• 作成日 : 2025年6月20日

リフォームのお祓いは必要?費用やタイミング、マナーを解説

リフォーム工事を控えた施主様から、「お祓いはしたほうがいいのでしょうか」と尋ねられることがあります。義務ではないとはいえ、何となく気になるという方も多いのではないでしょうか。お祓いには、工事の安全を願う意味や、新しい空間での清々しいスタートを祈る意味があります。この記事では、リフォーム時におけるお祓いの必要性、費用やタイミング、基本的なマナーについて、現場で対応する工務店や一人親方の方々に向けて具体的に解説します。

リフォームのお祓いとは?

リフォーム工事におけるお祓いには、主に2つの目的があるとされます。

工事の安全祈願:建物の改修工事には、予期せぬトラブルが起こる可能性もゼロではありません。お祓いは、神様のご加護をいただき、工事に関わる全ての人々の安全と、工事が無事に完了することを祈願する儀式としての意味合いがあります。これは、新築時の地鎮祭にも通じる考え方です。

空間の浄化と感謝:住まいには、そこに住む人々の思いや歴史が刻まれています。リフォームは物理的に空間を一新しますが、同時にお祓いによって精神的な意味でも場を清め、新しい生活を気持ちよく始めることを目的とします。

特に中古住宅のリフォームでは、以前の住人の気配や、家に残るかもしれない「気」を清めるという意味合いが強くなることがあります。また、長年住まいを守ってくれた建物や空間への感謝を示す儀式とも捉えられます。

お祓いは施主の意向が基本

リフォームを行う際のお祓いは、法律などで定められた義務ではありません。実施するかどうかの最終的な判断は、施主様の気持ちや考え方次第です。

科学的な根拠とは別に、「お祓いをすることで精神的な安心感が得られる」「工事の無事や新しい生活への願いを込めたい」と感じる方が行う、意味のある儀式と言えるでしょう。

建設業者や工務店側から積極的にお祓いを勧める必要はありませんが、施主様から相談された際には、基本的な知識を提供し、手順や費用について丁寧に説明できると、施主様の不安解消につながり、信頼関係も深まります。

どんなリフォームでお祓いが行われやすい?

全てのリフォームでお祓いが行われるわけではありませんが、特に施主様がお祓いを意識しやすいケースがあります。

水回り(キッチン、風呂、トイレ)のリフォーム

古来、水回りは神聖な場所であると同時に、穢れ(けがれ)が溜まりやすい場所とも考えられてきました。水や火を扱う場所には神様が宿るとも言われ、これらの場所を改修する際には、敬意を示し、場を清めるためにお祓いを希望される方が比較的多い傾向にあります。

中古住宅のリフォーム

以前の住人の「気」をリセットし、新たな気持ちで新生活をスタートさせたいという思いから、お祓いが検討されることが多いケースです。物理的なリフォームに加え、精神的な清浄化を求める気持ちが背景にあります。

大規模リフォームや増改築

家全体に手を入れるような大きな工事の場合、新築時の地鎮祭に近い意味合いで、工事全体の安全と、リフォーム後の家の繁栄を祈願してお祓いを行うことがあります。家の構造に手を加えることへの敬意を示す意味合いもあります。

リフォームのお祓いと地鎮祭、解体清祓などとの違い

リフォームのお祓い以外にも、家に関する儀式はいくつかあります。混同しないように、主なものを知っておきましょう。

主な建設関連の儀式

儀式名主な目的タイミング
地鎮祭(じちんさい)土地の神を鎮め、工事安全と繁栄を祈願工事着手前
上棟式(じょうとうしき)棟上げを祝い、今後の工事安全を祈願骨組み完成時
竣工式(しゅんこうしき)工事完了を祝い、感謝を示す (主に大規模建築)工事完了時
家祓(やはらい)
清祓(きよはらい)
入居前に住居を清める (引越し時など)入居前
リフォームのお祓い工事安全、空間浄化、感謝リフォーム前/後
解体清祓(かいたいきよばらい)解体前の感謝と工事安全祈願解体前
井戸埋清祓井戸埋設前の感謝と工事安全祈願井戸埋設前

