• 作成日 : 2025年8月8日

イタリアン開業ガイド!資金や年収の目安、資格、手続きまとめ

イタリアンを開業したいと考えたとき、何から始めればよいのか、どれだけお金が必要なのか、不安になる人は多いのではないでしょうか。この記事では、開業資金や資格、年収の目安、手続きの流れなど、イタリアンを開業するために押さえるべき基本情報をまとめました。個人店でも始められる現実的な情報を紹介します。

イタリアンの開業にかかる資金

イタリアンの開業資金は店舗の規模や立地によって大きく変わりますが、平均して約1,000万円以上の資金が必要とされています。

テナントを借りて30席前後のレストランを始める場合、最低でも800万円〜1,500万円程度の初期費用がかかることが一般的です。この中には、内装工事費、厨房設備費、物件取得費(保証金・礼金など)、備品・家具、広告宣伝費などが含まれます。

さらに、開業後すぐに黒字化できるとは限らないため、運転資金として3〜6カ月分の人件費や仕入価格を別に確保しておく必要があります。全体で1,000万円〜2,000万円が目安です。

一方、キッチンカーや間借り店舗での開業であれば、300万円〜500万円前後で始められるケースもあります。

開業の初期費用(物件取得から設備まで)

イタリアンを開業する際の初期費用は、初期費用の目安は600万円〜1,600万円です。

主に以下の費目で構成されます。

項目金額目安(20坪の場合)解説
物件取得費100万〜560万円家賃の10カ月分相当が相場。(都心部では10カ月分相場だが、地域によっては3~6カ月分の場合もある)敷金・礼金込み
内装・厨房工事費600万〜1,000万円以上坪単価30万〜50万。設備により変動
備品・什器費工事費に含むことが多いテーブル、椅子、カトラリーなど
広告・採用費60万〜140万円開業前後の集客・スタッフ準備に必要

合計では600万〜1,600万円程度が目安ですが、本格的なピザ窯やワインセラーを導入する場合は、さらに費用が上がります。

節約する手段として、居抜き物件や中古設備の活用も選択肢になります。ただし、設備の老朽化による修繕費や、店舗の印象が変えづらいなどのデメリットもあるため、短期的な節約と長期的な運営コストのバランスを見極めることが大切です。

運営費用(開業後の固定支出)

イタリアン開業後は、毎月の固定支出=運営費用が継続的に発生します。代表的な項目と目安は以下の通りです。

項目売上に対する割合目安
食材費30%
人件費30%
家賃10%
光熱費5%
その他雑費10%
合計約85%

合計で売上の約85%がランニングコストに消えます。残りの15%から利益を確保するためには、FLコスト(食材+人件費)を売上の60%以内に抑えることが重要とされています。

食材ロスの削減や、メニューの見直し、スタッフのシフト最適化、調理工程の簡略化などで調整します。

例として、月商200万円の店舗で考えると、
→ 食材・人件費で120万円、家賃・光熱費などで50万円、合計170万円が支出。
→ 残り30万円が利益または予備資金になります。

開業初期は売上が安定しないため、運転資金として3〜6カ月分を確保しておくのが理想です。上記の例(月間支出170万円)で言えば、3カ月分で510万円、6カ月分で1,020万円が一つの目安となります。

資金計画の一つの目安として、日本政策金融公庫の調査(2023年度)では、新規開業時の運転資金は全業種の平均で288万円となっています。飲食業は仕入れが先行するため、これ以上を見積もると安心です。

資金の調達方法

開業資金の準備には、自己資金だけでなく、外部からの資金調達も視野に入れる必要があります。主な方法は以下の通りです。

  • 日本政策金融公庫(JFC):創業融資制度があり、無担保・無保証人で融資を受けやすい。飲食店の利用実績が豊富。
  • 信用金庫や地方銀行:地域密着型で柔軟に相談しやすい。自己資金の割合が重要視される。
  • 親族・知人からの借入:契約書を交わしてトラブルを避ける工夫が必要。
  • クラウドファンディング:開業前からファンを作る手段にもなりうる。

金融機関によっては、事業計画書の内容次第で融資条件が大きく変わるため、しっかりとした事業計画の作成が不可欠です。

イタリアンの開業スタイル

イタリアンを開業する方法にはいくつかのスタイルがあり、それぞれ初期費用や運営方法、営業の自由度が異なります。自分の目的や経験、資金に合った形を選ぶことが重要です。

