• 作成日 : 2025年12月2日

建設業法の主任技術者とは?必要な資格、専任・兼務のルールや金額要件まで解説

建設工事を発注する際、建設会社から「主任技術者を配置します」という説明を受けることがあります。この主任技術者とは、工事の品質と安全を確保するため、建設業法に基づき全ての現場に配置が義務付けられている、いわば「現場の技術責任者」です。

この記事では、建設業の専門家として、主任技術者の役割や必要な資格、そして工事の金額によって求められる「専任」のルールについて、発注者の皆様が知っておくべきポイントを分かりやすく解説します。

そもそも建設業法が定める「主任技術者」とは何か?

工事現場の技術上の管理(施工計画の作成、工程・品質・安全管理など)を担う、法律で配置が義務付けられている技術責任者のことです。(建設業法 第26条)

建設工事は、多くの専門的な工程を経て完成に至るため、その全プロセスを技術的な観点から適切に管理する責任者が必要です。主任技術者は、工事が設計図書通りに、かつ安全基準や法令を守りながら、計画通りに進むように監督する、非常に重要な役割を担っています。

主任技術者になるための資格要件は?

国家資格を保有するか、学歴に応じた一定期間以上の実務経験を積む必要があります。(建設業法 第7条第2号)

主任技術者として認められるには、その技術力を客観的に証明する必要があります。そのため、法律では以下のいずれかの要件を満たすことを定めています。

国家資格等による要件(主任技術者資格一覧)

許可を受けたい業種に関連する、国が定めた資格(施工管理技士、建築士、技術士など)を持っていることで、主任技術者として認められます。

業種主な国家資格の例
建築一式工事1級・2級建築施工管理技士(建築)、1級・2級建築士
土木一式工事1級・2級土木施工管理技士(土木)、技術士(建設部門)
電気工事1級・2級電気工事施工管理技士、第一種電気工事士、第二種電気工事士(+実務経験3年以上)
管工事1級・2級管工事施工管理技士

実務経験による要件

国家資格がない場合でも、以下のいずれかの実務経験があれば、主任技術者として認められます。

  • 学歴+実務経験:
    • 大学・高等専門学校の指定学科を卒業後、3年以上の実務経験
    • 高等学校・中等教育学校の指定学科を卒業後、5年以上の実務経験
  • 実務経験のみ:
    • 学歴を問わず、10年以上の実務経験

主任技術者の「専任」とは?どのような場合に必要か?

主任技術者が他の工事現場と兼務せず、一つの工事現場に常駐することを「専任」といいます。公共性のある重要な工事や、一定金額以上の工事で義務付けられます。

工事の品質と安全を特に確保する必要がある重要な工事において、技術者がその現場の管理に集中するために、この専任の義務が課せられています。

「専任」が必要となる工事の金額要件

請負代金の額(消費税込)が5,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上の工事では、主任技術者を専任で配置する必要があります。

この金額は2023年1月1日に引き上げられたもので、技術者不足に対応するための規制緩和の一環です。

公共性のある重要な工事とは?

国や地方公共団体が発注する公共工事のほか、個人住宅を除く、学校、病院、店舗、共同住宅など、多数の人が利用する施設の工事が該当します。公共性のある工事であっても、個人住宅を除き、上記の金額(5,000万円または8,000万円)未満であれば、専任の技術者配置は求められません。

主任技術者の「兼務」は可能か?

「専任」が求められない工事であれば、同一の建設業者が行う複数の工事を、同一の主任技術者が兼務することは可能です。

小規模な工事など、常時現場に張り付いて管理する必要性が比較的低いと考えられる工事においては、効率的な人材活用の観点から兼務が認められています。ただし、兼務する現場間の距離が離れすぎていて適切な管理ができない、と判断される場合は認められません。

発注者として主任技術者について知っておくべき理由は?

自社が発注した工事に適切な技術者が配置されているかを確認することは、工事の品質と安全を確保し、コンプライアンス上のリスクを避けるために重要だからです。

主任技術者の不適切な配置(無資格者の配置や、専任義務違反など)は、工事の欠陥や事故につながる直接的な原因となりえます。また、それは建設業者側の重大な法令違反行為であり、発覚した場合は営業停止などの重い行政処分につながり、工事が中断してしまうリスクも伴います。

発注者としても、契約時や工事開始前に、配置される主任技術者の資格や経歴について確認し、法律が守られているかをチェックする姿勢を持つことが、結果として自社の利益を守ることにつながるのです。

主任技術者の適正な配置が、工事品質の要となる

本記事では、建設業法における主任技術者の役割と、その配置に関するルールについて解説しました。主任技術者は、建設工事の品質と安全を支える、まさに現場の要となる存在です。そして、一定の金額以上の工事や公共性の高い工事では、その現場に集中する「専任」の技術者が必要となります。

発注者の皆様もこの制度を正しく理解し、自社のプロジェクトに適切な技術者が配置されているかを確認することが、建設会社との良好なパートナーシップを築き、工事を成功に導くための重要な鍵といえるでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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