- 更新日 : 2026年4月1日
工事請負契約書は建設業法でなぜ必要か?記載事項、違反のリスク、テンプレートまで解説
建設工事を依頼する際、「昔からの付き合いだから」「簡単な工事だから」といった理由で、口約束や簡単な書類だけで済ませていないでしょうか。建設業法では、工事の規模にかかわらず、必ず「工事請負契約書」(契約内容を記載した書面または電子契約)で締結することが義務付けられています。
この記事では、建設業の専門家として、なぜ工事請負契約書が重要なのか、法律で定められた16の記載事項、そして契約書がない場合のリスクについて、発注者の皆様が知っておくべきポイントを分かりやすく解説します。
そもそも工事請負契約書はなぜ必要か?
建設業法第19条で、すべての建設工事において、当事者間の合意内容を書面(またはそれに代わる電磁的記録)に残し、相互に交付することが義務付けられているためです。
建設工事は、完成までに長期間を要し、多くの関係者が関わる複雑な取引です。そのため、口約束による「言った・言わない」のトラブル(工事内容の認識違い、金額の争い、工期の遅延など)を未然に防ぎ、発注者と受注者双方の権利と義務を明確にする目的で、法律によって書面契約が厳格に義務化されています。
契約書が「必要ない場合」は存在するのか?
建設業法上、工事請負契約書が不要な建設工事は存在しません。
よく「500万円未満の軽微な工事なら不要」と誤解されがちですが、これは「建設業の許可がなくても請け負える工事」の基準であり、契約書作成の義務とは全く関係ありません。たとえ数万円の小規模なリフォームであっても、法律上は書面での契約が必要です。
契約書には何を記載する必要があるか?(16の記載事項)
工事内容や請負代金、工期など、建設業法第19条第1項で定められた以下の16項目を契約書に記載する必要があります。
これらの項目が一つでも欠けていると、法律の要件を満たした正式な契約書とは認められず、建設業法違反となる可能性があります。
建設工事請負契約書 必須記載事項一覧
- 工事内容
- 請負代金の額
- 工事着手の時期及び工事完成の時期
- 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
- 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
- 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があつた場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
- 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
- 価格等の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
- 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
- 発注者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
- 発注者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
- 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
- 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任(契約不適合責任)又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
- 各事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金
- 契約に関する紛争の解決方法
- その他国土交通省令で定める事項
請負契約に違反するとどうなるか?
建設業者は建設業法違反として行政処分の対象となる可能性があり、発注者側にも追加費用や工期遅延といった深刻なトラブルに発展する大きなリスクがあります。
建設業者側の罰則(行政処分)
書面契約の義務を怠った建設業者は、建設業法違反として、国土交通大臣や都道府県知事から指示処分や、悪質な場合には営業停止処分といった重い行政処分を受ける可能性があります。これは建設業者の事業継続そのものを揺るがす、極めて厳しい罰則です。
発注者側のリスク
発注者にとって、契約書がないことは以下のようなリスクに直結します。
- 追加費用の発生:工事の範囲が曖昧なため、「これは契約に含まれていない」として、後から高額な追加費用を請求される。
- 工期の遅延:明確な完成時期が定められていないため、工事が長引いても法的な責任を問いにくい。
- 品質の不担保:完成後の不具合(契約不適合)が見つかった際の、修補や損害賠償のルールが不明確になる。
契約書は、建設業者を縛るためだけでなく、発注者自身を守るためにも不可欠なものなのです。
契約書のテンプレート(ひな形)はどこで入手できるか?
