- 作成日 : 2025年11月6日
店舗を閉店する際にやることは?飲食店の廃業手続きから届出、挨拶文、処分までを完全ガイド!
店舗経営における「閉店」は、事業の終わりであると同時に、経営者にとって非常に重要な決断の一つです。昨今では「飲食店 閉店ラッシュ」といった言葉を耳にすることもあり、他人事ではないと感じる経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、店舗を閉店する際にやることを網羅的に整理し、煩雑な手続きや関係者への対応、備品の処分などをスムーズに進めるための具体的な手順を、初心者にもわかりやすく解説していきます。
目次
閉店を決意したら、まず何から始めるべきか?
閉店を決意したら、まずは「閉店日から逆算した詳細なスケジュール」を作成し、全体像を把握することから始めます。
閉店には、賃貸物件の解約予告期間や法的な手続きの期限など、時間的な制約が多く存在します。スケジュールを立てずに闇雲に進めてしまうと、余計な費用が発生したり、重要な手続きが漏れたりするリスクが高まるため、計画性が成功の鍵となります。
STEP1:閉店日の決定とToDoリストの作成
最終営業日となる「閉店日」をまず決めます。その日をゴールとして、いつまでに何をすべきかを逆算して書き出し、ToDoリストを作成しましょう。これにより、やるべきことの全体像が可視化され、タスクの抜け漏れを防ぐことができます。
STEP2:従業員への告知と説明
店舗で働く従業員への告知は、慎重に行うべき事項の一つです。法律(労働基準法)では、解雇する場合は少なくとも30日前に予告する義務があります。しかし、従業員の生活や再就職を考慮し、できる限り早く、誠意をもって伝えることが重要です。感謝の気持ちと共に、閉店に至った経緯を正直に説明し、今後の処遇について真摯に話し合いましょう。
STEP3:取引先・関係者への報告
仕入れ先などの取引先や、日頃お世話になっている関係者へも早めに報告を入れましょう。突然の閉店は、取引先に多大な迷惑をかける可能性があります。今後の取引スケジュールや支払いについて相談し、良好な関係を保ったまま清算できるよう努めることが、経営者としての信用の維持に繋がります。
【時系列】店舗閉店までの具体的な手順とやることは?
閉店プロセスは、一般的に「6ヶ月前〜3ヶ月前」「2ヶ月前〜1ヶ月前」「閉店直前〜当日」「閉店後」の4つのフェーズに分けられ、各段階でやるべきことが異なります。
それぞれのフェーズで発生するタスクを計画的にこなしていくことで、精神的・時間的な負担を分散させ、トラブルを最小限に抑えながらスムーズな閉店を実現できます。
6ヶ月前〜3ヶ月前:準備と予告の期間
この時期は、閉店に向けた法的な手続きや契約関係の整理を開始する重要な準備期間です。
- 賃貸借契約書の確認(解約予告期間のチェック) 店舗物件の賃貸借契約書を確認し、「解約予告期間」を必ずチェックします。一般的に3ヶ月~6ヶ月前と定められていることが多く、この期間を守らないと余分な賃料を支払うことになります。
- 貸主(大家・管理会社)への解約通知 解約予告期間に基づき、内容証明郵便など記録が残る形で貸主へ「解約通知書」を送付します。同時に、店舗をどの状態に戻して明け渡す必要があるか(原状回復の範囲)も確認しておきましょう。
- リース契約の確認と解約手続き 厨房機器やコピー機などをリースで利用している場合は、リース会社へ連絡し、契約内容と解約手続きを確認します。中途解約には違約金が発生することが多いため、契約書をよく確認してください。
- 従業員の処遇決定(解雇予告または再就職支援) 前述の通り、従業員への解雇予告は原則として30日前までに行う必要があります。可能であれば、再就職先の紹介など、できる限りの支援を行いましょう。
2ヶ月前〜1ヶ月前:告知と整理の期間
閉店が現実味を帯びてくるこの時期は、お客様への告知と、店内資産の整理を進めていきます。
- お客様への閉店告知(店頭、SNS、ウェブサイト) 常連のお客様へ感謝を伝えるためにも、1~2ヶ月前には閉店の告知を始めましょう。店頭での貼り紙のほか、お店のウェブサイトやSNS(Instagram, Xなど)でも、感謝の言葉を添えて丁寧に伝えます。
- 在庫整理・閉店セールの計画 閉店日に向けて在庫を減らすため、仕入れを調整します。小売店であれば閉店セールを実施するのも有効です。飲食店の場合は、メニューを絞り込むなどして食材のロスを最小限に抑えましょう。
- 取引先への最終発注・支払い計画の調整 各取引先と最終的な発注日や支払いスケジュールについて、改めて確認・調整を行います。
- 什器・備品の処分方法の検討(買取、廃棄) 不要になる什器や厨房機器、備品をどう処分するか検討を始めます。廃棄には費用がかかるため、まずは専門の買取業者に査定を依頼するのがおすすめです。
閉店直前〜当日:最終営業と引き渡しの準備
いよいよ最終営業日を迎える時期です。最後までお客様への感謝を忘れずに対応しましょう。
- ライフライン(電気・ガス・水道・通信)の解約手続き 各供給会社へ連絡し、閉店日に合わせた解約手続きを進めます。インターネット回線なども忘れずに手続きしましょう。
- 最終営業日の運営 最後まで心を込めて営業し、来店してくださったお客様に感謝を伝えます。営業終了後、従業員と共に労をねぎらう時間を持つことも大切です。
- 店舗の清掃・片付け 営業終了後、本格的な片付けと清掃を開始します。
閉店後:原状回復と行政手続き
営業は終了しましたが、まだやるべきことは残っています。最後まで着実に進めましょう。
店舗の閉店に必要な行政への手続き・届出は何か?
