- 作成日 : 2026年1月5日
建設業許可の経営管理責任者の要件とは?改正による要件緩和、必要書類まで解説
建設業許可を取得・維持するための5つの要件の中でも、最も重要かつ複雑なのが「経営業務の管理責任者(経管)」の要件です。2020年の法改正により、この要件は「廃止」ではなく、個人の能力から組織としての能力を評価する形へと「要件緩和」されました。
この記事では、建設業許可の根幹である経営管理責任者の要件について、改正後の最新の基準、必要な書類、そして役員が「非常勤」の場合の扱いまで、分かりやすく解説します。
目次
そもそも「経営業務の管理責任者」とは何か?
「経営業務の管理責任者」とは、建設業許可の5大要件(経営・技術・誠実性・財産・欠格要件)の一つであり、適正な建設業の経営を行うための体制そのものを指します。(建設業法 第7条第1号)
以前は「経営業務の管理責任者(経管)」という特定の人物(常勤役員など)が、法律で定められた経営経験を持つことが許可の必須条件でした。これは、建設業の経営が会計や契約実務などで高い専門性を要するため、経営陣の中に経験者がいることを担保する目的がありました。
「経営業務の管理責任者」は廃止されたか?
2020年(令和2年)10月1日の建設業法改正により、「経営業務の管理責任者」という個人だけで要件を満たす仕組みから、常勤役員等と補佐者を含めた、「適切な経営管理能力を有する体制(組織)」を求める形へと移行しました。
改正の趣旨は、経営者の高齢化や退職によって、即座に許可が維持できなくなるリスクを避けることです。個人(点)から組織(面)で経営管理能力を担保できるように、要件が緩和・多様化された、と理解するのが正確です。
改正後の経営管理責任者の要件とは?
改正により、従来の経営経験を持つ役員個人(常勤役員等)を置く方法に加え、常勤役員等をサポートする「補佐体制」を整備することでも、要件を満たせるようになりました。
国土交通省が示す、現在の経営管理責任者の要件を満たすための主なパターンは以下の通りです。
① 従来の要件(常勤役員等が経営経験を持つ場合)
最もシンプルで、現在も主流の方法です。常勤の役員(法人)または事業主本人(個人)が、以下のいずれかの経営経験を有することが求められます。
- 建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者としての経験がある
- 建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位として経営業務を管理した経験がある
- 建設業に関し6年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位として経管を補佐した経験がある
② 要件緩和(常勤役員等+補佐体制を置く場合)
常勤役員等に十分な経営経験がなくても、その役員を直接補佐する者(財務・労務・業務担当)を配置することで、組織全体として要件を満たす方法です。
常勤役員等の要件は、以下のいずれかです。
- 建設業の役員等として2年以上の経験があり、かつ建設業の役員等またはその直下の管理職として(財務管理・労務管理・業務運営のいずれかの業務)通算5年以上の経験がある
- 役員等として通算5年以上の経験があり、そのうち建設業の役員等として2年以上の経験がある
補佐する者は、 常勤役員等を直接補佐する者として「財務管理・労務管理・業務運営の各分野で5年以上の経験を持つ者」が該当します。なお、「経験」は原則として申請会社における建設業の財務管理・労務管理・業務運営の経験であることが求められます。
この緩和措置により、例えば経営経験が2年の役員でも、補佐体制を整えれば許可取得の道が開けるようになりました。
経営管理責任者の要件を満たすために必要な書類は何か?
主に「常勤性」を証明する書類と、「経営経験」を証明する書類の2種類が必要です。
これらの書類は、申請先の都道府県(東京都、神奈川県など)によってローカルルールが異なる場合があるため、必ず最新の手引きを確認する必要があります。
常勤性を証明する書類
経営管理責任者(常勤役員等)は、その営業所に常時勤務している(常勤である)ことが絶対条件です。そのため、「非常勤」の役員は認められません。
ただし、マイナ保険証への移行に伴って、標準報酬決定通知書や住民税特別徴収税額通知書などの書類が求められるケースが一般的になりつつあります。詳しくは、各自治体の手引きを確認してみてください。
経営経験を証明する書類
経営経験を証明する書類では、具体的にどのような立場で経営に関わっていたかを証明します。
経営管理責任者が変更・退職した場合はどうなるか?
経営管理責任者が退職などで不在(変更)になった場合、その事実が発生した日から2週間以内に「変更届出書」を提出する必要があります。
建設業許可は、5つの要件がすべて揃っていることを前提に維持されます。経営管理責任者がいなくなることは、許可要件の根幹を欠く重大な事態です。
後任者がいない場合のリスク
もし後任者が見つからず、経営管理責任者の要件を満たせないと、建設業許可を継続できません。この場合、30日以内に「廃業届」を提出しなければなりません。
変更届を提出しないまま業務を続けると、建設業法違反となります。この状態を放置すると、監督行政庁からの指示処分や営業停止命令を経て、最終的には建設業許可の取消し処分を受けることになります。改正による要件緩和は、こうしたリスクを回避しやすくするためでもあるのです。
許可の根幹をなす「経営体制」の証明
本記事では、建設業許可の「経営業務の管理責任者」の要件について、2020年の法改正による要件緩和や必要書類を中心に解説しました。
「経管廃止」という言葉が先行しがちですが、建設業の適正な経営を担保するという要件の本質は変わっていません。むしろ、組織として経営管理能力を示すという、より実態に即した形に改正されました。許可取得や更新、変更の際には、自社の体制がこれらの要件を確実に満たしているか、必要書類が揃っているかを確認することが不可欠です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
バックオフィス業務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
建設業許可「500万円の抜け道」は存在するか?契約分割のリスク、バレる理由、正しいルールまで解説
建設業許可の取得を回避するため、「500万円」の基準を超えないように契約を分割するといった「抜け道」は、建設業法で明確に禁止された違法行為です。これらが発覚(バレる)した場合、重い…
詳しくみる建設業許可の本店移転手続きはどうする?他県への移転、必要書類、期限まで解説
建設業許可を持つ事業者が本店(主たる営業所)を移転した場合、法律で定められた期限内に、必ず「変更届出書」または「許可換え新規申請」の手続きを行わなければなりません。この手続きを怠る…
詳しくみる建設業許可は何年でとれる?経営経験5年、実務経験10年の要件と5年未満の緩和措置まで解説
建設業許可をとるには、法律で定められた「経営経験5年」や「実務経験10年」といった要件を満たさなければなりません。しかし、国家資格の保有や学歴、あるいは組織体制を整えることによって…
詳しくみる建設業許可の500万円残高証明とは?「見せ金」のリスク、有効期限、500万円ない場合の対策を解説
建設業許可を取得する際、一般建設業許可の財産要件を満たすために「500万円以上の残高証明書」の提出が求められることがあります。これは、500万円以上の工事を請け負うに足る資金力があ…
詳しくみる建設業許可の実務経験証明書をとるには?書き方、10年の証明方法、書いてくれない時の対処法まで解説
建設業許可の実務経験証明書は、国家資格がなくても許可取得の要件を満たせることを示す、非常に重要な書類です。提出時には、10年分などの経験を裏付ける工事の契約書や注文書といった「確認…
詳しくみる建設業許可番号の調べ方とは?番号(前2桁や6桁)の意味、書き方、検索方法まで解説
建設業許可番号は、事業者が正規の建設業許可を得ていることを示す公的な識別番号です。この番号の意味を理解し、調べ方を知っておくことは、信頼できる業者を選定し、法令を遵守した取引を行う…
詳しくみる