店舗型のイタリアンレストラン

最もオーソドックスなのが、テナントを借りて営業する店舗型です。都市部や住宅街に店舗を構え、ピザやパスタ、ワインなどを提供します。店内の内装や演出にこだわりやすく、ブランドや世界観を作り込みやすい点が強みです。

ランチとディナー両方で営業することで収益の幅も広がり、常連客がつけば安定した経営も見込めます。一方、初期費用や毎月の固定費が大きいため、資金計画と経営管理が欠かせません。

キッチンカーによる移動販売

初期費用を抑えて開業したい人に選ばれているのが、キッチンカーでの移動販売スタイルです。車両と厨房設備の準備は必要ですが、物件取得や内装工事が不要で、300万〜500万円程度でスタートできることもあります。

営業許可や仕込み場所の確保、販売場所の確保が必要ですが、公園、イベント会場、オフィス街など、時間帯や曜日に合わせて場所を変えられる点が魅力です。

提供するメニューは、手渡しやすく短時間で仕上がるものが適しています。例えば、以下のような構成が人気です。

  • 薪窯風の焼き立てピザ(カット売り)
  • ジェノベーゼやトマト系のパスタ(容器提供)
  • イタリアンソーダ、レモネード、エスプレッソなどのドリンク類
  • ティラミスやカンノーリなどのスイーツ

仕込みや提供にかかる時間を考慮し、調理工程を簡略化したメニュー構成が求められます。また、イベントなどで顧客の反応を確認できるため、メニューのブラッシュアップにも活用できます。

キッチンカーは、既存店舗を一時的に借りる間借り営業です。これらは開業資金を抑えながら、メニューや顧客の反応をテストできるメリットがあります。

間借りでスタートするスタイル

他店の営業時間外や空きスペースを活用する間借り型の開業もあります。居酒屋やカフェなどの厨房を使い、ランチや週末だけ営業する形が主流です。

初期費用は100万円台からで済むことも多く、テスト出店や副業としての運営にも向いています。ただし、営業時間の制限や厨房設備の使い方にはルールがあるため、契約前に確認が必要です。

フランチャイズ加盟で始めるスタイル

仕入れルートやメニュー、運営ノウハウがパッケージ化されているフランチャイズは、ブランドの看板や運営ノウハウ、仕入れルートが整っているため、開業後の立ち上げがスムーズに進む点がメリットです。

一方で、初期費用とは別にロイヤリティの支払いが必要となり、価格設定やメニュー構成の自由度も制限されます。自由な店づくりを望む場合は、慎重に検討する必要があります。

イタリアンを開業するまでの流れ

イタリアンレストランを開業するには、コンセプト設計と事業計画書の作成、物件選定から行政手続き、現場の準備まで、段階的に進めることが必要です。事前の準備とスケジュール管理が、無理のない開業を実現します。

1. コンセプト設計と事業計画書の作成

店舗の方向性を明確にします。どの地域で、どのような客層を狙い、ピザ、パスタ、ワインなど何を主軸に据えるか。メニュー構成、価格帯、店舗の雰囲気を決めたら、それに基づいて事業計画書を作成します。

事業計画書には、必要資金、収支見込み、資金調達方法(例:日本政策金融公庫など)、開業後3年間の見通しなどを具体的に盛り込みます。融資申請時に必要なだけでなく、自分自身の経営判断の軸にもなります。

2. 資金調達と物件選定

計画書が整ったら、自己資金と外部資金を合わせた資金調達に入ります。

日本政策金融公庫、信用金庫、親族からの借入などが一般的です。

物件契約から開業までの期間は、物件の状態に大きく左右されます。軽微な改装で済む居抜き物件では2カ月程度、インフラ工事から必要なスケルトン物件では5カ月以上かかることもあり、一般的には2.5カ月から5.5カ月程度が目安とされています。

立地は集客に直結するため、周辺の競合状況や人の流れ、想定客層を分析して選びます。

3. 内装・厨房工事と人材採用

物件契約後は、厨房や客席のレイアウトを決定し、内装工事と厨房設備の設置を進めます。施工期間中は、アルバイトやスタッフの採用、教育の準備を行いましょう。求人は早めに出し、オープン1カ月前には研修が始められる体制が理想です。

