりすぎないよう、シンプルにまとめるのがコツです
略図はあくまで補助的な情報なので、文字情報とのバランスを意識しながら使いましょう。
工事写真に黒板を写し込むための撮影時の注意点
小黒板に正しく情報を書いても、ぼやけて読めない、影になって見えない、反射して白く飛んでいる、そのような写真では、後から確認しようとしても肝心な情報がわからなくなってしまいます。
ここでは、黒板をしっかり写し込むための撮影時の基本的な注意点をまとめます。
撮影前にチェックすべき3つのポイント
- 黒板の文字が読めるかどうか
→ 遠すぎたり、角度がつきすぎていたりすると、文字が歪んだり読みにくくなります。カメラと黒板の高さを合わせ、できるだけ真正面から撮るようにします。 - 記録対象(施工部位)がちゃんと写っているか
→ 黒板ばかりが目立って、肝心の現場が見切れてしまうこともあります。黒板と対象物が両方しっかり写る構図を意識しましょう。 - 照明や日差しによる反射がないか
→ 太陽光や照明が黒板の表面に反射して、白く飛んでしまうことがあります。黒板の角度を少し調整するだけで改善される場合が多いです。
ぶれずに、読みやすく写すコツ
屋外では、風で黒板が揺れたり、手持ちで撮影してぶれてしまうことがあります。また、ピントと明るさの調整も忘れずに行いましょう。
次のような工夫をしてみましょう。
- スマートフォンなら「手ぶれ補正付き」や「シャッタータイマー」を活用
- 黒板の文字と施工部位の両方にピントが合っているかを必ず確認
- 必要に応じて撮影者と黒板を持つ人が連携して行う
- 暗い場所ではISO感度やフラッシュの使用を検討します(※ただし、フラッシュは反射に注意)
- 明るすぎて白飛びしそうなときは、露出補正を少し下げると効果的です
撮ったら「その場で確認」が鉄則
写真は撮ったらすぐ確認。これが現場での大原則です。
- 黒板の文字がはっきり写っているか
- 施工対象がぶれずに収まっているか
- 余計な影や反射がないか
もし不備があれば、その場で撮り直せば問題ありません。
後日になってからでは、同じ状態を再現するのが難しくなります。
工事写真の黒板に書き間違えたとき
小黒板に記載する情報は、後から見返したときに重要な判断材料になりますが、現場では慌ただしい中で作業を進めることも多く、うっかり書き間違えてしまうこともあるでしょう。
ここでは、黒板の記載ミスに気づいたとき、どう対応すればよいかを状況別に解説します。
原則は「すぐに書き直して撮り直す」
一番確実で正しい対応は、黒板を正しい内容に書き直し、写真を撮り直すことです。
特にまだ工事が続いていて、同じ状態を再現できる場合は、これが最も安心でトラブルも少ない方法です。
撮り直す際は、前回と同じ位置・アングルになるよう注意すると、写真台帳としても整った印象になります。
撮り直しができないときの対処法
すでにコンクリートを打設してしまった、施工箇所に立ち入れない、そんな場合は、以下の方法で記録を補足しましょう。
① 写真台帳に注釈を加える
誤記の内容と、正しい情報をコメント欄などに記載します。
記載例:
「黒板上の施工日が2025年4月12日となっておりますが、正しくは4月13日です」
② 写真管理ソフトに補足を入力する
デジタル写真管理ツールを使っている場合は、黒板の訂正内容を備考欄や説明欄に追記できます。
これにより、元の写真を加工することなく、情報を補完できます。
③ 報告書・検査書類で補足説明を行う
写真を提出する際の報告書やチェックリストの中で、訂正内容を明記します。
可能であれば、訂正理由(例:現場混雑のため誤記)なども添えると、信頼性が保たれます。
写真の加工・編集は絶対NG
間違いがあっても、画像そのものを加工して修正することは絶対に避けてください。
写真は「その時の記録」であり、後から書き換えられたものは証拠としての信頼性を失ってしまいます。
特に公共工事では、「撮影後の画像加工は原則禁止」と明確に定められており、契約違反と見なされる可能性もあります。
電子小黒板を使っている場合の注意点
電子小黒板では、撮影後に黒板情報だけを修正できる機能がついているものもあります。
ただしこの場合も、「何をいつ修正したか」が記録に残るアプリを使うことが前提です。
工事写真の黒板を電子化したアプリやツール
チョークやマーカーで手書きする黒板を、スマートフォンやタブレットのアプリ上で作成できる、電子小黒板ツールを利用すると、写真の記録精度や管理効率を大幅に向上させることができます。
工事写真に必要な黒板情報(工事名、撮影場所、作業内容、日付など)を画面上で入力し、自動的に写真に合成できるようになります。
電子黒板アプリ・ツールを利用するメリットは下記のとおりです。
- テンプレートにより黒板の書き方が統一される
- 写真に自動的に情報が記録され、抜けやミスが減る
- 撮影後の整理・検索・台帳作成が簡単になる
- データはクラウドで共有・保管でき、報告書づくりも効率化される
おすすめの電子小黒板アプリ・ツール
多くの現場で活用されている電子小黒板アプリの中から、操作がシンプルで導入しやすく、特に一人親方や小規模事業者に向いている3つのツールをご紹介します。 それぞれの特徴を比較しながら、自社や現場に合った選択の参考にしていただければと思います。
1. KANNA(カンナ)
「KANNA(カンナ)」は、基本的な機能が無料から使えることが特徴で、はじめて電子小黒板を使う方にも取り入れやすいアプリです。
画面の構成がシンプルで直感的に操作できるため、スマートフォンに慣れていない方でも安心して始められます。
黒板のテンプレートを自作できる機能もあり、現場ごとに必要な情報を反映しやすい点も特徴です。
また、写真の整理や報告書の作成機能も充実しており、書類作成の手間を減らしたい方にもおすすめです。
2. ミライ工事
「ミライ工事」はスマートフォン1台で撮影から写真台帳の作成までが完結するツールです。特に特徴的なのは、オフラインでも使える点です。
トンネル内や山間部など、通信環境が不安定な現場でも安定して使えるため、屋外作業が多い方には非常に適しています。
撮影した写真は自動で整理され、報告用の資料としてもすぐに活用できるため、現場と事務作業の両方を一人でこなすケースにもぴったりです。
月額は約900円からと導入しやすく、無料トライアルも用意されているため、まず試してみたいという方におすすめです。
3. 蔵衛門Pad
「蔵衛門(くらえもん)Pad」は公共工事での使用を前提として設計されており、国土交通省が定める電子納品要件にも対応しています。
黒板のデザインや項目はあらかじめテンプレート化されており、情報の記載漏れを防ぎながら、統一された写真記録が残せるのが特徴です。
また、AIによる写真の自動分類機能や、クラウド上でのデータ共有にも対応しており、複数人で現場を管理する場合にも便利です。
元請や監督者とのやり取りが多い現場では、信頼性の高いツールとして選ばれています。
月額900円から利用可能で、1〜2週間の無料トライアル期間も設定されているため、事前にしっかり確認してから導入できます。
小黒板に正しく書き工事写真を確かな記録にしよう
工事写真の黒板は、記録の信頼性を支える大切な情報源です。
項目の書き方や配置、撮影の工夫ひとつで、写真の伝わりやすさは大きく変わります。
手書きでも電子でも、現場に合った方法で黒板を適切に活用すれば、写真台帳の質が上がり、報告書や検査対応もスムーズになります。
これからは電子小黒板などのアプリやツールも上手に取り入れながら、記録の精度と作業効率を高めていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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