- 作成日 : 2025年12月2日
建設業法のガイドラインとは?発注者も知るべき法令遵守のポイントを解説
建設工事の適正な取引を実現するために、国土交通省は「建設業法令遵守ガイドライン」を公表しています。これは、複雑な建設業法の内容を分かりやすく解説した、発注者・受注者双方にとっての羅針盤となるものです。
この記事では、建設業の専門家として、このガイドラインの最新情報と、特に工事を発注する皆様にも知っておいていただきたい重要なポイントを分かりやすく解説します。
目次
そもそも「建設業法令遵守ガイドライン」とは何か?
国土交通省が、建設業法の条文だけでは分かりにくい内容を、具体例を交えて解説し、建設業者や発注者が法律を遵守できるよう作成した公式のハンドブックです。
建設業法は、建設工事の適正な施工と発注者の保護、そして建設業の健全な発達を目的とした法律ですが、その内容は非常に専門的です。そこで、どのような行為が法律に違反する恐れがあるのかを、Q&A形式や具体例を多用して示し、現場の実務に即した理解を促すために、このガイドラインが作成されています。
なぜガイドラインが重要か
このガイドラインは、元請・下請間のトラブル防止はもちろん、発注者と建設会社との間の公正な関係構築においても非常に重要な役割を果たします。法律の意図を正しく理解し、遵守することは、企業のコンプライアンス体制を示す上でも不可欠です。
最新版の確認方法
ガイドラインは、法改正や社会情勢の変化に合わせて定期的に改訂されます。2025年10月現在、「第11版」が比較的新しいバージョンとして参照されることが多いですが、常に最新のものを確認することが重要です。最新のガイドラインや、内容を要約したパンフレットは、国土交通省のウェブサイトから誰でも閲覧・ダウンロードできます。
ガイドラインの主なポイント①:見積もりから契約まで
見積期間の確保、不当に低い請負代金の禁止、そして必ず書面で契約を締結することなど、契約前の公正な手続きについて定めています。
発注者が特に注意すべき点として、以下の項目が挙げられます。
- 適正な見積期間の設定:
建設会社に見積もりを依頼する際は、工事の規模に応じて法律で定められた一定の期間(例:500万円以上5,000万円未満の工事では10日以上)を設けなければなりません。 - 書面による契約の締結:
工事の規模にかかわらず、契約は必ず書面(契約書)で行う必要があります。口約束だけで工事を始めることは、後のトラブルの元となり、法律にも違反します。 - 不当に低い請負代金の禁止:
取引上の優越的な地位を利用して、通常の請負代金に比べて著しく低い金額で契約を強いることは禁じられています。
ガイドラインの主なポイント②:技術者の配置
工事の品質と安全を確保するため、現場に配置が義務付けられている「主任技術者」や「監理技術者」の役割と、専任義務について具体的に解説しています。
建設業法では、すべての建設工事現場に「主任技術者」を、そして一定規模以上の元請工事には「監理技術者」を配置することを義務付けています。
- 主任技術者:工事現場の技術上の管理を行う、すべての現場に必要な技術者。
- 監理技術者:元請の立場で、下請全体の技術指導・監督を行う、大規模工事で必要な技術者。
ガイドラインでは、これらの技術者が「専任」、つまり他の現場と兼務せず、その工事に専念しなければならない条件などを詳しく定めています。発注者としても、自社が発注した工事に適切な技術者が配置されているかを確認することは、工事の品質を担保する上で重要です。
ガイドラインの主なポイント③:下請契約に関するルール
元請負人が下請負人に対して、不当な要求をしないようにするためのルールが定められています。特に、工事全体をそのまま下請けに出す「一括下請負(丸投げ)」は原則として禁止されています。例外的に、発注者が事前に書面で承諾している場合に限り、一括下請負が認められるケースがあります。
元請負人には、工事全体の品質に責任を持ち、施工計画や安全管理などを主体的に行う責任があります。工事の大部分を他の業者に丸投げしてしまうと、責任の所在が曖EMIになり、品質低下や安全管理の不徹底につながる恐れがあるため、法律で厳しく禁じられているのです。
発注者もガイドラインを理解すべき理由は?
発注者自身が意図せず法律に違反することを防ぎ、建設会社と対等で良好な関係を築くことで、結果的に工事の品質確保につながるためです。
このガイドラインは、主に建設業者向けに書かれていますが、その内容は発注者の行動が起点となるものが数多く含まれています。
- 法令違反の防止:
例えば、短い工期での発注や、一方的なやり直し・追加工事の要求は、発注者側が法律違反の当事者となる可能性があります。 - 対等なパートナーシップの構築:
建設業界のルールを理解し、尊重する姿勢を示すことは、建設会社との信頼関係を築く上で不可欠です。良好な関係は、円滑なコミュニケーションと、より良い工事につながります。 - リスク管理:
契約内容や見積もりについて、法律に基づいた適切な知識を持つことで、後々の追加請求や工期遅延といったトラブルを未然に防ぐことができます。
ガイドラインの理解が、適正な建設工事の礎となる
本記事では、国土交通省が定める「建設業法令遵守ガイドライン」の重要なポイントを、特に発注者の視点から解説しました。
このガイドラインは、建設業者だけでなく、工事を発注するすべての方が、公正な取引とは何かを理解するための手引きです。建設業法と、その解説書であるガイドラインの内容を尊重し、建設会社と良好なパートナーシップを築くことが、トラブルを防ぎ、満足のいく工事を実現するための最も確実な方法といえるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
バックオフィス業務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
建設業許可の専任技術者要件とは?必要な資格一覧、10年の実務経験、要件緩和まで分かりやすく解説
建設業許可をとるには、許可を受けたい業種に応じた「専任技術者」を営業所に配置することが法律で義務付けられています。この要件を満たすには、国家資格を保有するか、学歴に応じた一定期間の…
詳しくみる建設業法第7条第2号イロハとは?専任技術者の実務経験要件と15条との違いを解説
建設業の許可を取得する際に必ず登場する「建設業法第7条第2号イロハ」という言葉。これは、建設業の一般許可における「専任技術者」の資格要件のうち、国家資格ではなく実務経験に関する規定…
詳しくみる建設業許可番号の調べ方とは?番号(前2桁や6桁)の意味、書き方、検索方法まで解説
建設業許可番号は、事業者が正規の建設業許可を得ていることを示す公的な識別番号です。この番号の意味を理解し、調べ方を知っておくことは、信頼できる業者を選定し、法令を遵守した取引を行う…
詳しくみる建設業許可をとるには?5つの取得条件、必要な資格や費用、個人事業主の場合まで解説
建設業許可をとるには、法律で定められた「経営経験」「技術力」「資金力」など5つの主要な要件をすべてクリアする必要があります。これらの要件は、建設工事を適正に行える体制があることを公…
詳しくみる1級建築施工管理技士の実務経験証明書の書き方は?記入例と注意点を解説
1級建築施工管理技士は、建設プロジェクトにおいて施工計画から品質管理、安全管理まで多岐にわたる業務を統括する、非常に重要な国家資格です。この資格を取得することは、キャリアアップはも…
詳しくみる建築積算士とは?メリットや試験概要について解説
建築業界において、デザインや施工管理と並んでプロジェクトの根幹を支える重要な仕事、それが「建築積算」です。そして、その専門家であることを証明する資格が「建築積算士」です。華やかな表…
詳しくみる