リフォームのお祓いを行うタイミング

お祓いをすると決めた場合、いつ行うのが良いのでしょうか。理想は、工事が始まる前や、主要な工事に着手する直前などです。工事に取り掛かる前に場を清め、安全を祈願するという意味合いが強いです。

引越しを伴う場合は、入居前に行うのが良いとされます。

しかし、工事前や入居前のタイミングで都合がつかない場合もあります。そのような場合は、リフォーム工事が完了した後や、入居した後にお祓いを行っても問題ないとされています。

最も大切なのは、お祓いを行うこと自体と、そこに込められた気持ちです。厳密なタイミングにこだわりすぎる必要はありません。

お祓いの日取りの選び方

お祓いを行う日取りについては、日本の暦注である「六曜(ろくよう)」を参考にするのが一般的です。

  • 吉日とされる日:「大安(たいあん)」「友引(ともびき)」「先勝(せんしょう)」の午前中が良いとされます。
  • 避けられる傾向がある日:「仏滅(ぶつめつ)」などは避ける方が多いです。
  • 建築関係で参考にされる暦注「十二直(じゅうにちょく)」:「建(たつ)」「満(みつ)」「平(たいら)」「定(さだん)」「成(なる)」「開(ひらく)」などが建築事始めに適しているとされる一方、「破(やぶる)」は解体などには良いとされることもあります。

ただし、六曜などは神道と直接の関係はないという考え方もあります。施主様の希望を尊重しつつ、神社の都合、工事スケジュール、天候などを考慮し、関係者で相談して無理のない日を選びましょう。

リフォームのお祓い、神社への依頼手順と当日の流れ

神社にお祓いを依頼する場合の手順と、当日の流れ、準備について解説します。

依頼先の神社の探し方

  • 近隣の神社:自宅や工事現場の近くにある神社、またはその土地を守るとされる「氏神(うじがみ)様」を祀る神社に依頼するのが一般的です。
  • 氏神様の調べ方:地域の氏神様が分からない場合は、各都道府県の「神社庁」に問い合わせると教えてもらえます(ウェブサイトで検索できる場合もあります)。
  • インターネット検索:「神社 リフォーム お祓い (地域名)」などで検索すると、対応している神社が見つかることもあります。
  • 紹介:付き合いのある不動産会社や、施工を担当する工務店などが懇意にしている神社を紹介してくれる場合もあります。

神社への連絡と確認事項

依頼する神社が決まったら、電話などで予約を入れます。その際、以下の情報を伝えましょう。

  • お祓いの種類(例:「リフォームに伴う家のお祓いをお願いします」)
  • 施主様の氏名、連絡先
  • 施工会社の名前(もし決まっていれば)
  • 工事現場の正確な住所
  • 希望日時(複数候補を伝えるとスムーズ)
  • 参加予定人数

また、依頼する側から神社へ以下の点を確認しておくと安心です。

  • お祓いの費用(初穂料):金額が決まっているか、目安はいくらか。
  • お供え物:自分たちで準備する必要があるか。必要な場合、何をどれくらい用意すればよいか。
  • 当日の服装:特に指定はあるか(普段着で良いことが多い)。
  • その他:特記事項や準備しておくものはないか。

お祓い当日の一般的な流れ(例)

