- 作成日 : 2026年1月5日
建設業許可の「名義貸し」はなぜ絶対ダメなのか?バレる理由や罰則、裏ワザのリスクを徹底解説
建設業許可を取得する際、要件を満たす技術者がいないからといって、他人の名前や資格だけを借りる「名義貸し」は、法律で固く禁じられた重大な違法行為です。これは単なる形式的な違反ではなく、発覚すれば許可の取消しや刑事罰、さらには社会的信用の失墜に直結します。
この記事では、建設業の専門家として、名義貸しが具体的にどのような行為を指すのか、なぜ行政や警察に発覚するのか、そして関わった場合にどのような重いペナルティが待っているのかを、分かりやすく解説します。
目次
そもそも建設業許可における「名義貸し」とは何か?
「名義貸し」とは、実態としてはその会社に常勤していない人物を書類上だけ常勤しているように偽って申請し、許可を取得・維持する行為全般を指します。
建設業許可を取得するためには、「経営業務の管理責任者(常勤役員等)」や「専任技術者(営業所技術者)」といった責任者を、各営業所に常勤(フルタイム)で配置することが義務付けられています。名義貸しとは、この「常勤性」の要件を満たすことができない事業者が、資格を持つ知人や、実際には出社しない名義人にお金を払って名前だけを借り、虚偽の申請を行うことを指します。
具体的な名義貸しのケース
- 専任技術者の名義貸し
1級建築士や施工管理技士の資格を持つ外部の人間を、実際には雇用していないにもかかわらず、書類上は社員として登録する場合です。 - 他社との二重登録
他の会社で働いている技術者の名前を借りるケースです。専任技術者は原則として他社との兼務が認められないため、これも名義貸しとなります。 - 一括下請負(丸投げ)との混同に注意
工事全体を他社に丸投げする行為も「名義貸し」と呼ばれることがありますが、これは建設業法第22条で禁止されている「一括下請負」の問題です。今回解説する「許可取得のための名義貸し」とは区別されますが、どちらも違法です。
名義貸しはなぜ「バレる」のか?(発覚のきっかけ)
名義貸しをして建設業許可を得た場合でも、行政による厳格な審査や立入検査、社会保険の加入状況の確認、そして内部・外部からの「通報」など、多角的なルートから発覚します。
「書類さえ整っていればバレない」という考えは、現代の行政システムでは通用しません。
社会保険や税務情報の照合
専任技術者として登録するには、原則としてその会社で社会保険(健康保険・厚生年金)に加入している必要があります。行政庁は、これらの加入状況を厳密に確認します。他社で保険に入っている場合や給与の支払実態がない(税務申告がない)場合、名簿や帳簿の確認を通じて不自然さが露見するため、発覚してしまうのです。
行政による立入検査
建設業許可業者に対し、行政庁は予告なしに営業所の立入検査を行う権限を持っています。検査官が訪問した際、登録されている技術者の席がない、出勤簿やタイムカードに記録がない、本人が業務内容を把握していないといった状況であれば、名義貸しと認定される可能性があります。
違反が疑われる場合、調査や聴取を経て違反の有無が判断されます。
内部告発や通報
元従業員や取引先、あるいは競合他社からの通報によって発覚するケースも非常に多いです。「あそこの会社は資格者がいないはずなのに許可を持っている」といった情報は、業界内で広がりやすく、行政への通報につながります。
名義貸しに関わった場合の「罰則」は?
許可の取消し処分に加え、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」という非常に重い刑事罰が、名義を借りた会社だけでなく、貸した個人にも科される可能性があります。
行政処分(許可の取消し)
名義貸しによる不正な手段で許可を受けたことが判明した場合、建設業法第29条に基づき、建設業許可は即座に取り消されます。公共工事の指名停止や契約解除など、企業全体への悪影響も甚大です。
さらに、不正の手段により許可を受けたことを理由に一度許可を取り消されると、その後5年間は新たに許可を取得することができません。 これは事実上の廃業宣告に近い、極めて重い処分です。
刑事罰(逮捕・罰金)
建設業法第47条に基づき、名義貸しを行った者(借りた側・貸した側の双方)、つまり虚偽又は不正の事実に基づいて許可を受けた者に対し、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。場合によっては、詐欺罪や公正証書原本不実記載罪など、刑法の罪に問われる可能性もあります。
「裏ワザ」や「名義貸し相場」は存在するか?
インターネット上で検索される「裏ワザ」や「名義貸しの相場」といった情報は、すべて違法行為への勧誘であり、絶対に関わってはいけません。名義貸しができる資格など存在しません。
「名義貸しできる資格」の誤解
1級建築士などの難関資格であれば名義貸しで稼げる、という噂がありますが、これは資格者自身の人生を棒に振る行為です。名義貸しが発覚した場合、その資格者も建設業法違反で処罰されるだけでなく、建築士法などの規定により、苦労して取得した資格自体の取消し処分(免許剥奪)を受けることになります。
「裏ワザ」のリスク
「出勤しなくても常勤とみなす方法がある」といった甘い言葉には罠があります。テレワークなどが認められるケースもありますが、それはあくまで「正当な雇用関係と常時性」がある場合のみです。実態のない勤務を装うことは、すべて虚偽申請となります。
なお、テレワークの場合も営業所勤務と同等の職務を遂行できることや所定時間中いつでも連絡がつくこと、常識上通勤可能な距離であることなどが求められます。
適正な「名義変更」とは?
法人の代表者が変わった場合や、会社名が変わった場合に行う手続きは「名義貸し」ではなく、正当な「変更届」の手続きです。
建設業許可における「名義変更」とは、一般的に以下のケースを指します。これらは法令に基づき、速やかに(通常30日以内)行政庁へ届け出る必要があります。
- 代表取締役の交代
- 商号(会社名)の変更
- 個人事業主から法人への成り代わり(※厳密には新規許可が必要な場合が多い)
これらは事業の実態に合わせた正しい手続きであり、隠蔽工作である名義貸しとは全く性質が異なります。
法令遵守が唯一の事業防衛策
本記事では、建設業許可における名義貸しの違法性とリスクについて解説しました。名義貸しは、「少しだけなら」「バレなければ」という軽い気持ちで行ったとしても、発覚すれば会社の存続、経営者のキャリア、そして協力した技術者の資格すべてを失う壊滅的な結果を招きます。
人材不足は深刻な課題ですが、資格者の育成や正規の採用活動を通じて要件を満たすことが、事業を長く守るための確実な道です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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