まず行うのは、事業計画の作成です。コンセプト、メニュー構成、客層、価格設定、収支予測などを整理し、資金調達の土台にもなります。

次に、物件探しと契約です。立地は集客に直結するため、通行量や周辺店舗との競合状況も見ながら決めます。契約後は、内装工事や厨房設備の設置を行い、同時並行で保健所や消防署への申請、食品衛生責任者の資格取得を進めます。

開業届や青色申告の開始届も忘れずに提出します。スタッフの採用や仕入れ先との契約、広告準備を経て、プレオープンと本開業に至ります。

4. 必要な許可と行政手続き(届出先一覧)

イタリアンを開業するには複数の許可申請や届出が必要です。不備があると開業延期につながるため注意が必要です。特に飲食店営業許可は、申請から交付まで2~3週間かかるのが一般的です。

表にある「営業開始の10日前まで」という期限はあくまで最終期限であり、間に合わないケースがほとんどのため、工事前の設計段階から保健所に相談しておくとスムーズです。

イタリアン開業にかかる手続きと届出先一覧

手続き名届出先提出期限
個人事業の開業・廃業等届出(開業届)税務署事業開始から1カ月以内
所得税の青色申告承認申請税務署原則として開業から2カ月以内

ただし、1月1日~15日に開業した場合は、その年の3月15日まで

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出税務署従業員雇用から1カ月以内
食品衛生責任者の設置保健所飲食店営業許可申請前
飲食店営業許可申請保健所営業開始の10日前まで
防火対象設備使用開始届消防署建物使用開始の7日前まで
火を使用する設備等の設置届消防署設置の7日前まで
防火管理者選任届消防署収容人数30人以上の場合、営業開始まで
深夜酒類提供飲食店営業開始届出警察署深夜営業の場合、営業開始の10日前まで
社会保険加入年金事務所従業員雇用から5日以内
雇用保険加入ハローワーク従業員雇用から10日以内
労災保険加入労働基準監督署従業員雇用から10日以内
源泉所得税の納期の特例の承認申請(従業員数が10名未満の場合)税務署特に定めなし

5. プレオープンと最終調整

オープン直前には、知人や関係者を招いたプレオープンを行いましょう。営業リハーサルとして、オペレーションや接客の流れ、設備の不備、メニュー提供のタイミングなどを確認できます。この段階でトラブルや不足点を洗い出して改善し、本開業に備えます。

イタリアン開業後の年収の目安

イタリアンを開業した後の年収は、月商と運営コストの管理次第で大きく変わります。

30席前後の店舗を経営した場合、月商は80万円〜300万円程度が一つの目安です。ここから家賃・人件費・原材料費などを差し引き、残った金額が利益となります。

個人経営では、年収300万円〜600万円前後が一般的ですが、人気店になれば1,000万円を超えることもあります。

ただし、開業初年度は、赤字または年収ゼロとなるケースも考えておきましょう。安定した収益化には、2年目以降を見据えた資金繰りと柔軟な経営判断が必要です。

イタリアンの開業に必要な資格

イタリアンを開業するには、法律で定められた資格取得や各種届出が必要です。申請が遅れると開業に支障が出るため、設計や施工と並行して、遅くとも開業の2カ月前には準備を始めましょう。

特に資格講習は定員や開催頻度が限られるため、数カ月前から計画的に予約するようにします。例えば食品衛生責任者の講習はe-ラーニングで比較的早く取得できる場合もありますが、防火管理者講習は申し込みから受講まで1〜2カ月以上かかることも珍しくありません。

保健所関連

  • 食品衛生責任者の資格取得
    飲食店には1名の設置が義務。調理師免許がない場合は、各自治体で実施される1日講習(座学)で取得可能。比較的取得しやすく、申込みから受講まで2〜4週間かかることが多い。
    → 提出先:保健所/タイミング:営業許可申請前に取得。
  • 飲食店営業許可の申請
    厨房や衛生設備が基準を満たしているか保健所の現地検査で確認される。申請から許可証の交付までは通常2〜3週間。厨房設計の段階から保健所に相談しておくとスムーズ。
    → 提出先:保健所/タイミング:営業開始の10日前までに申請。

消防署関連(火を使用する設備がある場合)

