- 作成日 : 2025年8月5日
1級建築施工管理技士の実務経験証明書の書き方は?記入例と注意点を解説
1級建築施工管理技士は、建設プロジェクトにおいて施工計画から品質管理、安全管理まで多岐にわたる業務を統括する、非常に重要な国家資格です。この資格を取得することは、キャリアアップはもちろんのこと、建設業界における自身の市場価値を高める上で非常に有利と言えるでしょう。しかし、その受験資格の一つである「実務経験」の証明は、多くの受験者にとって大きな壁となりがちです。
この記事では、1級建築施工管理技士の検定を受験される方を対象に、実務経験証明書の正しい書き方から、実務経験として認められる範囲、そして注意すべき点まで、具体的な記入例を交えながら解説します。
目次
実務経験として認められる経歴とは?
1級建築施工管理技士の実務経験として認められる範囲は、建設業法に基づき細かく規定されています。漠然とした業務内容ではなく、具体的な工事の種類や、その中で果たした役割が重要視されます。
対象となる工事の種類
実務経験として認められるのは、建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事、石工事、屋根工事、電気工事、管工事、タイル・れんが・ブロック工事、鋼構造物工事、鉄筋工事、舗装工事、しゅんせつ工事、板金工事、ガラス工事、塗装工事、防水工事、内装仕上工事、機械器具設置工事、熱絶縁工事、電気通信工事、造園工事、さく井工事、建具工事、水道施設工事、消防施設工事、清掃施設工事、解体工事など、建設業法における建設工事に該当するものが基本となります。
ただし、具体的な工事内容が建築物の新築、増築、改築、大規模な修繕、大規模な模様替え、除却、移転、補修、修繕、改良等である必要があります。単なる維持管理や保守点検業務のみでは実務経験として認められない場合がありますので注意が必要です。
認められる職務内容
実務経験として評価されるのは、以下のいずれかの職務内容に従事した経験です。
- 施工管理(指導監督的実務経験を含む)
工事の計画、工程管理、品質管理、安全管理、原価管理など、施工全体を統括・管理する業務。特に、主任技術者や監理技術者としての経験は高く評価されます。 - 施工計画の作成
工事着手前に、具体的な施工方法や手順、使用機械などを詳細に計画する業務。 - 工事の実施に関する技術上の管理
現場における技術的な指導、検査、確認、記録など、工事の品質を確保するための管理業務。 - 設計業務
建築物の設計業務。ただし、設計図書に基づく工事の実施・管理経験が求められるため、純粋な意匠設計のみでは不十分な場合があります。 - 研究・開発業務
建設技術に関する研究や開発業務。大学や研究機関など、公共性や実務性がある機関に限定されます。
特に、「指導監督的実務経験」は、単独で実務を遂行し、複数の技術者の指導・監督を行う経験を指し、この経験を積むことで受験に必要な実務経験年数が短縮される場合があります。具体的には、主任技術者または監理技術者として、工事の施工の技術上の管理を総合的に行った経験がこれに該当します。
実務経験証明書の具体的な書き方と記入例
実務経験証明書は、あなたがどのような工事に、どのような立場で、どの程度の期間携わったかを明確に記載する必要があります。曖昧な表現は避け、具体的な内容を簡潔に記述することが重要です。
基本情報の記入
証明書の上部には、氏名、生年月日などの個人情報と、現在勤務している会社名、所在地、代表者氏名などを正確に記入します。ここは誤りがないように注意しましょう。
実務経験の内容の記載方法
実務経験の内容を記載する欄は、以下の項目に分けて具体的に記入します。
工事名称
正式な工事名称を記載します。(例:〇〇株式会社 新社屋建設工事)
工事場所
工事が行われた場所を記載します。(例:東京都港区〇〇)
工事工期
着工年月日と竣工年月日を正確に記載します。
工事内容
ここが最も重要な部分です。具体的な工事内容を簡潔に、しかし具体的に記載します。
- 単に「建築工事」と記載するのではなく、「新築工事、外壁改修工事、内装仕上工事」など、担当した主要な工事内容を列挙します。
- あなたが携わった範囲、担当した工種などを明確に記述します。
申請者の職務内容
あなたがその工事においてどのような役割を担い、どのような業務を行ったかを具体的に記述します。「施工管理業務全般」と抽象的に書くのではなく、以下のように具体的に記述しましょう。
- 「工程管理、品質管理、安全管理、原価管理に従事」
- 「下請業者との調整、資材の発注・管理」
- 「施工図の作成・チェック、現場検査の実施」
- 「写真管理、書類作成業務」
- 主任技術者や監理技術者として従事した経験がある場合は、その旨を明記し、具体的にどのような指導監督を行ったかを記述します。