国土交通省が「建設工事標準請負契約約款」を公式に提供しており、誰でも無料でダウンロードできます。
この標準約款は、法律の要件を網羅しているだけでなく、長年の実務に基づいて発注者・受注者双方にとって公正な内容となっています。そのため、特別な事情がない限り、このひな形を基に契約書を作成するのが最も安全で確実な方法です。
インターネットで「建設工事標準請負契約約款」と検索すれば、国土交通省のウェブサイトなどから、WordやPDF形式で約款のデータをダウンロードできます。
また、マネーフォワードでも工事請負契約書のテンプレートを無料で提供しています。
適正な工事請負契約書が、信頼関係の礎となる
本記事では、建設業法における工事請負契約書の重要性とその記載事項について解説しました。
工事の請負契約を書面で交わすことは、法律上の義務であると同時に、発注者と受注者双方を予期せぬトラブルから守るための最も確実な手段です。口約束に頼らず、建設業法が定める事項を網羅した正式な工事請負契約書を締結することが、建設会社との良好なパートナーシップを築き、安心して工事を進めるための第一歩といえるでしょう。
【無料】合わせて読みたいおすすめガイド4選
よく活用いただいている人気の資料・ガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。マネーフォワード クラウド開業届は、簡単3ステップでミスなく開業届を提出いただけます。
見積書の法定福利費、明示できていますか?
国土交通省は元請・下請のすべてに、見積書への法定福利費記載を義務付けています。
「労務費総額×法定保険料率」の計算方法、労務費に占める約15%の内訳、事業主と本人負担分の区別、法定福利費と福利厚生費の勘定科目の違い、標準見積書での記載方法を解説しています。
青色申告の65万円控除、満額で受けるには?
事前の届出期限を過ぎると、その年は青色申告の適用を受けられません。
届出の手続きから日々の帳簿づけ、決算書・確定申告書の作成、提出までを簡潔にまとめて紹介。初めて青色申告に取り組む方におすすめです。
迷いやすい勘定科目を一覧で整理
科目選びに一貫性がないと、正確な所得の把握が難しくなります。
仕入・荷造運賃、外注工賃と業務委託費、消耗品費、車両費、地代家賃など、取引区分ごとに勘定科目を整理。自宅兼店舗の家事按分にも触れ、日々の経費処理を確認できる資料です。
使える控除、すべて申告できていますか?
所得税・住民税・社会保険料を合わせると、収入の3〜4割が差し引かれることもあります。
ふるさと納税やiDeCo、小規模企業共済、青色申告特別控除、経営セーフティ共済などの節税方法を25項目収録。一人親方や個人で事業を営む方が自分に合う制度を選べる内容です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
バックオフィス業務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
-
# 法律・許認可・制度
建設業許可の種類とは?「一般」と「特定」の違い、29業種一覧や金額基準まで分かりやすく解説
建設工事を発注する際、建設業許可には工事内容や金額によって複数の種類があることをご存知でしょうか。許可の種類には、下請に出せる金額で分かれる「一般」「特定」の2つの区分と、工事の専…
詳しくみる -
# 法律・許認可・制度
建設業許可の専任技術者要件とは?必要な資格一覧、10年の実務経験、要件緩和まで分かりやすく解説
建設業許可をとるには、許可を受けたい業種に応じた「専任技術者」を営業所に配置することが法律で義務付けられています。この要件を満たすには、国家資格を保有するか、学歴に応じた一定期間の…
詳しくみる -
# 法律・許認可・制度
建設業許可をとるには?5つの主要要件、必要な資格、500万円ない場合の対策まで分かりやすく解説
建設業許可をとるには、法律で定められた「経営経験」「技術力」「誠実性」「資金力」「欠格要件の非該当」という5つの主要な要件をすべてクリアし、それらを客観的な書類で証明する必要があり…
詳しくみる -
# 法律・許認可・制度
建設業許可番号の調べ方とは?番号(前2桁や6桁)の意味、書き方、検索方法まで解説
建設業許可番号は、事業者が正規の建設業許可を得ていることを示す公的な識別番号です。この番号の意味を理解し、調べ方を知っておくことは、信頼できる業者を選定し、法令を遵守した取引を行う…
詳しくみる -
# 法律・許認可・制度
建設業許可を取得するには?必要な種類、500万円の基準、取得条件から更新まで解説
建設業許可は、建設業を営む上で法令遵守と社会的信用を得るための重要な資格です。一定規模以上の工事を請け負うには、この許可を必ず取得しなければなりません。 この記事では、建設業の専門…
詳しくみる -
# 法律・許認可・制度
建築積算士とは?メリットや試験概要について解説
建築業界において、デザインや施工管理と並んでプロジェクトの根幹を支える重要な仕事、それが「建築積算」です。そして、その専門家であることを証明する資格が「建築積算士」です。華やかな表…
詳しくみる



