• 作成日 : 2025年12月2日

建設工事の「工種」とは?建設業法で定められた29業種の種類と区分の考え方を解説

建設工事を業者に依頼する際、その工事が建設業法で定められた「工種(こうしゅ)」、すなわち29種類の専門業種のどれに該当するかを理解しておくことは、適切な業者選定とコンプライアンスのために非常に重要です。

この記事では、建設業の専門家として、法律で定められた29の工種(業種)の一覧と、それぞれの工事内容、そして「一式工事」と「専門工事」といった区分の考え方や、「建設工事」に該当しない作業との違いについて、発注者の皆様にも分かりやすく解説します。

そもそも建設業法が定める「工種」とは何か?

建設工事の種類を、専門性や工事内容に応じて29のカテゴリーに分類した「業種」のことです。建設業の許可は、この工種(業種)ごとに取得する必要があります。

建設工事は多岐にわたり、それぞれに専門的な技術や知識が求められます。そのため、建設業法では工事の種類を29に区分し、その業種に応じた専門技術者を置くことなどを許可の要件として定めています。これにより、工事の品質を確保し、発注者を保護する仕組みが作られています。一般的に「工種」と「業種」は、この建設業法上の分類を指す同じ意味の言葉として使われることが多いです。

建設業の許可が必要な「29業種(工種)」一覧

建設業の工種は、大規模なプロジェクトを統括する2つの「一式工事」と、個別の専門的な技術が求められる27の「専門工事」に大別されます。

建設業許可 業種区分一覧表

業種名略称工事内容の例示
【一式工事】
1. 土木一式工事道路、橋、ダム、トンネル、河川工事など、複数の専門工事を組み合わせて土木工作物を建設する工事
2. 建築一式工事住宅、ビル、商業施設など、複数の専門工事を組み合わせて建築物を建設する工事
【専門工事】
3. 大工工事木材の加工・取付けにより工作物を築造する工事(大工仕事)
4. 左官工事工作物の壁や床などに、モルタルや漆喰などを塗る工事
5. とび・土工・コンクリート工事足場の組立て、基礎工事、コンクリート打設、掘削など
6. 石工事石材の加工・積方により工作物を築造する工事
7. 屋根工事瓦、スレート、金属薄板などによる屋根ふき工事
8. 電気工事発電設備、送配電線、照明設備などの電気工作物を設置する工事
9. 管工事冷暖房、空調、給排水、厨房設備などの配管工事
10. タイル・れんが・ブロック工事れんが、コンクリートブロックの組積、タイルの貼付け工事
11. 鋼構造物工事形鋼、鋼板などの鋼材の加工・組立てにより工作物を築造する工事
12. 鉄筋工事鉄筋の加工・組立て工事
13. ほ装工事道路などの地盤面をアスファルト、コンクリートなどで舗装する工事
14. しゅんせつ工事しゅ河川や港湾などの水底を、船舶を使って掘削する工事
15. 板金工事金属薄板などを加工して工作物に取付ける工事(建築板金)
16. ガラス工事工作物にガラスを加工して取付ける工事
17. 塗装工事工作物に塗料などを吹付け、塗付けする工事
18. 防水工事アスファルト、モルタル、シーリング材などによる防水工事
19. 内装仕上工事木材、壁紙、床材、カーテンなどで建築物の内装を仕上げる工事
20. 機械器具設置工事機械器具の組立てなどにより工作物を建設、または工作物に機械器具を取付ける工事
21. 熱絶縁工事工作物を熱絶縁する工事(冷暖房設備の保温、冷凍冷蔵設備の保冷など)
22. 電気通信工事有線・無線電気通信設備、データ通信設備などの設置工事
23. 造園工事整地、樹木の植栽、景石のすえ付けなどにより庭園、公園などを築造する工事
24. さく井工事さくさく井機械などを用いて井戸を掘削する工事(温泉掘削も含む)
25. 建具工事工作物に木製または金属製の建具などを取付ける工事
26. 水道施設工事上水道、工業用水道などのための取水、浄水、配水等の施設を築造する工事
27. 消防施設工事屋内消火栓、スプリンクラー、火災報知設備などを設置する工事
28. 清掃施設工事ごみ処理施設、し尿処理施設などを築造する工事
29. 解体工事工作物を取り壊す工事

出典:業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方|国土交通省

「一式工事」と「専門工事」の考え方は?

「一式工事」は複数の専門工事を統括する大規模な総合工事を指し、「専門工事」は個々の具体的な専門分野の工事を指します。

一式工事(土木一式・建築一式)とは?

一式工事は、主に元請負人の立場で、大規模かつ複雑な工事の企画、指導、調整を行い、複数の専門工事業者を管理して一つの工作物を完成させる工事です。

【注意点】

「建築一式」の許可を持っていれば、あらゆる建築関連の専門工事を単独で請け負える、というわけではありません。例えば、500万円以上(税込)の内装仕上工事のみを単独で請け負う場合は、「内装仕上工事」の専門工事許可が別途必要となります。一式工事の元請けとしてではなく、専門工事を下請けとして請け負う場合にも、請負金額が500万円以上であれば、その専門工事の許可が必要です。

専門工事(27業種)とは?

専門工事は、一式工事に含まれる個々の要素(大工工事、電気工事、管工事など)や、それ単体で成立する工事を指します。多くの建設会社は、この中から自社の専門分野に対応する業種の許可を取得しています。

「建設工事」に該当しない作業とは何か?

測量、設計、資材の運搬、除草や伐採といった維持管理業務、そして設備の保守・点検などは、建設業法上の「建設工事」には該当しません。

国土交通省のガイドラインでは、建設業の許可が不要な作業の例として、以下のようなものが挙げられています。

  • 樹木の剪定、除草、草刈り
  • 道路や施設の清掃、保守、点検
  • 測量、調査、設計
  • 建設機械のリース
  • 建設資材の販売、運搬

これらの業務は、建設工事そのものではなく、それに付随するサービスや、完成した工作物の維持管理または役務の提供と見なされるため、建設業の許可は必要ありません。

発注者として工種(業種)を理解するメリットは?

依頼したい工事に合った適切な許可を持つ建設会社を選ぶことができ、工事の品質確保やコンプライアンス遵守につながるためです。

例えば、飲食店の内装工事を依頼したい場合、建設会社が「建築一式工事」の許可しか持っていなくても、500万円未満の工事であれば問題ありません。しかし、500万円以上の工事になる場合は、その会社が「内装仕上工事」の許可を持っているかを確認する必要があります。

このように、発注者自身が業種区分を理解しておくことで、依頼先の業者がその工事を請け負うための適切な資格を持っているかを見極めることができ、無許可営業といった法令違反のリスクを回避できます。

適切な工種理解が、信頼できる業者選びの鍵

本記事では、建設業法で定められた29の工種(業種)区分について、その一覧と基本的な考え方を解説しました。

店舗の内装工事であれば「内装仕上工事」、厨房の給排水設備工事であれば「管工事」など、ご自身が依頼したい工事がどの業種にあたるかを知っておくことは、信頼できる建設会社を見極める上で非常に重要です。適切な許可を持つ専門家とパートナーを組むことが、事業の成功を支える質の高い工事の実現につながります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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