神職(神主)が現場に出向いて行う「出張祭典」が一般的です。所要時間は30分~1時間程度です。神社や地域によって異なりますが、一般的な流れは以下の通りです。

  1. 修祓(しゅばつ):祭儀に先立ち、参列者やお供え物を祓い清めます。
  2. 降神の儀(こうしんのぎ):祭壇に設けた依り代(ひもろぎ等)に神様をお迎えします。
  3. 献饌の儀(けんせんのぎ):神様にお供え物を召し上がっていただく儀式です。
  4. 祝詞奏上(のりとそうじょう):神職が神様に対し、リフォーム工事を行う旨を報告し、工事の安全や家の繁栄などを祈願する祝詞を読み上げます。
  5. 清祓(きよはらい):建物内部や敷地の四隅などを、切麻(きりぬさ)や塩水などで祓い清めます。
  6. 玉串奉奠(たまぐしほうてん):参列者が一人ずつ、玉串(榊の枝に紙垂をつけたもの)を神前に捧げ、拝礼(二礼二拍手一礼など)します。作法が分からなくても、神職や工務店の担当者が教えてくれることが多いので心配いりません。
  7. 昇神の儀(しょうしんのぎ):神様にお帰りいただく儀式です。
  8. 神酒拝戴(しんしゅはいたい):お供えしたお神酒を参列者でいただく場合があります(直会:なおらい の一部)。運転等で飲めない場合は事前に伝えておきましょう。

準備するもの(お供え物など)

お供え物を自分たちで用意するかどうかは、必ず事前に神社に確認してください。もし準備が必要な場合、一般的な例は以下の通りです。

  • 基本:お米(洗って乾かしたもの、一合程度)、お酒(日本酒、一升瓶または五合瓶)、塩(小皿に盛る)、水(コップなどに入れる)
  • 海の幸:尾頭付きの魚(鯛など)、または昆布、わかめ、鰹節、スルメなどの乾物
  • 山の幸:季節の果物(りんご、みかん、ぶどうなど数種類)
  • 野の幸:季節の野菜(地面の上にできる葉物野菜と、地面の下にできる根菜を数種類ずつ)

これらは神様への感謝と捧げものとしての意味を持ちます。品目や量については、神社の指示に従うのが最も確実です。工務店が施主様に代わって手配をサポートすることもあります。

リフォームのお祓い費用は?「初穂料」の相場とマナー

お祓いを依頼する際の費用(謝礼)と、その渡し方について解説します。

費用(謝礼)の目安

  • 一般的な相場:2万円~3万円程度が目安とされています。家に関するお祓い全体では、2万円~5万円という情報もあります。
  • 水回りのお祓い:2万円程度が相場とされることも。
  • 神社による違い:神社によっては料金設定がある場合や、「お気持ちで」と言われることもあります。「お気持ち」の場合は5千円~1万円程度を目安にしつつ、縁起の悪いとされる「4」や「9」のつく金額は避けるのが一般的です。

いずれにしても、費用については事前に神社に直接確認するのが最も確実で安心です。

「初穂料(はつほりょう)」とは

神社へのお祓いやご祈祷の謝礼として納めるお金のことです。その年に最初に収穫された稲穂(初穂)を神様にお供えしたことに由来します。(仏教寺院の場合は「お布施」となります)

封筒(のし袋)の選び方と書き方

初穂料は、そのまま現金で渡すのではなく、のし袋(熨斗袋)または白い封筒に入れてお渡しするのがマナーです。

  • のし袋の選び方:紅白で「蝶結び(花結び)」の水引がついたものを選びます(何度あっても良いお祝い・お礼用)。水引が印刷された略式の封筒でも良い場合があります。
  • 白封筒の場合:郵便番号枠などがない無地の白い封筒を選びます。
  • 表書き(上段):封筒の中央上部に、毛筆か筆ペンで「初穂料」または「御初穂料」と縦書きします。「御玉串料」「御礼」でも可。
  • 表書き(下段):中央下部に、施主の氏名をフルネームで縦書きします(上段の文字より少し小さめに)。
  • 中袋がある場合:表面中央に、包んだ金額を旧漢字(大字)で縦書き(例:「金 参萬圓」)し、裏面左下に、施主の住所・氏名を縦書きします。
  • 中袋がない場合:封筒の裏面左下に、金額(旧漢字)、住所、氏名を縦書きします。
  • 筆記用具:毛筆または筆ペンで、濃い墨ではっきりと書きます。ボールペンや薄墨はNG。
  • お金の入れ方:お札の肖像画(顔)が封筒の表側・上部に来るように向きを揃えて入れます。新札が望ましいですが、なければ綺麗なお札を選びましょう。