閉店時には、事業形態や業種に応じて、税務署、保健所、警察署、ハローワークなど、複数の行政機関への届出が法的に義務付けられています。
これらの届出を怠ると、不要な税金が発生し続けたり、行政指導の対象となったりする可能性があります。閉店日から定められた期間内に、必ず行う必要がありますので、以下のリストを参考に抜け漏れなく対応してください。
- 税務署 個人事業主の場合、まず税務署への届出が中心となります。
- 都道府県税事務所 税務署とは別に、事業所を管轄する都道府県税事務所へも届出が必要です。
- 事業開始(廃止)等申告書:提出期限は自治体により異なるため、事前に確認しましょう。(対象:全事業者)
- 保健所 飲食店など、営業に許認可が必要な業種は、管轄の保健所への届出が必須です。
- 廃業届:飲食店営業許可などを受けていた場合、廃業から10日以内に提出します。
- 警察署 特定の業種では、警察署への届出も必要になります。
- 廃止届出書・返納理由書:深夜酒類提供飲食店営業や古物商などの許可を得ていた場合、廃業から10日以内に手続きが必要です。
- ハローワーク・年金事務所 従業員を雇用し、社会保険に加入していた場合は、以下の手続きが必要です。
お客様や取引先への閉店挨拶はどうすれば良いか?
挨拶では、これまでの感謝の気持ちを誠実に伝え、閉店理由を簡潔に説明することが重要です。特に、お客様に対しては店頭やSNS、取引先へは書面や直接訪問で丁寧に伝えるのがマナーです。
丁寧な挨拶は、お客様や取引先との良好な関係を最後まで保ち、将来的な再起や別の事業に繋がる可能性を残すために重要です。
お客様向けの挨拶文(例文あり)
店頭やSNSで告知する際の例文です。閉店理由は「一身上の都合」「諸般の事情」などと簡潔に記すのが一般的です。
閉店のお知らせ
謹啓 時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 さて、突然ではございますが、当店は来る〇月〇日(〇)をもちまして、閉店いたすこととなりました。
平成〇年の開店以来、長きにわたりご愛顧いただきましたこと、厚く御礼申し上げます。 残りわずかな期間ではございますが、最後まで心を込めて営業してまいりますので、皆様のご来店を心よりお待ちしております。
略儀ながら書中をもちましてご挨拶申し上げます。
謹白
〇〇年〇月〇日 店主 〇〇 〇〇
取引先向けの挨拶状(例文あり)
取引先へは、感謝と共に、最終取引や支払いに関する事項も明確に記載します。
廃業のご挨拶
拝啓 貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
さて、弊社儀、諸般の事情により来る〇月〇日をもちまして廃業いたすことになりました。 これまで一方ならぬご厚情を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。
なお、〇月〇日までのご注文及びお支払い等につきましては、別途担当者よりご連絡させていただきます。 甚だ勝手ではございますが、何卒ご理解ご了承くださいますようお願い申し上げます。
貴社の今後のご発展を心よりお祈り申し上げます。
敬具
不要になった什器や在庫はどう処分するのが効率的か?
厨房機器や什器、在庫の処分は、廃棄する前に「専門の買取業者」に査定を依頼するのが最も効率的かつ経済的です。
廃棄には高額な費用がかかりますが、買取であれば処分費用を削減できるだけでなく、思わぬ売却益を得られる可能性があります。特に業務用の厨房機器や音響設備などは中古市場でも需要が高いため、諦めずに査定を依頼してみましょう。
専門の買取業者に一括査定を依頼する
厨房機器や店舗什器を専門に扱う買取業者に連絡し、査定を依頼します。複数の業者に見積もりを取る「相見積もり」をすることで、より良い条件での売却が期待できます。出張査定や一括査定サービスを利用すると手間が省けます。
フリマアプリやネットオークションを活用する
食器やインテリア小物、調理器具など、比較的小さなものは、メルカリやヤフオク!といったフリマアプリやネットオークションで販売するのも一つの方法です。業者では値段が付きにくかったものでも、個人間取引であれば売れる可能性があります。
居抜き物件としての売却を検討する
内装や設備をそのままの状態で次の借主に売却する「居抜き売却」も有効な選択肢です。原状回復工事の費用が不要になる上、造作譲渡料としてまとまった資金を得られる可能性があります。居抜き専門の不動産業者に相談してみましょう。
新たなスタートに向けた、円満な閉店のために
店舗の閉店は、決してネガティブなだけの終わりではありません。これまで事業を続けてきた経験は、必ず次のステップへの貴重な糧となるはずです。計画的なスケジュール管理と、従業員・お客様・取引先などの関わってくれた全ての人々への誠実な対応が、円満な閉店、そして新たなスタートを切るための鍵となります。
この記事でご紹介した「やることリスト」や手続きの数々が、自営業の店をたたむ際の不安を少しでも和らげ、スムーズな廃業プロセスの一助となれば幸いです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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