記入例
項目 | 記入内容 |
---|---|
工事名称 | 〇〇高等学校体育館改築工事 |
工事場所 | 神奈川県〇〇市 |
工事期間 | 2021年4月1日 ~ 2023年3月31日 |
工事内容 | 体育館の新築工事(基礎工事、躯体工事、屋根工事、内装仕上工事、電気設備工事、機械設備工事) |
申請者の職務内容 | 新築工事における施工管理業務全般(工程管理、品質管理、安全管理、原価管理、下請業者との調整、施主・設計事務所との打ち合わせ、施工図チェック、検査立会い、竣工図書作成)。特に、躯体工事においては主任技術者として、複数の技術者の指導・監督を行った。 |
※上記はあくまで一例です。ご自身の経験に合わせて具体的に記述してください。
実務経験証明書作成時の注意点
実務経験証明書は、あなたの受験資格を証明する重要な書類であるため、以下の点に細心の注意を払って作成しましょう。
虚偽の記載は厳禁
最も重要なのは、虚偽の記載を絶対に行わないことです。万が一、虚偽の記載が発覚した場合、受験資格の取り消しはもちろんのこと、受験停止・合格取消が課される可能性があります。正直かつ正確に、自身の経験を記述しましょう。
具体性と客観性を持たせる
抽象的な表現は避け、具体的な数字や事実に基づいた記述を心がけましょう。「多数の現場を経験」ではなく「〇〇工事、△△工事に携わった」といった具体的な表現が求められます。また、主観的な評価ではなく、客観的な事実を記述することが重要です。
責任者の署名を忘れずに
実務経験証明書には、その内容を証明する責任者(原則として会社代表者または人事責任者)の署名が必要です。事前に責任者の方に内容を確認してもらい、承認を得てから署名を依頼しましょう。
実務経験年数の確認
受験に必要な実務経験年数は、学歴や取得済みの資格によって異なります。自身の学歴等を確認し、必要な実務経験年数を満たしているか事前に確認しましょう。不足している場合は、受験資格を満たせません。
複数社の経験がある場合
複数の会社で実務経験を積んできた場合でも、実務経験証明書は現在の勤務先で証明をもらいます。現在失業中の場合は、直近の勤務先で証明してもらう必要があります。退職した会社に連絡を取り、協力をお願いしましょう。
不明な点は早めに問い合わせる
実務経験証明書の記載方法や、自身の経験が認められるかどうかに不安がある場合は、早めに一般財団法人建設業振興基金や、各都道府県の受験案内窓口に問い合わせましょう。不明な点を放置せず、正確な情報を得ることが受験準備の助けになります。
実務経験を積む上での心得
これから1級建築施工管理技士を目指す方にとって、実務経験をどのように積んでいくかは非常に重要な課題です。
多様な工事経験を積む
特定の工種や規模の工事に偏らず、できるだけ多様な建築工事に携わることで、幅広い知識と経験を習得できます。新築工事だけでなく、改修工事や増築工事など、様々な状況を経験することで、実践的な対応力が身につきます。
積極的に業務に取り組む
与えられた業務だけでなく、自ら進んで新しい知識を吸収し、責任ある立場で業務に取り組む姿勢が重要です。特に、施工管理の核となる工程管理、品質管理、安全管理、原価管理については、積極的に関与し、実践的なスキルを磨きましょう。
記録を習慣づける
日々の業務内容やプロジェクトの進捗、担当した役割などを記録しておくことを習慣づけましょう。これは、将来的に実務経験証明書を作成する際に役立つだけでなく、自身の成長を振り返る上でも貴重な財産となります。工事日報や個人メモなども有効活用しましょう。
上司や先輩に相談する
実務経験を積む過程で疑問や課題が生じた際は、積極的に上司や先輩に相談しましょう。彼らの経験や知識は、あなたの成長にとって貴重な糧となります。また、自身のキャリアプランについても相談することで、より効果的な実務経験の積み方を検討できます。
検定を受けるときのために、実務経験は記録しておこう
1級建築施工管理技士の検定合格には、適切な実務経験の証明が不可欠です。この記事で解説した実務経験として認められる範囲や、具体的な書き方、そして注意点を踏まえ、あなたの経験を最大限に活かせる実務経験証明書を作成してください。
実務経験は、単なる受験資格を満たすためのものではなく、あなたが建設業界でプロフェッショナルとして活躍するための土台となるものです。日々の業務に真摯に取り組み、積極的に知識と経験を積み重ねることで、1級建築施工管理技士としての確固たるキャリアを築き上げていくことができるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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