金額の旧漢字(大字)の例:

  • 5,000円 → 伍阡圓 (伍阡円)
  • 10,000円 → 壱萬圓 (壱萬円)
  • 20,000円 → 弐萬圓 (弐萬円)
  • 30,000円 → 参萬圓 (参萬円)
  • 50,000円 → 伍萬圓 (伍萬円) (数字対応:1=壱, 2=弐, 3=参, 5=伍, 10=拾, 1000=阡, 10000=萬)

初穂料の渡し方

初穂料は、お祓い当日の儀式が始まる前、受付時などに渡すのが一般的です。できれば「袱紗(ふくさ)」に包んで持参し、渡す直前に取り出します。相手から見て表書きが正面になるように向きを変え、両手で丁寧に差し出します。

神社によっては受付で現金支払いの場合もあります。事前に確認しましょう。

(自分で行う)簡易的なお清め方法

神社に依頼せず、自分たちで簡易的なお清めを行う方法もあります。費用を抑えたい、手軽に行いたい場合に検討されます。

  • 盛り塩:家の入り口や各部屋に塩を盛る。
  • 日本酒や塩で清める:気になる場所に撒いたり、拭いたりする。
  • お供え:米や酒などを簡易的に供える。

これらは正式な神事とは異なりますが、家への敬意を表し、気持ちを整えるための行為として意味があります。

リフォーム工事を避けた方が良いとされる時期とは?

古くから、特定の期間は土を動かす工事などを避けるべきという考え方があります。代表的なのが「土用(どよう)」です。

  • 土用とは:立春、立夏、立秋、立冬の直前約18日間の期間(年に4回)。土を司る神様が地上を支配する期間とされ、土木工事や建築、引越しなどを避けるべきという言い伝えがあります。季節の変わり目で体調を崩しやすい時期でもあります。
  • リフォーム工事との関係:基礎工事や外構工事など、直接「土」に関わる工事の場合、施主様の意向で土用期間を避けてスケジュールを組むことがあります。内装工事は気にしない場合もありますが、大規模リフォームでは開始時期をずらすことも。施主様が気にされるか、早めに確認すると良いでしょう。
  • 土用期間中の「間日(まび)」:土用期間中でも、土を動かしても問題ないとされる日が数日あります。これを「間日」と言い、どうしても作業が必要な場合はこの日を選ぶことがあります。

土用を気にするかどうかは個人の価値観によりますが、知識として知っておくと、施主様とのコミュニケーションに役立ちます。

土用期間と間日の目安(2025年)

期間開始日終了日間日
2025年 冬土用1月17日2月2日1/21(火), 1/22(水), 1/24(金), 2/2(日)
2025年 春土用4月17日5月4日4/18(金), 4/19(土), 4/22(火), 4/30(水), 5/1(木), 5/4(日)
2025年 夏土用7月19日8月6日7/21(月), 7/22(火), 7/26(土), 8/2(土), 8/3(日)
2025年 秋土用10月20日11月6日10/21(火), 10/29(水), 10/31(金), 11/2(日)

リフォームのお祓いは「安心」のための選択肢

リフォームのお祓いは、必ずしも行わなければならないものではありません。しかし、工事の安全を願い、新しい住まいでの生活を清々しい気持ちでスタートさせるための、大切な儀式と考える方も多くいらっしゃいます。

お祓いをするかどうかは、施主様の気持ちが最も重要です。もしお祓いを検討される場合は、この記事で紹介した費用相場やタイミング、神社への依頼方法、マナーなどを参考に、安心してリフォームを進めるための一助となれば幸いです。

建設業・工務店としては、施主様の意向を尊重し、必要であれば適切な情報提供やサポートを行うことで、より深い信頼関係を築くことができるでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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