  • 火を使用する設備等の設置届
    ガスコンロやオーブンなど火気設備を使う場合に必要。必要書類を提出するのみで、内容も比較的シンプル。
    → 提出先:消防署/タイミング:使用の7日前までに提出。
  • 防火対象設備使用開始届
    厨房や調理設備を使用開始する前に届け出が必要。図面などの準備は必要だが、提出自体は短時間で済む。
    → 提出先:消防署/タイミング:使用開始の7日前までに提出。
  • 防火管理者選任届(収容人数30人以上の場合)
    大型店舗では防火管理者の選任が義務付けられる。講習(約1日)を受けて資格を取得し、その後に届出。準備と申込みに2〜3週間ほど見込んでおく。
    → 提出先:消防署/タイミング:営業開始前に提出。

警察署関連(深夜営業を行う場合)

  • 深夜酒類提供飲食店営業開始届出
    深夜0時以降に酒類を提供する場合に必要。図面や照度計画など複数の書類準備が必要で、要件も細かいため事前の確認が必須。準備に1〜2週間は見込む。
    → 提出先:警察署/タイミング:営業開始の10日前までに提出。

イタリアンの開業を成功させる5つのコツ

競争の激しい飲食業界で長く続けるには、料理の味や雰囲気だけでなく、戦略と経営意識が欠かせません。ここでは、実際にイタリアンを軌道に乗せるために意識すべきポイントを紹介します。

事業計画とコンセプトを練り込む

開業時に作る事業計画書は、融資を受けるためだけのものではありません。店舗運営の方針や利益構造、売上目標を定める「経営の地図」として機能します。売上予測やコスト管理は、客観的なデータや周辺の相場をもとに組み立てましょう。

さらに、「誰に、何を、いくらで、どう感じてもらいたいか」を明確にし、ターゲットに響くメニュー構成を設計します。例えば、平日はパスタランチを主力に、夜はワインと前菜のシェアスタイルで単価アップを図るなど、利用シーンごとの演出も考えておくと強みになります。

立地と競合を正しく見極める

店舗の立地は、そのまま売上に直結します。カジュアルな店なら駅近や人通りの多い通学路・オフィス街、高単価の本格派イタリアンなら落ち着いた住宅地や観光エリアが適しています。

周辺の競合店を調べ、自店と価格帯やコンセプトが似ている場合は、違いをはっきり打ち出すことが必要です。価格ではなく、「雰囲気」「食材」「接客」「回転率」など、異なる価値を明確にして競争を避けましょう。

人材の確保と育成を先手で行う

飲食店経営では、人材が最大の資産です。開業準備中から採用活動を始め、未経験者にも対応できる教育体制を整えましょう。マニュアルだけでなく、オーナー自身が「接客の手本」を示すことが、現場の空気をつくります。

人手不足が続く業界では、スタッフのモチベーション維持が売上に直結します。勤務環境、休みの確保、感謝の言葉など、地道な取り組みがチーム力と定着率を高めます。特に小規模店舗では、従業員の対応が店の印象そのものになります。

SNS・キャンペーンを活用した集客

店舗の存在を知ってもらうには、SNSを活用した情報発信が欠かせません。特にInstagramやGoogleマップの投稿・口コミは、地域の飲食選びに影響力があります。料理の写真、スタッフ紹介、仕込みの様子などを通じて、店の雰囲気を伝えましょう。

期間限定メニューや割引、イベントを設けると話題性が生まれ、新規客の獲得につながります。LINEやポイントカードによる会員制度で、リピーターづくりにも力を入れると売上が安定します。

専門家を味方にする

開業前後には、税務・融資・届出など本業以外の業務が集中します。税理士や認定支援機関、商工会議所などの専門家と連携することで、煩雑な手続きや資金計画の精度を高めることができます。

特に日本政策金融公庫の創業融資を検討する場合は、事業計画書の質が審査に影響するため、第三者の視点でのアドバイスが役立ちます。開業後も定期的に経営相談ができる関係を築いておくと、トラブルを未然に防ぐことにもつながります。

イタリアン開業には計画的な準備が重要

イタリアンを開業するには、多くの準備と現実的な資金計画が必要です。個人でも始められますが、成功するためには立地や運転資金、メニュー戦略など多方面の判断が欠かせません。

準備不足のまま始めると、売上が伸びずに閉店するケースもあります。

この記事で紹介した内容を参考に、計画的に一歩ずつ準備を進めましょう。


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